『方丈記(ほうじょうき)』「ゆく河の流れ」の現代語訳・品詞分解・解説です。
『方丈記』の冒頭の部分です。流れ続ける川の水や、消えては生まれる水の泡、朝顔の花とその上の露にたとえて、人と住まいのはかなさを語ります。何が何のたとえになっているか、指示語の内容、対句・倒置、係り結びがよく問われます。
原文の読み方
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現代語訳・品詞分解・解説
川の流れと水の泡
現代語訳川は絶えることなく流れ続けていて、しかも、その水はもとの水ではない。
- しかも
- それでいて
川の流れは絶えることなく続いているように見えるが、そこを流れる水は、いつも新しい水に入れかわっている。変わらないように見えて、実は常に移り変わっている、ということ。
現代語訳よどみに浮かぶ泡は、消えたかと思うとまたでき、長くそのまま残っているためしはない。
- うたかた
- 水の上に浮かぶ泡
- かつ
- 「かつ〜かつ…」で、一方では〜し、一方では…する
- 結ぶ
- (泡が)できる
「ゆく河の流れ」と「淀みに浮かぶうたかた」が対になっている。
「うたかた」は、すぐに消えてしまうはかないもののたとえ。後に出てくる「水の泡」と同じ意味。
- 栖
- 住まい
「かくのごとし」は、前の二文を受けて、この世の人と住まいも、川の流れや水の泡のように、常に移り変わってとどまることがない、ということ。
たとえの関係:「ゆく河の流れ」は栖(住まい)、「淀みに浮かぶうたかた」は人にあたる。
都の住まいと人
現代語訳玉を敷いたようにきれいな都に、棟を連ね、屋根の立派さを張り合っている、身分の上下さまざまな人の住まいは、
- たましき
- 玉を敷きつめたように美しいこと
- 甍
- 屋根の瓦。また、瓦ぶきの屋根
- いやし
- 身分が低い
- 棟
- 屋根のいちばん高いところ。
「棟を並べ甍を争へる」は、家々が高さや立派さを競い合うように立ち並んでいる様子。
「高きいやしき人」は、身分の高い人も低い人も、ということ。
現代語訳何代たってもなくならないもののように思えるが、それが本当かと調べてみると、昔からあった家はほとんどない。
- 世々
- 何代も。代々。
「これ」は、都の住まいは何代たってもなくならないものだ、ということを指す。
現代語訳ある家は去年焼けて今年建て直したものである。ある家は大きな家がつぶれて小さな家になっている。住んでいる人もこれと同じである。
- あるいは
- ある場合は
「これ」は、焼けて建て直されたり、大きな家が小さな家になったりする、住まいの移り変わりを指す。住む人も住まいと同じように入れかわっている。
現代語訳場所も同じで、人も大勢いるけれども、以前に見知った人は、二、三十人のうち、ほんの一人か二人にすぎない。
場所も人の数も昔と変わらないのに、昔から知っている人はほとんど残っていない。人も絶えず入れかわっているということ。
現代語訳朝に死ぬ人があれば、夕方に生まれる人もあるという世のならわしは、まったく水の泡にそっくりなことだ。
- 朝
- 朝
- ならひ
- 世の常。ならわし
朝にだれかが死に、夕方にはだれかが生まれる人の世のありさまが、一方では消え、一方ではできる水の泡に似ている、ということ。
「ぞ」の結びは「ける」(連体形)。
人と住まいのはかなさ
現代語訳わからないことだ、生まれたり死んだりする人が、いったいどこから来て、どこへ去っていくのかは。
倒置法。ふつうの順序なら「生まれ死ぬる人、いづ方より来たりて、いづ方へか去る(か)、知らず」となる。
「いづ方より来たりて」と「いづ方へか去る」、「生まれ」と「死ぬる」が対句になっている。
「か」の結びは「去る」(連体形)。
現代語訳これもまたわからない、(この世での)一時の住まいなのに、だれのために心を苦しめ、何をもって目を喜ばせようとするのかは。
- 宿り
- 住まい。「仮の宿り」は、この世での一時の住まい
「また知らず」も、前の文と同じく倒置になっている。
「仮の宿り」は、無常のこの世での一時の住まい。人がこの世に生きるのはわずかな間なので、住まいも仮のものにすぎない、という考え方による。
「誰がためにか」の「か」は、結びにあたる「悩まし」で文が終わらずに続くため、結びが流れている。「何によりてか」の「か」の結びは「しむる」(連体形)。
現代語訳その主人と住まいとが、競い合うようにはかなく消えていく様子は、たとえて言えば、朝顔の花とそこに置いた露(の関係)と変わらない。
- 無常
- すべてのものは移り変わり、とどまることがないということ
- いはば
- たとえて言えば
「無常を争ふ」は、主人と住まいが、どちらが先に滅びるかを争うように、はかなく消えていくこと。
たとえの関係:露は主(人)、花(朝顔)は栖(住まい)にあたる。
