『絵仏師良秀』現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 火事から逃げ出す良秀
  4. 家が焼けるのを見て笑う
  5. 「これこそもうけものだ」
  6. テスト予想問題

『宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)』「絵仏師良秀(えぶっしよしひで)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

自分の家が燃えるのを、妻子を残したまま道の向かいから眺め、「不動尊の火炎の描き方がわかった。もうけものだ」と笑う絵仏師の話です。見舞いに来た人々の常識と、芸の道にすべてをささげる良秀の生き方が対比されます。動詞の活用(下二段・上一段・変格活用)と、係り結びの「こそ」がよく問われます。芥川龍之介の『地獄変』はこの話をもとにしています。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

火事から逃げ出す良秀

原文
これ代名も係助同趣今は係助区別昔、絵仏師ゑぶっし良秀よしひでと格助引用いふハ四連体ありラ変連用けり過去終止。

現代語訳これも今となっては昔のことだが、絵仏師の良秀という人物がいた。

絵仏師
仏の絵を描くことを仕事にする人。
解説

「いふ」の下に「者」「人」などが省略されている(良秀という者がいた)。

原文
家の格助体修隣より格助起点火出で来いできカ変連用て接助単純接続、風おしおほひハ四連用て接助単純接続せめマ下二連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳家の隣から火が出て、風が覆いかぶさるように吹きつけて火が迫ってきたので、

おしおほふ
おおいかぶさる。「おし」は接頭語。
せむ
迫る。
ば
已然形+「ば」で順接の確定条件(〜ので)。
解説

「せめければ」で迫ってきたのは火。風にあおられた火が良秀の家に迫ってきた、ということ。

原文
逃げ出でダ下二連用て接助単純接続、大路おほちへ格助方向出でダ下二連用に完了連用けり過去終止。

現代語訳良秀は家から逃げ出し、大通りまで出てしまった。

大路
大通り。
解説

逃げ出したのは良秀。家の中の仏の絵や妻子を残したまま、自分だけ大通りへ出ている。

現代語訳人が(良秀に注文して)描かせている仏の絵も、家の中にいらっしゃった。

解説

「人の描かする仏」は、人が良秀に注文して描かせている仏の絵。「おはす」は仏への敬意。

原文
また接、衣きぬ着カ上一未然ぬ打消連体妻子めこなど副助例示も係助並列、さながら副内に格助場所ありラ変連用けり過去終止。

現代語訳さらに、きちんとした着物も着ていない妻や子どもなども、そのまま家の中にいた。

衣着ぬ妻子
着物も着ていない妻子。「ぬ」は打消「ず」の連体形。
さながら
そのまま。
解説

「衣」は、人前に出られるようなきちんとした着物のこと。妻子はそうした身なりも整えられないまま、家の中に取り残されている。

原文
それ代名も係助強意知らラ四未然ず打消連用、ただ副逃げ出でダ下二連用たる完了連体を格助対象ことに格助結果しサ変連用て接助単純接続、向かひの格助体修つらに格助場所立てタ四已然り完了終止。

現代語訳良秀はそれも気にかけず、ただ自分が逃げ出せたのを幸いとして、道の向かい側に立っていた。

それ
仏の絵や妻子が家の中に残っていること。
す
「ことにして」で、よいことにして。幸いとして。
つら
側。「向かひのつら」で道の向かい側。
ことにして
よいことにして。それだけで満足して。
解説

「それ」は、仏の絵や妻子が家の中に残っていること。

「ただ逃げ出でたるをことにして」は、自分だけが逃げ出せたことにもっぱら満足している、ということ。完了の助動詞「たり」には、逃げ出した結果が続いている意味(存続)もふくまれる。

家が焼けるのを見て笑う

原文
見れマ上一已然ば接助順接確定、すでに副わ代名が格助体修家に格助対象移りラ四連用て接助単純接続、煙・炎けぶり・ほのほくゆりラ四連用ける過去連体まで副助限界、

現代語訳見ると、火はもう自分の家に燃え移っていて、煙や炎がくすぶり出すころまで、

くゆる
くすぶる。
原文
おほかた副、向かひの格助体修つらに格助場所立ちタ四連用て接助単純接続、眺めマ下二連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳良秀はおおむね向かい側に立ったまま眺めていたところ、

