孫子荊、年少時、欲隠。
孫子荊、年少き時、隠れんと欲す。
孫子荊は若い時、隠棲したいと思っていた。
・少・・・「わかシ」と読む。
・欲・・・「~んと欲す」と読み、「~しようとする、~したいと思う」の意味。
・隠・・・隠棲する、俗世間を離れる
語王武子、当枕石漱流、
王武子に語るに、当に石に枕し流れに漱がんとすべきに、
王武子に語って、石を枕にして眠り、川の流れで口をすすぎたい と言うべきところを、
・当・・・再読文字「当に~べし」当然~するべき。
※ここでは文が終わらず続くので、「~べきに」と読んでいる。
・枕石・・・石を枕にして寝る
・漱流・・・川の流れで口をすすぐ
→ 枕石漱流・・・俗世間を離れ、山奥で質素に暮らすことをいう
誤曰、漱石枕流。
誤りて曰はく、「石に漱ぎ流れに枕す。」と。
間違って「石で口をすすぎ、流れを枕にする。」と言ってしまった。
※「枕石漱流」と言うべきところを間違えて、 「 漱石枕流」と言ってしまった。
王曰、流可枕、石可漱乎。
王曰はく、「流れは枕すべく、石は漱ぐべきか。(べけんや)」と。
王は、「流れを枕にして、石で口をすすぐことができるのか。(いや、できないだろう)」と言った。
・可・・・「べシ」と読み、「~できる」の意味。
・乎・・・疑問・反語の終助詞。
・「可~乎」・・・疑問の場合は「~べきか」、反語の場合は「~べけんや」と読む。
※ここを疑問で読むか、反語で読むかは教科書によって違います。とちらでもよいです。
※王武子 は孫子荊の言い間違えにつっこみをいれた。
孫曰、所以枕流、欲洗其耳。所以漱石、欲礪其歯。
孫曰はく、「流れに枕する所以は、其の耳を洗はんと欲すればなり。石に漱ぐ所以は、其の歯を礪かんと欲すればなり」と。
孫は、「流れを枕にする理由は、(俗世間の話を聞いて汚れた)耳を洗いたいからである。石で口をすすぐ理由は、(俗世間の食べ物で汚れた)歯を磨きたいからである。」と言った。
・所以・・・「ゆえん(は)」と読み、「理由」という意味。 他にも「方法」などの意味もある。
孫は自分の言い間違いを認めずに、屁理屈をいって、自分のいったことを正当化しようとした。俗世間を離れたいといっているくせに、自分の間違いをみとめない俗っぽい行動をしている。