『徒然草』あだし野の露消ゆる時なく 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 世は定めなきこそいみじけれ
  4. 長生きを戒める
  5. 老いの見苦しさ
  6. テスト予想問題

『徒然草(つれづれぐさ)』第七段「あだし野の露消ゆる時なく」の現代語訳・品詞分解・解説です。「あだし野の露」とも呼ばれます。

人の命がいつまでも続くなら、ものの情趣もないだろう。世の中は無常だからこそすばらしい――兼好の無常観がよく表れた章段です。「露」「煙」が表すもの、主題の一文、「そのほど」の指す内容、長生きを戒める理由、係り結びと「む」「ば」の用法がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

世は定めなきこそいみじけれ

原文
あだし野の格助体修露消ゆるヤ下二連体時なくク連用、鳥部山とりべやまの格助体修煙立ち去らラ四未然で接助打消接続のみ副助強意、住み果つるタ下二連体ならひなら断定未然ば接助順接仮定、

現代語訳あだし野の露が消えるときがなく、鳥部山の煙がいつまでも立ち去らないように、(人が死なずに)この世に最後まで住み続けるのがならわしであるならば、

住み果つ
いつまでも住み続ける。最後まで住み通す。
ならひ
ならわし。
解説

「露」も「煙」も、すぐに消えてしまうもの。どちらもはかない人の命を表している。あだし野は墓地、鳥部山は火葬場で、どちらも死を思わせる場所。

「で」は打消の接続(〜ないで)、「のみ」は強意。「ならば」の「ば」は未然形に付いて順接の仮定条件(もし〜ならば)。実際とは反対の、人が死なない世の中を仮に考えている。

原文
いかに副もののあはれも係助強意なからク未然ん推量連体。

現代語訳どんなにか、ものの情趣もないことだろう。

いかに
どんなにか。
もののあはれ
ものごとにふれて起こる、しみじみとした情趣。
解説

「いかに」を受けて、文末の「ん」が連体形になっている。「ん」は推量。

原文
世は係助区別定めなきク連体こそ係助強意、いみじけれシク已然。

現代語訳世の中は移り変わって定まらないからこそ、すばらしいのだ。

定めなし
無常だ。移り変わって一定しない。
いみじ
すばらしい。(よい意味にも悪い意味にも、程度がはなはだしいことを表す)
解説

この文章の主題を表す一文。人の命に限りがあり、世が移り変わるからこそ、ものの情趣を感じることができる、という考え。

「こそ」の結びで、「いみじ」が已然形「いみじけれ」になっている。

長生きを戒める

原文

現代語訳命あるものを見わたしてみると、人ほど長く生きるものはない。

久し
長い。ここでは命が長いこと。
解説

人をほかの生き物と比べて、人ほど命の長いものはないと述べている。

原文
かげろふの格助主格夕べを格助対象待ちタ四連用、夏の格助体修蟬せみの格助主格春秋はるあきを格助対象知らラ四未然ぬ打消連体も係助強意あるラ変連体ぞ係助強意かし終助念押し。

現代語訳かげろうのように夕方を待つだけで死ぬものや、夏の蟬のように春や秋を知らずに死ぬものもあるのだよ。

かげろふ
とんぼに似た昆虫。成虫になってからの命がごく短い。
解説

かげろうと夏の蟬は、命の短いものの例。

「かげろふの夕べを待ち」と「夏の蟬の春秋を知らぬ」は、形のそろった対句。

「ぞかし」は、係助詞「ぞ」に終助詞「かし」が付いたもので、強く言い聞かせる言い方。

原文
つくづくと副一年ひととせを格助対象暮らすサ四連体ほどだに副助類推も係助強意、こよなうク連用・音のどけしク終止や間助詠嘆。

現代語訳しみじみと一年を暮らす間でさえ、この上なくゆったりと長く感じられることよ。

つくづくと
しみじみと。
こよなし
この上ない。格別だ。
のどけし
ゆったりしている。のんびりしている。
解説

「だに」は類推(〜さえ)。かげろうや蟬に比べれば、人間の一年でさえ十分に長い、ということ。

原文
飽かカ四未然ず打消連用、惜しシク終止と格助引用思はハ四未然ば接助順接仮定、千年ちとせを格助対象過ぐすサ四終止とも接助逆接仮定、一夜ひとよの格助体修夢の格助体修心地こそ係助強意せサ変未然め推量已然。

