『三冊子(さんぞうし)』「師の風雅」の現代語訳・品詞分解・解説です。教科書によっては「不易と変化」という題で載っています。
芭蕉の弟子の服部土芳が、師の俳諧についての考えを書き記した文章です。いつまでも変わらない「不易」と、時とともに変わっていく「変化(流行)」、その二つのもとにある「風雅の誠」とは何かを読み取りましょう。
原文の読み方
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現代語訳・品詞分解・解説
不易と変化、その根本
- 風雅
- ここでは俳諧。
- 万代不易
- いつの世までも変わらないこと。
- 一時の変化
- その時々に応じて変わること(流行)。
現代語訳(先生の俳諧は)この二つに尽きるが、そのおおもとは一つだ。その一つとは、風雅の誠のことである。
- 極まる
- 行き着く。尽きる。
- 本(もと)
- 根本。
- 誠
- 真実。
師の俳諧は「不易」と「一時の変化」の二つに尽きるが、その根本は「風雅の誠」一つである、ということ。
現代語訳不易を知らなければ、本当に(俳諧を)わかっていることにはならない。
「知れるにあらず」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形。「〜であるのではない」。
現代語訳不易というのは、新しい古いに関係なく、変化や流行にもかかわらず、誠にしっかりと根ざして立っている姿である。
- 新古
- 新しいことと古いこと。
不易とは、時代の新しさ古さや流行に左右されず、風雅の誠にしっかり根ざした姿のこと。
- 代々(よよ)
- それぞれの時代。
「その変化」は、その時代時代の歌風(作風)の変化。
現代語訳また一方で、新しい古いにかかわりなく、今の人が見ても昔の人が見たときと変わらず、しみじみと心にしみる歌が多い。
- わたる
- かかわる。
- あはれなり
- しみじみと心にしみる。
今の人が読んでも、昔の人が読んだときと同じように心を打つ歌。これが「不易」の例。
- 心得
- 理解する。
変化(流行)
現代語訳また、さまざまに移り変わるのは、自然の道理である。変化していかなければ、俳風は新しくならない。
- 千変万化
- さまざまに変わること。
- 自然(じねん)の理(ことわり)
- 自然の道理。
- 風
- 俳風。詠みぶり。
時代に合わせて俳諧も変わっていかなければ、俳風は新しくならない、ということ。
現代語訳新しい俳風に移らないというのは、一時の流行に、たまたま詠みぶりが時代に合っただけで、風雅の誠を追い求めないからである。
- 一旦の
- 一時の。
- 口つき
- 詠みぶり。言葉づかい。
- 時を得
- 時流に合ってもてはやされる。
- 責む
- 追い求める。
「これ」は、前の「変化」(新しい俳風)。
「その誠」は「風雅の誠」。新しい俳風に移れないのは、たまたま自分の詠みぶりが一時の流行に合っただけで、風雅の誠を追い求めていないからだ、ということ。
現代語訳誠を追い求めず、心を打ち込まない者は、誠に根ざした変化を知るということがない。ただ人のまねをしていくだけである。
- 凝らす
- 一つに集中させる。
- あやかる
- まねをする。影響を受けて似る。
「人にあやかりて行く」は、自分で誠を求めず、人のまねをしてついていくだけ、ということ。
現代語訳誠を追い求める者は、今いる所に足をとどめていられず、自然に一歩前へ進むのが道理である。
- 据ゑがたし
- とどめておきにくい。
誠を追い求める者は、今の境地にとどまっていられず、自然に一歩ずつ前へ進んでいく。これが誠に根ざした変化(流行)である。
師の教え
現代語訳これから先、俳諧がどれほど変わっていったとしても、誠に根ざした変化は、すべて先生の俳諧なのである。
- 行く末
- 将来。
- 幾千変万化す
- どれほど多く変わっていく。
現代語訳(先生は)「決して昔の人のまねをしてはならない。春夏秋冬が移っていくように物事は改まる、何もかもこれと同じだ」とも言った。
- 仮にも
- かりそめにも。決して。
- 古人の涎をなむ
- 昔の人のまねをする。
- 四時(しいじ)
- 四季。春夏秋冬。
「〜ことなかれ」は「〜してはならない」という禁止。
「古人の涎をなむる」とほぼ同じことを言っているのが、前の「人にあやかりて行く」。
四季が移り変わるように、物事はすべて新しく変わっていく。俳諧も同じだ、ということ。
テスト予想問題
A 読み・語句
次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
①三冊子
②万代不易
③自然の理
④一旦
⑤口つき
⑥涎
⑦四時解答を見る
①さんぞうし
②ばんだいふえき
③じねんのことわり
④いったん
⑤くちつき
⑥よだれ
⑦しいじ次の語の本文中での意味を答えよ。
①風雅
②極まり
③誠
④責め
⑤凝らさ
⑥あやかり
⑦仮にも
⑧四時解答を見る
①俳諧
②行き着き・尽き
③真実
④追い求め
⑤一つに集中させ
⑥まねをし
⑦かりそめにも・決して
⑧四季(春夏秋冬)
B 文法
「まことに知れるにあらず」の「る」「に」をそれぞれ文法的に説明せよ。また、「口つき時を得たるばかりにて」の「に」と文法的に同じか、違うか答えよ。
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る=存続の助動詞「り」の連体形。に=断定の助動詞「なり」の連用形。「ばかりにて」の「に」も断定の助動詞「なり」の連用形で、同じ。
次の接続助詞の意味・用法を答えよ。
①不易を知らざれば
②代々の歌人の歌を見るに
③行く末幾千変万化するとも解答を見る
①順接の確定条件
②順接の確定条件(偶然条件)「〜すると」
③逆接の仮定条件「〜としても」
C 現代語訳・内容
「師の風雅に、万代不易あり。一時の変化あり。この二つに極まり、その本一つなり。」について、①「師」とはだれか。②「その本一つ」の「一つ」とは何か、本文中から抜き出せ。③全体を現代語訳せよ。
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①松尾芭蕉
②風雅の誠
③先生の俳諧には、いつまでも変わらない面があり、その時々に変わっていく面がある。(先生の俳諧は)この二つに尽きるが、その根本は一つである。筆者は「不易」とはどのようなものだと述べているか。本文の歌の例にふれて説明せよ。
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時代の新しさ古さや流行に関係なく、風雅の誠にしっかり根ざした姿のこと。たとえば、今の人が読んでも昔の人が読んだときと変わらず、しみじみと心を打つ歌がそれにあたる。
「変化に移らざれば、風改まらず」を現代語訳せよ。
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(俳諧も)変化していかなければ、俳風は新しくならない。
「一旦の流行に、口つき時を得たるばかりにて、その誠を責めざるゆゑなり」について、①「口つき時を得たる」とはどういうことか。②「その誠」とは何の誠か。③新しい俳風に移れない人は、なぜ移れないと筆者は述べているか。
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①詠みぶりがたまたま時流に合って、もてはやされたということ。
②風雅の誠
③一時の流行に自分の詠みぶりが合っただけで満足し、風雅の誠を追い求めようとしないから。本文中で「古人の涎をなむる」と同じようなことを言っている表現を、十字以内で抜き出せ。また、「仮にも古人の涎をなむることなかれ」を現代語訳せよ。
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抜き出し=人にあやかりて行く。訳=かりそめにも、昔の人のまねをしてはならない。
「責むる者は、その地に足を据ゑがたく、一歩自然に進む理なり」とはどういうことか。説明せよ。
解答を見る
風雅の誠を追い求める者は、今の境地にとどまっていることができず、自然と一歩ずつ前へ進んで新しくなっていくのが道理だ、ということ。