『世説新語』「漱石枕流」の書き下し文・現代語訳・解説です。『世説新語』は、南朝宋の劉義慶が、後漢から東晋までの名士たちの言動や逸話を集めた書物です。
書き下し文・現代語訳・解説
白文孫子荊、年少時、欲隠。
書き下し孫子荊、年少き時、隠れんと欲す。
現代語訳孫子荊は若いころ、俗世間を離れて隠れ住みたいと思っていた。
- 孫子荊
- 晋の人、孫楚。子荊は字。
- 少「わかシ」
- 若い。
- 欲~
- 「~んと欲す」。~しようと思う。
- 隠
- 隠遁する。俗世間を離れて、山野に隠れ住む。
白文語王武子、当枕石漱流、誤曰、「漱石枕流。」
書き下し王武子に語るに、当に石に枕し流れに漱がんとすべきに、誤りて曰はく、「石に漱ぎ流れに枕す。」と。
現代語訳(そのことを)王武子に話したとき、「石を枕にして眠り、川の流れで口をすすごう」と言うべきところを、間違えて「石で口をすすぎ、流れを枕にする。」と言ってしまった。
- 王武子
- 晋の人、王済。孫子荊の友人。
- 枕石
- 石を枕にして寝る。
- 漱流
- 川の流れで口をすすぐ。
- 教科書によっては「当に石に枕し流れに漱がんとすと言ふべきに」と読み、また誤って言った言葉を「石に漱ぎ流れに枕せん」(枕しよう)と読むものもある。
白文王曰、「流可枕、石可漱乎。」
書き下し王曰はく、「流れは枕すべく、石は漱ぐべきか。」と。
現代語訳王武子は、「流れを枕にしたり、石で口をすすいだりできるのか。」と言った。
- 可
- 「べシ」。~できる(可能)。
- 乎
- 「か」。疑問の助字。
白文孫曰、「所以枕流、欲洗其耳。所以漱石、欲礪其歯。」
書き下し孫曰はく、「流れに枕する所以は、其の耳を洗はんと欲すればなり。石に漱ぐ所以は、其の歯を礪かんと欲すればなり。」と。
現代語訳孫子荊は、「流れを枕にするわけは、(俗世間の汚れた話を聞いた)耳を洗いたいからだ。石で口をすすぐわけは、(俗世間の物を食べた)歯を磨きたいからだ。」と言った。
- 所以「ゆゑん」
- 理由、わけ。ほかに「方法」の意味もある。
- 礪
- みがく。
故事成語「漱石枕流」の意味
漱石枕流(そうせきちんりゅう)=負け惜しみが強く、自分の誤りを認めずに、屁理屈をつけて言い逃れること。
作家の夏目漱石の「漱石」という号は、この故事からとられたものです。また、「さすが」に「流石」という字を当てるのも、この故事によるといわれます。
テスト予想問題
A 語句
次の語の読みを、送り仮名も含めて現代仮名遣いのひらがなで答えよ。
①少(年少時)
②所以(所以枕流)
③漱(漱石)解答を見る
①わかき
②ゆえん
③くちすすぎ「欲隠」の「隠」とは、どうすることか。
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俗世間を離れて、山野に隠れ住むこと。
「枕石漱流」とは、どのような暮らしをいうか。
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石を枕にして寝て、川の流れで口をすすぐような、俗世間を離れて自然の中で質素に暮らす隠者の生活。
B 書き下し文・現代語訳
「当枕石漱流」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:当に石に枕し流れに漱がんとすべきに
現代語訳:石を枕にして眠り、川の流れで口をすすごうと言うべきところを「流可枕、石可漱乎」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:流れは枕すべく、石は漱ぐべきか。
現代語訳:流れを枕にしたり、石で口をすすいだりできるのか。
(反語で「漱ぐべけんや」と読み、「できようか、いや、できない」と訳してもよい。)「所以枕流、欲洗其耳」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:流れに枕する所以は、其の耳を洗はんと欲すればなり。
現代語訳:流れを枕にするわけは、(俗世間の話で汚れた)耳を洗いたいからだ。
C 内容の読み取り
王武子の「流可枕、石可漱乎」という発言には、どのような意図があるか。
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孫子荊の言い間違いに気づき、流れを枕にしたり石で口をすすいだりすることはできないと、無理があることを指摘している。
孫子荊は、「流れを枕にする」「石で口をすすぐ」理由を、それぞれどのように説明しているか。
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流れを枕にするのは、俗世間の話を聞いて汚れた耳を洗うため。石で口をすすぐのは、歯を磨くため。
この話のおもしろさはどのようなところにあるか。
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俗世間を離れたいと言いながら、自分の言い間違いを認めず、もっともらしい理屈をつけて押し通すという、負けず嫌いで俗っぽい態度をとっているところ。
故事成語「漱石枕流」は、現在どのような意味で使われるか。また、この故事から号をとった近代日本の作家は誰か。
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意味:負け惜しみが強く、自分の誤りを認めずに屁理屈をつけて言い逃れること。
作家:夏目漱石