助動詞「つ」「ぬ」は、どの文章にも出てくる頻出の助動詞で、文法問題でもよく問われます。
このページでは、「つ」「ぬ」の意味・接続・活用と、完了と強意の見分け方を、よく出る形(てむ・ぬべし・にけり など)と教科書の例文で確認します。
意味・接続・活用
活用表
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| つ | て | て | つ | つる | つれ | てよ | 下二段型 |
| ぬ | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね | ナ変型 |
「つ」は下二段動詞「捨つ(て・て・つ・つる・つれ・てよ)」と同じ型、「ぬ」はナ変動詞「死ぬ・往ぬ」と同じ型です。
どちらも連用形に付きます。打消「ず」の連体形「ぬ」・已然形「ね」は未然形に付くので、この点で見分けます(「ぬ」「ね」の識別)。
成り立ち
「ぬ」は「行ってしまう」という意味の動詞「往ぬ」から、「つ」は「捨てる」という意味の動詞「棄つ」からできたと考えられています。もとの動詞の意味から、「ぬ」は物事が自然に移り変わってしまうこと、「つ」は動作をし終えてしまうことを表しやすい、と説明されます。
意味ごとの説明
1 完了(〜た・〜てしまった・〜てしまう)
動作や作用が終わったこと、実現したことを表します。
- なよ竹のかぐや姫とつけつ。(竹取物語)
なよ竹のかぐや姫と名づけた。 - 古き墳はすかれて田となりぬ。(徒然草)
古い墓は鋤き返されて田になってしまう。 - 今日は日暮れぬ。勝負を決すべからず。(平家物語)
今日は日が暮れてしまった。勝負をつけることはできない。
過去の助動詞「き」「けり」が続く形(てき・てけり・にき・にけり)は、すでに起こったことなので完了です。「〜てしまった」と訳します。
- 一夜のうちに塵灰となりにき。(方丈記)
(都の大部分が)一晩のうちに灰になってしまった。 - この男、垣間見てけり。(伊勢物語)
この男は、(姉妹の姿を)物のすき間からのぞき見てしまった。
「にき・にけり」の「に」は完了「ぬ」の連用形、「てき・てけり」の「て」は完了「つ」の連用形です。接続助詞「て」や格助詞「に」とまちがえないようにします(「に」の識別・「て」の識別)。
2 強意(確述)(きっと〜・確かに〜・〜てしまう)
まだ起こっていないことについて、「必ずそうなる」「確かにそうする」と強めていう用法です。下に推量の助動詞が付く形で出てきます。推量(〜だろう)はまだ確定していないことを表すので、「つ」「ぬ」は「完了した」ではなく「きっと」と強める意味になります。
「む」「まし」は未然形に付くので「て・な+む」、「べし」は終止形に付くので「つ・ぬ+べし」の形になります。
- この事かの事、怠らず成じてむ。(徒然草・第二百四十一段)
あのこともこのことも、怠けずにきっと成し遂げよう。(「て」は強意、「む」は意志) - 黒き雲にはかに出で来ぬ。風吹きぬべし。(土佐日記)
黒い雲が急に出てきた。風がきっと吹くにちがいない。(はじめの「ぬ」は完了、「ぬべし」の「ぬ」は強意) - かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。(徒然草)
これくらい(の高さ)になってからは、飛び降りてもきっと降りられるだろう。(「な」は強意、「ん」は推量) - 清見が関の浪も高くなりぬべし。(更級日記)
清見が関の波もきっと高くなるにちがいない。
「つらむ・ぬらむ」「てけむ・にけむ」のように「らむ」「けむ」が続く形は、完了ととる説明と強意ととる説明があり、扱いが分かれます。すでに起こったことや、今起こっていることを推量することが多いので、「〜てしまっているだろう」「〜てしまったのだろう」と訳すと自然です。
3 並列(〜たり〜たり)
「〜つ〜つ」「〜ぬ〜ぬ」と二つの動作を並べて、「〜たり〜たり」の意味になります。
- 白波の上にただよひ、浮きぬ沈みぬ揺られければ、(平家物語)
(扇は)白波の上に漂って、浮いたり沈んだり揺られていたので、 - 組んづ組まれつ、討ちつ討たれつ、(源平盛衰記)
組みついたり組みつかれたり、討ったり討たれたりして、
「つ」と「ぬ」の違い(目安)
| つ | ぬ | |
|---|---|---|
| 付きやすい語 | 人が意志をもってする動作(つく・捨つ・書く など他動詞が多い) | 自然に起こる変化(暮る・散る・なる など自動詞が多い) |
| 例 | かぐや姫とつけつ | 日暮れぬ・田となりぬ |
これは目安で、例外もたくさんあります。試験では、どちらの語かと意味(完了・強意・並列)を答えられれば十分です。
完了か強意かの見分け方
- 「つ」「ぬ」の下の語を見る。
- 下にむ(ん)・むず・べし・ましが付いていれば → 強意(きっと〜)。
