『更級日記』あこがれ・門出 あづまぢの道のはてよりも 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 物語への憧れ
  4. 薬師仏への祈り
  5. 上京の旅立ち
  6. テスト予想問題

『更級日記(さらしなにっき)』冒頭「あこがれ・門出」の現代語訳・品詞分解・解説です。

上総国(かずさのくに)で育った少女(作者)が、都にあるという物語に憧れ、薬師仏に祈り続けたすえ、十三歳で上京の旅に出るまでを描く場面です。「あんなる」の文法、「いかでか」の用法、薬師仏に対する敬語の向きが問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

物語への憧れ

原文
あづまぢの格助体修道の格助体修はてより格助比較も係助強意、なほ副奥つかたに格助場所生ひ出でダ下二連用たる完了連体人、

現代語訳東国へ向かう道のはてよりも、さらに奥のほう(上総国)で育った人(私)は、

あづまぢの道
東海道。都から東国へ向かう道。
なほ
さらに。
奥つかた
奥のほう。ここは常陸国よりさらに奥の上総国(今の千葉県中央部)をさす。
解説

「生ひ出でたる人」は作者自身のことで、自分を「人」と第三者のように言っている。

※上総国は、作者の父・菅原孝標が国司(上総介)として赴任した土地。作者は少女時代をそこで過ごした。

原文
いかばかり副かは係助疑問あやしかりシク連用けむ過去推量連体を接助逆接確定、いかに副思ひはじめマ下二連用ける過去連体ことに断定連用か係助疑問、

現代語訳どんなにか田舎じみていただろうに、どういうことで思い始めたのであろうか、

いかばかり
どれほど。どんなに。
あやし
ここは身分が低く、粗末だ・田舎じみているの意。
いかに
どうして。どういうわけで。
かは
疑問の係助詞「か」+係助詞「は」。結びは連体形の「けむ」。
思ひはじむ
思い始める。「はじむ」は、〜し始めるの意の補助的な動詞。
解説

「ことにか」の下には、「あらむ」などが省略されている(「〜であったのだろうか」)。「に」は断定の助動詞「なり」の連用形、「か」は疑問の係助詞。

※都から遠い田舎で育った自分は、どんなに田舎じみていただろうかと振り返っている。

原文
「世の中に格助場所物語と格助引用いふハ四連体ものの格助主格あんラ変連体・音なる伝聞連体を格助対象、いかで副見マ上一未然ばや終助願望。」と格助引用思ひハ四連用つつ接助継続、

現代語訳「世の中に物語というものがあるそうだが、それを何とかして見たい。」と思い続けながら、

あんなる
「あるなる」の「ある」が撥音便になって「あん」となったもの。「ある」はラ変動詞「あり」の連体形、「なる」は伝聞の助動詞「なり」の連体形。「あるそうな」と訳す。
いかで
何とかして。「ばや」などの願望の表現と呼応する。
ばや
自分の願望を表す終助詞。「〜したい」。未然形に付く。
つつ
ここは動作の継続を表す接続助詞で、「〜し続けながら」。
解説

「もの」の下の「の」は主格の格助詞で、「物語というものが(あるそうだ)」。

「と思ひつつ」の主語は作者。

原文
つれづれなるナリ連体昼間、宵居よいいなど副助例示に格助時間、姉・継母ままははなど副助例示やうの格助体修人々の格助主格、

現代語訳することもなく退屈な昼間や、夜遅くまで起きている時などに、姉や継母などといった人々が、

つれづれなり
することがなくて退屈だ。
宵居(よいい)
夜遅くまで起きていること。
継母(ままはは)
血のつながらない母。
やう
ここは「〜のような」の意の名詞。「姉・継母などやうの人々」は「姉や継母などといった人々」。
原文
そ代名の格助体修物語、か代名の格助体修物語、光源氏の格助体修あるやうなど副助例示、ところどころ語るラ四連体を格助対象聞くカ四連体に接助順接確定、

現代語訳その物語、あの物語、光源氏のありさまなどを、ところどころ語るのを聞くと、

かの
あの。
あるやう
ありさま。様子。
ところどころ
物語の記憶のあるところを断片的に、の意。
解説

「聞くに」の「に」は接続助詞で、「聞くと」。

原文
いとど副ゆかしさまされラ四已然ど接助逆接確定、わ代名が格助主格思ふハ四連体ままに格助状態、そらにナリ連用いかでか副おぼえヤ下二連用語らラ四未然む推量連体。

現代語訳ますます見たい気持ちがつのるけれども、自分の思いどおりに、どうして(姉や継母が物語を)そらで思い出して語ってくれようか、いや、語ってはくれない。

いとど
ますます。
ゆかし
見たい、知りたい。心がひかれる。「ゆかしさ」は名詞。
まさる
増す、つのる。
ままに
ここは「思いのままに」の意。
そらに
そらで。暗記して。
いかでか
反語の副詞。「どうして〜か、いや〜ない」。ここは係助詞「か」の働きで、結びの「む」は連体形になっている。
解説