現代語訳(それでも)満ち足りず、命を惜しいと思うなら、千年生きたとしても、一夜の夢のように(短く)感じるだろう。

飽かず
満足しないで。もの足りなく思って。
解説

「惜し」と思うのは、自分の命。ほかの生き物よりずっと長く生きても満足できない気持ちを言う。

「一夜の夢の心地」は、千年という長い月日でさえ、短くはかないものに感じるということ。

「思はば」は順接の仮定条件、「過ぐすとも」は逆接の仮定条件(たとえ〜としても)。

原文
住み果てタ下二未然ぬ打消連体世に格助場所、醜みにくきク連体姿を格助対象待ちえア下二連用て接助単純接続何かは係助反語せサ変未然ん推量連体。

現代語訳いつまでも住み通せないこの世で、醜い姿になるまで生きながらえて、いったい何の意味があろうか、いや、何の意味もない。

住み果てぬ世
いつまでも住み通すことのできないこの世。命はいつか必ず尽きるということ。
醜き姿
年老いた姿。
待ちえ(待ち得)
待った末に手に入れる。
解説

「何かはせん」は「何の意味があろうか、いや、何の意味もない」。「かは」は反語で、結びの「ん」は連体形。

原文
命長けれク已然ば接助順接確定辱はぢ多しク終止。

現代語訳命が長いと、そのぶん恥をかくことも多い。

辱(はぢ)
恥。
解説

「ば」は已然形に付いて、「〜すると必ず」という意味を表す(恒常条件)。

中国の『荘子』にある言葉をふまえている。四十歳ごろに死ぬのがよいと考える理由がこの一文。

現代語訳長くても四十歳にならないくらいで死ぬようなのが、見苦しくないだろう。

四十(よそぢ)
四十歳。
めやすし
見苦しくない。感じがよい。
解説

「死なん」の「ん」は婉曲(〜ような)。

「こそ」の結びで、「べし」が已然形「べけれ」になっている。

当時は四十歳がすでに老年の入り口と考えられていた。

老いの見苦しさ

原文
そ代名の格助体修ほど過ぎガ上二連用ぬれ完了已然ば接助順接確定、かたちを格助対象恥づるダ上二連体心も係助強意なくク連用、

現代語訳その年ごろを過ぎてしまうと、(衰えた)容貌を恥じる気持ちもなくなり、

かたち
顔だち。容貌。
解説

「そのほど」は、前の文の「四十に足らぬほど」、つまり四十歳ごろを指す。

年老いて衰えた容貌を、恥ずかしいとも思わなくなる、ということ。

原文
人に格助対象出で交じらはハ四未然ん婉曲連体ことを格助対象思ひハ四連用、夕べの格助体修陽ひに格助時間子孫を格助対象愛しサ変連用て接助単純接続、

現代語訳人なかに出て交わろうとばかり考え、人生の晩年に子や孫をかわいがって、

出で交じらふ
人なかに出て交際する。
解説

年をとっても慎みがなく、人の集まる所へ出ていこうとする姿を批判している。

「夕べの陽」は、沈みかけた夕日。残りの命の少ない人生の晩年をたとえている。

原文
さかゆくカ四連体末を格助対象見マ上一未然ん婉曲連体まで副助範囲の格助体修命を格助対象あらましサ四連用、ひたすら副世を格助対象むさぼるラ四連体心のみ副助限定深くク連用、