おほかた
だいたい。ほとんど。
原文
「あさましきシク連体こと。」とて格助内容、人ども来とぶらひきとぶらひハ四連用けれ過去已然ど接助逆接確定、さわがガ四未然ず打消終止。

現代語訳「大変なことだ。」と言って人々が見舞いに来たけれども、良秀は少しも慌てない。

来とぶらふ
見舞いに来る。
あさまし
意外なことに驚きあきれる。
とぶらふ
見舞う。
さわがず
ここだけ過去の「けり」でなく現在形(終止形)で終わる。その場に居合わせているような臨場感があり、少しも慌てない良秀の異様な姿が印象づけられる。
ど
已然形+「ど」で逆接の確定条件(〜けれども)。
解説

一つ目の「あさましきこと」は、良秀の家が火事になったことに対して、見舞いの人々が言ったもの。

原文
「いかに副。」と格助引用人言ひハ四連用けれ過去已然ば接助順接確定、向かひに格助場所立ちタ四連用て接助単純接続、家の格助主格焼くるカ下二連体を格助対象見マ上一連用て接助単純接続、うちうなづきカ四連用て接助単純接続、時々副笑ひハ四連用けり過去終止。

現代語訳「どうしたのですか。」と人が言うと、良秀は向かいに立ったまま、家が焼けるのを見て、しきりにうなずいて、ときどき笑った。

いかに
どうしたのか。
うちうなづく
「うち」は接頭語。しきりに(強く)うなずく。
解説

良秀が笑ったのは、燃える家を見て、不動尊の火炎の描き方がわかったことを喜ぶ気持ちから。

原文
「あはれ感、しつる連体せうとくせうとくかな終助詠嘆。年ごろは係助区別わろくク連用描きカ四連用ける詠嘆連体ものかな終助詠嘆。」と格助引用言ふハ四連体ときに格助時間、

現代語訳「ああ、なんというもうけものをしたことか。長年、(不動尊の火炎を)下手に描いてきたものだなあ。」と言うときに、

せうとく
もうけもの。得をすること。
年ごろ
長年の間。
あはれ
感動詞。ああ。
しつる
連体詞。「大変な」の意。
解説

「しつるせうとくかな」は「たいへんなもうけものをしたなあ」。家が焼けているのに、良秀はそれを得をしたと言っている。

程度を表す形容詞は、よいほうから「よし・よろし・わろし・あし」の順。「わろく」もあとの「あしく描きけるなり」の「あしく」も、ここでは絵が「下手だ」という意味。

「わろく描きけるものかな」は、目的語を補うと「(不動尊の火炎を)下手に描いていたものだなあ」。

原文
とぶらひハ四連用に格助目的来きカ変連用たる完了連体者ども、「こ代名は係助提示いかに副、かくて副は係助強調立ちタ四連用たまへ補・ハ四已然尊→良秀る存続連体ぞ終助念押し。あさましきシク連体ことかな終助詠嘆。

現代語訳見舞いに来ていた者たちが、「これはいったいどうして、こんなふうに立っていらっしゃるのか。あきれたことだなあ。

とぶらふ
見舞う。連用形のまま「見舞い」の意に使われる。
かくて
こうして。良秀が家の焼けるのを見て、うなずいたり笑ったりしている様子をさす。

現代語訳何かの霊にとりつかれなさったのか。」と言うと、

もの
人にとりつく霊。もののけ。
解説

二つ目の「あさましきことかな」は、家が燃えているのに笑っている良秀の態度に対して言ったもの。

「これこそもうけものだ」

原文
「なんでふ副ものの格助主格つくカ四終止べき推量連体ぞ終助念押し。年ごろ、不動尊ふどうそんの格助体修火炎くわえんを格助対象あしくシク連用描きカ四連用ける詠嘆連体なり断定終止。

