「なり」って動詞だったり、助動詞だったりわかりにくいですよね。
ここではまず二つの助動詞「なり」の識別方法をばっちり教えます
長くなるけど、頑張ってついてきてね。
二つの助動詞「なり」
まず「なり」という助動詞は二種類あります。それぞれの意味・接続・活用を確認しましょう。
①なり
意味…伝聞推定(~ようだ)
接続…終止形
活用
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
〇 | なり | なり | なる | なれ | 〇 |
この「なり」は「音あり」が縮まった形と言われています。なので、耳で聞いたことや、音から判断した、という意味があります。
伝聞…人からうわさや、情報を聞いたことを意味していて「~そうだ」「~という」などと訳します。
推定…声や音を聞いて「人が泣いているようだ」や「鳥がないているようだ」「けんかをしているようだ」などと推測することです。
②なり
意味…断定(~である)存在(~にいる)
接続…連体形、体言、助詞など
活用
未然 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
なら | なり に | なり | なる | なれ | なれ |
識別方法 どうやって見分ける?
①接続で見分ける
上に書いたように、伝聞推定「なり」は終止形接続、断定存在「なり」は連体形・体言接続です。
つまり
終止形+なり → 伝聞推定
連体形・体言+なり → 断定存在
となります。
これが一番簡単ですが、上が終止形なのか、連体形なのか判断できない場合が多いです。そんな時は以下の方法を使いましょう。
②撥音便・撥音便の無表記についたとき → 伝聞推定
結論をいってしまえば、
○「あんなり・かんなり・ざんなり・たんなり・なんなり」
○「あなり・かなり・ざなり・たなり・ななり」の「なり」は伝聞推定
以下、ちょっと細かい説明
まず終止形接続の助動詞には、ラ変型には連体形に接続する、というルールがあります。
ラ変型…ラ行変格活用動詞・打消「ず」「たり」「べし」「まじ」・形容詞
たとえば動詞「あり」と終止形接続の助動詞「べし」がくっつく場合、
「あり べし」ではなく「ある べし」と 連体形の「ある」にくっつきます。
みなさんもなんとなく「ありべし」よりも「あるべし」の方が自然な感じがすると思います。
同じように伝聞推定「なり」にもラ変型の連体形にくっつきます。
そうなると、どっちも連体形につくなら、伝聞推定「なり」と断定存在「なり」が区別できないじゃなか、となりますね。
しかし、実際は簡単に区別できます。
なぜなら ラ変型 + 伝聞推定「なり」 のときは、ほとんどの場合、ラ変型が撥音便になるからです。
撥音便とは「ん」に変化することです。
たとえば 「あり」+伝聞推定「なり」のとき
ほとんどの場合「ある なり」ではなく、「あん なり」となるのです。
他にも
形容詞型…「~かる なり」ではなく、「~かんなり」
(例 「うつくし」+「なり」→うつくしかんなり)
助動詞「ず」…「~ざる なり」ではなく、「~ざん なり」
などとなります。
断定の助動詞「なり」+伝聞推定の助動詞「なり」というパターンもあって、
この場合も「なる なり」ではなく、「なん なり」となります。
もう一つ、
撥音便になった場合、さらにその撥音便が消えることもあります。
たとえば、
「あんなり」→「あなり」
「ざんなり」→「ざなり」
「なんなり」→「ななり」などと表記されます。
これは書かれていないだけで、読むときは「あんなり」「ざんなり」「なんなり」と発音します。
以上のように 「撥音便・撥音便無表記+なり」 の「なり」は伝聞推定の助動詞 と判断できます。
③上が四段活用で終止形・連体形が同形のとき。
四段活用動詞につく場合、四段活用「a・i・u・u・e・e」は終止形・連体形が同じ形なので判断できません。しかも②のように撥音便にもなりません。この場合の判断方法を紹介します。
⑴文脈から判断する。
伝聞推定は音による判断でしたね。そのため、「なり」の上に音に関連する言葉がれば伝聞推定「なり」だと考えられます。
例 手をはたはたと打つなり。 (手をぱちぱちと打つようだ)
これは「手をぱちぱちと打つ」と耳で聞いた音についてかかれていますね。そのため伝聞推定と考えられます。
⑵係り結び → 伝聞推定
「なる」が「ぞ」「なむ」の結びで「なる」となっている場合、その「なる」は伝聞推定の助動詞!
⑶「なり」の下が 助動詞 → 「なり」は断定存在
「なり」の下が助動詞以外の語 → 「なり」は伝聞推定
⑵⑶はあまり学校などで教わらないかもしれませんが、知っておくと結構使えます。
いかがでしょうか。以上の考え方でいけるはずです。
一度では覚えきれないとおもいますので、何度も復習してみてください。