『土佐日記』門出・馬のはなむけ② 現代語訳・品詞分解・助動詞・和歌・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 二十三日 八木のやすのり
  4. 二十四日 講師
  5. 二十五日 新国守の館へ
  6. 二十六日 新国守との和歌の贈答
  7. テスト予想問題

『土佐日記(とさにっき)』「門出・馬のはなむけ②」の現代語訳・品詞分解・助動詞・和歌・解説です。

八木のやすのりや講師による餞別、新任の国守との宴、和歌の贈答までを扱います。「ざなり」「たなり」の成り立ちや、「ます」の敬意、二首の和歌が主な出題点です。

→『土佐日記』門出・馬のはなむけ①はこちら

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。

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現代語訳・品詞分解・解説

二十三日 八木のやすのり

原文
二十三日にじゅうさんにち。八木やぎのやすのりと格助引用いふハ四連体人ありラ変終止。こ代名の格助体修人、国に格助場所必ず副しも副助強意言ひ使ふハ四連体者に断定連用も係助強意あら補・ラ変未然ざ打消連体・音なり伝聞終止。

現代語訳二十三日。八木のやすのりという人がいる。この人は、国司の役所で特に召し使っている者でもないそうだ。

言ひ使ふ
命じて使う、召し使う。
解説

ざ なり=ざんなり←ざるなり。「ざ」は、打消の助動詞「ず」の連体形「ざる」の撥音便「ざん」の「ん」が表記されない形。「なり」は、伝聞・推定の助動詞「なり」の終止形で、ここは伝聞(〜ということだ)。

※撥音便…発音しやすいように撥音「ん」に変化したもの。

原文
これ代名ぞ係助強意、たたはしきシク連体やうに比況連用て接助単純接続馬うまのはなむけしサ変連用たる完了連体。

現代語訳この男が、立派な様子で馬のはなむけをしてくれた。

たたはし
いかめしく立派だ。
原文
守柄かみがらに断定連用や係助疑問あら補・ラ変未然む推量連体、国人くにびとの格助体修心の格助体修常つねと断定連用して接助単純接続、「今は係助区別。」とて格助内容見えヤ下二未然ざ打消連体・音なる伝聞・推定連体を接助逆接確定、心こころあるラ変連体者は係助区別、恥ぢダ上二未然ず打消連用に格助状態なむ係助強意来カ変連用ける詠嘆連体。

現代語訳国守の人柄のためだろうか、土地の人の人情の常として「今は(もう)」と言って顔を見せないそうだが、真心のある人は、はばからずにやって来た。

国守
作者・紀貫之のこと。
国人
その土地の人。
解説

普通なら、任期を終えて去っていく人はもう関係がないので、わざわざ関わらないそうだが、この八木のやすのりという人は、去っていく紀貫之に餞別をしてくれた。「国守の人柄がよいためだろうか」と、自慢する(自賛する)ようなことを書いていると考えられる。

原文
これ代名は係助提示、ものに格助拠所よりラ四連用て接助順接確定ほむるマ下二連体に断定連用しも副助強意あら補・ラ変未然ず打消終止。

現代語訳これは、贈り物によってほめているわけではない。

解説

「物によりてほむるにしもあらず」は、餞別の贈り物をもらったから(八木のやすのりを)ほめているのではない、とわざわざ断ったもの。ここに作者のユーモアを見る読み方もある。

※「しも」は強意の副助詞。

二十四日 講師

原文
二十四日にじゅうよっか。講師こうじ、馬うまのはなむけしサ変連用に格助目的出でダ下二連用ませ補・サ四已然尊→講師り完了終止。

現代語訳二十四日。講師が、馬のはなむけをしにお出ましになった。

講師
国分寺の僧侶。
〜ます
尊敬の意味を添える補助動詞。講師に対する敬意を示している。「八木のやすのり」や新国守には敬意は向けられていないが、講師に対しては敬意を向けている。
解説

※一説には、この後の新国守の招待を冷淡に扱う意図から、講師に対して丁寧な表現をしたとも考えられる。

原文
ありラ変連用と格助強調あるラ変連体上かみ・下しも、童わらはまで副助限界酔ひしれラ下二連用て接助単純接続、一文字いちもんじを格助対象だに副助類推知らラ四未然ぬ打消連体者、し代名が格助体修足あしは係助区別十文字じゅうもんじに格助状態踏みマ四連用て接助単純接続ぞ係助強意遊ぶバ四連体。