現代語訳良秀は「どうして霊がとりつくことなどあるものか。長年、不動尊の火炎を下手に描いていたのだなあ。

不動尊
不動明王。燃えさかる炎を背にした姿で描かれる。
なんでふ
どうして〜か、いや〜ない(反語)。「何といふ」が変化した語。
原文
今見れマ上一已然ば接助順接確定、かう副こそ係助強意燃えヤ下二連用けれ詠嘆已然と格助引用、心得こころえア下二連用つる完了連体なり断定終止。これ代名こそ係助強意せうとくよ終助詠嘆。

現代語訳今見ると、火はこんなふうに燃えるものだったのだと、納得したのだ。これこそもうけものだよ。

かう
このように。
心得
理解する。納得する。
これ
火の燃え方がよくわかり、不動尊の火炎の描き方がつかめたこと。
こそ
強意の係助詞。結びの「けれ」は已然形。
解説

「これ」は、火の燃え方がわかり、不動尊の火炎の描き方がつかめたこと。

原文
こ代名の格助体修道を格助対象立てタ下二連用て接助単純接続世に格助場所あらラ変未然む仮定連体に格助場合は係助区別、仏だに副助最小限よくク連用描きカ四連用たてまつら補・ラ四未然謙→仏ば接助順接仮定、百千の格助体修家も係助類推出で来いできカ変連用な強意未然む推量終止。

現代語訳この道を仕事にして世を渡っていくからには、仏さえ上手にお描き申し上げれば、百軒や千軒の家だってきっと建つだろう。

道
絵仏師の道。仏画を描く仕事。
立つ
〜を立てる(下二段)。
たてまつらば
未然形+「ば」で順接の仮定条件(〜たら)。「たてまつる」は謙譲語で、話し手の良秀から仏への敬意。
だに
〜だけでも。
解説

「この道を立てて世にあらむには」は、絵仏師を仕事として生きていくからには、ということ。

「立つ」は、「〜を立てる」の意味なら下二段、「〜が立つ」の意味なら四段。本文に何度も出る「立つ」のうち、この「道を立てて」だけが下二段で、ほかの「立てり」「立ちて」は四段。

「百千の家も出で来なむ」は、家が何軒も建つほどの大きな収入が得られる、ということ。

原文
わたう代名たちこそ係助強意、させる連体能のうも係助強意おはせサ変未然尊→見舞いの人々ね打消已然ば接助順接確定、ものを格助対象も係助強意惜しみマ四連用たまへ補・ハ四已然尊→見舞いの人々。」と格助引用言ひハ四連用て接助単純接続、あざ笑ひハ四連用て接助状態こそ係助強意立てタ四已然り存続連用けれ過去已然。

現代語訳おまえさんたちこそ、たいした才能もお持ちでないものだから、物を惜しみなさるのだ。」と言って、あざ笑いながら立っていた。

わたう
「我党・和党」。同輩に親しく、またやや見下して呼びかける語。
わたうたち
おまえさんたち。「わたう」は同輩を親しく、またやや見下して呼ぶ語。ここは見舞いに来た者ども(とぶらひに来たる者ども)をさす。
させる
連体詞。下に打消の語を伴い、「たいした・これという」の意。
惜しみたまへ
「こそ」の結びで已然形。命令形ではないので「惜しみなさい」と訳さない。
解説

良秀があざ笑ったのは、芸の道を理解せず物を惜しむ人々を見下す気持ちから。

原文
そ代名の格助体修のちに断定連用や係助疑問、良秀が格助体修よぢり不動よぢりふどうとて格助内容、今に格助時間人々めで合へハ四已然り存続終止。

現代語訳その後のことだろうか、良秀の「よじり不動」といって、今でも人々がほめたたえ合っている。

や
〜であろうか。下に「あらむ」が省略。
よぢり不動
炎がよじれるように描かれた不動明王の絵。
めで合ふ
ほめたたえ合う。
にや
「にやあらむ」の省略。〜であろうか。
解説