- 下にき・けりが付いていたり、文末で言い切ったり、体言が続いたりしていれば → 完了(〜た・〜てしまった)。
- 「〜つ〜つ」「〜ぬ〜ぬ」と二つ並んでいれば → 並列。
- 「らむ」「けむ」が続くときは、完了・強意のどちらとも説明されるので、「〜てしまっているだろう」「〜てしまったのだろう」と訳して文脈に合うかを確かめる。
「なむ」に注意 「なむ」は、①完了(強意)「ぬ」の未然形+推量「む」、②願望の終助詞「なむ」(未然形に付く)、③係助詞「なむ」、④ナ変動詞の未然形の語尾+「む」(死なむ・往なむ)の四つがあります。連用形に付く「なむ」が①の強意+推量です(「なむ」の識別)。
よくある間違い・入試で問われるポイント
- 「ぬべし」「てむ」の訳:「〜てしまうだろう」でもよいが、「きっと〜だろう」「〜にちがいない」と強めて訳すと意味がはっきりする。
- 「ぬべし」は「〜てしまいそうだ」(今にもそうなりそう)の意味になることも多い。
- 文法的説明では「強意の助動詞『ぬ』の終止形+推量の助動詞『べし』の終止形」のように、二語に分けて書く。
- 完了「ぬ」の終止形「ぬ」・命令形「ね」と、打消「ず」の連体形「ぬ」・已然形「ね」は、接続で見分ける。
- 「て」が完了「つ」か接続助詞「て」かは、下に助動詞が続くかどうかで見る。
練習問題
「つ」「ぬ」の意味
助動詞「つ」「ぬ」の意味を三つ答えよ。また、接続を答えよ。
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完了・強意(確述)・並列。接続はどちらも連用形。
「つ」「ぬ」の活用を、未然形から命令形まで答えよ。また、それぞれ何型の活用か答えよ。
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つ=て・て・つ・つる・つれ・てよ(下二段型)。ぬ=な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね(ナ変型)。
「つ」「ぬ」の下に推量の助動詞「む」「べし」などが付くと、「つ」「ぬ」は何の意味になるか。また、そのときの訳し方を答えよ。
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強意。「きっと〜」「確かに〜」と訳す。(てむ=きっと〜しよう・きっと〜だろう、ぬべし=きっと〜にちがいない)
「一夜のうちに塵灰となりにき。」(方丈記)の「に」を文法的に説明し、文全体を現代語訳せよ。
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完了の助動詞「ぬ」の連用形。訳:一晩のうちに灰になってしまった。(下に過去「き」が続くので完了)
「この事かの事、怠らず成じてむ。」(徒然草)の「て」「む」の意味を答え、現代語訳せよ。
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「て」=強意(「つ」の未然形)、「む」=意志。訳:あのこともこのことも、怠けずにきっと成し遂げよう。
「黒き雲にはかに出で来ぬ。風吹きぬべし。」(土佐日記)の二つの「ぬ」の意味を、それぞれ答えよ。
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はじめの「ぬ」(出で来ぬ)=完了の終止形。あとの「ぬ」(吹きぬべし)=強意の終止形。(下に推量の「べし」が付く)
「かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。」(徒然草)の「なん」を文法的に説明し、現代語訳せよ。
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「な」=強意の助動詞「ぬ」の未然形、「ん」=推量の助動詞「む(ん)」の終止形。訳:これくらいの高さになってからは、飛び降りてもきっと降りられるだろう。
「白波の上にただよひ、浮きぬ沈みぬ揺られければ、」(平家物語)の「ぬ」の意味を答え、現代語訳せよ。
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並列。訳:白波の上に漂って、浮いたり沈んだり揺られていたので、
「なよ竹のかぐや姫とつけつ。」(竹取物語)の「つ」の意味と活用形を答えよ。
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完了・終止形。(名づけた)
「清見が関の浪も高くなりぬべし。」(更級日記)を現代語訳せよ。
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清見が関の波もきっと高くなるにちがいない。(「ぬ」は強意、「べし」は推量)