古文の学習で避けて通れないのが助動詞です。ここで古文が苦手になる人も多いのですが、助動詞そのものはそれほど難しくありません。このページでは、助動詞で覚えるべき三つのこと(意味・接続・活用)と、その覚え方を説明します。
難しく感じるいちばんの原因は、覚えるべきことを覚えないまま問題を解こうとすることです。数学でいえば、九九を覚えていないのに因数分解をしようとしているようなものです。
① 意味――助動詞は意味を付け加える
助動詞は、動詞などのあとに付いて、意味を付け加える語です。
昔、男ありけり。(『伊勢物語』)
訳:昔、男がいた。
「けり」は過去の意味を付け加えています。
雪降らむ。
訳:雪が降るだろう。
「む」は推量の意味を付け加えています。
現代語でも、助動詞は同じように意味を付け加えています。
| 現代語 | 付け加わる意味 |
|---|---|
| 言わない | 打消 |
| 言わせる | 使役 |
| 言った | 過去 |
| 言うようだ | 推定 |
| 言われる | 受身 |
古文の助動詞も同じです。まず「その助動詞がどんな意味をもつのか」を覚えます。一つの助動詞が複数の意味をもつこと(「む」なら推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲)も多いので、どの意味になるかを文脈から決める練習も必要になります。
② 接続――何形のあとに付くか
助動詞には、それぞれ「何形のあとに付くか」という決まりがあります。これが接続です。
| 助動詞 | 接続 | 正しい形 | まちがった形 |
|---|---|---|---|
| ず(打消) | 未然形 | あら(未然形)+ず | × あり(連用形)+ず |
| けり(過去) | 連用形 | あり(連用形)+けり | × あら(未然形)+けり |
「ず」の前は未然形、「けり」の前は連用形。この決まりを知っていると、文の中で助動詞を見つけたり、直前の語の活用形を判断したりできるようになります。
ただし、上一段・上二段・下一段・下二段活用の動詞は、未然形と連用形が同じ形(「見」「起き」「受け」など)です。この場合、形だけでは未然形か連用形かを決められないので、下に付いている助動詞の接続から判断します。たとえば「受けず」の「受け」は、「ず」が未然形接続なので未然形、「受けけり」の「受け」は、「けり」が連用形接続なので連用形です。
③ 活用――助動詞自身も形を変える
助動詞も動詞と同じように、未然・連用・終止・連体・已然・命令と形を変えます。下にさらに別の助動詞が付くと、その助動詞の接続に合わせて形が変わります。ここが少しややこしいところですが、実際の文で見るとわかりやすくなります。
例:「許されなかった」はどう作る?
古文で「許されなかった」という意味を作ってみます。使うのは次の4語です。
| 語 | 品詞・意味 | 接続 |
|---|---|---|
| 許す | 動詞(サ行四段) | ― |
| る | 助動詞・受身 | 未然形 |
| ず | 助動詞・打消 | 未然形 |
| けり | 助動詞・過去 | 連用形 |
「許す」+「る」+「ず」+「けり」を、接続と活用に従ってつなげます。
したがって、「許さ(未然形)れ(未然形)ざり(連用形)けり(終止形)。」=「許されなかった。」となります。
「ず」の連用形には「ず」と「ざり」がありますが、下に助動詞が続くときはふつう「ざり」を使います。この仕組みがわかれば、助動詞の第一段階はクリアです。あとは知識を入れていきます。
次に覚えること――意味・接続・活用を暗記する
覚えるものは最初に書いた三つです。
- 意味
- 接続
- 活用
ここは、ある程度丸暗記したほうが早いです。「全部覚えなくてもよい」という考え方もありますが、学校の授業や定期テスト、大学受験まで考えるなら、最初に一通り覚えてしまったほうがあとで楽です。一週間くらいかけて、何度も声に出して覚えましょう。
「る・らる」なら、ここまで覚える
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
| らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
声に出すなら、
- 「る・らる」
- 「受身・尊敬・自発・可能」
- 「未然形接続」
- 「れ・れ・る・るる・るれ・れよ」
- 「られ・られ・らる・らるる・らるれ・られよ」
これを何回もくり返します。学校の古典文法書には助動詞の一覧表があるはずなので、まずはそのページを毎日音読するのがおすすめです。このサイトの古典文法一覧でも、助動詞ごとに意味・接続・活用・例文をまとめています。