「よぢり不動」が今もほめられているのは、良秀が火事で火の燃え方をつかみ、すぐれた絵仏師になったことを示している。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①おしおほひて
    ②せうとく
    ③なんでふ
    ④衣着ぬ妻子

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    ①おしおおいて
    ②しょうとく
    ③なんじょう
    ④きぬきぬめこ

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①さながら
    ②おほかた
    ③年ごろ
    ④せうとく

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    ①そのまま
    ②だいたい・ほとんど
    ③長年
    ④もうけもの

B 文法

  1. 次の【 】内の用言について、活用の種類・基本形・活用形を答えよ。
    ①良秀と【いふ】ありけり
    ②火【出で来】て
    ③【せめ】ければ
    ④仏も【おはし】けり
    ⑤衣【着】ぬ妻子
    ⑥家の【焼くる】を見て
    ⑦【あしく】描きけるなり
    ⑧かうこそ【燃え】けれ
    ⑨【心得】つるなり
    ⑩この道を【立て】て

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    ①ハ行四段・言ふ・連体形
    ②カ行変格・出で来・連用形
    ③マ行下二段・せむ・連用形
    ④サ行変格・おはす・連用形
    ⑤カ行上一段・着る・未然形
    ⑥カ行下二段・焼く・連体形
    ⑦シク活用・あし・連用形
    ⑧ヤ行下二段・燃ゆ・連用形
    ⑨ア行下二段・心得・連用形
    ⑩タ行下二段・立つ・連用形

  2. 「絵仏師良秀といふありけり」の「いふ」の活用形を答えよ。また、下に省略されている語を補え。

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    連体形。「者」「人」など。

  3. 「かうこそ燃えけれ」「わたうたちこそ……惜しみたまへ」の係助詞「こそ」の結びの語を、それぞれ抜き出せ。

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    けれ/たまへ

C 現代語訳・内容

  1. 「ただ逃げ出でたるをことにして」とあるが、このときの良秀の心境を説明せよ。

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    自分だけが逃げ出せたことをよいことにして、それだけで満足している。

  2. 「うちうなづきて」を現代語訳せよ。また、良秀がうなずいたのはなぜか。

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    訳=しきりにうなずいて。理由=燃える炎を見て、不動尊の火炎の描き方に納得したから。

  3. この話から、良秀はどのような人物だとわかるか。

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    家や家族よりも絵の道を第一にし、火事さえ絵の工夫に生かす、芸術の鬼ともいうべき人物。

  4. 「それも知らず」の「それ」は何を指すか。

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    人が良秀に描かせている仏の絵や、妻子が家の中に残っていること。

  5. 「年ごろはわろく描きけるものかな」を、目的語を補って現代語訳せよ。

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    長年、(不動尊の火炎を)下手に描いていたものだなあ。

  6. 二か所ある「あさましきこと」は、それぞれ何に対して言ったものか。

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    一つ目=良秀の家が火事で燃えていること。二つ目=家が燃えているのに良秀が笑っていること。

  7. 「これこそせうとくよ」の「これ」は何を指すか。

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    実際に火事を見て、火の燃え方(不動尊の火炎の描き方)がわかったこと。

  8. 「この道を立てて世にあらむには」とはどういうことか。

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    絵仏師として生きていくからには、ということ。

  9. 「百千の家も出で来なむ」とはどういうことか。

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    家が百軒も千軒も建つほどの大きな収入が得られる、ということ。

  10. 「あざ笑ひて」とあるが、良秀はどのような気持ちから笑ったのか。

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    芸の道を理解できず、物を惜しむ人々を見下す気持ち。

  11. 次の部分を現代語訳せよ。
    ①なんでふもののつくべきぞ
    ②仏だによく描きたてまつらば
    ③させる能もおはせねば、ものをも惜しみたまへ
    ④今に人々めで合へり

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    ①どうして霊がとりつくはずがあろうか、いや、とりつくはずがない。
    ②仏だけでも上手に描き申し上げたら
    ③たいした才能もお持ちでないので、物を惜しみなさるのだ
    ④今でも人々がほめたたえ合っている。