『和泉式部日記』夢よりもはかなき世の中を・薫る香に① 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 作者の嘆きと初夏の景色
  4. 小舎人童の訪れ
  5. 童の言葉
  6. 作者の返事
  7. テスト予想問題

『和泉式部日記(いずみしきぶにっき)』「夢よりもはかなき世の中を」①の現代語訳・品詞分解・解説です。教科書によっては「薫る香に」の題でも載っています。

亡き恋人の為尊親王(ためたかしんのう)を思って嘆き暮らす作者のもとへ、親王に仕えていた小舎人童(こどねりわらわ)が訪ねてくる場面です。「世の中」の意味、「遠ざかる昔の名残」の指すもの、童の言葉に出てくる敬語(だれからだれへ)がよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

作者の嘆きと初夏の景色

原文
夢より格助比較も係助強意はかなきク連体世の中を格助対象、嘆きわびバ上二連用つつ接助継続明かし暮らすサ四連体ほどに格助時間、四月うづき十余日に格助結果も係助強意なりラ四連用ぬれ完了已然ば接助順接確定、木の格助体修下暗がりラ四連用もてゆくカ四終止。

現代語訳(作者は)夢よりもはかなかった(亡き宮様との)男女の仲を、嘆き悲しんで日々を過ごすうちに、四月も十日過ぎになったので、木の下はだんだんと暗くなっていく。

世の中
男女の仲。ここでは作者と為尊親王との恋愛関係をいう。
もてゆく
だんだん…になってゆく。
解説

作者和泉式部の恋人であった為尊親王が、前年の六月に亡くなっている。作者はその悲しみから抜け出せずにいる。

「夢よりもはかなき世の中」には、恋があっけなく終わってしまったむなしさと深い悲しみがこもる。

旧暦の四〜六月は夏で、ここは初夏。草木が茂り、木の下は次第に暗くなる。勢いよく茂る自然と、亡くなった親王の命のはかなさが対照をなしている。

原文
築土ついひぢの格助体修上の格助体修草青やかなるナリ連体も係助並列、人は係助区別ことに副目も係助強意とどめマ下二未然ぬ打消連体を接助逆接確定、あはれナリ語幹と格助引用眺むるマ下二連体ほどに格助時間、

現代語訳築地の上の草が青々としているのも、世の人はとりわけ目を留めないけれど、しみじみともの思いにふけって眺めているうちに、

眺む
(もの思いに沈んで)ぼんやりと見る。
ことに
特に。とりわけ。
解説

「あはれと眺むる」のは、亡くなった為尊親王をしのび、しみじみと思いに沈んでいるありさま。生き生きとした草と、もう会えない親王とが対照的に映っている。

小舎人童の訪れ

原文
近きク連体透垣すいがいの格助体修もとに格助場所人の格助主格けはひすれサ変已然ば接助順接確定、誰代名なら断定未然む推量連体と格助引用思ふハ四連体ほどに格助時間、故宮こみやに格助対象候ひハ四連用謙→故宮し過去連体小舎人童こどねりわらはなり断定連用けり詠嘆終止。

現代語訳近くの透垣のあたりに人の気配がするので、誰だろうと思っていると、亡き宮様にお仕えしていた小舎人童なのであった。

透垣(すいがい)
板や竹を間をあけて並べた垣根。向こうが透けて見える。
故宮(こみや)
亡くなった為尊親王。
候ふ
お仕えする(謙譲語)。
小舎人童(こどねりわらは)
貴人に仕えて雑用をする少年。
解説

※「候ふ」には丁寧語の用法もあるが、ここでは謙譲語。

原文
あはれにナリ連用ものの格助主格おぼゆるヤ下二連体ほどに格助時間来きカ変連用たれ完了已然ば接助順接確定、「など副か係助疑問久しくシク連用見えヤ下二未然ざり打消連用つる完了連体。遠ざかるラ四連体昔の格助体修名残なごりに格助資格も係助強意思ふハ四連体を間助詠嘆。」など副助引用言はハ四未然すれ使役已然ば接助順接確定、

