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源氏物語―車争い②現代語訳・テスト対策

日たけゆきて、儀式もわざとならぬさまにて出で給へり。

日が高く昇って、作法も格式ばらない様子でお出かけなさった。

・わざとならず…ことさらでない、さりげない。わざわざするのではない。

隙もなう立ちわたりたるに、よそほしう引きつづきて立ちわづらふ。

隙間もなく(車が)一面に立ち並んでいるので、(葵の上の車は)美しく列をなしたまま車の立て場に困っている。

・~わたる…一面に~する。~し続ける。

・よそほし…装いが整っている。

・~わづらふ…~するのに困る、苦労する。

よき女房車多くて、雑々の人なき隙を思ひ定めてみなさし退けさする(使役「さす」体)中に、

身分の高い女性の車が多く、供人の付いていない隙をねらってみな立ちのかせる中に、

網代のすこし馴れたるが、下簾のさまなど由ばめるに、いたう引き入りて、ほのかなる袖口、裳の裾、汗衫など、物の色いときよらにて、ことさらにやつれたる気配しるく見ゆる車二つあり。

 網代車で少し古びているものが、下簾の様子など趣がある様子で、(乗り手は)ずっと奥に引っ込んで、わずかに見える袖口、裳の裾、汗衫などの、色がたいそう美しく、わざと目立たないようにしている様子がはっきりとわかる車が二台ある。

・網代…網代車。牛車の一種。

・きよらなり…きよらかで美しい。

・ことさらに(ことさらなり)…わざと、意図的に。

・やつる…目立たなくなる、みずぼらしくなる。

・しるく…はっきり。※形容詞「しるし」の連用形。

「これは、さらにさやうにさし退けなどすべき御車にもあらず。」と、口強くて手触れさせず。

(従者は)「これは、決してそのように立ちのかせなどしていいお車ではない。」と、強い口調で言い(葵の上の供人に)手を触れさせない。

・さらに~打消…まったく~ない。

○六条御息所の従者の発言。

いづ方にも、若き者ども酔ひ過ぎたち騒ぎたるほどのことはえしたためあへず。

どちらも、若い者どもが酔いすぎて騒いでいる時のことは制止することができない。

・~あへず…~できない。

おとなおとなしき御前の人々は、「かくな。」など言へど、えとどめあへず。

年配で分別のある(葵の上の)お供の先払いの人々は、「このようなことをするな。」などと言うが、抑えることができない。

・おとなおとなし…いかにも大人びている

 (おとなし…思慮分別がある。年配だ。)

・かくな…「かくなせそ」の略。「な~そ」で「~するな」という禁止を表す。ここでは下に来る動詞が省略されている。

斎宮の御母御息所、もの思し乱るる慰めにもやと、忍びて出で給へるなりけり。

(この車は)斎宮の母六条御息所が、もの思いでお乱れになるお気持ちの慰めにもなろうかと、人目を忍んでお出かけになっているのであった。

○六条御息所は光源氏との関係がうまくいかず、悩んでいた。

つれなしづくれど、おのづから見知りぬ。

何気ないふうを装う(素性を隠す)が、自然と(葵の上は)気づいてしまった。

・つれなし…平然としている

「さばかりにては、さな言はせそ。大将殿をぞ豪家には思ひ聞こゆらむ(現在推量「らむ」終)。」など言ふを、

「その程度の者には、そんなことを言わせるな。大将殿(光源氏)を権勢家と思い申し上げているのだろう。」などと言うのを、

・な~そ…~するな。

○相手が六条の御息所と分かり、葵の上の従者は「光源氏の愛人程度が」と見下して言っている。

その御方の人も交じれれば、いとほしと見ながら、用意せむもわづらはしければ、知らず顔をつくる。

(葵の上の供人には)光源氏に仕えている人も交じっているので、(六条御息所を)お気の毒だと見ながらも、仲裁するというのもめんどうなので、知らぬ顔をする。

つひに御車ども立てつづけつれば、副車の奥に押しやられてものも見えず。

とうとう(葵の上たちの)お車を列をなして止めてしまったので、(六条御息所の車は)お供の女房の乗った牛車の奥に押しやられてものも見えない。

源氏物語―車争い①

源氏物語―車争い③

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