『沙石集』いみじき成敗 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 銀貨を拾った餅売り
  4. 持ち主の言いがかり
  5. 国守の裁き
  6. テスト予想問題

『沙石集(しゃせきしゅう)』「いみじき成敗(せいばい)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

中国の貧しい餅売りの夫が、銀貨六枚の入った袋を拾います。正直な妻の言葉に従って持ち主に返したところ、持ち主はお礼が惜しくなり、「七枚あったはずだ」と言いがかりをつけました。争いを裁くことになった国守は、どのような判決を下したのでしょうか。会話の話し手、係り結び(結びの流れ・結びの省略)、何度も出てくる「正直」という言葉に注意して読みましょう。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

銀貨を拾った餅売り

原文
唐土もろこしに格助場所いやしきシク連体夫婦ふうふありラ変終止。餅もちを格助対象売りラ四連用て接助単純接続世よを格助対象渡りラ四連用けり過去終止。

現代語訳中国に、身分の低い貧しい夫婦がいた。餅を売って生計を立てていた。

唐土
中国。
いやし
貧しい。身分が低い。
渡る
「世を渡る」で、暮らしを立てる。
解説

「唐土」と同じ意味で、話の終わりに「宋朝」という言葉が使われている。

原文
夫をつとの格助主格、道の格助体修ほとりに格助場所して接助単純接続餅を格助対象売りラ四連用ける過去連体に格助時間、人の格助主格袋ふくろを格助対象落としサ四連用たり完了連用ける過去連体を格助対象見マ上一連用けれ過去已然ば接助順接確定、銀しろかねの格助体修軟挺なんてい六むつありラ変連用けり過去終止。

現代語訳夫が道ばたで餅を売っていたときに、だれかが袋を落としたのを見ると、(中に)銀貨が六枚入っていた。

軟挺
銀貨。
原文
家いへに格助帰着持ちタ四連用て接助単純接続帰りラ四連用ぬ完了終止。

現代語訳(夫は袋を)家に持って帰った。

原文
妻つま、心こころ素直すなほにナリ連用欲よくなきク連体者ものに断定連用て接助単純接続、「我われら代名は係助区別商あきなうハ四連用・音て接助単純接続過ぐれガ上二已然ば接助順接確定、ことも係助強意欠けカ下二未然ず打消終止。

現代語訳妻は、心がまっすぐで欲のない者で、「私たちは商売をして暮らしているので、何も不自由はありません。

商ふ
商売をする。
過ぐ
暮らす。
こと欠く
不自由する。
解説

「商うて」は「商ひて」のウ音便。具体的には「餅を売り」のこと。

原文
こ代名の格助体修主ぬしいかばかり副嘆き求むマ下二終止らん現在推量連体。いとほしきシク連体ことなり断定終止。主を格助対象尋ねナ下二連用て接助単純接続返しサ四連用たまへ補・ハ四命令尊→夫。」と格助引用言ひハ四連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳この持ち主はどれほど嘆いて探しているでしょう。気の毒なことです。持ち主を探してお返しなさい。」と言ったので、

主
持ち主。
いかばかり
どれほど。
いとほし
気の毒だ。
解説

「らん」は、疑問の副詞「いかばかり」を受けて連体形で結んでいる。

夫婦が持ち主を探したのは、自分たちは暮らしに困っておらず、落とした人を気の毒に思ったから。

持ち主の言いがかり

原文
「まことに副。」とて格助内容、あまねくク連用触れラ下二連用ける過去連体に接助単純接続、主と格助引用いふハ四連体者出で来いできカ変連用て接助単純接続、これ代名を格助対象得ア下二連用て接助単純接続あまりに副うれしくシク連用て接助単純接続、

現代語訳(夫は)「もっともだ。」と言って、広く知らせて回ったところ、持ち主という者が現れて、これを受け取ってあまりにうれしくて、

あまねし
広く。
触る
知らせる。
まことに
ほんとうに。もっともだ。
原文
「三みつを格助対象ば係助区別奉たてまつらラ四未然謙→夫ん意志終止。」と格助引用言ひハ四連用て接助単純接続、すでに副分かつタ四終止べかり意志連用ける過去連体とき、

現代語訳「三枚はお礼に差し上げましょう。」と言って、今にも分けようとしたときに、

すでに
今にも。まさに。
解説

持ち主は、初めはうれしさのあまり、半分の三枚をお礼に渡そうとした。

原文
思ひ返しサ四連用て接助単純接続、煩わづらひを格助対象出いださサ四未然ん婉曲連体が格助体修ために格助目的、

現代語訳考えを変えて、もめごとを起こそうとして、

思ひ返す
考え直す。
煩ひ
面倒なこと。もめごと。
解説

持ち主が「思ひ返し」たのは、お礼に三枚渡すのが惜しくなったから。

原文
「七ななつこそ係助強意ありラ変連用し過去連体に接助逆接確定、六つあるラ変連体こそ係助強意不思議なれナリ已然。一ひとつは係助区別隠さサ四未然れ尊敬連用尊→夫たる存続連体に断定連用や係助疑問。」と格助引用言ふハ四終止。

