『土佐日記』門出・馬のはなむけ① 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 日記を書くことにした作者
  4. 土佐を出発する
  5. 和泉の国までの祈願と送別の宴
  6. テスト予想問題

『土佐日記(とさにっき)』「門出・馬のはなむけ①」の現代語訳・品詞分解・助動詞・解説です。

紀貫之(きのつらゆき)が土佐国司としての任期を終え、京へ帰る旅に出るまでの場面です。冒頭の一文の「なり」の識別や、「なむ」の結びの流れなど、定期テストで問われやすい文法を一語ずつ確認できます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを隠して読めば、そのまま自分で品詞分解を確かめる練習にもなります。

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現代語訳・品詞分解・解説

日記を書くことにした作者

原文
男も係助並列すサ変終止なる伝聞・推定連体日記と格助引用いふハ四連体ものを格助対象、女も係助並列しサ変連用て接助単純接続み補・マ上一未然む意志終止と格助引用て接助単純接続するサ変連体なり断定終止。

現代語訳男も書くという日記というものを、女(である私)もしてみようと思って書くのである。

解説

「すなる」…「す」はサ行変格活用動詞「す」の終止形なので、「なる」は終止形接続の伝聞・推定の助動詞「なり」。

「するなり」…「する」はサ行変格活用動詞「す」の連体形なので、「なり」は連体形接続の断定の助動詞「なり」。

※終止形+なり → 伝聞・推定(〜そうだ、〜という)の助動詞「なり」。連体形+なり → 断定(〜である)・存在(〜にある)の助動詞「なり」。

男の日記は、ふつう漢文で出来事を簡潔に記すものだった。女の立場をとることで、仮名で自由に心情を書くことができる。

土佐を出発する

原文
それ代名の格助体修年の格助体修、十二月しはすの格助体修二十日はつかあまり一日ひとひの格助体修日の格助体修戌の時いぬのときに格助時間、門出かどですサ変終止。

現代語訳ある年の、十二月の二十一日の午後八時ごろに、出発する。

それの年
ある年。承平四年(九三四年)のこと。
十二月
「しはす」と読む。陰暦の十二月(師走)。
戌の時
午後八時ごろ。
門出
出発・出立すること。
解説

国司を務めた館から出ていく。

原文
そ代名の格助体修よし、いささかにナリ連用ものに格助場所書きつくカ下二終止。

現代語訳そのいきさつを、ほんの少し紙に書きつける。

よし
いきさつ、事情。
もの
ここでは「紙」をぼかして言った語。
原文
ある連体人、県あがたの格助体修四年五年よとせいつとせ果てタ下二連用て接助単純接続、例れいの格助体修ことどもみな副しサ変連用終へハ下二連用て接助単純接続、解由げゆなど副助例示取りラ四連用て接助単純接続、

現代語訳ある人が、国司の四、五年の任期を終えて、ならわしの引き継ぎをすべて済ませ、解由状などを受け取って、

県の四年五年
国司としての任期。
例のこと
「例の」は「いつもの、いつものように」の意味。ここでは、国司交替のための引き継ぎを指す。
解由
国司としての任務を果たし、引き継ぎをしたことを示す証明書。
解説

ある人…紀貫之のこと。女性の立場で書いているため、自分自身を「ある人」と呼んでいる。

原文
住むマ四連体館たちより格助起点出でダ下二連用て接助単純接続、船に格助対象乗るラ四終止べき当然連体所へ格助方向わたるラ四終止。

現代語訳住んでいた官舎から出て、船に乗るはずの所へ移る。

べき
当然の助動詞「べし」の連体形。
原文
かれこれ代名、知るラ四連体知らラ四未然ぬ打消連体、送りすサ変終止。

現代語訳あれこれの人が、知っている人も知らない人も、見送りをする。

知る知らぬ
「知る人、知らぬ人」の省略。「知る」と「ぬ」は連体形で、下に「人」が省略されていると考える。
原文
年ごろよくク連用くらべバ下二連用つる完了連体人々なむ係助強意、別れラ下二連用がたくク連用思ひハ四連用て接助単純接続、日しきりに副とかく副しサ変連用つつ接助反復、ののしるラ四連体うちに格助時間、夜更けカ下二連用ぬ完了終止。

