『大鏡』花山天皇の出家① 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 花山天皇の即位と出家
  4. 退位の夜、宮中を出る
  5. テスト予想問題

『大鏡(おおかがみ)』「花山天皇の出家」①の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。

花山天皇が人にも知らせず宮中を抜け出し、花山寺で出家してしまった事件を、語り手の大宅世継(おおやけのよつぎ)が語る場面です。前半では、月の明るさに出家をためらう天皇を、粟田殿(藤原道兼)が「もう宮中には戻れません」とせきたてます。敬語の向き、「さり」の指す内容、粟田殿の策略などがよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

花山天皇の即位と出家

原文
次の格助体修帝、花山院天皇と格助引用申しサ四連用謙→花山天皇き過去終止。

現代語訳次の帝は、花山院の天皇と申し上げた。

申す
「言ふ」の謙譲語。ここでは語り手から花山天皇への敬意。
解説

「次の帝」は、第六十四代円融天皇の次の天皇。

原文
永観二年八月二十八日、位に格助対象つかカ四未然せ尊敬連用給ふ補・ハ四終止尊→花山天皇。

現代語訳(花山天皇は)永観二年八月二十八日に、帝の位にお就きになった。

位につく
帝の位に就く。即位する。
解説

「せ給ふ」は、尊敬の助動詞「す」に尊敬の補助動詞「給ふ」がついた最高敬語(二重敬語)。ここの「せ」は使役ではなく尊敬。

原文
御年十七。寛和二年丙戌六月二十二日の格助体修夜、あさましくシク連用候ひ補・ハ四連用丁→聞き手し過去連体ことは係助区別、

現代語訳御年十七歳。寛和二年丙戌の六月二十二日の夜、意外で驚きあきれましたことは、

あさまし
驚きあきれる。意外だ。
候ふ
ここでは補助動詞で、丁寧の意。語り手が聞き手に敬意を表す。
原文

現代語訳(花山天皇は)誰にもお知らせにならずに、ひそかに花山寺にいらっしゃって、ご出家・入道なさってしまったことです。

みそかなり
こっそりとする、ひそかだ。
出家入道
髪をそって俗世を離れ、仏門に入ること。身分や財産、人とのつながりも手放す。とくに身分の高い人の出家は「入道」とも呼ぶ。
解説

※実際は、出家した後も世の中への影響力を保つ人がいた。

「あさましく候ひしこと」とは、花山天皇が人にも知らせず、ひそかに花山寺へ行って出家してしまったこと。これに対する、語り手の意外で驚きあきれた思いを表している。

「知らせさせ給はで」の「せ」は使役、「させ」は尊敬の助動詞。

「御出家入道せさせ給へりしこそ」の「こそ」の結びは省略されている(倒置法)。

原文
御年十九。世を格助対象保たタ四未然せ尊敬連用給ふ補・ハ四連体尊→花山天皇こと二年。そ代名の格助体修後二十二年おはしましサ四連用尊→花山天皇き過去終止。

現代語訳(花山天皇は)御年十九歳。世をお治めになったのは二年。その後、二十二年ご存命でいらっしゃった。

世を保つ
天皇として世を治める。
おはします
「あり」「行く」「来」の尊敬語。ここでは「あり(生きている)」の尊敬語。
解説

「世を保たせ給ふこと二年」は、天皇の位にあったのが二年間ということ。「その後二十二年おはしましき」は、出家してからも二十二年間、存命でいらっしゃったということ。

退位の夜、宮中を出る

現代語訳しみじみと心痛む思いがすることは、ご退位なさった夜、藤壺の上の御局の小戸からお出になったところ、

あはれなり
しみじみと心が痛む。
おる
位を退く。退位する。
解説

※藤壺の上の御局…清涼殿(天皇がふだん過ごす御殿)の北にある部屋。

「あはれなる」は、語り手の心情を表している。

「おりおはしましける」の「おはしまし」は、「…ていらっしゃる」の意の尊敬の補助動詞。前の「おはしましき」(いらっしゃった)は本動詞なので、違いに注意。

原文
有明の月の格助主格いみじくシク連用明かかりク連用けれ過去已然ば接助順接確定、「顕証けんしょうにナリ連用こそ係助強意ありラ変連用けれ詠嘆已然。いかが副すサ変終止べから適当未然む推量連体。」と格助引用仰せサ下二未然尊→花山天皇られ尊敬連用ける過去連体を接助単純接続、

