『和泉式部日記』夢よりもはかなき世の中を・薫る香に② 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 帥宮についての作者の言葉
  4. 童の答え
  5. 橘の花と古歌
  6. 作者の返歌
  7. テスト予想問題

『和泉式部日記(いずみしきぶにっき)』「夢よりもはかなき世の中を」②の現代語訳・品詞分解・解説です。教科書によっては「薫る香に」の題でも載っています。

①では、亡き為尊親王を思って嘆く作者のもとへ、親王に仕えていた小舎人童が訪ねてきて、今は弟の帥宮(そちのみや)に仕えていると語りました。②では、童が帥宮から預かった橘の花を取り出し、作者が帥宮に最初の歌を返します。童の言葉に出てくる敬語(だれからだれへ)、「昔の人の」の古歌、「薫る香に」の歌の内容がよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

帥宮についての作者の言葉

原文
そ代名の格助体修宮は係助区別、いと副あてにナリ連用けけしうシク連用・音おはします補・サ四終止尊→帥宮なる伝聞連体は終助詠嘆。昔の格助体修やうに比況連用は係助区別え副しも副助強意あらラ変未然じ打消推量終止。」など副助引用言へハ四已然ば接助順接確定、

現代語訳その宮様は、たいそう気品があってよそよそしくていらっしゃるそうですね。昔の宮様のようには、とてもいかないでしょう。」などと言うと、

あてなり
高貴だ、上品だ。
けけし
よそよそしい、そっけない。
えしもあらじ
「え〜打消」で「〜できない」。「しも」は強意の副助詞、「じ」は打消推量の助動詞。
解説

「昔」は、故宮(為尊親王)に仕えていたころのこと。「昔のやうには、えしもあらじ」は、亡き兄宮のときのように気楽には仕えられないだろう、という作者の推測。

「あてにけけし」は、帥宮は上品で近寄りがたいという、作者が聞いている評判。

童の答え

現代語訳「そのようにはいらっしゃいますが、とても親しみやすくていらっしゃって、

しか
そう、そのように。ここでは「いとあてにけけしう」を指す。
けぢかし
親しみやすい。
解説

童は、帥宮の評判を認めつつも、実際には親しみやすい人柄だと打ち明けている。

現代語訳『(おまえは)いつも(式部のもとへ)参るのか。』とお尋ねになって、(私が)『参ります。』と申し上げましたところ、

解説

敬語(だれからだれへ)に注意。

「常に参るや」の「参る」は、小舎人童が作者のもとへ行くこと。「参り侍り」の「参り」も同じ。

「問はせおはしまして」は、「せ」と「おはします」の二つで敬意を重ねる最高敬語(二重敬語)で、小舎人童から帥宮への敬意。

原文
『これ代名もて参りラ四連用謙→作者て接助単純接続、いかが副見マ上一連用給ふ補・ハ四連体尊→作者と格助引用て接助単純接続奉らラ四未然謙→作者せよ使役命令。』と格助引用のたまはせサ下二連用尊→帥宮つる完了連体。」と格助引用て接助単純接続、

現代語訳『これを持って参上して、どのようにご覧になるかと言って差し上げさせよ。』とおっしゃったのです。」と言って、

奉る
「与ふ」の謙譲語で、「差し上げる」の意。
解説

帥宮が童に命じた言葉。橘の花を持たせ、「どのようにご覧になるか」と言って作者に差し上げさせた。「見給ふ」「奉ら」は帥宮から作者への敬意。

橘の花と古歌

原文
橘たちばなの格助体修花を格助対象取り出でダ下二連用たれ完了已然ば接助順接確定、「昔の格助体修人の格助体修」と格助引用言はハ四未然れ自発連用て接助単純接続、

現代語訳(童が)橘の花を取り出したので、(作者は)「昔の人の」と(古歌の一節が)思わず口をついて出て、

橘の花
昔の人を思い出させるものとされた花。
解説

「昔の人の」は古歌の一節。古今和歌集・伊勢物語にある「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」で、五月を待って咲く橘の花の香をかぐと、昔親しんだ人の袖の香りがする(なつかしいあの人が思い出される)という意味。

作者は橘の花を見て、この歌を連想し、亡き為尊親王をなつかしく思い出した。

帥宮が橘の花を贈ったのは、この歌を思い起こさせて、亡き兄をしのぶ気持ちを作者と分かち合い、弟の自分にも親しみを感じさせようとしたのだろうか。

作者の返歌

原文
「さらば接参りラ四連用謙→帥宮な強意未然む意志終止。いかが副聞こえさすサ下二終止謙→帥宮べき適当連体。」と格助引用言へハ四已然ば接助順接確定、

現代語訳(童が)「それでは帥宮様のもとへ帰参しましょう。どのようにお返事を申し上げましょうか。」と言うので、

聞こえさす
「言ふ」の謙譲語。申し上げる。
解説

「参りなむ」の「参る」は、小舎人童が帥宮のもとへ帰参すること。

原文
ことばにて格助手段聞こえさせサ下二未然謙→帥宮む婉曲連体も係助強意かたはらいたくク連用て接助単純接続、なに副かは係助反語、あだあだしくシク連用も係助強意まだ副聞こえヤ下二連用給は補・ハ四未然尊→帥宮ぬ打消連体を接助順接確定、はかなきク連体ことを格助対象も係助強意と格助引用思ひハ四連用て接助単純接続、

現代語訳(作者は)ふつうの文章でご返事を申し上げるのも気が引けて、なあに、(帥宮様は)浮気者という評判もまだ立っていらっしゃらないのだから、ちょっとした歌でも(差し上げてみよう)と思って、

