『大鏡』三舟の才 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 道長の船遊び
  4. 公任の歌
  5. 公任の後悔と得意
  6. 語り手の感想
  7. テスト予想問題

『大鏡(おおかがみ)』「三舟の才(さんしゅうのさい)」の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。教科書によっては「三船の才」という題で載っています。

藤原道長が大井川で船遊びを催し、漢詩・音楽・和歌の三つの船を用意したとき、大納言藤原公任(きんとう)は「どの船に乗るのか」と問われます。和歌の船を選んで見事な歌を詠んだ公任が、あとで何を悔やみ、何を誇らしく思ったのか。敬語の向き、「小倉山」の歌、反実仮想の文などがよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

道長の船遊び

原文
一年ひととせ、入道殿にゅうどうどのの格助主格大井川おおいがわに格助場所逍遥しょうようせサ変未然させ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→道長し過去連体に格助時間、

現代語訳先年、入道殿(道長)が大井川に出て船遊びを催されたおりに、

一年(ひととせ)
ある年。先年。「一年間」の意味ではない。
逍遥す
気ままにあちこち出歩く。ここでは川に出ているので、船遊びをすること。
解説

「逍遥せさせ給ひしに」=逍遥せ(サ変「逍遥す」・未然形)/させ(尊敬「さす」・連用形)/給ひ(尊敬の補助動詞・連用形)/し(過去「き」・連体形)/に(格助詞)。主語は入道殿(道長)で、「させ給ふ」は最高敬語(二重敬語)。

原文
作文さくもんの格助体修船、管弦かんげんの格助体修船、和歌の格助体修船と格助結果分かたタ四未然せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→道長て接助単純接続、

現代語訳漢詩を作る船、楽器を奏でる船、和歌を詠む船の三つにお分けになって、

作文(さくもん)
漢詩を作ること。「作文の船」は漢詩を作る人の船。
管弦(かんげん)
楽器の演奏。「管弦の船」は音楽を演奏する人の船。
原文
そ代名の格助体修道に格助対象堪たへハ下二連用たる存続連体人々を格助対象乗せサ下二未然させ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→道長し過去連体に接助単純接続、

現代語訳それぞれの道に秀でた人々をお乗せになったところ、

堪(た)ふ
(その能力が)十分にある。優れている。ハ行下二段活用。現代語の「たえる(がまんする)」の意味ではない。
解説

「その道に堪へたる人々」は、漢詩・音楽・和歌のそれぞれの道に優れた人々。

「分かたせ給ひ」「乗せさせ給ひ」も、道長の動作なので最高敬語が使われている。

原文
こ代名の格助体修大納言殿だいなごんどのの格助主格参りラ四連用謙→道長給へ補・ハ四已然尊→公任る完了連体を接助順接確定、

現代語訳この大納言殿(公任)が参上なさったので、

大納言殿
藤原公任。
解説

「参り給へる」は二方面敬語。謙譲語「参り」で参上する相手の道長を、尊敬の補助動詞「給へ」で参上した公任を、語り手がそれぞれ敬っている。

原文
入道殿、「か代名の格助体修大納言、いづれ代名の格助体修船に格助対象か係助疑問乗らラ四未然る尊敬終止べき意志連体。」と格助引用のたまはすれサ下二已然尊→道長ば接助順接確定、

現代語訳入道殿が、「あの大納言は、どの船にお乗りになるつもりだろうか。」とおっしゃったところ、

かの
あの。
のたまはす
「言ふ」の尊敬語。「のたまふ」よりも敬意が高い。
解説

「乗らるべき」の「る」は尊敬、「べき」は意志(係助詞「か」の結びで連体形)。「どの船にお乗りになるつもりか」の意。

道長は、公任が漢詩・音楽・和歌のどれにも優れていると認めていたので、「どの船に乗るのか」と問いかけた。

原文
「和歌の格助体修船に格助対象乗りラ四連用侍ら補・ラ変未然丁→道長む意志終止。」と格助引用のたまひハ四連用尊→公任て接助単純接続、詠みマ四連用給へ補・ハ四已然尊→公任る完了連体ぞ終助念押しかし終助念押し。

現代語訳(大納言殿は)「和歌の船に乗りましょう。」と言われて、そこで詠まれたのが次の歌ですよ。

解説

「侍ら」は丁寧の補助動詞で、公任から道長への敬意。

語り手の敬語を比べると、道長には「せ給ふ」「させ給ふ」「のたまはす」と敬意の高い言い方を使い、公任には「のたまふ」「給ふ」だけを使っている。語り手は道長を公任より上に置いている。

