「らむ」の識別と意味|現在推量・原因推量・伝聞・婉曲の見分け方・接続・例文・練習問題

目次
  1. 「らむ」の活用表
  2. まずは三つの「らむ」を比べる
  3. ①「ウ段+らむ」――助動詞「らむ」
  4. ②「エ段+らむ」――「り」の未然形+「む」
  5. ③「ら」が前の語の一部――未然形の一部+「む」
  6. 助動詞「らむ」の四つの意味
  7. 現在推量「今ごろ〜ているだろう」
  8. 現在の原因推量「どうして〜ているのだろう」
  9. 現在の伝聞「〜とかいう・〜そうだ」
  10. 現在の婉曲「〜ような」
  11. 「らむ」の識別の手順
  12. よくある間違い・入試で問われるポイント
  13. 識別練習
  14. 練習問題
  15. あわせて読みたい

古文に「らむ」と書かれていても、すべてが現在推量の助動詞「らむ」とは限りません。このページでは、助動詞「らむ」の意味・接続・活用と、見た目が同じ「らむ」の見分け方(識別)を、例文で確かめていきます。

「らむ」の活用表

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用の型
らむ 〇 〇 らむ らむ らめ 〇 四段型

未然形・連用形・命令形はありません。已然形「らめ」は、「こそ〜らめ」の係り結びで出てきます。

まずは三つの「らむ」を比べる

次の三つの「らむ」は、それぞれ別のものです。

  • ① あたら夜の月と花とを同じくは、あはれ知れらむ人に見せばや。(『後撰和歌集』春下・源信明)
  • ② 人のいふらむことをまねぶらむよ。(清少納言『枕草子』「鳥は」)
  • ③ 心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花(『古今和歌集』秋下・凡河内躬恒)

「らむ」の識別は、まず接続、つまり「らむ」の直前がどんな形になっているかを見ます。大きく三つに分けて考えます。

直前の形 正体 例
ウ段(終止形)、ラ変型の連体形 助動詞「らむ」 越ゆらむ・いふらむ・あるらむ
エ段(四段の已然形・サ変の未然形) 完了・存続の助動詞「り」の未然形「ら」+助動詞「む」 知れらむ・せらむ
「ら」が前の語の一部 動詞・形容詞・助動詞の未然形の一部+助動詞「む」 折らむ・あらむ・惜しからむ・ざらむ

①「ウ段+らむ」――助動詞「らむ」

助動詞「らむ」は終止形接続です。四段・上二段・下二段などの動詞の終止形はウ段で終わるので、「ウ段+らむ」ならまず助動詞「らむ」を考えます。

ただし、ラ変型の語(あり・をり・なり(断定)・けり など)には連体形に付きます。「あるらむ」「なるらむ」のように、ラ変型の連体形も「る」でウ段になるので、見分け方は同じです。

人のいふらむことをまねぶらむよ。(『枕草子』「鳥は」)

訳:(鸚鵡は)人が言うようなことをまねするそうだよ。

「いふ」「まねぶ」はどちらも四段活用動詞の終止形なので、二つの「らむ」はどちらも助動詞「らむ」です。ただし、意味は同じではありません(あとの「伝聞」「婉曲」の項で説明します)。

②「エ段+らむ」――「り」の未然形+「む」

完了・存続の助動詞「り」は、四段の已然形・サ変の未然形に付きます。どちらもエ段の音になるので、エ段の直後の「らむ」は、まず「り」の未然形「ら」+助動詞「む」を考えます。助動詞「む」は未然形接続なので、「り」の未然形「ら」に付くことができます。

あたら夜の月と花とを同じくは、あはれ知れらむ人に見せばや。(『後撰和歌集』春下・源信明)

訳:もったいないほどすばらしい今夜の月と花とを、同じ見せるなら、ものの情趣をわかっているような人に見せたいものだ。

  • 「知れ」…ラ行四段活用動詞「知る」の已然形
  • 「ら」…存続の助動詞「り」の未然形
  • 「む」…婉曲の助動詞「む」の連体形(あとの体言「人」に続く)