現代語訳(子孫が)栄えていく行く末を見るまで生きていたいと願い、ひたすらこの世の名誉や利益を欲しがる心ばかりが深くなって、

さかゆく
栄えていく。
末
将来。
あらます
あてにする。期待する。
むさぼる
ひどく欲しがる。
解説

「さかゆく」の主語は子孫、「見ん」の主語は年老いた人。子や孫が栄えていく将来を見届けるまで生きたいと願うこと。

「世をむさぼる心」は、この世の名誉や利益をひたすら欲しがる心。

原文
もののあはれも係助強意知らラ四未然ず打消連用なりゆくカ四連体なん係助強意、あさましきシク連体。

現代語訳ものの情趣も感じとれなくなってゆくのは、なんとも情けない。

あさまし
情けない。あきれるほどだ。
解説

「なん」の結びで、「あさまし」が連体形「あさましき」になっている。

作者が情けないと言っているのは、年老いた人がこの世に執着し、ものの情趣がわからなくなっていくこと。冒頭の「もののあはれ」と対応している。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①鳥部山
    ②一年
    ③千年
    ④一夜
    ⑤四十

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    ①とりべやま
    ②ひととせ
    ③ちとせ
    ④ひとよ
    ⑤よそじ

  2. 本文中で使われている意味を、次の語それぞれについて答えよ。
    ①もののあはれ
    ②定めなし
    ③いみじ
    ④久し
    ⑤のどけし
    ⑥めやすし
    ⑦かたち
    ⑧あらます
    ⑨あさまし

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    ①しみじみとした情趣
    ②無常だ
    ③すばらしい
    ④(命が)長い
    ⑤ゆったりしている
    ⑥見苦しくない
    ⑦容貌
    ⑧期待する
    ⑨情けない

B 文法

  1. 次の【 】内の「ん」の意味を答えよ。
    ①いかにもののあはれもなから【ん】
    ②何かはせ【ん】
    ③四十に足らぬほどにて死な【ん】こそ
    ④人に出で交じらは【ん】こと

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    ①推量
    ②推量
    ③婉曲
    ④婉曲

  2. 次の【 】内の「ば」は、どのような条件を表すか。
    ①住み果つるならひなら【ば】
    ②命長けれ【ば】辱多し

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    ①順接の仮定条件(もし〜ならば)
    ②順接の確定条件のうち、恒常条件(〜すると必ず)

  3. 次の文の係助詞と、それに対する結びの語を示し、結びの活用形も記せ。
    ①世は定めなきこそ、いみじけれ。
    ②一夜の夢の心地こそせめ。
    ③醜き姿を待ちえて何かはせん。

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    ①こそ・いみじけれ(已然形)
    ②こそ・め(已然形)
    ③かは・ん(連体形)

C 現代語訳・内容

  1. 「あだし野の露」「鳥部山の煙」は、それぞれ何を表しているか。

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    どちらもすぐに消えるはかないもので、人の命を表している。

  2. 「世は定めなきこそ、いみじけれ。」を現代語訳せよ。また、作者がそう言えるのはなぜか、本文の言葉を使って説明せよ。

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    訳=世の中は移り変わって定まらないからこそ、すばらしいのだ。
    理由=人の命がいつまでも続くなら「もののあはれ」もないが、無常だからこそ、ものの情趣を感じることができるから。

  3. 「かげろふの夕べを待ち、夏の蟬の春秋を知らぬ」は、どのようなものの例として挙げられているか。

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    命が非常に短いものの例。

  4. 「住み果てぬ世に、醜き姿を待ちえて何かはせん。」を現代語訳せよ。

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    いつまでも住み通すことのできないこの世で、醜い(年老いた)姿になるまで生きながらえて、いったい何の意味があろうか、いや、何の意味もない。

  5. 作者が「長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」と考える理由を、本文中から九字で抜き出せ(句点を含む)。また、この文を現代語訳せよ。

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    理由=命長ければ辱多し。
    訳=長くても四十歳にならないくらいで死ぬようなのが、見苦しくないだろう。

  6. 「そのほど過ぎぬれば」以下で、四十歳を過ぎた人のどのような姿が述べられているか。三つ挙げよ。また、「夕べの陽」は何をたとえているか。

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    姿=容貌の衰えを恥ずかしいと思わなくなる・人なかに出て交際しようとする・子孫の繁栄を見届けるまで長生きしたいと願い、この世の名誉や利益をむやみに欲しがる(そして、ものの情趣がわからなくなる)
    たとえ=人生の晩年