現代語訳「七枚あったのに、六枚しかないのはおかしい。一枚はお隠しになったのではないか。」と言う。

解説

「七つこそありしに」は、「こそ」の結びが已然形「しか」になるはずのところ、接続助詞「に」が続いたため連体形「し」になり、文が終わらずに続いている(結びの流れ)。

「六つあるこそ不思議なれ」は、「こそ」の結びが形容動詞「不思議なり」の已然形「不思議なれ」。

「隠されたるにや」は、「や」の下に「あらん」が省略されている(結びの省略)。「一枚はお隠しになったのではないか」と、拾った夫を疑うふりをして、お礼を渡さずにすませようと言いがかりをつけている。

原文
「さる連体ことなしク終止。もとより副六つこそ係助強意ありラ変連用しか過去已然。」と格助引用論ずるサ変連体ほどに格助時間、

現代語訳(夫が)「そんなことはない。もとから六枚だった。」と言い争ううちに、

さる
そのような。
論ず
言い争う。
解説

「さることなし。もとより六つこそありしか」は夫(拾い主)の言葉。「こそ」の結びは「しか」(過去の助動詞「き」の已然形)。

原文
果はては係助区別国守くにのかみの格助体修もとに格助場所して接助単純接続、これ代名を格助対象ことわらラ四未然しむ使役終止。

現代語訳とうとう国守のもとで、この争いを裁いてもらうことになった。

国守
国の長官。
ことわる
筋道を明らかにする。裁く。
解説

「ことわらしむ」は、(国守に)裁定させる。「しむ」は使役。

裁判になったのは、持ち主は七枚あったと言い、夫はもとから六枚だったと言って、決着がつかなかったから。

国守の裁き

原文
国守、眼まなこさかしくシク連用して接助単純接続、こ代名の格助体修主は係助区別不実ふじつナリ語幹の格助体修者なり断定終止、こ代名の格助体修男をとこは係助区別正直しやうぢきナリ語幹の格助体修者と格助引用見マ上一連用ながら接助逆接確定、

現代語訳国守は人を見る目が確かで、この持ち主は不誠実な者だ、この男は正直者だと見てとったものの、

眼
ものを見抜く力。
さかし
賢い。しっかりしている。
不実なり
誠実でない。うそつき。
原文
不審ふしんなりナリ連用けれ過去已然ば接助順接確定、か代名の格助体修妻を格助対象召しサ四連用尊→国守て接助単純接続、別べつの格助体修所にて格助場所、ことの格助体修子細しさいを格助対象尋ぬるナ下二連体に接助順接確定、

現代語訳(それでも)はっきりしなかったので、その妻を呼び出して、(夫とは)別の所で、事件の詳しいいきさつを尋ねたところ、

不審なり
疑わしい。はっきりしない。
召す
お呼びになる。
子細
詳しい事情。
解説

妻を夫とは別の所で問いただしたのは、夫婦が口裏を合わせられないようにして、夫の言い分が本当かどうかを確かめるため。

原文
夫が格助体修状じやうに格助比較少しも副たがはハ四未然ず打消終止。こ代名の格助体修妻は係助区別きはめたる連体正直ナリ語幹の格助体修者と格助引用見マ上一連用て接助単純接続、

現代語訳夫の申し立てと少しも違わない。この妻はこのうえない正直者だと見て取って、

状
申し立て。言い分。
たがふ
違う。
きはめたる
この上ない。
解説

妻の話が夫の言い分と少しも違わなかったので、国守は夫婦が正直であることを確かめた。

原文
か代名の格助体修主不実ナリ語幹の格助体修こと確かなりナリ連用けれ過去已然ば接助順接確定、国守の格助体修判はんに格助場所いはく、

現代語訳あの持ち主がうそをついていることは確かだったので、国守が判決で言うことには、

判
判決。
いはく
「言ふ」のク語法。言うことには。
解説

「かの主不実のこと確かなりければ」は、「主」の下に「が」、「こと」の下に「は」を補って読む。

原文
「こ代名の格助体修こと確かナリ語幹の格助体修証拠しようこなけれク已然ば接助順接確定、判はんじがたしク終止。ただし接、ともに正直ナリ語幹の格助体修者と格助引用見えヤ下二連用たり完了終止。

現代語訳「この件は確かな証拠がないので、判断しにくい。ただし、どちらも正直者と見える。

解説

国守は、持ち主がうそをついていると見抜いていながら、あえて「ともに正直の者」と言っている。持ち主の「七枚あった」という言葉を正直なものと認めてしまうことで、持ち主が反論したり、言ったことを取り消したりできないようにしている。

原文
夫妻ふさいまた副言葉ことば変はらラ四未然ず打消連用、主の格助体修言葉も係助添加正直にナリ連用聞こゆれヤ下二已然ば接助順接確定、

現代語訳夫と妻はまた言葉が食い違わず、持ち主の言葉も正直に聞こえるので、

解説

「主の言葉も正直に聞こゆれば」と、ここでも持ち主の言葉を「正直」と言って、反論を封じている。

原文
七つあらラ変未然ん婉曲連体軟挺を格助対象尋ねナ下二連用て接助単純接続取るラ四終止べし命令終止。これ代名は係助提示六つあれラ変已然ば接助順接確定、別の格助体修人の格助体言の代用に断定連用こそ係助強意。」