現代語訳ふとしみじみともの思いにふけっていたところへ(童が)やって来たので、「どうして長いこと顔を見せなかったのか。遠ざかってゆく昔をしのぶよすがとも思っているのに。」などと(侍女に)言わせると、

などか
どうして…か。疑問を表す。
名残
あとに残る面影。思い出のよすが。
言はすれば
「すれ」は使役「す」の已然形。作者はじかに話さず、侍女に言わせている。
解説

「あはれにもののおぼゆるほど」は、亡き宮をしのんで、しみじみと悲しく思われるときをいう。

「遠ざかる昔の名残」は小舎人童をさす。為尊親王の死から時がたち、思い出が日ごとに遠のいていく中で、童は親王を思い出させてくれるよすがとなっている。

「などか久しく見えざりつる」には、童が来たことをうれしく思い、なぜもっと早く来なかったのかという作者の気持ちがこもる。

※貴人が言伝てや手紙を従者にさせるのはふつうのことで、ここのようにわざわざ使役で表すことはあまりない。

童の言葉

原文
「そ代名の格助体修ことと格助引用候はハ四未然丁→作者で接助打消は係助区別、なれなれしきシク連体さまに断定連用や係助疑問と格助引用、つつましうシク連用・音候ふ補・ハ四連体丁→作者うちに格助時間、日ごろは係助区別山寺やまでらに格助場所まかり歩きカ四連用謙→作者て接助単純接続なむ係助強意。

現代語訳「これといった用事がなくては、なれなれしいのではないかと、遠慮しておりますうちに、近ごろは山寺に出歩いておりまして(ご無沙汰してしまいました)。

そのことと候はでは
これといった用事がございませんと。
つつまし
遠慮される、気が引ける。
日ごろ
ここ数日、このごろ。
なれなれしきさまにや
下に「候はむ」などが省略されている。
まかり歩きてなむ
「なむ」は強意の係助詞で、下に「候ふ」などの結びが省略されている。
解説

「つつましう候ふうちに」は、小舎人童が作者を訪ねるのを遠慮している様子。

ここでの「まかる」は、謙譲語Ⅱ(丁重語)と呼ばれる用法で、「行く」を丁寧に言ったもの。敬意は聞き手である作者(和泉式部)に向く。呼び方・説明は教科書によって異なる。

原文
いと副たよりなくク連用、つれづれにナリ連用思ひハ四連用給う補・ハ下二未然・音謙→作者らるれ自発已然ば接助順接確定、御代はりに格助資格も係助強意見マ上一連用奉ら補・ラ四未然謙→帥宮む意志終止と格助引用て接助単純接続なむ係助強意、帥宮そちのみやに格助対象参りラ四連用謙→帥宮て接助単純接続候ふ補・ハ四連体丁→作者。」と格助引用語るラ四終止。

現代語訳(宮様の死後は)たいそう頼るあてもなく、所在なく思われてなりませんので、(亡き宮様の)お身代わりとしてもお世話申し上げようと、帥宮様のもとに参上してお仕えしております。」と語る。

たよりなし
頼りにするものがない。ここでは、主人(為尊親王)を亡くして生活の支えを失ったことをいう。
つれづれなり
手持ちぶさたで暇だ、所在ない。
見奉る
ここでは、お世話申し上げる、お仕えする。
帥宮(そちのみや)
敦道親王。為尊親王の弟。
解説

