古文に「らむ」と書かれていても、すべてが現在推量の助動詞「らむ」とは限りません。このページでは、助動詞「らむ」の意味・接続・活用と、見た目が同じ「らむ」の見分け方(識別)を、例文で確かめていきます。
「らむ」の活用表
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| らむ | 〇 | 〇 | らむ | らむ | らめ | 〇 | 四段型 |
未然形・連用形・命令形はありません。已然形「らめ」は、「こそ〜らめ」の係り結びで出てきます。
まずは三つの「らむ」を比べる
次の三つの「らむ」は、それぞれ別のものです。
- ① あたら夜の月と花とを同じくは、あはれ知れらむ人に見せばや。(『後撰和歌集』春下・源信明)
- ② 人のいふらむことをまねぶらむよ。(清少納言『枕草子』「鳥は」)
- ③ 心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花(『古今和歌集』秋下・凡河内躬恒)
「らむ」の識別は、まず接続、つまり「らむ」の直前がどんな形になっているかを見ます。大きく三つに分けて考えます。
| 直前の形 | 正体 | 例 |
|---|---|---|
| ウ段(終止形)、ラ変型の連体形 | 助動詞「らむ」 | 越ゆらむ・いふらむ・あるらむ |
| エ段(四段の已然形・サ変の未然形) | 完了・存続の助動詞「り」の未然形「ら」+助動詞「む」 | 知れらむ・せらむ |
| 「ら」が前の語の一部 | 動詞・形容詞・助動詞の未然形の一部+助動詞「む」 | 折らむ・あらむ・惜しからむ・ざらむ |
①「ウ段+らむ」――助動詞「らむ」
助動詞「らむ」は終止形接続です。四段・上二段・下二段などの動詞の終止形はウ段で終わるので、「ウ段+らむ」ならまず助動詞「らむ」を考えます。
ただし、ラ変型の語(あり・をり・なり(断定)・けり など)には連体形に付きます。「あるらむ」「なるらむ」のように、ラ変型の連体形も「る」でウ段になるので、見分け方は同じです。
人のいふらむことをまねぶらむよ。(『枕草子』「鳥は」)
訳:(鸚鵡は)人が言うようなことをまねするそうだよ。
「いふ」「まねぶ」はどちらも四段活用動詞の終止形なので、二つの「らむ」はどちらも助動詞「らむ」です。ただし、意味は同じではありません(あとの「伝聞」「婉曲」の項で説明します)。
②「エ段+らむ」――「り」の未然形+「む」
完了・存続の助動詞「り」は、四段の已然形・サ変の未然形に付きます。どちらもエ段の音になるので、エ段の直後の「らむ」は、まず「り」の未然形「ら」+助動詞「む」を考えます。助動詞「む」は未然形接続なので、「り」の未然形「ら」に付くことができます。
あたら夜の月と花とを同じくは、あはれ知れらむ人に見せばや。(『後撰和歌集』春下・源信明)
訳:もったいないほどすばらしい今夜の月と花とを、同じ見せるなら、ものの情趣をわかっているような人に見せたいものだ。
- 「知れ」…ラ行四段活用動詞「知る」の已然形
- 「ら」…存続の助動詞「り」の未然形
- 「む」…婉曲の助動詞「む」の連体形(あとの体言「人」に続く)
「あはれ知れらむ人」は「情趣を知っているような人」という意味になります。
③「ら」が前の語の一部――未然形の一部+「む」
見た目が「らむ」でも、「ら」が前の語の未然形の一部で、そこに助動詞「む」が付いていることがあります。
心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花(『古今和歌集』秋下・凡河内躬恒)
訳:当て推量で、折るならば折ってみようか。初霜が一面に置いて、どれが花か見分けにくくしている白菊の花を。
- 「折ら」…ラ行四段活用動詞「折る」の未然形
- 「む」…意志の助動詞「む」の連体形(係助詞「や」の結び)
このように、「ら」までで一つの語になっているときは、助動詞「らむ」ではありません。ほかにも次のような形があります。
- ラ変動詞「あり」の未然形+む:心あらむ友もがな。(『徒然草』)
- ラ行四段動詞の未然形+む:憶良らは今は罷らむ(『万葉集』)
- 形容詞のカリ活用の未然形+む:なにせむにか命も惜しからむ。(『竹取物語』)
- 打消「ず」の未然形「ざら」+む:銭あれども用ゐざらむは、(『徒然草』)
助動詞「らむ」の四つの意味
助動詞「らむ」だとわかったら、次にどの意味なのかを考えます。
| 意味 | 考え方 | 基本の訳 | 例 |
|---|---|---|---|
| 現在推量 | 目の前にない現在のことを推量する | 今ごろ〜ているだろう | 君がひとり越ゆらむ(伊勢物語) |
| 現在の原因推量 | 目の前の事実の、原因・理由を推量する | どうして〜ているのだろう・〜ので〜ているのだろう | 花の散るらむ(古今和歌集) |
| 現在の伝聞 | 人から聞いた現在のことを述べる | 〜とかいう・〜そうだ | まねぶらむよ(枕草子) |
| 現在の婉曲 | はっきり言わず、遠回しに言う | 〜ような | 人のいふらむこと(枕草子) |
現在推量「今ごろ〜ているだろう」
今ほかの場所で起きていて、話し手には見えていないことを想像するときに使います。
風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ(『伊勢物語』二十三段「筒井筒」)
訳:風が吹くと沖の白波が立つ、その「たつ」という名の竜田山を、夜中に今ごろあなたはひとりで越えているのだろうか。
女は、男が竜田山を越えているところを見ているわけではありません。見えない今の男のようすを思いやっているので、現在推量です。
憶良らは今は罷らむ子泣くらむ(『万葉集』巻三・山上憶良)
訳:私憶良めは、もう失礼しましょう。(家では)子どもが今ごろ泣いているでしょう。
「子泣くらむ」は、家にいる子どもの今のようすを推量しています。同じ歌の「罷らむ」は、ラ行四段動詞「罷る」の未然形+意志の「む」で、助動詞「らむ」ではありません。
現在の原因推量「どうして〜ているのだろう」
今起きていることは目の前に見えていて、その原因・理由を推量する用法です。
ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ(『古今和歌集』春下・紀友則)
訳:日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく桜の花は散っているのだろう。
