『矛盾』書き下し文・現代語訳・意味・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 盾を自慢する
  3. 矛を自慢する
  4. 商人が答えられない
  5. 結論(韓非の主張)
  6. テストで問われるポイント
  7. テスト予想問題

『矛盾(むじゅん)』の書き下し文・現代語訳・句法・故事成語の意味を解説します。出典は、法家の思想書『韓非子』(難一)です。教科書によっては、楚の人が答えられなかったところまでを教材にしています。

書き下し文・現代語訳・解説

盾を自慢する

本文(訓読文)

白文楚人有鬻盾与矛者。

書き下し楚の人に盾(たて)と矛(ほこ)とを鬻(ひさ)ぐ者有り。

現代語訳楚の国の人に、盾と矛とを売る者がいた。

楚
春秋・戦国時代の国の名。
盾与矛
「盾と矛と」。「与」は並列を表し、AとBとを(並べる)。
鬻
「ひさグ」。売る。
有~者
「~者有り」。~する者がいた。

白文誉之曰、「吾盾之堅、莫能陥也。」

書き下し之を誉めて曰はく、「吾が盾の堅きこと、能く陥す莫きなり。」と。

現代語訳(その商人が)盾をほめて言うことには、「私の盾の堅いことといったら、突き通せるものはない。」と。

誉
ほめる。
曰
「いはク」。言うことには。
之
盾を指す。
莫
「なシ」。ない。「無」と同じ。
能
「よク」。~できる。
陥
突き通す。
也
断定を表す。

矛を自慢する

本文(訓読文)

白文又誉其矛曰、「吾矛之利、於物無不陥也。」

書き下し又其の矛を誉めて曰はく、「吾が矛の利(するど)きこと、物に於いて陥さざる無きなり。」と。

現代語訳また、その矛をほめて言うことには、「私の矛の鋭いことといったら、どんなものでも突き通さないものはない。」と。

利
「するどシ」。鋭い。
於物
「物に於いて」。どんなものに対しても。
無不陥
「陥さざる無し」。突き通さないものはない。二重否定。

商人が答えられない

本文(訓読文)

白文或曰、「以子之矛、陥子之盾、何如。」

書き下し或(あ)るひと曰はく、「|子(し)の矛を以(も)つて、子の盾を陥さば、何如(いかん)。」と。

現代語訳ある人が言うことには、「あなたの矛で、あなたの盾を突いたら、どうなるのか。」と。

或
「あルひと」。ある人。
子
あなた。
以
「もつテ」。~で(道具・手段)。
何如
「いかん」。どうか。状態をたずねる。

白文其人弗能応也。

書き下し其の人応ふること能はざるなり。

現代語訳その商人は、答えることができなかった。

弗
「ず」。「不」と同じ打ち消し。
能
ここは「不能」の形で「~することができない」。
応
答える。

結論(韓非の主張)

本文(訓読文)

白文夫不可陥之盾、与無不陥之矛、不可同世而立。

書き下しそれ陥すべからざるの盾と、陥さざる無きの矛とは、世を同じくして立つべからず。

現代語訳そもそも、突き通すことのできない盾と、突き通さないものはない矛とは、同じ世に並び立つことはできない。

夫
「そレ」。そもそも。文頭で話を改める語。
不可陥
「陥すべからず」。突き通すことができない。
与
「と」。AとBと。
同世
世を同じくする。同じ時代に存在する。
立
並び立つ。両立する。

白文今尭舜之不可両誉、矛盾之説也。

書き下し今尭(ぎょう)・舜(しゅん)の両(ふた)つながら誉(ほ)むべからざるは、矛盾の説なり。

現代語訳今、尭と舜の二人をどちらも(完全な聖王として)ほめることができないのは、この矛と盾の話と同じ道理である。

尭・舜
古代の聖王。儒家が理想の君主とした人物。
両誉
二人を同時にほめる。
説
話。道理。

テストで問われるポイント

  • 出典=『韓非子』。法家の韓非の著。
  • 「与」=「と」(並列)。「莫」=なし。「能」=よく。「利」=するどし。「或」=あるひと。
  • 「無不陥」=二重否定。「陥さざる無し」。
  • 「何如」=いかん。どうか。
  • 「弗」=不と同じ。「応ふること能はざるなり」。
  • 商人が答えられなかった理由=どんなものも突き通す矛と、どんなものも通さない盾は、同時に存在できないから。
  • 「矛盾」=つじつまが合わないこと。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)と意味を答えよ。
    ①与(盾与矛)
    ②利
    ③或
    ④何如

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    ①と/AとBと(並列)
    ②するどし(するどい)/鋭い
    ③あるひと/ある人
    ④いかん/どうか(どうなるか)

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「於物無不陥也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:物に於いて陥さざる無きなり。
    現代語訳:どんなものでも突き通さないものはない。(どんなものでも突き通す)

  2. 「以子之矛、陥子之盾、何如」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:子の矛を以つて、子の盾を陥さば、何如。
    現代語訳:あなたの矛で、あなたの盾を突いたら、どうなるのか。

  3. 「其人弗能応也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:其の人応ふること能はざるなり。
    現代語訳:その商人は答えることができなかった。

C 内容の読み取り

  1. 楚の人は、盾と矛をそれぞれどのようにほめたか。

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    盾=どんなものにも突き通されない(堅い)。
    矛=どんなものでも突き通す(鋭い)。

  2. 「其人弗能応也」とあるが、商人が答えられなかったのはなぜか。

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    その矛でその盾を突くと、盾が通されれば盾の、通されなければ矛の自慢がうそになり、どちらを答えても矛盾してしまうから。

  3. 「不可陥之盾」と「無不陥之矛」について、韓非はどう述べているか。

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    同じ世に並び立つことはできない。

  4. 韓非は「矛盾之説」を、何を批判するために使ったか。

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    儒家が、尭と舜をどちらも完全な聖王としてほめること。