古文の「に」には七つの種類があります。テストでよく問われるのは、完了「ぬ」と断定「なり」の連用形です。
まず下の順番で確かめると、迷わずに見分けられます。
「に」の見分け方(上から順に)
1「に」の上と一続きで一語になっている?
いいえ ↓
2連用形に付き、下に「き・けり・たり・けむ」?
いいえ ↓
3下に「あり・侍り・おはす」(〜である)、または「にや・にか・にこそ」「にて」?
いいえ ↓
4上に「こと・とき」を補えず、下の文へ「〜と・〜ので・〜のに」とつながる?
はい接続助詞
いいえ ↓
七種類の「に」
1完了の助動詞「ぬ」の連用形
目印連用形 +に+ き・けり・たり・けむ
「〜た・〜てしまった」と訳します。「にき・にけり・にたり・にけむ」の形で覚えておきましょう。
つひにみまかりにけり。(沙石集)
とうとう亡くなってしまった。
さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな(平家物語)
志賀の古い都はすっかり荒れてしまったが、長等山の山桜は昔のまま咲いているなあ。
2断定の助動詞「なり」の連用形
目印体言・連体形 +に+ あり・侍り・おはす
「〜で」と訳します。下の「あり」は「〜である」の「ある」です。
「にや・にか・にこそ」で文が切れているときは、「あらむ・あらめ」などが省略されています。
別の病にあらず。(沙石集)
特別な病気ではない。
いづれの御時にか、(源氏物語)
どの帝の御代であったか、
「か」の下に「ありけむ」が省略されている
いと若くおはします御身にて、(大鏡)
たいそうお若くていらっしゃる御身であって、
3格助詞「に」
目印体言 +に(場所・時・相手・原因など)
下に「あり」があっても、「いる・ある」と訳せるなら格助詞です。断定になるのは「〜である」と訳せるときだけです。
今は昔、比叡の山に児ありけり。(宇治拾遺物語)
今となっては昔のことだが、比叡山に一人の児がいた。
下に「あり」があるが、「いた」(存在)の意味なので格助詞
あやしう遅きと待つほどに、(枕草子)
妙に遅いなと待っているうちに、
4接続助詞「に」
目印連体形 +に、(下の文へつなぐ)
「〜と・〜ところ」「〜ので」「〜のに」と訳します。「に」の前に「こと・とき」を補えれば格助詞、補えなければ接続助詞です。
「いかに。」と問はせ給ふに、(和泉式部日記)
「どうだったか。」とお尋ねになると、
「この矢当たれ。」と仰せらるるに、(大鏡)
「この矢よ当たれ。」とおっしゃると、
5形容動詞の連用形の活用語尾
目印あはれに・静かに・心細げに
上に「いと(とても)」を付けて意味が通れば形容動詞です。「いとあはれに」とは言えますが、「いと比叡の山に」とは言えません。
あはれに悲しきことなりな。(大鏡)
しみじみと気の毒で悲しいことだなあ。
もの心細げに里がちなるを、(源氏物語)
なんとなく心細そうな様子で実家に下がりがちであるのを、
6ナ変動詞の連用形の活用語尾
目印死に・往(去)に の二語だけ
下に「けり」が続くので、完了の「にけり」とまちがえやすい形です。
若き時に親は死にければ、(大和物語)
幼いころに親が死んでしまったので、
それより逃げて往にけり。(宇治拾遺物語)
そこから逃げ去ってしまった。
7副詞の一部
目印すでに・げに・さらに・つひに
「に」まで含めて一語の副詞です。「に」を取ると単語になりません。
見れば、すでにわが家に移りて、(宇治拾遺物語)
見ると、(火は)もう自分の家に燃え移って、
まちがえやすいポイント
- 「死にけり」「往にけり」は完了「ぬ」ではない。ナ変動詞の連用形の活用語尾。
- 「すでに」「げに」の「に」を、助詞・助動詞として切り離さない。
- 下に「あり」があっても、「いる・ある」の意味なら格助詞。
- 「にや」「にこそ」は、断定「に」+係助詞。「あらむ」「あらめ」が省略されている。
- 文法的説明は「断定の助動詞『なり』の連用形」のように、もとの形(終止形)と活用形を書く。
識別練習
教科書の古文から、ランダムに出題します。
識別練習 「に」
教科書の古文から、10問ずつ出題します。赤字の部分がどれに当たるかを選んでください。
(この練習は JavaScript を有効にすると使えます)
練習問題
「に」の識別
完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」の下によく続く助動詞を、三つ答えよ。
解答を見る
き・けり・たり(けむ も可)
断定の助動詞「なり」の連用形「に」の下には、どのような語が続くことが多いか。
解答を見る
「あり」や、その敬語の「侍り・候ふ・おはす」など。また、「や・か・こそ」で文が切れ、「あらむ」「あらめ」が省略される形も多い。
次の傍線部「に」を文法的に説明せよ。
①まださるべきほど【に】もあらず。(源氏物語)
②とぞ言はれ【に】ける。(更級日記)
③あやしう遅きと待つほど【に】、(枕草子)解答を見る
① 断定の助動詞「なり」の連用形
② 完了の助動詞「ぬ」の連用形
③ 格助詞(時を表す)次の傍線部「に」を文法的に説明せよ。
①ひたみち【に】若び給へり。(源氏物語)
②牛死【に】たる牛飼ひ。(枕草子)
③げ【に】、そも理、(枕草子)解答を見る
① ナリ活用の形容動詞「ひたみちなり」の連用形の活用語尾
② ナ行変格活用の動詞「死ぬ」の連用形の活用語尾
③ 副詞「げに」の一部「いづれの御時にか」(源氏物語)の「に」を文法的に説明し、「か」の下に省略されている語を補って現代語訳せよ。
解答を見る
断定の助動詞「なり」の連用形。省略:ありけむ。訳:どの帝の御代であったろうか。
「今は昔、比叡の山に児ありけり。」(宇治拾遺物語)の「に」を文法的に説明し、この文を現代語訳せよ。
解答を見る
格助詞(場所)。訳:今となっては昔のことだが、比叡山に一人の児がいた。(「あり」が「いる」の意味なので、断定ではない)
次の文を現代語訳し、「に」の意味(訳し方)を答えよ。
「この矢当たれ。」と仰せらるるに、(大鏡)解答を見る
訳:「この矢よ当たれ。」とおっしゃると、 接続助詞で、「〜と」と訳す。