『大鏡』道真左遷① 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 右大臣道真と左大臣時平
  4. 子どもたちとの別れ
  5. 梅の花に呼びかける歌
  6. 亭子の帝への歌
  7. テスト予想問題

『大鏡(おおかがみ)』「道真の左遷」①の現代語訳・品詞分解・解説です。

学才にすぐれ、帝の信任も厚かった右大臣・菅原道真(すがわらのみちざね)が、左大臣・藤原時平(ふじわらのときひら)との対立の末、大宰府へ流される場面です。時平が「やすからず」思った理由、子どもたちの処遇、道真が詠んだ二首の歌と、語り手の敬語がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

右大臣道真と左大臣時平

現代語訳右大臣(道真)は、学才が世にぬきんでて立派でいらっしゃり、お心配りの点でも格別に優れていらっしゃる。

才(ざえ)
学問。特に漢学の教養。
心おきて
思慮。心の持ち方。
殊(こと)のほかなり
格別だ、この上ない。
かしこし
ここは、優れている。
解説

道真は、学問や教養に優れ、思慮分別も深く、帝の信任も厚い人物として語られている。

原文
左大臣は係助区別御年も係助並列若くク連用、才も係助並列殊のほかにナリ連用劣りラ四連用給へ補・ハ四已然尊→時平る存続連体に格助原因よりラ四連用、

現代語訳左大臣(時平)は、お年も若く、学才も(右大臣に比べて)格段に劣っていらっしゃったために、

解説

官職は左大臣のほうが右大臣より上位。その左大臣の時平は、年も若く、学才も道真に劣るとされている。

若く学才も劣る時平が左大臣の位にあるのは、当時、藤原氏一門が政治の実権を握っていたため。

原文
右大臣の格助体修御おぼえ殊のほかにナリ連用おはしまし補・サ四連用尊→道真たる存続連体に接助順接確定、左大臣やすからク未然ず打消連用思しサ四連用尊→時平たる存続連体ほどに格助時、

現代語訳右大臣への(帝の)ご信任が格別でいらっしゃったので、左大臣は心穏やかでなくお思いになっていたところ、

御おぼえ
帝(醍醐天皇)からのご寵愛、ご信任。
やすからず
おもしろくなく、穏やかでなく。←安し…心穏やかだ。
解説

「左大臣やすからず思したる」のは、自分より下位の右大臣のほうが学才も思慮も格段に優れ、そのうえ帝の信任まで厚かったから。時平は、いずれ道真に今の地位を取って代わられるのではと心配したのだろう。

「殊のほかに」は三度出てくる。道真の思慮、時平の学才(の劣ること)、道真への帝の信任と、いずれも差が格別であることを示している。

原文
さるラ変連体べき当然連体に断定連用や係助疑問おはし補・サ変連用尊→道真けむ過去推量(原因)連体、右大臣の格助体修御ために格助対象よからク未然ぬ打消連体こと出で来カ変連用て接助単純接続、

現代語訳そうなるはずの前世からの定めでいらっしゃったのでしょうか、右大臣の御身にとってよくないことが起こって、

さるべきにやおはしけむ
そうなるはずの宿命でいらっしゃったのだろうか。
解説

※「さるべきにやあらむ」の「あり」が尊敬語「おはす」になった形。

「さるべきにやおはしけむ」は、語り手が感想をはさんだ挿入句。「さる」は直後の「右大臣の御ためによからぬこと」をさし、道真の左遷は前世からの定めだったのだろうかと、語り手が推し量っている。

「右大臣の御ためによからぬこと」は、時平が帝に道真の讒言(事実を曲げた告げ口)をして、道真を失脚させたこと。はっきり言わず、ぼかした表現にしている。

原文
昌泰四年正月二十五日、大宰権帥だざいのごんのそちに格助変化なしサ四連用奉り補・ラ四連用謙→道真て接助単純接続、流さサ四未然れ受身連用給ふ補・ハ四終止尊→道真。

現代語訳昌泰四年正月二十五日、(朝廷が)道真を大宰権帥に任命し申し上げて、(道真は)お流されになる。

大宰権帥(だざいのごんのそち)
大宰府(九州地方を治める役所)の、長官(大宰帥)に準ずる役職。大臣が左遷されてこの地位につけられたときは、実際の政務は行わなかった。
解説