ことば
ここでは、和歌ではないふつうの文章。
かたはらいたし
気が引ける、きまりが悪い。
何かは
いやなに。何の問題があろうか、いやない。
あだあだし
浮気だ、不誠実だ。
聞こゆ
ここでは、うわさになる、評判になる。
はかなし
ちょっとした、とりとめのない。
解説

「はかなきこと」は、ちょっとした和歌のこと。下に「聞こえさせむ(差し上げよう)」などが省略されている。

作者は、帥宮に浮気だという評判はまだないのだから、多少大胆に歌を贈っても問題ないだろうと自分を正当化している。

原文
薫るラ四連体香かに格助対象よそふるハ下二連体より格助比較は係助区別ほととぎす聞かカ四未然ばや終助願望同じシク連体声や係助疑問しサ変連用たる存続連体と格助引用

現代語訳橘の薫る香にことよせて亡き兄宮様をしのぶよりは、ほととぎす(のようなあなた様)の声が聞きたいものです。兄宮様と同じお声をしていらっしゃるのかと。

ばや
未然形に付く、自分の希望を表す終助詞。「〜たい」。
解説

「薫る香によそふる」は、橘の薫る香にことよせて、亡き兄宮をなつかしみ、しのぶこと。

「ほととぎす」は帥宮をたとえている。亡き兄宮の弟である帥宮の声が聞きたい、つまりお会いしたい、という気持ちを込めた歌である。

「同じ声やしたる」は、故宮と帥宮の声が同じかどうかということ。「聞かばや」が下に来る倒置で、「と」は「聞かばや」にかかる。

※女性の側から誘うような歌を贈るのは大胆である。「はかなきこと」とあるように、この時点で本気で恋愛を期待していたわけではないだろうが、新たな恋を予感させる歌ではある。恋人をなくして沈んでいた作者の前に、帥宮は活力を与えてくれる存在として現れた。

原文
と格助引用聞こえさせサ下二連用謙→帥宮たり完了終止。

現代語訳とお返事を申し上げた。

続き:『和泉式部日記』夢よりもはかなき世の中を・薫る香に③

前の部分:『和泉式部日記』夢よりもはかなき世の中を・薫る香に①

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語句の意味を答えよ。
    ①あてなり
    ②けけし
    ③けぢかし
    ④かたはらいたし
    ⑤あだあだし
    ⑥聞こゆ(ここでは)

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    ①高貴だ・上品だ
    ②よそよそしい・そっけない
    ③親しみやすい
    ④気が引ける・きまりが悪い
    ⑤浮気だ・不誠実だ
    ⑥うわさになる・評判になる

  2. 次の語句の意味を答えよ。
    ①何かは
    ②はかなし(ここでは)

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    ①いやなに・何の問題があろうか(いやない)
    ②ちょっとした・とりとめのない

B 文法・敬語

  1. 「いとあてにけけしうおはしますなるは」について、①「おはします」の敬語の種類と敬意の方向、②「なる」の文法的説明を答えよ。

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    ①尊敬の補助動詞。作者から帥宮へ。②伝聞の助動詞「なり」の連体形(「〜そうだ」の意)。

  2. 傍線部の敬語の種類を答え、だれからだれへの敬意かも示せ。
    ①常に【参る】や
    ②参り【侍り】
    ③いかが見【給ふ】
    ④【奉ら】せよ
    ⑤【のたまはせ】つる

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    ①謙譲語。帥宮から作者へ
    ②丁寧語(補助動詞)。小舎人童から帥宮へ
    ③尊敬の補助動詞。帥宮から作者へ
    ④謙譲語。帥宮から作者へ
    ⑤尊敬語。小舎人童から帥宮へ

  3. 「さらば参りなむ」について、①「なむ」を文法的に説明せよ。②「参る」はだれがどこへ行くことか。

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    ①「な」が強意「ぬ」の未然形で、「む」が意志の助動詞の終止形。②小舎人童が帥宮のもとへ帰参する。

  4. 「薫る香によそふるよりはほととぎす聞かばや同じ声やしたると」について、①「ばや」の意味、②係助詞「や」の結びの語と活用形、③「と」がかかる語を答えよ。

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    ①自分の希望(〜たい)。②「たる」(存続の助動詞「たり」の連体形)。③「聞かばや」(倒置になっている)。

C 内容

  1. 「昔のやうにはえしもあらじ」を、「昔」の内容がわかるように現代語訳せよ。

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    (帥宮は気品があって近寄りがたい方だそうだから、)亡き為尊親王に仕えていた昔のようには、とても(気楽に仕えること)はできないでしょう。

  2. 「しかおはしませど」の「しか」の指す内容を、本文から抜き出して答えよ。また、童は続けて帥宮をどのような人だと語っているか。

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    「いとあてにけけしう」。たいそう親しみやすい人だと語っている。

  3. 作者が「昔の人の」と口にしたのは、どのような古歌の一節か。歌の全体を示せ。また、帥宮が橘の花を贈ったのは、どのような意図からと考えられるか。

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    「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」。亡き兄をしのぶ気持ちを作者と分かち合い、兄の弟である自分に親しみをもたせて、交流のきっかけをつくろうとした。

  4. ①「はかなきこと」とは何をさすか。②「ほととぎす」はだれをたとえているか。③作者はこの歌でどんなことを伝えたいのか。

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    ①ちょっとした和歌。②帥宮。③亡き兄宮の弟である帥宮の声が聞きたい、つまり会ってみたいということ(帥宮の誘いに応じる気持ち)。