『和泉式部日記(いずみしきぶにっき)』「夢よりもはかなき世の中を」③の現代語訳・品詞分解・解説です。教科書によっては「薫る香に」の題でも載っています。
②では、作者が帥宮(そちのみや)の贈った橘の花に応えて、「ほととぎす」にたとえた帥宮の声が聞きたいという歌を返しました。③では、その歌を受け取った帥宮が返歌を書いて童に託します。「同じ枝」の歌に込められた思い、「かかること」の指す内容、帥宮が口止めした理由がよく問われます。
原文の読み方
原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。
現代語訳・品詞分解・解説
帥宮、童を迎える
現代語訳(帥宮は)まだ縁先にいらっしゃったところ、この童が物陰でそれとなく合図をする様子をお見つけになって、「どうだったか。」とお尋ねになると、
- 端
- 縁先。建物の外側に近い部分。
- 気色ばむ
- それとなく様子に出す。ここでは、物陰から(戻ったことを)それとなく知らせる。
「おはしましける」の主語は帥宮。
「いかに」は、橘の花を届けた作者の反応はどうであったかという問い。
※作者のいない場所での帥宮のようすが書かれている。和泉式部の日記とされているが、このように物語のように第三者の視点で書かれているのが『和泉式部日記』の特徴。また、今回の場面にはないが、作者自身のことを「女」と表現している。
帥宮の返歌
- 御文
- お手紙。ここでは作者の和歌を書いた手紙。
現代語訳同じ枝に鳴きながらとまっていたほととぎす(亡き兄と私)です。その声(心)が兄と変わらないことを、ご存じないのですか。
- 知らずや
- 知らないのか。お分かりになりませんか。
同じ枝…亡き宮と帥宮は、同じ母から生まれた兄弟であること。
変はらぬもの…私(帥宮)と亡き宮は同じ声で鳴いている、つまり私があなたを想う気持ちは亡き宮と変わりません、ということを示している。
「ほととぎす」は故宮と帥宮の二人をたとえている。
現代語訳とお書きになって、
帥宮の口止め
現代語訳(童に)お与えになろうとして、「こうしたことは、決して人に言ってはならない。好色めいているように思われるから。」と言って、奥へお入りになった。
- 賜ふ
- 「与ふ」の尊敬語。お与えになる。
- 好きがまし
- 色好みらしい、好色らしい。
「かかること」は、亡くなった兄宮の恋人だった作者と、歌のやりとりをしていること。
「ゆめ〜な」は「決して〜するな」。
帥宮が口止めするのは、兄の恋人と歌をやりとりしていると知られると、自分が好色な人に見えてしまうからである。
作者のようす
現代語訳(童が手紙を)持ってきたので、(作者は)興味深いと思って見るが、いつも(返事をするの)はどうかと思って、お返事を差し上げない。
- をかし
- 興味深い、おもしろい。
「持て来たれば」は、小舎人童が帥宮の手紙を作者のところへ持ってきたということ。
「常はとて」は、いつも(返事をするの)はどうかと思っての意。「と」の下に「思ひて」などが省略されている。
前の部分:『和泉式部日記』夢よりもはかなき世の中を・薫る香に②
テスト予想問題
A 語句
次の語句の意味を答えよ。
①気色ばむ(ここでは)
②好きがまし
③をかし
④端解答を見る
①それとなく様子に出す・合図をする
②好色めいている・浮気っぽい
③興味深い・おもしろい
④縁先
B 文法・敬語
「『いかに。』と問はせ給ふに」の「せ」「給ふ」を文法的に説明し、敬意の方向も答えよ。
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せ=尊敬の助動詞「す」の連用形。給ふ=尊敬の補助動詞「給ふ」の連体形。二つで最高敬語(二重敬語)となり、作者から帥宮への敬意を表す。
「同じ枝に鳴きつつをりしほととぎす声は変はらぬものと知らずや」の「つつ」「し」「や」を、それぞれ文法的に説明せよ。
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つつ=動作の並行を表す接続助詞。し=過去の助動詞「き」の連体形。や=疑問の係助詞(文末に用いられている。反語ととることもある)。
「御返り聞こえさせず」の「聞こえさせ」の敬語の種類と、敬意の方向を答えよ。
解答を見る
謙譲語。作者から帥宮へ。
C 内容
「まだ端におはしましけるに」の主語はだれか。また、作者のいない場面をこのように描いていることから、『和泉式部日記』のどのような特徴がわかるか。
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主語=帥宮。物語のように、第三者の立場から書かれているという特徴。
「『いかに。』と問はせ給ふ」とあるが、帥宮は何について尋ねているのか。
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小舎人童に託して橘の花を作者のもとへ届けさせたとき、作者の反応はどうであったか、ということ。
「同じ枝に〜」の歌について、①「同じ枝」と②「ほととぎす」は、それぞれ何をたとえているか。③この歌で帥宮が伝えたいことは何か。
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①同じ母から生まれた兄弟であること。②故宮(為尊親王)と帥宮。③兄と同じように、自分も作者を思っているということ。
「かかること、ゆめ人に言ふな。好きがましきやうなり。」を、「かかること」の内容がわかるように現代語訳せよ。また、帥宮がこのように言ったのはなぜか。
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訳=(亡き兄宮の恋人だった作者と歌をやりとりした)このようなことを、決して人に言うな。好色めいているように見える(から)。理由=兄の恋人と歌をやりとりしたと知られると、自分が好色な人と思われるから。
作者が帥宮の手紙を受け取ってもすぐに返事をしなかったのは、なぜか。
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歌をおもしろいとは思ったが、いつも返事をするのはどうかと思ったから。