現代語訳有明の月がたいそう明るかったので、「あらわになってしまうなあ。どうしたらよかろうか。」とおっしゃったのを、

有明の月
夜が明けても空に残っている月。陰暦で月の後半(十六日以降)の月。
顕証なり
あらわだ。人目につく。
解説

※「仰せらる」を「仰す+らる」とせずに、一語ととることもある。

「顕証にこそありけれ」は、月が明るいので、こっそり宮中を抜け出すには都合が悪いと、花山天皇がためらっている言葉。「いかがすべからむ」も、出家をためらう気持ちの表れ。「こそ」の結びは「けれ」。

有明の月が出ているのは夜遅くから夜明けごろ。花山天皇が宮中を出たのは、人目のない深夜と考えられる。

現代語訳「そうかといって、おやめになることのできるわけはございません。神璽・宝剣が(春宮の方へ)お渡りになってしまいましたからには。」

さりとて
そうかといって。
とまらす
おやめになる。ここでは、出家(宮中を出ること)をおやめになること。
神璽・宝剣
皇位継承のしるしである三種の神器のうちの二つ。あと一つは八咫鏡(やたのかがみ)。
侍り
ここでは「あり」の丁寧語。粟田殿から花山天皇への敬意。
解説

「さり」の指す内容は、月が明るくあらわだ、ということ。「月が明るくあらわだからといって」の意。

「神璽・宝剣渡り給ひぬるには」は倒置で、「とまらせ給ふべきやう侍らず」に続く。神器が春宮の手に移った以上、天皇はもう退位したことになり、宮中には戻れないと、粟田殿が説得している。

※渡り給ひぬるには…実際は粟田殿が自分の手で渡したのに、成り行きで自然に渡ったかのように語っている。「給ひ」の敬意の対象は「神璽・宝剣」。ただ神璽・宝剣は天皇の証であるから、天皇ととることもある。

原文
と格助引用、粟田殿あわたどのの格助主格さわがしサ四連用申し補・サ四連用謙→花山天皇給ひ補・ハ四連用尊→粟田殿ける過去連体は係助区別、

現代語訳と、粟田殿がせきたて申し上げなさったのは、

騒がす
せきたてる。
解説

「申し」は語り手から花山天皇への敬意(謙譲の補助動詞)、「給ひ」は語り手から粟田殿への敬意(尊敬の補助動詞)。一つの動作について、別々の相手への敬意を表す二方面敬語である。

粟田殿は、天皇をあわただしく促して、少しでも早く宮中から出させようとした。そうした訳は、粟田殿が神璽・宝剣をすでに春宮へ渡していたため(次の文)。

原文
まだ副帝出でダ下二未然させ尊敬連用おはしまさ補・サ四未然尊→花山天皇ざり打消連用ける過去連体先に格助時間、手づから副取りラ四連用て接助単純接続、春宮とうぐうの格助体修御方に格助場所渡しサ四連用奉り補・ラ四連用謙→春宮給ひ補・ハ四連用尊→粟田殿て完了連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(粟田殿は)まだ帝が宮中をお出ましにならない先に、自分の手で(神璽・宝剣を)取って、春宮のもとにお渡し申し上げなさってしまったので、

手づから
自ら。自分の手で。
春宮
皇太子。ここではのちの一条天皇のこと。兼家の娘詮子の子で、粟田殿の甥にあたる。
奉る
「与ふ」の謙譲語で、「差し上げる」の意。補助動詞や尊敬語(お召しになる)として使うこともある。
解説

「手づから取りて」「渡し奉り給ひてければ」の主語は粟田殿。

※同じ完了でも、「つ」は人の意図的な動作に、「ぬ」は自然に起こる事態に使われやすい。前の「渡り給ひぬる」は自然の成り行きのように言い、ここの「渡し奉り給ひてければ」は粟田殿が自分でしたことを述べている。