現代語訳(持ち主は)七枚入っているという銀貨を探し出して受け取るがよい。こちらは六枚なのだから、ほかの人のものであろう。」と

の
人のもの。
解説

「人の」の「の」は、「人のもの」という意味を表す(体言の代わり)。

「にこそ」の下に「あらめ」が省略されている(結びの省略)。「別の人のものであろう」。

持ち主の言葉どおりなら袋には七枚入っているはずなので、六枚入りのこの袋は別の人が落としたもの、という理屈になる。

原文
とて格助引用、六つながら夫妻に格助対象給たまはりラ四連用尊→国守けり過去終止。

現代語訳言って、六枚とも夫婦にお与えになった。

六つながら
六つ全部。
給はる
お与えになる。
原文
宋朝そうてうの格助体修人、いみじきシク連体成敗せいばいと格助引用ぞ係助強意、あまねくク連用ほめののしりラ四連用ける過去連体。

現代語訳宋の国の人々は、見事な裁きだと、広くほめたたえた。

宋朝
宋の国。ここは中国のこと。
いみじ
すばらしい。見事だ。
成敗
裁き。裁定。
ほめののしる
盛んにほめる。
ののしる
大声を出して騒ぐ。「ほめののしる」で、盛んにほめる。
解説

「ぞ」の結びは「ける」(過去の助動詞「けり」の連体形)。

人々が「いみじき成敗」とほめたのは、欲を出してうそをついた持ち主は何も得られず、正直な夫婦が銀貨を手に入れるという結末になる裁きだったから。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①唐土
    ②銀
    ③軟挺
    ④国守
    ⑤眼
    ⑥宋朝

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    ①もろこし
    ②しろかね
    ③なんてい
    ④くにのかみ
    ⑤まなこ
    ⑥そうちょう

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①いやし
    ②いとほし
    ③あまねし
    ④ことわる
    ⑤さかし
    ⑥給はる(給はりけり)

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    ①貧しい・身分が低い
    ②気の毒だ
    ③広く行き渡っている(あまねく=広く)
    ④筋道を明らかにする・裁く
    ⑤賢い・しっかりしている
    ⑥お与えになる

B 文法

  1. 次の各文の係助詞と、その結びの語を抜き出し、結びの活用形を答えよ。
    ①「六つあるこそ不思議なれ。」
    ②「もとより六つこそありしか。」
    ③「いみじき成敗とぞ、あまねくほめののしりける。」

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    ①こそ・不思議なれ(已然形)
    ②こそ・しか(已然形)
    ③ぞ・ける(連体形)

  2. 「一つは隠されたるにや」「別の人のにこそ」の下に省略されている語をそれぞれ答え、「一つは隠されたるにや」を現代語訳せよ。

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    省略=あらん(あらむ)/あらめ。 訳=一枚はお隠しになったのではないか。

  3. 「七つこそありしに」で、「こそ」の結びはどのようになっているか。説明せよ。

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    「こそ」の結びは已然形「しか」になるはずだが、接続助詞「に」が続いたため、連体形「し」となり、結びが成立していない(結びの流れ)。

  4. 次の傍線部の品詞名を答えよ。
    ①欲【なき】者にて
    ②三つをば【奉ら】ん
    ③不実のこと【確かなり】ければ
    ④【ただし】、ともに正直の者と見えたり
    ⑤軟挺を尋ねて取る【べし】

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    ①形容詞
    ②動詞
    ③形容動詞
    ④接続詞
    ⑤助動詞

C 内容

  1. 次の会話はそれぞれだれの言葉か。
    ①「我らは……返したまへ。」
    ②「三つをば奉らん。」
    ③「さることなし。もとより六つこそありしか。」

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    ①妻
    ②持ち主(落とし主)
    ③夫(拾い主)

  2. 持ち主が「思ひ返して」、「七つこそありしに、六つあるこそ不思議なれ」と言ったのはなぜか。

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    お礼に三枚を渡すのが惜しくなり、言いがかりをつけて渡さずにすませようとしたから。

  3. 国守は、夫が正直であることをどのようにして確かめたか。

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    夫の妻を呼んで、夫とは別の所で詳しい事情を尋ね、その話が夫の言い分と少しも違わないことを確かめた。

  4. 国守がうそつきだと見抜いている持ち主のことを、判決の中で「正直の者」と言ったのはなぜか。

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    持ち主の「七枚あった」という言葉をうそと決めつけず、正直なものとして認めてしまえば、六枚入りのこの袋は持ち主のものではないことになり、持ち主は言い返すことも、言ったことを撤回することもできなくなるから。

  5. 宋朝の人が国守の裁きを「いみじき成敗」とほめたのはなぜか。

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    欲を出してうそをついた持ち主は何も得られず、正直な夫婦が銀貨を手に入れるという、正直者が報われる裁きだったから。