接続はグループで覚えると楽
一語ずつばらばらに覚えるより、接続ごとにまとめて覚えたほうが整理しやすくなります。
| 接続 | 助動詞 |
|---|---|
| 未然形 | る・らる・す・さす・しむ・む・むず・ず・じ・まし・まほし |
| 連用形 | き・けり・つ・ぬ・たり(完了)・たし・けむ |
| 終止形(ラ変型には連体形) | らむ・らし・べし・まじ・めり・なり(伝聞・推定) |
| 連体形・体言 | なり(断定)・ごとし(「が」「の」にも付く) |
| 体言 | たり(断定) |
| サ変の未然形・四段の已然形 | り |
- 「き」は、カ変・サ変動詞には未然形にも付きます(「こし」「せし」など)。
- 終止形接続の助動詞は、ラ変型の語(あり・なり・けり など)には連体形に付きます(「あるべし」「なるらむ」)。
よくある間違い
- 助動詞の意味だけを覚えて、接続・活用を覚えていない。識別の問題(「なり」「ぬ」「らむ」など)は、接続がわからないと解けません。
- 上一段・上二段・下一段・下二段の動詞の未然形と連用形を、形だけで決めようとする。下に付く語の接続で決めます。
- 「ず」の連用形「ざり」、「べし」の連用形「べかり」のような、助動詞の下に助動詞が付くときの形(補助活用)を覚えていない。
練習問題
助動詞の基本の練習問題
助動詞を学ぶときに覚えるべき三つのことを答えよ。
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意味・接続・活用
「あらず」の「あら」の活用形を答えよ。
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未然形。打消の「ず」は未然形接続だから。
「昔、男ありけり」の「あり」の活用形と、「けり」の意味を答えよ。
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「あり」:ラ変動詞の連用形(「けり」は連用形接続)。
「けり」:過去。「起きず」と「起きけり」の「起き」の活用形をそれぞれ答えよ。
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「起きず」の「起き」:未然形(「ず」が未然形接続)。
「起きけり」の「起き」:連用形(「けり」が連用形接続)。
上二段動詞は未然形と連用形が同じ形なので、下の語で決める。「許されざりけり」を単語に分け、それぞれの品詞・活用形を答えよ。
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許さ(サ行四段動詞「許す」の未然形)/れ(受身の助動詞「る」の未然形)/ざり(打消の助動詞「ず」の連用形)/けり(過去の助動詞「けり」の終止形)
動詞「言ふ」に打消の「ず」と過去の「き」を付けて、「言わなかった」という意味の文末の形にせよ。
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言はざりき
「言ふ」を未然形「言は」に、「ず」を連用形「ざり」にして、「き」の終止形を付ける。助動詞「る・らる」の意味を四つ答えよ。
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受身・尊敬・自発・可能
助動詞「る」の活用を、未然形から命令形まで答えよ。
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れ・れ・る・るる・るれ・れよ(下二段型)
終止形接続の助動詞を三つ答えよ。また、ラ変型の語に付くときは何形に付くか。
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らむ・らし・べし・まじ・めり・なり(伝聞・推定)のうち三つ。
ラ変型の語には連体形に付く。断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の接続の違いを答えよ。
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断定の「なり」は連体形・体言に付き、伝聞・推定の「なり」は終止形(ラ変型には連体形)に付く。
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- 助動詞「む」「むず」の意味・用法
- 「らむ」の識別と意味