あこがれがつのる様子を表している。姉や継母の語る断片的な話では満足できず、物語そのものを読みたいという思いが強まる。

薬師仏への祈り

原文
いみじくシク連用心もとなきク連体ままに格助理由、

現代語訳ひどくじれったいので、

心もとなし
じれったい。待ち遠しい。
ままに
ここは理由を表し、「〜ので」。「〜するとすぐに」「〜につれて」の意もあるので、文脈で判断する。
原文
等身に格助比較薬師仏を格助対象造りラ四連用て接助単純接続、手洗ひなど副助例示しサ変連用て接助単純接続、人まに格助時間みそかにナリ連用入りラ四連用つつ接助反復、

現代語訳(作者は)自分と同じ背丈の薬師仏を造って、手を洗い清めなどして、人のいない間にこっそりと(仏間に)入っては、

等身(とうしん)
自分の背丈と同じ高さ。
薬師仏(やくしぶつ)
病気を治すとされる仏。ここは作者が造った像。
手洗ひ
手を洗い清めること。仏に祈る前の作法。
人ま
人のいない間。
みそかなり
ひそかだ、こっそりだ。
解説

作者は物語を読みたい一心で、自分で仏像を造り、人に隠れて祈っていた。主語は作者。

原文
「京に格助場所とく副上げガ下二連用たまひ補・ハ四連用尊→薬師仏て接助単純接続、物語の格助主格多くク連用さぶらふハ四終止丁→薬師仏なる伝聞連体、あるラ変連体限り見せサ下二連用たまへ補・ハ四命令尊→薬師仏。」と格助引用、

現代語訳「どうか京に早く上らせてくださって、物語がたくさんございますとか聞いておりますが、その物語をあるだけ全部お見せください。」と、

上ぐ
ここは「(京に)上らせる」。
たまひ・たまへ
尊敬の補助動詞。作者から薬師仏への敬意を表す。「上げたまひて」は「上らせてくださって」、「見せたまへ」は「お見せください」。
さぶらふ
「あり」の丁寧語。作者から薬師仏への敬意。「ございます」。
なる
伝聞の助動詞「なり」の連体形。「〜とかいう」。
解説

「ある限り」は「あるだけ全部」。作者の願いは、京に上り、物語をあるだけ全部見ることである。

原文
身を格助対象捨てタ下二連用て接助単純接続額ぬかを格助対象つきカ四連用、祈りラ四連用申す補・サ四連体謙→薬師仏ほどに格助時間、

現代語訳身を投げ出して額を床につけ、お祈り申し上げているうちに、

身を捨つ
身を投げ出す。ここは全身を投げ出すようにして、一心に仏を拝む様子。
額をつく
額を地面(床)につけて礼拝する。
申す
ここは補助動詞(謙譲)で、「〜申し上げる」。作者から薬師仏への敬意。
解説

「祈り申す」は「祈る」の動作の受け手である薬師仏を高めている。

上京の旅立ち

原文
十三に格助時間なるラ四連体年、「のぼらラ四未然む意志終止。」と格助引用て接助単純接続、九月三日門出しサ変連用て接助単純接続、いまたちと格助引用いふハ四連体所に格助場所移るラ四終止。

現代語訳(作者の一家は)十三歳になる年、「京へ上ろう。」ということで、九月三日に門出をして、いまたちという所に移った。

のぼる
京に上る。
門出(かどで)
旅立ちのために、出発の日に住まいを出ること。ここは一時的に別の場所へ移って出発に備えること。
いまたち
地名と考えられる。出発に備えて一家が移った所。
解説

父の上総介の任期が終わり、作者の一家は九月三日に京へ向けて出発した。願いどおり、上京することになったのである。

「十三になる年」は数え年。今の満年齢では十一、二歳にあたる。

原文
年ごろ遊び慣れラ下二連用つる完了連体所を格助対象、あらはにナリ連用こぼち散らしサ四連用て接助単純接続、たち騒ぎガ四連用て接助単純接続、

現代語訳長年遊び慣れた家を、外から丸見えになるほどあちこち取りはずして散らかし、あわただしく立ち働いて、

年ごろ
長年、何年もの間。
遊び慣れつる所
遊び慣れた家。「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形。
あらはなり
むき出しだ、丸見えだ。
こぼち散らす
建具などを取りはずして、あたりに散らかす。「こぼつ」は壊す、取りこわすの意。
解説