「御代はり」は故宮(為尊親王)の代わり。童は、亡き兄宮の代わりとして、弟の帥宮に仕えている。

「参りて候ふ」の「参る」は、小舎人童が帥宮のもとへ行くこと。

思ひ給うらるれば…「給う」は、ハ行下二段「給ふ」の未然形「給へ」がウ音便になった形。

下二段の「給ふ」は謙譲語で、「〜ております・〜させていただく」の意になる。敬意は聞き手(ここでは作者)に向く。

※最後の「候ふ」は謙譲語(お仕えする)で、帥宮への敬意ととることもある。

作者の返事

原文
「いと副よきク連体ことに断定連用こそ係助強意あラ変連体・音なれ推定已然。

現代語訳「たいへんよいことのようですね。

あなれ
ラ変動詞「あり」の連体形「ある」が撥音便で「あん」となり、その「ん」を書かない形が「あ」。「あるなれ」→「あんなれ」→「あなれ」。
解説

「いとよきこと」は、小舎人童が帥宮に仕えるようになったことをさす。作者はこれに「よいことのようだ」と応じ、続けて帥宮の評判を口にする(②)。

続き:『和泉式部日記』夢よりもはかなき世の中を・薫る香に②

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①築土
    ②透垣
    ③故宮
    ④小舎人童
    ⑤帥宮
    ⑥四月

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    ①ついひじ
    ②すいがい
    ③こみや
    ④こどねりわらわ
    ⑤そちのみや
    ⑥うづき

  2. 次の語句の意味を答えよ。
    ①世の中(ここでは)
    ②眺む
    ③もてゆく
    ④つつまし
    ⑤つれづれなり
    ⑥名残

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    ①男女の仲
    ②もの思いにふけりながらぼんやり見る
    ③だんだん…になってゆく
    ④遠慮される・気が引ける
    ⑤手持ちぶさたで暇だ・所在ない
    ⑥あとに残る面影・思い出のよすが

B 文法・敬語

  1. 「四月十余日にもなりぬれば」の「ぬれ」と、「小舎人童なりけり」の「なり」「けり」を、それぞれ文法的に説明せよ。

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    ぬれ=完了の助動詞「ぬ」の已然形。なり=断定の助動詞「なり」の連用形。けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形(小舎人童だと気づいた驚きを表す)。

  2. 「など言はすれば」の「すれ」を文法的に説明せよ。また、だれがだれに言わせたのか。

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    すれ=使役の助動詞「す」の已然形。作者(和泉式部)が、取り次ぎの侍女(従者)に言わせた。

  3. 傍線部の敬語について、種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。
    ①故宮に【候ひ】し小舎人童
    ②つつましう【候ふ】うちに
    ③見【奉ら】むとて
    ④思ひ【給う】らるれば

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    ①謙譲語。作者から故宮へ
    ②丁寧語(補助動詞)。小舎人童から作者へ
    ③謙譲の補助動詞。小舎人童から帥宮へ
    ④謙譲の補助動詞(下二段活用の「給ふ」)。小舎人童から作者へ

  4. 「いとよきことにこそあなれ」について、①「あなれ」をもとの形に直せ。②「なれ」を文法的に説明せよ(「こそ」との関係にも触れること)。

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    ①あるなれ(「ある」の撥音便「あん」の「ん」が表記されない形)。②推定の助動詞「なり」の已然形。係助詞「こそ」の結び。

C 内容

  1. 「夢よりもはかなき世の中を、嘆きわびつつ」について、①「世の中」は何をさすか。②作者が嘆き暮らしているのはなぜか。

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    ①作者と為尊親王との男女の仲(恋)。②恋人だった為尊親王が前年の六月に亡くなり、その悲しみから抜け出せずにいるから。

  2. 「あはれと眺むる」とあるが、作者はどのようなことを思ってもの思いにふけっているのか。直前の自然のようすと対比して説明せよ。

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    生い茂る初夏の木や草とは対照的に、もう会えない亡き為尊親王のことを思い出している。

  3. 「遠ざかる昔の名残」とは何をさすか。また、「などか久しく見えざりつる」にはどのような気持ちが表れているか。

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    名残=故宮(為尊親王)に仕えていた小舎人童(亡き親王をしのぶよすがとなる存在)。気持ち=童が来てくれたことをうれしく思い、もっと早く来てほしかったという気持ち。

  4. ①「つつましう候ふうちに」は、だれのどのような様子か。②「御代はり」とはだれの代わりか。③小舎人童は、どこへ参って仕えているか。

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    ①小舎人童が、作者を訪ねるのを遠慮している様子。②故宮(為尊親王)の代わり。③帥宮(敦道親王)のもと。