鴻門之会①沛公旦日~の現代語訳・解説

沛公、旦日従百余騎、来見項王。

沛公、旦日百余騎を従へ、来たりて項王に見えんとす。

沛公(劉邦)は、翌朝、百騎余り(の部下)を引き連れて、項王(項羽)にお目にかかろうとした。

旦日…翌朝。この前の部分で項伯が沛公のもとにやって来て、項羽に謝罪することを勧めるとともに、項羽には沛公を討つべきでないことを説いていた、その翌朝。

見…「まみユ」と読む場合は謙譲語「お目にかかる」の意味

至鴻門、謝曰、「臣与将軍戮力而攻秦。将軍戦河北、臣戦河南。

鴻門に至り、謝して曰はく、「臣将軍と与に力を戮はせて秦を攻む。将軍は河北に戦ひ、臣は河南に戦ふ。

鴻門にやって来て、謝罪して言うことには、「私は将軍とともに力を合わせて秦を攻めました。将軍は黄河の北で戦い、私は黄河の南で戦いました。

謝…謝罪する、謝る。「謝」は他にも「感謝する」「衰え去る」「断る、謝絶する」などの意味がある。

臣…沛公を指す。 「臣」は君主に対する、臣下の自称、「私」の意味。

将軍…項王を指す。

〇沛公は自分を「臣」と呼んでへりくだり、項王を「将軍」と呼んで敬うことで、項王の怒りをしずめようとした。

臣与将軍…「臣将軍と」。「与」は様々な読み方があり、ここでは「と」と読む。

河…黄河を指す

然不自意、能先入関破秦、得復見将軍於此。

然れども自らおもはざりき、能く先に関に入りて秦を破り、復た将軍に此に見ゆるを得んとは。

しかしながら、自分でも思いもよりませんでした、(私のほうが将軍より)先に関中に攻め入って秦を破ることができ、再び将軍とこの地でお目にかかれようとは。

然…「しかレドモ」と読む場合は逆接「しかし」の意味。

不自意…「意」は「おもふ」と読み、「意図する、考える、思う」の意味。

「能」…「よク」と読み、「~できる」の意味。

「得」…「~を得」で「~できる」の意味

此…鴻門

今者有小人之言、令将軍与臣有郤。」

今者小人の言有り、将軍をして臣と郤有らしむ。」と。  

今、つまらない者の中傷があり、将軍を私と仲たがいさせようとしています。」と

今者…あわせて「いま」と読む。

小人之言…「小人」は徳のないつまらない人物のこと。曹無傷が項王に「沛公が関中で王になろうとしている」と告げ口していた。

「令」…使役。「令AB」で「AをしてBしむ」と読み、「AにBさせる」の意味。ここでは「A=将軍」「B=与臣有郤」

郤…仲たがい

項王曰、「此沛公左司馬曹無傷言之。

項王曰はく、「此れ沛公の左司馬曹無傷之を言ふなり。

項王は、「そのことは沛公殿の左司馬である曹無傷が言ったのである。

左司馬…軍事をつかさどる役職。

曹無傷…沛公の部下

不然、籍何以至此。」

然らずんば、籍何を以つてか此に至らん。」と。

そうでなければ、この籍はどうしてこのような(沛公を攻撃しようとした)ことにたち至ろうか、いた至らない。」と言った。

「不然」…「然らずんば(そうでないならば)」。この後にでてくる「不者」と同じ読み・意味。〇

籍…項羽の名。

何以…「何を以て(か)」よ読み、理由を問う「どうして~」。ここでは反語。

此…この状況、項王が沛公を攻撃しようとすることを指している。

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