現代語訳数年来親しく付き合ってきた人々は、別れがたく思って、一日中あれこれとしながら大騒ぎするうちに、夜が更けてしまった。

よくくらべつる人々
この数年来、親しく付き合ってきた人々。
日しきりに
一日中ひっきりなしに。
とかく
あれこれ、あれやこれや。
ののしる
大騒ぎする。
解説

※なむ…強意の係助詞。係り結びなら「思ふ」と連体形で結ぶところだが、「思ひて」と「て」で文が続くため、結びが現れない(「結びの流れ」「結びの消滅」)。

和泉の国までの祈願と送別の宴

原文
二十二日にじゅうににちに格助時間、和泉いづみの格助体修国まで副助限界と格助引用、平らかにナリ連用願立つタ下二終止。

現代語訳二十二日に、和泉の国までは(せめて)無事であるようにと、(神仏に)祈願する。

平らかに
無事に、穏やかに。
解説

旅は京まで続くが、和泉の国までは船旅で特に危険が多いため、和泉の国まで無事に行けるようにと祈願した。

原文
藤原ふじわらの格助体修ときざね、船路ふなぢなれ断定已然ど接助逆接確定、馬うまの格助体修はなむけすサ変終止。

現代語訳藤原のときざねが、船旅なのに、馬のはなむけ(送別の宴)をする。

解説

馬のはなむけ…もともとは、旅立つ人の乗る馬の頭を出発する方向に向けて見送ること。そこから、「送別の宴をする・餞別を贈る」などの意味になった。

船路なれど…「ど」は已然形に付く逆接確定の接続助詞(「〜けれども」)。船旅で馬はいないのに「馬のはなむけ」と言うのは、送別の宴を指した言葉遊びである。

原文
上かみ・中なか・下しも、酔ひ飽きカ四連用て接助単純接続、いと副あやしくシク連用、潮海しほうみの格助体修ほとりにて格助場所あざれ合へハ四已然り存続終止。

現代語訳身分の上の者も中の者も下の者も、すっかり酔って、とても不思議なことに、塩辛い海のほとりでふざけ合っている。

上・中・下
身分が上の人から下の人まで。
〜飽く
すっかり〜する、十分に〜する。
あやし
不思議だ。
解説

「あざる」には「①魚肉などが腐る ②ふざける」という二つの意味がある。塩辛い海なので「あざる=魚肉が腐る」ことはないはずだが、人々は「あざる=ふざける」状態になっているので「いとあやしく」と表現している。このように、一つの音に二つの意味を重ねる表現を掛詞(かけことば)という。

※「あざれ合へり」の「り」は完了・存続の助動詞。四段活用の已然形(サ変は未然形)に付く。

続き:『土佐日記』門出・馬のはなむけ②

『土佐日記』のほかの場面:阿倍仲麻呂の歌 / 白波 / 亡児

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①県
    ②解由
    ③館
    ④戌の時
    ⑤和泉
    ⑥十二月

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    ①あがた
    ②げゆ
    ③たち
    ④いぬのとき
    ⑤いずみ
    ⑥しわす

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①よし
    ②年ごろ
    ③ののしる
    ④〜飽く
    ⑤あやし
    ⑥上・中・下
    ⑦解由

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    ①いきさつ・事情
    ②数年来・長年
    ③大騒ぎする
    ④すっかり〜する・十分に〜する
    ⑤不思議だ
    ⑥身分の上の人から下の人まで
    ⑦国司が任務を果たし、引き継ぎを済ませたことを示す証明書

B 文法

  1. 「男もすなる日記」の「なる」と、「するなり」の「なり」は、それぞれ何の助動詞で、どのような意味か。活用形もあわせて答えよ。

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    「なる」=伝聞・推定の助動詞「なり」の連体形(サ変「す」の終止形に付く)。「なり」=断定の助動詞「なり」の終止形(サ変「する」の連体形に付く)。

  2. 「知る知らぬ、送りす」の「知る」「知らぬ」は、どのような言葉を補って読むか。

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    「人」。「知る人、知らぬ人」の意味。

  3. 「人々なむ、別れがたく思ひて」の「なむ」は、本来ならどう結ぶはずか。また、結ばれずに文が続くこの現象を何というか。

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    連体形の「思ふ」で結ぶはずだが、「思ひて」と接続助詞「て」で続いている。この現象を「結びの流れ(結びの消滅)」という。

  4. 「船路なれど」の「なれ」と「ど」を、それぞれ文法的に説明せよ。

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    「なれ」=断定の助動詞「なり」の已然形。「ど」=已然形に付く接続助詞で、逆接の確定条件(〜けれども)を表す。

C 現代語訳・内容

  1. 「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり。」を現代語訳せよ。

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    男がするという日記というものを、女の私もやってみようと思って、書くのである。

  2. 「ある人」とは誰のことか。また、作者が自分のことをこのように書くのはなぜか。

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    紀貫之。女性になりきって書いているので、自分自身を第三者のように「ある人」と呼んでいる。

  3. 「船路なれど、馬のはなむけす」には、どのような言葉のおもしろさがあるか。

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    「馬のはなむけ」は、もとは旅立つ人の馬の頭を行く先に向けて見送ることだが、ここは船旅で馬は出てこない。それでも「送別の宴」の意味で「馬のはなむけ」と言っているところ。

  4. 「潮海のほとりにてあざれ合へり」について、①「あざる」の二つの意味を答えよ。②この表現のおもしろさを説明せよ。

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    ①魚肉などが腐る/ふざける。②塩辛い海辺なので、魚肉が「あざる(腐る)」はずはないのに、人々は「あざる(ふざける)」状態になっている。二つの意味を重ねた掛詞のおもしろさ。