現代語訳そこにいる上の者も下の者も、子供まですっかり酔いしれて、「一」の字さえ知らない者が、その足は「十」の字に踏んで遊ぶ。

ありとある
そこにいるすべての。
だに
副助詞:①〜さえ(類推) ②せめて〜だけでも(最小限の希望)。ここでは①。
解説

「一」という文字さえ知らない者が、酒に酔ってふらふらし、足では「十」という文字を書いている。「一」さえ知らないなら「十」は当然知らないはずなのに、足では十文字になっているところがおもしろい。

※「しが足」の「し」の解釈には諸説ある。ここでは代名詞「それ・その」として訳してある。

二十五日 新国守の館へ

原文
二十五日にじゅうごにち。守かみの格助体修館たちより格助起点、呼びバ四連用に格助目的文ふみ持てタ四連用来カ変連用た完了連体・音なり伝聞・推定終止。呼ばバ四未然れ受身連用て接助単純接続至りラ四連用て接助単純接続、日一日ひとひ、夜一夜ひとよ、とかく副遊ぶバ四連体やうに比況連用て接助単純接続明けカ下二連用に完了連用けり過去終止。

現代語訳二十五日。新しい国守の官舎から、呼ぶために手紙を持ってきたそうだ。呼ばれて行って、一日中、一晩中、あれこれと遊びのようなことをして、夜が明けてしまった。

「呼ばれて」という受身表現に、招待を積極的には喜んでいないような調子が感じられる。
日一日、夜一夜
一日中、一晩中。
解説

たなり=たんなり←たるなり。「た」は完了の助動詞「たり」の連体形「たる」の撥音便「たん」の「ん」が表記されない形。その後ろの「なり」は伝聞・推定の助動詞。

二十六日 新国守との和歌の贈答

原文
二十六日にじゅうろくにち。なほ副守かみの格助体修館たちにて格助場所、饗応あるじしサ変連用、ののしりラ四連用て接助単純接続、郎等ろうどうまで副助限界に格助対象物ものかづけカ下二連用たり完了終止。

現代語訳二十六日。引き続き新しい国守の官舎で、国守はもてなしをし、大騒ぎして、従者にまで物を与えた。

なほ
やはり、依然として。
饗応す
もてなしをする。
かづく
ここは下二段活用動詞「かづく」で「与える」という意味。
解説

※四段活用動詞「かづく」は「いただく」という意味。

原文
唐詩からうた、声こゑあげガ下二連用て接助単純接続言ひハ四連用けり過去終止。和歌やまとうた、主あるじも係助並列客人まらうども係助並列、こと人ひとも係助並列言ひ合へハ四已然り存続連用けり過去終止。唐詩からうたは係助区別これ代名に格助場所え副書かカ四未然ず打消終止。

現代語訳漢詩を、声を上げて口ずさんだ。和歌は、主人も客も、ほかの人もよみ合っていた。漢詩はここには書くことができない。

え〜ず
〜できない。
解説

作者は女性の従者という設定。女性は漢文を書かないという設定なので、「唐詩はこれにえ書かず」と書いている。

原文
和歌やまとうた、主あるじの格助同格守かみの格助主格よめマ四已然り完了連用ける過去連体、都みやこ出でダ下二連用て接助単純接続君に格助対象会はハ四未然む意志終止と格助引用来しものを接助逆接確定来しかひも係助強意なくク連用別れラ下二連用ぬる完了連体かな終助詠嘆

現代語訳和歌は、主人である国守がよんだ歌、都を出て、あなたに会おうと思ってやって来たのに、来たかいもなく、別れてしまうことだなあ。

ものを
逆接の確定条件の接続助詞。〜のに、〜のになあ。
来しかひ
来たかい。
解説

※過去の助動詞「き」は、カ変「来」・サ変「す」の未然形「こ」「せ」に付くことがある。「来し」はその例。

新国守は、「紀貫之に会うために都から来たのに、会ったと思ったらもう別れなければならない」と惜別の気持ちを詠んでいる。

原文
と格助引用なむ係助強意ありラ変連用けれ過去已然ば接助順接確定、帰るラ四連体前の格助体修守の格助主格よめマ四已然り完了連用ける過去連体、白妙の波路なみぢを格助経過点遠くク連用行き交ひハ四連用て接助単純接続我代名に格助対象似ナ上一終止べき当然連体は係助区別たれ代名なら断定未然な打消未然くに終助詠嘆