「あはれ知れらむ人」は「情趣を知っているような人」という意味になります。

③「ら」が前の語の一部――未然形の一部+「む」

見た目が「らむ」でも、「ら」が前の語の未然形の一部で、そこに助動詞「む」が付いていることがあります。

心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花(『古今和歌集』秋下・凡河内躬恒)

訳:当て推量で、折るならば折ってみようか。初霜が一面に置いて、どれが花か見分けにくくしている白菊の花を。

  • 「折ら」…ラ行四段活用動詞「折る」の未然形
  • 「む」…意志の助動詞「む」の連体形(係助詞「や」の結び)

このように、「ら」までで一つの語になっているときは、助動詞「らむ」ではありません。ほかにも次のような形があります。

  • ラ変動詞「あり」の未然形+む:心あらむ友もがな。(『徒然草』)
  • ラ行四段動詞の未然形+む:憶良らは今は罷らむ(『万葉集』)
  • 形容詞のカリ活用の未然形+む:なにせむにか命も惜しからむ。(『竹取物語』)
  • 打消「ず」の未然形「ざら」+む:銭あれども用ゐざらむは、(『徒然草』)

助動詞「らむ」の四つの意味

助動詞「らむ」だとわかったら、次にどの意味なのかを考えます。

意味 考え方 基本の訳 例
現在推量 目の前にない現在のことを推量する 今ごろ〜ているだろう 君がひとり越ゆらむ(伊勢物語)
現在の原因推量 目の前の事実の、原因・理由を推量する どうして〜ているのだろう・〜ので〜ているのだろう 花の散るらむ(古今和歌集)
現在の伝聞 人から聞いた現在のことを述べる 〜とかいう・〜そうだ まねぶらむよ(枕草子)
現在の婉曲 はっきり言わず、遠回しに言う 〜ような 人のいふらむこと(枕草子)

現在推量「今ごろ〜ているだろう」

今ほかの場所で起きていて、話し手には見えていないことを想像するときに使います。

風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ(『伊勢物語』二十三段「筒井筒」)

訳:風が吹くと沖の白波が立つ、その「たつ」という名の竜田山を、夜中に今ごろあなたはひとりで越えているのだろうか。

女は、男が竜田山を越えているところを見ているわけではありません。見えない今の男のようすを思いやっているので、現在推量です。

憶良らは今は罷らむ子泣くらむ(『万葉集』巻三・山上憶良)

訳:私憶良めは、もう失礼しましょう。(家では)子どもが今ごろ泣いているでしょう。

「子泣くらむ」は、家にいる子どもの今のようすを推量しています。同じ歌の「罷らむ」は、ラ行四段動詞「罷る」の未然形+意志の「む」で、助動詞「らむ」ではありません。

現在の原因推量「どうして〜ているのだろう」

今起きていることは目の前に見えていて、その原因・理由を推量する用法です。

ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ(『古今和歌集』春下・紀友則)

訳:日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく桜の花は散っているのだろう。

桜が散っていることは見えています。わからないのは「こんなにのどかな日に、なぜ散るのか」という理由です。この歌には疑問の語がありませんが、「どうして」を補って訳します。

吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ(『古今和歌集』秋下・文屋康秀)

訳:吹くとすぐに秋の草木がしおれるので、なるほど、それで山から吹く風を「あらし(荒らし)」と言うのだろう。

山風を「あらし」と呼ぶことは、だれもが知っている事実です。その理由を「草木を荒らすからだろう」と推量しています。「しをるれば」(已然形+ば)が理由を示しています。

現在の伝聞「〜とかいう・〜そうだ」

人から聞いた現在のことを述べる用法です。

人のいふらむことをまねぶらむよ。(『枕草子』「鳥は」)

訳:(鸚鵡は)人が言うようなことをまねするそうだよ。

この段の初めに「こと所(外国)のものなれど」とあるように、鸚鵡は外国の鳥で、作者は話に聞いたことを述べています。後半の「まねぶらむ」は現在の伝聞です。

現在の婉曲「〜ような」

断定を避けて、「〜ような」と遠回しに言う用法です。「らむ+体言」の形で、後ろの名詞を修飾するときによく出ます。

人のいふらむことをまねぶらむよ。(『枕草子』「鳥は」)