現代語訳(帝が宮中に)お帰りになるようなことはあってはならないとお思いになって、このように申し上げなさったのだということだ。

思す
「思ふ」の尊敬語。ここでは語り手から粟田殿への敬意。
とぞ
「とぞ言ふ(~ということだ)」などの略。
解説

「しか」は、「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣渡り給ひぬるには。」を指す。

「あるまじく」には、天皇が宮中にお戻りになることなど決してあってはならない、という粟田殿の強い思いが出ている。

粟田殿は、どんな手を使ってでも花山天皇を出家させるつもりである。

※申させ給ひける…「せ(す)」は尊敬ととったが、「申す」に添えて謙譲を強める用法とみる説もある。

続き:『大鏡』花山天皇の出家②

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①御局
    ②有明
    ③顕証
    ④神璽
    ⑤宝剣
    ⑥春宮
    ⑦出家

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    ①みつぼね
    ②ありあけ
    ③けんしょう
    ④しんじ
    ⑤ほうけん
    ⑥とうぐう
    ⑦しゅっけ

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①あさまし
    ②みそかなり
    ③顕証なり
    ④世を保つ
    ⑤騒がす
    ⑥手づから

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    ①驚きあきれるほどだ・意外だ
    ②ひそかだ・こっそりとしている
    ③あらわだ・人目につく
    ④天皇として世を治める
    ⑤せきたてる
    ⑥自分の手で・自ら

B 文法・敬語

  1. 「御出家入道せさせ給へりしこそ」の「させ」「給へ」「り」「し」について、それぞれ意味(種類)と活用形を答えよ。また、「こそ」の結びはどうなっているか。

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    させ=尊敬の助動詞「さす」の連用形。給へ=尊敬の補助動詞「給ふ」の已然形。り=完了の助動詞「り」の連用形。し=過去の助動詞「き」の連体形。「こそ」の結びの語は省略されている(倒置法)。

  2. 「あさましく候ひしことは」の「候ひ」は、何語で、誰から誰への敬意を表すか。また、「あさまし」には語り手のどのような思いが込められているか。

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    「候ひ」は丁寧語(補助動詞)で、語り手(大宅世継)から聞き手への敬意。「あさまし」は、花山天皇が人にも知らせず、ひそかに出家してしまったことへの、意外で驚きあきれた思い。

  3. 「その後二十二年おはしましき」と「おりおはしましける夜は」の「おはしまし」は、それぞれ本動詞か補助動詞か。意味もあわせて答えよ。

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    前者は本動詞で、「いらっしゃった(存命でいらっしゃった)」の意。後者は尊敬の補助動詞で、「…ていらっしゃる」の意(「おり」とあわせて、退位なさった)。

  4. 「粟田殿のさわがし申し給ひける」について、①粟田殿は何を「騒がし」たのか。②そうした理由は何か。③「申し」「給ひ」は、それぞれ誰への敬意を表すか。

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    ①天皇を急がせて、早く宮中から出そうとした。②粟田殿が神璽・宝剣をすでに春宮のもとへ渡してしまっていたから。③「申し」は花山天皇への、「給ひ」は粟田殿への敬意(語り手から)。

C 現代語訳・内容

  1. 「顕証にこそありけれ。いかがすべからむ。」を現代語訳せよ。また、この言葉には花山天皇のどのような気持ちが表れているか。

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    (月が明るくて)あらわだなあ。どうしたらよいだろうか。/月明かりで姿が人目についてしまうので、宮中を抜け出して出家することをためらう気持ち。

  2. 「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣渡り給ひぬるには。」を、「さり」の指す内容を明らかにして現代語訳せよ。

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    月が明るくて姿が見えてしまうからといって、おやめになるわけにはまいりません。神璽・宝剣が(春宮のもとへ)渡ってしまいましたのですから。

  3. 「しか申させ給ひける」の「しか」は何を指すか。また、粟田殿はどのような気持ちからそのように言ったのか。

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    「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣渡り給ひぬるには。」を指す。天皇が宮中へ戻るなど決してあってはならないと考え、何としても出家させようとする気持ち。

  4. 「まだ帝出でさせおはしまさざりける先に、手づから取りて、春宮の御方に渡し奉り給ひてければ」を、主語と「取りて」の目的語を補って現代語訳せよ。

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    まだ帝が(宮中を)お出になる前に、(粟田殿が)自分の手で(神璽・宝剣を)取って、春宮(皇太子)のもとにお渡し申し上げなさってしまっていたので、