助動詞「む」「むず」の意味・用法|推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲の見分け方・接続・活用・例文・練習問題

目次
  1. 「む」「むず」の活用表
  2. 「む」の意味の見分け方
  3. ① 文末の「む」――推量・意志・適当・勧誘
  4. ② 文中の「む」――仮定・婉曲
  5. 「むず」の意味と例文
  6. まぎらわしい「む」の見分け方
  7. よくある間違い・入試で問われるポイント
  8. 練習問題
  9. あわせて読みたい

「む」は、古文でいちばんよく出てくる助動詞の一つです。意味が六つもありますが、文末か文中か、文末なら主語がだれかを見れば、たいていは決められます。このページでは「む」と、ほぼ同じ働きをする「むず」の意味・接続・活用と見分け方を、例文で確かめます。

「む」「むず」の活用表

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用の型
む(ん) 〇 〇 む む め 〇 四段型
むず(んず) 〇 〇 むず むずる むずれ 〇 サ変型

「む」は終止形と連体形が同じ形なので、形だけでは区別できません。下に体言(名詞)が続けば連体形、文がそこで終われば終止形と考えます(係り結びの結びなら連体形)。已然形「め」は、「こそ〜め」の形で出てきます。

「む」の意味の見分け方

「む」は、文末にあるか、文中にあるかで大きく二つに分かれます。

位置 形 意味
文末(「む」で文が終わる・「こそ〜め」) 主語が一人称(私) 意志
〃 主語が二人称(あなた) 適当・勧誘
〃 主語が三人称(ほかの人・もの) 推量
文中(下に体言や助詞が続く) 〜む+体言 婉曲
〃 〜む+助詞(は・に・も など) 仮定(婉曲でもよいことが多い)

① 文末の「む」――推量・意志・適当・勧誘

「む」は、まだ起きていないこと(未来のこと)を思いえがく助動詞です。

  • 自分がこれからすること → 意志「〜しよう」
  • 相手がこれからするとよいこと → 適当・勧誘「〜のがよい・〜しませんか」
  • ほかの人・ものにこれから起こること → 推量「〜だろう」

となるので、文末の「む」は主語で判断できることが多くなります。主語が書かれていないときは、会話の場面から補って考えます。

一人称が主語 → 意志「〜しよう」

我も見に行かむ。

訳:私も見に行こう。

いざ、かいもちひせむ。(『宇治拾遺物語』「児のそら寝」)

訳:さあ、ぼたもちを作ろう。

立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む(『古今和歌集』離別・在原行平)

訳:お別れして因幡の国へ行っても、因幡山の峰に生える松のように、あなたが待っていると聞いたなら、すぐに帰って来よう。

三人称が主語 → 推量「〜だろう」

雪降らむ。

訳:雪が降るだろう。

少納言よ、香炉峰の雪いかならむ。(『枕草子』「雪のいと高う降りたるを」)

訳:少納言よ、香炉峰の雪はどうであろう。

二人称が主語 → 適当・勧誘「〜のがよい・〜しませんか」

「こそ〜め」の形や、「〜むや」「〜てむや」(〜してくれませんか)の形が多く見られます。

などかくは急ぎ給ふ。花を見てこそ帰り給はめ。(『宇津保物語』)

訳:どうしてそんなにお急ぎになるのですか。(あなたは)花を見てからお帰りになるのがよいでしょう。

かかるついでに見奉り給はむや。(『源氏物語』「若紫」)

訳:この機会に(光源氏を)拝見なさいませんか。

子といふものなくてありなむ。(『徒然草』第六段)

訳:子どもというものは、ないほうがよい。

「ありなむ」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形で、そこに適当の「む」が付いています。

② 文中の「む」――仮定・婉曲

「む」で文が終わらず、下に体言や助詞が続くときは、仮定か婉曲で考えます。このときの「む」は連体形です。

  • 婉曲…はっきり言わず、遠回しに言う。「〜ような」と訳す。現代語にぴったりの言い方がないので、訳すと不自然になるときは訳さなくてもよい。
  • 仮定…「〜としたら」「〜なら」と訳す。

どちらにするかは文脈で決めますが、次のパターンが多く見られます。

  • 「む+体言」の形 → 婉曲(〜ような)
  • 「む+助詞」(むは・むに・むも・むには など)の形 → 仮定(〜としたら)

どちらで訳してもよい場合もあります。

世の中になほいと心憂きものは、人ににくまれむことこそあるべけれ。(『枕草子』「世の中に、なほいと心憂きものは」)

訳:世の中でやはりとてもつらいことは、人に憎まれるようなことであるにちがいない。

「む」の下が「こと」という体言なので、婉曲です。

心あらむ友もがな。(『徒然草』第百三十七段)