前半の「いふらむ」は、後ろの体言「こと」を修飾しています。「人が言うようなこと」と訳せるので、現在の婉曲です。

「らむ」の識別の手順

識別の全体は 古典文法の識別「らむ」 にもまとめています。

よくある間違い・入試で問われるポイント

  • 上二段・下二段・上一段の動詞も終止形はウ段(越ゆ・受く・見る)なので、「越ゆらむ」「見るらむ」は助動詞「らむ」。エ段に見えるのは四段の已然形とサ変の未然形だけです。
  • 「らむ」は終止形接続なので、助動詞「らむ」の直前の語の活用形は終止形(ラ変型は連体形)。「活用形を答えよ」でよく問われます。
  • 歌の「〜らむ」は、疑問の語がなくても「どうして〜のだろう」と原因推量で訳すことがある(「花の散るらむ」)。
  • 「けむ」(過去推量)とまちがえない。「らむ」は今、「けむ」は過去のことを推量する。

識別練習

教科書の古文から、ランダムに出題します。

識別練習 「らむ」

教科書の古文から、10問ずつ出題します。赤字の部分がどれに当たるかを選んでください。

(この練習は JavaScript を有効にすると使えます)

練習問題

「らむ」の練習問題

  1. 助動詞「らむ」の接続を答えよ。

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    終止形。ただし、ラ変型の語には連体形に付く。

  2. 「あたら夜の月と花とを同じくは、あはれ知れらむ人に見せばや」の「らむ」を文法的に説明せよ。

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    「ら」は存続の助動詞「り」の未然形、「む」は婉曲の助動詞「む」の連体形。
    「知れ」が四段動詞「知る」の已然形(エ段)なので、「り」+「む」と分ける。「情趣を知っているような人」の意味。

  3. 「風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ」の「らむ」の意味を答え、傍線部「夜半にや君がひとり越ゆらむ」を現代語訳せよ。

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    意味:現在推量。
    訳:夜中に今ごろあなたはひとりで越えているのだろうか。
    男の今のようすは女には見えていない。

  4. 「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」の「らむ」の意味を答えよ。

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    現在の原因推量。
    花が散るのは見えていて、のどかな日なのに散る理由を推量している。「どうして〜のだろう」と訳す。

  5. 現在推量と現在の原因推量の違いを説明せよ。

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    現在推量は、目の前にない今の事柄そのものを推量する。現在の原因推量は、今の事実はわかっていて、その原因・理由を推量する。

  6. 『枕草子』「人のいふらむことをまねぶらむよ」の二つの「らむ」の意味をそれぞれ答え、全体を現代語訳せよ。

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    「いふらむこと」=現在の婉曲、「まねぶらむよ」=現在の伝聞。
    訳:(鸚鵡は)人が言うようなことをまねするそうだよ。

  7. 現在の婉曲の「らむ」は、どのような形で現れやすいか。

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    「らむ+体言」のように、連体形の「らむ」が後ろの名詞を修飾する形。

  8. 「心あてに折らばや折らむ」の「らむ」を文法的に説明せよ。

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    助動詞「らむ」ではない。「折ら」はラ行四段動詞「折る」の未然形、「む」は意志の助動詞「む」の連体形(「や」の結び)。

  9. 「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ」の二つの「らむ」の違いを、文法的に説明せよ。

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    「罷らむ」:ラ行四段動詞「罷る」の未然形の一部「ら」+意志の助動詞「む」。
    「泣くらむ」:四段動詞「泣く」の終止形+現在推量の助動詞「らむ」。「子どもが今ごろ泣いているだろう」。

  10. 「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ」の「らむ」の意味を答え、「むべ山風をあらしといふらむ」を現代語訳せよ。

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    意味:現在の原因推量。
    訳:なるほど、それで山から吹く風を「あらし」と言うのだろう。
    「あらし」と呼ぶことは事実で、その理由(草木を荒らすから)を推量している。

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