旅立ちの準備で、家の建具などを取りはずし、あわただしく立ち働いている様子。

原文
日の格助体修入りぎはの格助同格、いと副すごくク連用霧りわたりラ四連用たる存続連体に格助時間、

現代語訳日の入りぎわで、たいそうもの寂しく霧が一面に立ちこめているところに、

日の入りぎは
日没のころ。
すごし
ぞっとするほどもの寂しい。
霧りわたる
一面に霧が立ちこめる。
解説

「日の入りぎはの、……霧りわたりたるに」の「の」は同格を表す。「日の入りぎわで、(その時)霧が一面に立ちこめていたが」の意。

原文
車に格助対象乗るラ四終止と格助引用て接助単純接続、うち見やりラ四連用たれ完了已然ば接助順接確定、

現代語訳車に乗ろうとして、(家のほうを)ふと見やると、

とて
「と思って」「ということで」などの意。ここは「乗ろうとして」。
うち見やる
ふと見やる。「うち」は動作を軽く添える接頭語。
たれ
完了の助動詞「たり」の已然形。「ば」が付いて「見やると」。

現代語訳人のいない時にはお参りしては額をついて祈った薬師仏が立っていらっしゃるのを、お見捨て申し上げて去ることが悲しくて、人知れずつい泣けてしまった。

人ま
人のいない間。
参る
ここは謙譲語で、「(仏のもとに)お参りする」。作者から薬師仏への敬意。
たまへる
尊敬の補助動詞「たまふ」(四段)の已然形に、存続の「り」の連体形が付いた形。作者から薬師仏への敬意。
見捨てたてまつる
「たてまつる」は謙譲の補助動詞。「お見捨て申し上げる」。作者から薬師仏への敬意。
うち泣かれぬ
「れ」は自発の助動詞「る」の連用形、「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形。「つい泣けてしまった」。
解説

悲しんでいるのは、自分が造り、祈り続けた薬師仏を京へ連れていけず、置き去りにすること。

続きは『更級日記』源氏の五十余巻です。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①宵居
    ②継母
    ③薬師仏
    ④額
    ⑤門出

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    ①よいい
    ②ままはは
    ③やくしぶつ
    ④ぬか
    ⑤かどで

  2. 次の語句の意味を答えよ。
    ①つれづれなり
    ②ゆかし
    ③心もとなし
    ④みそかなり
    ⑤年ごろ
    ⑥すごし

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    ①することがなくて退屈だ
    ②見たい・知りたい
    ③じれったい・待ち遠しい
    ④ひそかだ・こっそりだ
    ⑤長年・何年もの間
    ⑥ぞっとするほどもの寂しい

B 文法・敬語

  1. 「物語といふもののあんなるを」の「あん」「なる」を、それぞれ文法的に説明せよ。

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    あん=ラ変動詞「あり」の連体形「ある」の撥音便。なる=伝聞の助動詞「なり」の連体形。(あるそうだ、の意)

  2. 「いかで見ばや」を現代語訳し、「ばや」の意味を答えよ。

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    訳=何とかして見たい。ばや=自分の願望を表す終助詞(〜したい)。

  3. 「そらにいかでかおぼえ語らむ」を現代語訳せよ。

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    そらで、どうして思い出して語ってくれようか、いや、語ってくれない。(反語)

  4. 「京にとく上げたまひて、物語の多くさぶらふなる、ある限り見せたまへ」の傍線部「たまひ」「さぶらふ」「たまへ」の敬語の種類と、敬意の方向を答えよ。

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    たまひ・たまへ=尊敬の補助動詞。さぶらふ=丁寧語。いずれも作者から薬師仏への敬意。

  5. 「うち泣かれぬ」の「れ」「ぬ」を文法的に説明せよ。

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    れ=自発の助動詞「る」の連用形。ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形。(つい泣けてしまった)

C 内容

  1. 「いかに思ひはじめけることにか」の下に省略されている語句を補え。

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    あらむ(ありけむ)など。(どういうことで思い始めたのであろうか)

  2. 「日の入りぎはの、いとすごく霧りわたりたるに」の「の」の用法を答えよ。

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    同格

  3. 「見捨てたてまつる、悲しくて」とあるが、作者は何を見捨てるのが悲しかったのか。

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    自分で造り、人のいない時に参っては額をついて祈った薬師仏(を置いて京へ上ること)。