「なし奉りて」の主語は朝廷、「流され給ふ」の主語は道真。「奉り」「給ふ」はどちらも語り手から道真への敬意。

子どもたちとの別れ

原文
こ代名の格助体修大臣おとど、子どもあまた副おはせサ変未然尊→道真し過去連体に接助単純接続、女君をんなぎみたちは係助区別婿とりラ四連用、

現代語訳この大臣(道真)には、お子様が大勢いらっしゃったが、姫君たちは婿をとり、

大臣(おとど)
ここは道真のこと。
あまた
たくさん、大勢。
解説

「おはせ」は本動詞で、「いらっしゃる」の意。語り手から道真への敬意を表す。

原文
男君たちは係助区別、みな副ほどほどに格助対象つけカ下二連用て接助単純接続位どもおはせサ変未然尊→男君たちし過去連体を接助逆接確定、

現代語訳男君たちは皆、年齢や器量に応じて官位をお持ちだったのに、

ほどほどにつけて
年齢や器量に応じて。
原文
それ代名も係助類例みな副方々かたがたに格助場所流さサ四未然れ受身連用給ひ補・ハ四連用尊→男君たちて接助単純接続悲しきシク連体に接助添加、

現代語訳その人たちも皆あちらこちらへお流されになって悲しいところへ、

方々(かたがた)
あちらこちら。ここは、流された先がいろいろな方面に分かれていること。
解説

「それ」が指すのは、すでに元服して官職を得ていた息子たち。

「悲しき」は、語り手の心情を表している。

現代語訳幼くていらっしゃった男君や女君たちが、(父君を)慕って泣いていらっしゃったので、

慕ひ泣く
(父を)慕って泣く。

現代語訳「小さい者は(連れて行っても)差し支えあるまい。」と、朝廷もお許しになったのですよ。

おほやけ
朝廷。
解説

「小さきはあへなむ」は、成人した子は別々の場所に流されたが、幼い子は道真に同行しても差し支えないだろう、の意。

朝廷が許したのは、幼い男君・女君が道真について筑紫へ下ること。

原文
帝みかどの格助体修御おきて、きはめて副あやにくにナリ連用おはしませ補・サ四已然尊→帝ば接助順接確定、

現代語訳帝のご処置が、きわめて厳しくていらっしゃったので、

御おきて
醍醐天皇のご処置。
あやにくなり
厳しい。
原文
こ代名の格助体修御子どもを格助対象、同じシク終止方に格助場所遣はさサ四未然尊→帝ざり打消連用けり過去終止。

現代語訳(帝は)この(成人した)お子様たちを、(道真と)同じ方面へはおやりにならなかった。

この御子ども
道真の成人した子ども。
同じ方
同じ方面。道真と同じ筑紫の方面にはやらず、別々のところに追放した、ということ。
遣はす
おやりになる。行かせる。
解説

帝の処置が「あやにくに」厳しいというのは、成人した子どもたちを皆ばらばらの場所に流した点をいう。

梅の花に呼びかける歌

原文
方々に格助対象いと副悲しくシク連用思し召しサ四連用尊→道真て接助単純接続、御前の格助体修梅の格助体修花を格助対象御覧じサ変連用尊→道真て接助単純接続、

現代語訳(道真は)あれこれとたいそう悲しくお思いになって、お庭先の梅の花をご覧になって、

方々に
ここは、あれやこれやと。道真の悲しみがさまざまなことに向かっていること。
思し召す
「思ふ」の尊敬語。お思いになる。
御覧ず
「見る」の尊敬語。ご覧になる。
解説

「御前の梅の花」は、京の道真の屋敷の庭に植えられていた梅。

原文
東風こち吹かカ四未然ば接助順接仮定にほひおこせよサ下二命令梅の格助体修花あるじなしク終止とて格助引用春を格助対象忘るラ下二終止な終助禁止

現代語訳(春になって)東風が吹いたなら、その香りを(筑紫まで)送っておくれ、梅の花よ。主人がいないからといって、春を忘れるなよ。

おこす
相手の側から自分の側へ送ってくる。(「やる」は自分から相手へ送る)
あるじなしとて
この家の主である私がいないからといって。
春を忘るな
春を忘れるな。忘れずに、きちんと花を咲かせよ。
解説