公任の歌

原文
小倉山をぐらやま嵐あらしの格助体修風の格助主格寒けれク已然ば接助順接確定紅葉もみぢの格助体修錦にしき着カ上一未然ぬ打消連体人ぞ係助強意なきク連体

現代語訳小倉山や嵐山から激しく吹きおろす風が寒いので、散る紅葉が衣にかかり、紅葉の錦を身にまとわない人は誰もいない。

小倉山
大井川をはさんで嵐山と向かい合う山。
解説

「嵐」は、激しく吹く風の「嵐」と、地名の「嵐山」との掛詞。

「紅葉の錦」は、風に散って人々の衣に降りかかる紅葉を、色鮮やかな錦の衣に見立てたもの。「着ぬ人ぞなき」は、誰もが紅葉の錦を着ているということ。

「ぞ」の結びは形容詞「なし」の連体形「なき」。

公任の後悔と得意

現代語訳自分から願い出て(和歌の船を)お引き受けになっただけのことはあって、みごとにお詠みになったものですね。

申し受く
自分から願い出て引き受ける。
あそばす
いろいろな動作について使う尊敬語。ここでは「(歌を)お詠みになる」。
解説

「申し受け給へるかひありてあそばしたりな」は、公任が自分から和歌の船を選んで、その期待どおりにすばらしい歌を詠んだことを、語り手がほめた言葉。主語は公任。

原文
御自おんみずからも係助添加のたまふハ四終止尊→公任なる伝聞連体は係助区別、「作文の格助準体に格助対象ぞ係助強意乗るラ四終止べかり適当連用ける詠嘆連体。

現代語訳公任ご自身も語られたそうだが、「漢詩の船に乗るのがよかったなあ。

御自(おんみずか)ら
ご自身。公任本人のこと。
解説

「なる」は伝聞の助動詞「なり」の連体形。語り手は、公任の言葉を人づてに聞いている。

「作文のに」の「の」は準体格の格助詞で、「作文の(船)に」の意。

「べかり」は適当、「ける」は詠嘆。「漢詩の船に乗ればよかったなあ」と公任が悔やんでいる。

原文
さて副、かばかり副の格助体修詩を格助対象作りラ四連用たら完了未然ましか反実仮想未然ば接助順接仮定、名の格助主格上がらラ四未然む婉曲連体ことも係助強意まさりラ四連用な強意未然まし反実仮想終止。口惜しかりシク連用ける過去連体わざかな終助詠嘆。

現代語訳そうして、この歌ほどすばらしい漢詩を作っていたとしたら、名声の上がることもいっそうまさっていただろうに。残念なことをしたなあ。

かばかり
これほど。
名
名声。評判。
解説

「かばかりの詩」は、さきほどの「小倉山」の歌と同じくらいすばらしい漢詩。

「作りたらましかば、…まさりなまし」は「ましかば~まし」の反実仮想。実際には漢詩を作らなかったことをふまえて、もし作っていたらと想像している。

同じ出来ばえなら和歌より漢詩のほうが名声が上がる、というのは、当時の男性貴族の教養として和歌より漢詩文のほうが重んじられていたから。

「口惜しかりけるわざかな」は、公任が、漢詩の船に乗ってすばらしい漢詩を作らなかったことを残念がっている言葉。

原文
さても接、殿の格助主格、『いづれ代名に格助対象か係助疑問と格助引用思ふハ四終止。』と格助引用のたまはせサ下二連用尊→道長し過去連体に格助対象なむ係助強意、我ながら副心おごりせサ変未然られ自発連用し過去連体。」と格助引用のたまふハ四終止尊→公任なる伝聞連体。

現代語訳それにしても、殿が『どれに(乗るの)かと思う。』とお尋ねになったのには、自分のことながら、得意な気持ちが自然とわいてきたよ。」と(公任は)言われたそうです。

心おごりす
得意になる。
解説

「いづれにかと思ふ」は、道長の「いづれの船にか乗らるべき」と同じことを言っている。「いづれ(の船)にか(乗らむ)と思ふ」のように補って読む。

「のたまはせ」は公任の会話の中の尊敬語で、公任から道長への敬意。

公任が「心おごり」したのは、時の権力者である道長が、自分は三つの道のどれにも優れていると認めてくれていたとわかったから。

「られ」は自発の助動詞「らる」の連用形。心情を表す語に付いている。

語り手の感想

原文
一事ひとことの格助主格すぐるるラ下二連体だに副助類推あるラ変連体に接助逆接確定、かく副いづれ代名の格助体修道も係助強意抜け出でダ下二連用給ひ補・ハ四連用尊→公任けむ過去の伝聞連体は係助区別、いにしへも係助添加侍らラ変未然丁→聞き手ぬ打消連体ことなり断定終止。