現代語訳とよんだので、帰る前の国守がよんだ歌、白く波の立つ海路を遠くから行き違い、私に似るはずの人は、ほかならぬあなたであることだなあ。

「白妙の」が「波」を導く枕詞。
〜なくに
〜ないことだなあ、〜ないのに。
解説

※枕詞とは、和歌で特定の語を導く決まり文句のような表現。「白妙の」は「波」などを導く。

※「な」は打消「ず」の未然形の古い形。「く」は名詞化する接尾語。「に」は詠嘆の助詞。

新国守の歌に対して、紀貫之も「あなたこそ私に似た立場になる人だ」と返している。国守として土佐へ来た者と、任期を終えて帰る者という関係を踏まえた贈答歌になっている。

『土佐日記』のほかの場面:阿倍仲麻呂の歌 / 白波 / 亡児

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①守柄
    ②講師
    ③主
    ④客人
    ⑤唐詩
    ⑥白妙

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    ①かみがら
    ②こうじ
    ③あるじ
    ④まろうど
    ⑤からうた
    ⑥しろたえ

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①なほ
    ②饗応す
    ③かづく(下二段)
    ④え〜ず
    ⑤〜なくに

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    ①やはり・依然として
    ②もてなしをする
    ③与える
    ④〜できない
    ⑤〜ないことだなあ・〜ないのに

B 文法・敬語

  1. 「あらざなり」の「ざ」と「なり」を、それぞれ文法的に説明せよ。

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    「ざ」=打消の助動詞「ず」の連体形「ざる」が撥音便「ざん」となり、その「ん」が表記されない形。「なり」=伝聞・推定の助動詞「なり」の終止形で、ここは伝聞の意味。

  2. 「呼びに文持て来たなり」の「たなり」は、どのようにしてできた形か。

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    「たるなり」→「たんなり」→「たなり」。「た」は完了の助動詞「たり」の連体形「たる」の撥音便の無表記で、「なり」は伝聞・推定。

  3. 「講師、馬のはなむけしに出でませり」の「ます」は何を表すか。また、誰への敬意か。

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    尊敬。講師への敬意。

C 現代語訳・内容

  1. 「守柄にやあらむ」を現代語訳せよ。また、作者は八木のやすのりをどのような人物だと評価しているか。

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    国守の人柄がよいためであろうか。去っていく国守とは関わらなくなるのが普通なのに、周囲の目を気にせず餞別に来てくれた、真心のある人物だと評価している。

  2. 「一文字をだに知らぬ者、しが足は十文字に踏みてぞ遊ぶ」のおもしろさを説明せよ。また、「だに」の意味を答えよ。

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    「一」という文字さえ知らない者が、酔ってふらふらし、足では「十」という文字の形を作っているところがおもしろい。「だに」は類推(〜さえ)。

  3. 「唐詩はこれにえ書かず」の「え〜ず」の意味と、作者が唐詩を書かない理由を答えよ。

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    「え〜ず」=〜できない。作者は女性の従者という設定で書いており、女性は漢文を書かないという設定だから。

  4. 「都出でて君に会はむと来しものを来しかひもなく別れぬるかな」について、①現代語訳せよ。②詠んだのは誰か。また、どのような心情か。

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    ①都を出て、あなたに会おうと思って来たのに、来たかいもなく別れてしまうことだなあ。②新任の国守。紀貫之に会うために土佐へ来たのに、会ったと思ったらすぐ別れなければならないという惜別の気持ち。

  5. 「白妙の波路を遠く行き交ひて我に似べきはたれならなくに」の「白妙の」は何か。また、この歌を詠んだのは誰か。

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    「白妙の」は「波」を導く枕詞。歌を詠んだのは前国守である紀貫之。