現代語訳あるときは露が先に落ちて、花はあとに残る。けれども、残ったところで朝日を受けて枯れてしまう。
主人が先に死んで住まいが残っても、その住まいもやがて滅びてしまう、ということ。
「ぬ」の識別:「枯れぬ」の「ぬ」は、連用形に付いた完了「ぬ」の終止形。「尽きせぬ」の「ぬ」は、未然形に付いた打消「ず」の連体形。
現代語訳あるときは花がしぼんで露がまだ消えずにいる。消えずにいるといっても、夕方まで残ることはない。
- なほ
- やはり。まだ
住まいが先に滅びて主人が残っても、その人も長くは生きられない、ということ。「露」が「夕べを待つことなし」と、露を人のように言っている。
テスト予想問題
A 読み・語句
次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
①例
②栖
③棟
④甍
⑤世々
⑥去年
⑦古
⑧朝解答を見る
①ためし
②すみか
③むね
④いらか
⑤よよ
⑥こぞ
⑦いにしえ
⑧あした本文で使われている意味を答えよ。
①うたかた
②かつ〜かつ…
③たましき
④いやし
⑤ならひ
⑥無常
⑦異なり解答を見る
①水面に浮かぶ泡
②一方では〜し、一方では…する
③玉を敷きつめたように美しいこと
④身分が低い
⑤世の常・ならわし
⑥すべてのものが移り変わって、とどまることがないこと
⑦違っている
B 文法
次の助動詞の意味と活用形を答えよ。
①甍を争へる
②尽きせぬもの
③昔ありし家
④今年作れり
⑤目を喜ばしむる
⑥朝日に枯れぬ解答を見る
①存続・連体形
②打消・連体形
③過去・連体形
④完了・終止形
⑤使役・連体形
⑥完了・終止形次の係助詞の結びの語を抜き出せ。結びがないものは、その理由を説明せよ。
①水の泡にぞ
②いづ方へか
③誰がためにか
④何によりてか解答を見る
①ける
②去る
③結びにあたる「悩まし」が連用形で、文が下に続いているため、結びが流れている(結びの消滅)。
④しむる
C 現代語訳・内容
「世の中にある人と栖と、またかくのごとし」について、①現代語訳せよ。②「かくのごとし」とはどういうことか、説明せよ。③「人」「栖」は、それぞれ前の文の何にたとえられているか。
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①この世に生きる人とその住まいも、またこれと同じである。②人や住まいも、川の流れや淀みの泡のように、変わらないように見えて常に移り変わり、長くとどまることがないということ。③人=淀みに浮かぶうたかた、栖=ゆく河の流れ
①「棟を並べ甍を争へる」とは、どのような様子か。②「これをまことかと尋ぬれば」の「これ」の指す内容を答えよ。
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①家々が高さや立派さを競い合うように立ち並んでいる様子。②都の身分の高い人や低い人の住まいは、何代たってもなくならないものだということ。
「住む人もこれに同じ」の「これ」は何を指すか。また、「朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける」とは、何が、どのような点で水の泡に似ているというのか。
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「これ」=住まい(が焼けたり小さくなったりして移り変わること)。人の世のありさまが、だれかが死ぬ一方でだれかが生まれる点で、一方では消え一方ではできる水の泡に似ている。
「知らず、生まれ死ぬる人、いづ方より来たりて、いづ方へか去る」について、①用いられている修辞法を二つ答えよ。②現代語訳せよ。
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①倒置法・対句
②わからないことだ、生まれたり死んだりする人が、いったいどこから来て、どこへ去っていくのかは。「その主と栖と、無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず」について、①「無常を争ふ」とはどういうことか。②「露」と「花(朝顔)」は何のたとえか。本文から一字ずつ抜き出せ。
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①主人と住まいが、どちらが先に滅びるかを争うように、はかなく消えていくこと。②露=主、花=栖
①この文章に述べられている思想を漢字三字で答えよ。②『方丈記』の作者名と、成立した時代を答えよ。③『方丈記』とともに三大随筆と呼ばれる作品を二つ、作者名とともに答えよ。
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①無常観
②鴨長明、鎌倉時代(初期)
③清少納言『枕草子』、兼好法師『徒然草』