現代語訳一つの道に優れるだけでもめったにないことなのに、このようにどの道にもずば抜けておられたというのは、昔にもなかったことでございます。

抜け出づ
抜きん出る。ずば抜けている。
解説

「だに」は類推。「一つのことに優れることでさえ(めったに)ないのに、まして…」と、軽いものをあげて重いものを推し量らせる。

「かく」は、公任のように漢詩・音楽・和歌のどの道にも優れていることを指す。

この一文が、公任の多才さについての語り手の感想。「侍ら」は丁寧語で、語り手から聞き手への敬意。

『大鏡』のほかの話:弓争ひ / 花山天皇の出家① / 道真左遷①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①一年
    ②逍遥
    ③作文
    ④管弦
    ⑤口惜し
    ⑥一事

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    ①ひととせ
    ②しょうよう
    ③さくもん
    ④かんげん
    ⑤くちおし
    ⑥ひとこと

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①逍遥す
    ②堪ふ
    ③のたまはす
    ④あそばす
    ⑤かばかり
    ⑥心おごりす

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    ①船遊びをする
    ②(その道に)優れている・能力がある
    ③おっしゃる(「のたまふ」より敬意が高い)
    ④(歌を)お詠みになる
    ⑤これほど
    ⑥得意になる

B 文法・敬語

  1. 「逍遥せさせ給ひしに」を単語に分け、それぞれの品詞と、活用する語の活用形(助動詞はその意味も)を答えよ。だれの動作かも答えよ。

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    逍遥せ=サ行変格活用動詞「逍遥す」の未然形/させ=尊敬の助動詞「さす」の連用形/給ひ=尊敬の補助動詞「給ふ」(ハ行四段)の連用形/し=過去の助動詞「き」の連体形/に=格助詞。主語は入道殿(道長)。

  2. 「この大納言殿の参り給へるを」の「参り」「給へ」と、「和歌の船に乗り侍らむ」の「侍ら」について、敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。

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    参り=謙譲語、語り手から入道殿(道長)へ。給へ=尊敬語(補助動詞)、語り手から大納言殿(公任)へ。侍ら=丁寧語(補助動詞)、大納言殿(公任)から入道殿(道長)へ。

  3. 次の傍線部を文法的に説明せよ。
    ①のたまふ「なる」は
    ②作文「の」にぞ
    ③心おごりせ「られ」し
    ④作り「たら」「ましか」ば

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    ①「なる」…伝聞・連体形(助動詞「なり」)
    ②「の」…準体格の格助詞(作文の船に、の意)
    ③「られ」…自発・連用形(助動詞「らる」)
    ④「たら」…完了・未然形(「たり」)、「ましか」…反実仮想・未然形(「まし」)

C 現代語訳・内容

  1. 「かの大納言、いづれの船にか乗らるべき」を現代語訳せよ。また、道長がこのように言ったのはなぜか。

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    訳=あの大納言は、いったいどの船に乗られるつもりなのだろう。/理由=公任が漢詩・音楽・和歌のどの道にも優れていると認めていたから。

  2. 「小倉山嵐の風の寒ければ紅葉の錦着ぬ人ぞなき」を現代語訳せよ。また、この歌に用いられている掛詞を説明し、「紅葉の錦」とはどういうことか答えよ。

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    訳=小倉山や嵐山の山風が冷たく吹くので、紅葉が散りかかり、その錦をまとわない人は一人もいない。/掛詞=「嵐」が、激しい風の「嵐」と地名の「嵐山」を掛けている。/紅葉の錦=人々に散りかかる紅葉を、美しい錦の衣に見立てたもの。

  3. 「申し受け給へるかひありてあそばしたりな」とは、だれのどのようなことを述べたものか。言葉を補って現代語訳して答えよ。

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    公任が、自分から願い出て和歌の船に乗り、すばらしい歌を詠んだこと。訳=自分から(和歌の船を)願い出てお引き受けになっただけのことはあって、みごとに(歌を)お詠みになったことですね。

  4. 「さて、かばかりの詩を作りたらましかば、名の上がらむこともまさりなまし」を、「かばかりの詩」の内容がわかるように現代語訳せよ。また、この言葉からは、当時、和歌と漢詩のどちらが重く見られていたと読み取れるか。

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    訳=そうして、(「小倉山」の歌と)同じくらいすばらしい漢詩を作っていたとしたら、名声の上がり方もいっそうまさっていただろうに。/漢詩のほうが和歌より重く見られていた。

  5. 「我ながら心おごりせられし」とあるが、公任が得意になったのはなぜか。

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    道長が「どの船に乗るのか」と尋ねたことで、自分が漢詩・音楽・和歌のどの道にも優れていると、時の権力者である道長に認められていたとわかったから。

  6. 「一事のすぐるるだにあるに、かく…侍らぬことなり」の一文を、言葉を補って現代語訳せよ。また、「かく」は何を指すか。

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    訳=一つの道に優れるだけでもめったにないことなのに、このようにどの道にもずば抜けておられたというのは、昔にもなかったことでございます。/かく=公任が漢詩・音楽・和歌のどの道にも優れていること。