『古今和歌集(こきんわかしゅう)』仮名序(かなじょ)の冒頭「やまと歌は」の現代語訳・品詞分解・解説です。
紀貫之が、和歌とはどのようなものか(本質)と、和歌にはどのような力があるか(効用)を述べた部分です。和歌を植物にたとえた比喩と、二つずつ組になった対句に注意して読みましょう。
原文の読み方
原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。下のボタンで、用言・助動詞・助詞を別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。
現代語訳・品詞分解・解説
和歌の本質
現代語訳和歌というものは、人の心を種として、それがさまざまな言葉の葉となって生い茂ったものなのだ。
- やまと歌
- 和歌。
- よろづ
- たくさん。さまざま。
- 言の葉
- 言葉。
和歌を植物にたとえ、人の心を「種」、そこから生まれる言葉を「葉」にたとえている。心が言葉となって表れたものが和歌だ、ということ。
「ぞ」の結びは「ける」(連体形)。
- ことわざ
- 「こと(出来事)」と「わざ(行い)」。することや、かかわる出来事。
- しげし
- 多い。絶え間ない。
現代語訳心に思うことを、目に見るもの耳に聞くものにことよせて、言葉にして表しているのである。
- つく
- 託す。ことよせる。
- 言ひ出だす
- 言葉に出して言う。
言葉に表しているのは、心に思うこと。それが和歌である。
生きているものはみな歌を詠む
- 蛙(かはづ)
- カジカガエル。きれいな声で鳴く。
「花に鳴く鶯」と「水にすむ蛙」は対句。
現代語訳この世に生きているものすべての中で、どれが歌を詠まないことがあろうか、いや、みな歌を詠むのだ。
- 生きとし生けるもの
- 生きているものすべて。
「生き(動詞)/と(格助詞)/し(副助詞)/生け(動詞)/る(助動詞)」。「と」「し」はどちらも強意。
「いづれか〜ける」は反語。「いづれ」は生きているものすべて(鶯・蛙なども含む)の中の、どれか。鳥や虫の声も歌であり、生きているものはみな歌を詠むということ。
和歌の効用
現代語訳力も使わずに天と地の神々を感動させ、目に見えない霊魂にもしみじみとした思いを起こさせ、
- 天地(あめつち)
- 天と地。ここでは天地の神々。
- 鬼神(おにがみ)
- 目に見えない霊魂、荒々しい神。
- あはれと思はす
- しみじみと感動させる。
「力をも入れずして」は「天地を動かし」にかかる。
現代語訳男と女の仲をもうちとけさせ、勇ましい武士の心までもなごませるのは、歌なのである。
- 和らぐ
- 親しくさせる。なごやかにする。
- 猛し(たけし)
- 勇ましい。荒々しい。
- 武士(もののふ)
- 武人。
- 慰む
- 心をなごませる。
和歌の四つの効用:①力を入れずに天地の神々の心を動かす ②目に見えない鬼神を感動させる ③男女の仲を親しくさせる ④勇猛な武士の心をなごませる。
「天地を動かし/鬼神をもあはれと思はせ」「男女の仲をも和らげ/武士の心をも慰むる」がそれぞれ対句になっている。
テスト予想問題
A 読み・語句
次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
①種
②言の葉
③蛙
④天地
⑤鬼神
⑥男女
⑦猛き
⑧武士解答を見る
①たね
②ことのは
③かわず
④あめつち
⑤おにがみ
⑥おとこおんな
⑦たけき
⑧もののふ次の語の本文中での意味を答えよ。
①やまと歌
②よろづの
③ことわざしげき
④生きとし生けるもの
⑤あはれと思はせ
⑥和らげ解答を見る
①和歌
②さまざまな・たくさんの
③かかわる出来事や行いが多い
④生きているものすべて
⑤しみじみと感動させ
⑥親しくさせ・なごやかにし
B 文法
「生きとし生けるもの」を単語に分け、名詞以外の語を文法的に説明せよ。
解答を見る
生き/と/し/生け/る/もの。生き=カ行四段活用の動詞「生く」の連用形、と=強意の格助詞、し=強意の副助詞、生け=カ行四段活用の動詞「生く」の已然形、る=存続の助動詞「り」の連体形。
次の「なれ」「なり」を文法的に説明せよ。
①よろづの言の葉とぞなれりける
②ことわざしげきものなれば
③言ひ出だせるなり解答を見る
①ラ行四段活用の動詞「なる」の已然形
②断定の助動詞「なり」の已然形
③断定の助動詞「なり」の終止形次の文の係り結びについて、係助詞と結びの語を抜き出し、結びの活用形を答えよ。また、②の係助詞の意味を答えよ。
①よろづの言の葉とぞなれりける
②いづれか歌を詠まざりける解答を見る
①ぞ・ける(連体形)
②か・ける(連体形)。②の「か」は反語。
C 現代語訳・内容
「やまと歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」について、①現代語訳せよ。②この一文では、和歌を何にたとえているか。また、「心」と「言葉」はそれぞれ何にたとえられているか。
解答を見る
①和歌は、人の心を種として、それがさまざまな言葉となったものである。
②植物(にたとえ、心を「種」、言葉を「葉」にたとえている)。「生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける」を現代語訳せよ。また、「いづれ」は何の中のどれをいっているか、本文中から抜き出して答えよ。
解答を見る
訳=生きているものすべての中で、どれが歌を詠まないことがあろうか、いや、みな歌を詠むのだ。「いづれ」=生きとし生けるもの(の中のどれか)。
本文で述べられている和歌の効用を、四つに分けて現代語で答えよ。
解答を見る
①力を入れずに天地の神々の心を動かす。
②目に見えない鬼神をも感動させる。
③男女の仲を親しくさせる。
④勇猛な武士の心をなごませる。本文から、対句になっている部分を二組抜き出せ。
解答を見る
(例)「花に鳴く鶯」と「水にすむ蛙」/「男女の仲をも和らげ」と「猛き武士の心をも慰むる」(ほかに「力をも入れずして天地を動かし」と「目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ」、「人の心を種として」と「よろづの言の葉とぞなれりける」)
筆者は、和歌とはどのようなものだと考えているか。本文全体をふまえて説明せよ。
解答を見る
人が心に思うことを、見たり聞いたりするものにことよせて言葉にしたもので、生きているものはみな詠み、天地の神々や鬼神まで感動させ、人の心をやわらげる力をもつもの。