桜が散っていることは見えています。わからないのは「こんなにのどかな日に、なぜ散るのか」という理由です。この歌には疑問の語がありませんが、「どうして」を補って訳します。
吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ(『古今和歌集』秋下・文屋康秀)
訳:吹くとすぐに秋の草木がしおれるので、なるほど、それで山から吹く風を「あらし(荒らし)」と言うのだろう。
山風を「あらし」と呼ぶことは、だれもが知っている事実です。その理由を「草木を荒らすからだろう」と推量しています。「しをるれば」(已然形+ば)が理由を示しています。
現在の伝聞「〜とかいう・〜そうだ」
人から聞いた現在のことを述べる用法です。
人のいふらむことをまねぶらむよ。(『枕草子』「鳥は」)
訳:(鸚鵡は)人が言うようなことをまねするそうだよ。
この段の初めに「こと所(外国)のものなれど」とあるように、鸚鵡は外国の鳥で、作者は話に聞いたことを述べています。後半の「まねぶらむ」は現在の伝聞です。
現在の婉曲「〜ような」
断定を避けて、「〜ような」と遠回しに言う用法です。「らむ+体言」の形で、後ろの名詞を修飾するときによく出ます。
人のいふらむことをまねぶらむよ。(『枕草子』「鳥は」)
前半の「いふらむ」は、後ろの体言「こと」を修飾しています。「人が言うようなこと」と訳せるので、現在の婉曲です。
「らむ」の識別の手順
識別の全体は 古典文法の識別「らむ」 にもまとめています。
よくある間違い・入試で問われるポイント
- 上二段・下二段・上一段の動詞も終止形はウ段(越ゆ・受く・見る)なので、「越ゆらむ」「見るらむ」は助動詞「らむ」。エ段に見えるのは四段の已然形とサ変の未然形だけです。
- 「らむ」は終止形接続なので、助動詞「らむ」の直前の語の活用形は終止形(ラ変型は連体形)。「活用形を答えよ」でよく問われます。
- 歌の「〜らむ」は、疑問の語がなくても「どうして〜のだろう」と原因推量で訳すことがある(「花の散るらむ」)。
- 「けむ」(過去推量)とまちがえない。「らむ」は今、「けむ」は過去のことを推量する。
識別練習
教科書の古文から、ランダムに出題します。
識別練習 「らむ」
教科書の古文から、10問ずつ出題します。赤字の部分がどれに当たるかを選んでください。
(この練習は JavaScript を有効にすると使えます)
練習問題
「らむ」の練習問題
助動詞「らむ」の接続を答えよ。
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終止形。ただし、ラ変型の語には連体形に付く。
「あたら夜の月と花とを同じくは、あはれ知れらむ人に見せばや」の「らむ」を文法的に説明せよ。
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「ら」は存続の助動詞「り」の未然形、「む」は婉曲の助動詞「む」の連体形。
「知れ」が四段動詞「知る」の已然形(エ段)なので、「り」+「む」と分ける。「情趣を知っているような人」の意味。「風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ」の「らむ」の意味を答え、傍線部「夜半にや君がひとり越ゆらむ」を現代語訳せよ。
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意味:現在推量。
訳:夜中に今ごろあなたはひとりで越えているのだろうか。
男の今のようすは女には見えていない。「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」の「らむ」の意味を答えよ。
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現在の原因推量。
花が散るのは見えていて、のどかな日なのに散る理由を推量している。「どうして〜のだろう」と訳す。現在推量と現在の原因推量の違いを説明せよ。
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現在推量は、目の前にない今の事柄そのものを推量する。現在の原因推量は、今の事実はわかっていて、その原因・理由を推量する。
『枕草子』「人のいふらむことをまねぶらむよ」の二つの「らむ」の意味をそれぞれ答え、全体を現代語訳せよ。
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「いふらむこと」=現在の婉曲、「まねぶらむよ」=現在の伝聞。
訳:(鸚鵡は)人が言うようなことをまねするそうだよ。現在の婉曲の「らむ」は、どのような形で現れやすいか。
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「らむ+体言」のように、連体形の「らむ」が後ろの名詞を修飾する形。
「心あてに折らばや折らむ」の「らむ」を文法的に説明せよ。
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助動詞「らむ」ではない。「折ら」はラ行四段動詞「折る」の未然形、「む」は意志の助動詞「む」の連体形(「や」の結び)。
「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ」の二つの「らむ」の違いを、文法的に説明せよ。
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「罷らむ」:ラ行四段動詞「罷る」の未然形の一部「ら」+意志の助動詞「む」。
「泣くらむ」:四段動詞「泣く」の終止形+現在推量の助動詞「らむ」。「子どもが今ごろ泣いているだろう」。「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ」の「らむ」の意味を答え、「むべ山風をあらしといふらむ」を現代語訳せよ。
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意味:現在の原因推量。
訳:なるほど、それで山から吹く風を「あらし」と言うのだろう。
「あらし」と呼ぶことは事実で、その理由(草木を荒らすから)を推量している。