訳:情趣を解するような友がいてほしいなあ。

銭あれども用ゐざらむは、全く貧者と同じ。(『徒然草』第二百十七段)

訳:お金があっても使わないとしたら、まったく貧しい人と同じだ。

「む+助詞(は)」の形なので、仮定です。

ありのままに言はむはをこがましとにや、(『徒然草』第二百三十四段)

訳:ありのままに言ったとしたら、ばかげていると思うのであろうか、

これも「むは」の形で仮定ですが、婉曲で「ありのままに言うようなことは」と訳してもよいところです。

「むず」の意味と例文

「むず」は「む+と+す」がつづまった形で、意味は「む」とほぼ同じです(推量・意志・適当・婉曲など)。会話文や軍記物語でよく使われます。活用はサ変型(むず・むずる・むずれ)です。

かのもとの国より、迎へに人々まうで来むず。(『竹取物語』)

訳:あの元の国(月の都)から、迎えに人々がやって来るでしょう。(推量)

いづちもいづちも足の向きたらむ方へ往なむず。(『竹取物語』)

訳:どこへでも、足の向いた方へ行こう。(意志)

平家滅ぼさむずる謀をぞめぐらしける。(『平家物語』「鹿の谷」)

訳:平家を滅ぼそうという(ような)計画をめぐらしていた。(婉曲)

連体形「むずる」が体言に続くときは、婉曲になることがあります。「足の向きたらむ方」の「む」も、体言「方」に続く婉曲です(「たら」は存続の助動詞「たり」の未然形)。

まぎらわしい「む」の見分け方

「む」は未然形接続なので、直前の語の活用形が手がかりになります。

  • 「らむ」「けむ」の「む」は、それだけで一語の助動詞(現在推量・過去推量)なので、「む」と分けない。ただし「あらむ」「知れらむ」のように分ける場合もあるので、「らむ」の識別を見てください。
  • 動詞の語尾の「む」(読む・住む・進む)は助動詞ではない。

よくある間違い・入試で問われるポイント

  • 主語による見分けは目安です。三人称でも「こそ〜め」なら適当(〜のがよい)になることがあるので、最後は文脈で確かめます。
  • 「む」は終止形と連体形が同じ形。「活用形を答えよ」では、下に何が続くか・係り結びかを見て答えます(「こそ〜め」は已然形)。
  • 「婉曲」は訳さなくても意味が通ることが多いですが、問題で「意味を答えよ」と言われたら「婉曲」と答えられるようにしておきます。
  • 「なむ」「てむ」「ぬべし」のような完了+推量は、「きっと〜」と強意を訳に出します。

練習問題

「む」「むず」の練習問題

  1. 助動詞「む」の意味を六つ答えよ。また、接続を答えよ。

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    推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲。未然形接続。

  2. 助動詞「むず」の活用を、未然形から命令形まで答えよ。

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    〇・〇・むず・むずる・むずれ・〇(サ変型)

  3. 「いざ、かいもちひせむ」の「む」の意味を答え、現代語訳せよ。

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    意志。主語は話し手(僧たち)。
    訳:さあ、ぼたもちを作ろう。

  4. 「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」の「む」の意味を答えよ。

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    推量。主語は「香炉峰の雪」(三人称)。「どうであろう」。

  5. 「花を見てこそ帰り給はめ」の「め」を文法的に説明し、現代語訳せよ。

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    適当(勧誘)の助動詞「む」の已然形(「こそ」の結び)。
    訳:花を見てからお帰りになるのがよいでしょう。

  6. 「世の中になほいと心憂きものは、人ににくまれむことこそあるべけれ」の「む」の意味と活用形を答えよ。

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    婉曲、連体形。下に体言「こと」が続いている。「人に憎まれるようなこと」。

  7. 「銭あれども用ゐざらむは、全く貧者と同じ」を現代語訳せよ。また、「む」の意味を答えよ。

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    訳:お金があっても使わないとしたら、まったく貧しい人と同じだ。
    意味:仮定(「むは」の形)。

  8. 「子といふものなくてありなむ」の「なむ」を文法的に説明し、現代語訳せよ。

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    完了(強意)の助動詞「ぬ」の未然形「な」+適当の助動詞「む」の終止形。
    訳:子どもというものは、ないほうがよい。

  9. 「かのもとの国より、迎へに人々まうで来むず」の「むず」の意味を答え、現代語訳せよ。

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    推量。
    訳:あの元の国から、迎えに人々がやって来るでしょう。

  10. 「平家滅ぼさむずる謀をぞめぐらしける」の「むずる」の意味と活用形を答えよ。

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    婉曲、連体形。下に体言「謀」が続いている。「平家を滅ぼそうという計画」。

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