※「な」は禁止を表す終助詞。「な…そ」の形にすると「春をな忘れそ」。

「東風」は、京から大宰府に向かって吹く風。大宰府から見て、京は東にある。

この歌は、梅に呼びかける形(擬人法)で、住み慣れた京の屋敷とそこの梅への別れを惜しむ気持ちを詠んでいる。

亭子の帝への歌

原文
また接、亭子の帝に格助対象聞こえさせサ下二連用謙→亭子の帝給ふ補・ハ四連体尊→道真、

現代語訳(道真は)また、亭子の帝(宇多法皇)に申し上げなさった(歌)。

聞こえさす
謙譲語「申し上げる」。「聞こゆ」よりも敬意が強い。
解説

「聞こえさせ」は語り手から亭子の帝への敬意、「給ふ」は語り手から道真への敬意。

原文
流れ行くカ四連体我代名は係助区別水屑と格助結果なり果てタ下二連用ぬ完了終止君しがらみと格助結果なりラ四連用て接助単純接続とどめよマ下二命令

現代語訳流されて行く私は、水中のごみくずとなってしまいました。我が君よ、どうかしがらみとなって(私を)引き止めてください。

君
亭子の帝(宇多法皇)。醍醐天皇の前の天皇で、道真を重く用いた。出家した天皇を法皇という。
解説

道真は自分を水屑に、亭子の帝をしがらみ(水をせき止める柵)にたとえ、流される自分を引き止めて助けてほしいと訴えている。

「しがらみ」は「水」の縁語。

『大鏡』のほかの話:三舟の才 / 弓争ひ

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①才
    ②大臣
    ③大宰権帥
    ④朝廷
    ⑤東風
    ⑥女君

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    ①ざえ
    ②おとど
    ③だざいのごんのそち
    ④おおやけ
    ⑤こち
    ⑥おんなぎみ

  2. 次の語句の意味を答えよ。
    ①おはします(補助動詞)
    ②御おぼえ
    ③やすからず
    ④あやにくなり
    ⑤遣はす
    ⑥おこす
    ⑦かしこし(ここでは)

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    ①〜ていらっしゃる
    ②帝からの寵愛・信任
    ③おもしろくなく・心穏やかでなく
    ④厳しい
    ⑤おやりになる・行かせる
    ⑥(相手の方から自分の方へ)よこす
    ⑦優れている

B 文法・敬語

  1. 「さるべきにやおはしけむ」を現代語訳せよ。また、①「べき」②「に」③「けむ」の文法的意味と活用形を答え、④「や」の結びの語を指摘せよ。

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    訳=そうなるはずの宿命でいらっしゃったのだろうか。①当然の助動詞「べし」の連体形
    ②断定の助動詞「なり」の連用形
    ③過去の原因推量の助動詞「けむ」の連体形
    ④「けむ」

  2. ①「大宰権帥になし奉りて、流され給ふ」の「なし奉り」と「流され」の主語をそれぞれ答えよ。②「奉り」「給ふ」と、「亭子の帝に聞こえさせ給ふ」の「聞こえさせ」「給ふ」は、それぞれ何という敬語か。また、だれからだれへの敬意を表すか。

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    ①なし奉り=朝廷/流され=道真。②奉り=謙譲の補助動詞(語り手から道真へ)/給ふ=尊敬の補助動詞(語り手から道真へ)/聞こえさせ=謙譲語(語り手から亭子の帝へ)/給ふ=尊敬の補助動詞(語り手から道真へ)。

C 内容・和歌

  1. 「左大臣やすからず思したる」とあるが、左大臣(時平)がそう思ったのはなぜか。また、「右大臣の御ためによからぬこと」とは、具体的にどのようなことか。

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    理由=自分より下位の右大臣(道真)のほうが学才も思慮も格段に優れ、帝の信任も厚かったから。よからぬこと=時平が道真の讒言をして、道真を失脚させたこと。

  2. 「『小さきはあへなむ。』と、おほやけも許させ給ひしぞかし」を、朝廷が許した内容を明らかにして現代語訳せよ。

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    「幼い子はかまわないだろう。」と、朝廷も(小さい子どもたちが父道真と一緒に筑紫へ行くことを)お認めになったのですよ。

  3. 「帝の御おきて、きはめてあやにくにおはしませば、この御子どもを、同じ方に遣はさざりけり」を現代語訳せよ。また、「この御子ども」はだれをさすか。

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    訳=帝のなさり方がひどく厳しくていらっしゃったので、この子どもたちを(父道真と)同じ方面へはおやりにならなかった。御子ども=道真の成人した子どもたち(官位についていた男君たち)。

  4. 「東風吹かばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」を現代語訳せよ。また、「春を忘るな」を「な…そ」の形を使って、同じ意味に書き換えよ。

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    訳=(春になって)東の風が吹いたら、その香りを(筑紫の私のもとまで)届けておくれ、梅の花よ。主人の私がいないからといって、春を忘れるなよ。/書き換え=春をな忘れそ。

  5. 「東風」はどこからどこへ吹く風か。また、この歌にこめられた道真の心情を簡潔に答えよ。

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    京から大宰府へ吹く風。心情=住み慣れた京の屋敷や梅との別れを惜しむ気持ち(惜別の情)。

  6. 「流れ行く我は水屑となり果てぬ君しがらみとなりてとどめよ」の「君」はだれか。また、「水屑」「しがらみ」は何をたとえており、道真はこの歌で何を訴えているか。

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    君=亭子の帝(宇多法皇)。水屑=道真自身、しがらみ=亭子の帝。流される自分を引き止めて助けてほしいと訴えている。