『大鏡』花山天皇の出家③ 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 粟田殿のだまし
  4. 東三条殿の心配
  5. テスト予想問題

『大鏡(おおかがみ)』「花山天皇の出家」③の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。

花山寺に着いて天皇が髪を下ろした後、粟田殿(藤原道兼)が本心を明かす場面と、それを心配した東三条殿(藤原兼家)が護衛をつけていたことが語られる場面です。粟田殿の言葉の「かく」が何を指すか、東三条殿が何を危ぶんだのかをおさえましょう。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

粟田殿のだまし

原文
花山寺に格助場所おはしまし着きカ四連用尊→花山天皇て接助単純接続、御髪みぐしおろさサ四未然せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→花山天皇て接助単純接続のちに格助時間ぞ係助強意、

現代語訳(花山天皇は)花山寺にお着きになって、御髪をお下ろしになった後に、

御髪おろす
髪を下ろして出家する。
おはしまし着く
(おいでになって)着く。「おはします」は「あり・行く・来」の尊敬語。
原文
粟田殿あわたどのは係助区別、「まかり出でダ下二連用謙→花山天皇て接助単純接続、大臣おとどに格助対象も係助強意、変はらラ四未然ぬ打消連体姿、いま一度副見えヤ下二連用、かく副と格助引用案内あない申しサ四連用謙→大臣(兼家)て接助単純接続、必ず副参りラ四連用謙→花山天皇侍ら補・ラ変未然丁→花山天皇む意志終止。」と格助引用申しサ四連用謙→花山天皇給ひ補・ハ四連用尊→粟田殿けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳粟田殿は、「退出いたしまして、父の大臣にも、出家前の変わらない姿をもう一度見せ、これこれと事情を申し上げて、必ず戻って参りましょう。」と申し上げなさったので、

大臣
ここでは父の藤原兼家(東三条殿)。
案内
事情。
まかり出づ
退出する。「出づ」の謙譲語。
解説

「変はらぬ姿」は、出家する前の姿。

「かく」は、これから自分も出家するということ。

※粟田殿は、はじめから出家するつもりはなく、帰るための口実にしている。

原文
「朕ちん代名を格助対象ば係助強意謀るラ四連体なり断定連用けり詠嘆終止。」と格助引用て接助単純接続こそ係助強意泣かカ四未然せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→花山天皇けれ過去已然。

現代語訳「私をだましたのだなあ。」と言ってお泣きになった。

朕
天皇の自称。
解説

「謀るなりけり」の「なりけり」は、気づきを表す。花山天皇は、粟田殿が戻って来るつもりがないことに、ここで初めて気づいた。

原文
あはれにナリ連用悲しきシク連体ことなり断定終止な終助詠嘆。日ごろ、よく副、「御弟子みでしにて格助資格候はハ四未然謙→花山天皇む意志終止。」と格助引用契りラ四連用て接助単純接続、すかしサ四連用申し補・サ四連用謙→花山天皇給ひ補・ハ四連用尊→粟田殿けむ過去伝聞連体が格助体修恐ろしさよ間助詠嘆。

現代語訳しみじみと気の毒で悲しいことだなあ。(粟田殿は)日ごろ、よく、「(出家なさったら)御弟子としてお仕えしましょう。」と約束して、だまし申し上げなさったとかいうのが恐ろしいことですよ。

契る
約束する。
すかす
だます。
解説

「あはれに悲しきことなりな」は、だまされた花山天皇に対する語り手の同情。

「日ごろ」は、「契りて」にかかる。

「御弟子にて候はむ」は、粟田殿が花山天皇に、出家して弟子としてお仕えしましょうと約束した言葉。

東三条殿の心配

原文
東三条殿とうさんじょうどのは係助区別、「もし副さるラ変連体ことや係助疑問しサ変連用給ふ補・ハ四連体尊→粟田殿。」と格助引用危ふさに格助原因、さるラ変連体べく当然連用おとなしきシク連体人々、なにがし代名かがし代名と格助引用いふハ四連体いみじきシク連体源氏の格助体修武者むしゃたちを格助対象こそ係助強意、御送りに格助資格添へハ下二未然られ尊敬連用たり完了連用けれ過去已然。

現代語訳東三条殿(兼家)は、「もしや(粟田殿が)そのようなことをなさるのではないか。」という不安から、(東三条殿は)こういうときにふさわしい思慮分別のある人々や、だれそれという立派な源氏の武者たちを、お送りの護衛としてつけておられたのだった。

東三条殿
藤原兼家。花山天皇を退位させ、孫の懐仁親王を即位させたかった。
さること
そのようなこと。
さるべし
そうなるはずの。ふさわしい。
おとなし
年配である。分別がある。
解説

「もしさることやし給ふ」は、息子の粟田殿が、天皇と一緒に出家してしまうのではないかと心配した言葉。

兼家が武者たちを護衛につけたのは、粟田殿が出家させられないようにするため。

原文
京の格助体修ほどは係助区別隠れラ下二連用て接助単純接続、堤つつみの格助体修辺りより格助起点ぞ係助強意うち出でダ下二連用参りラ四連用謙→花山天皇ける過去連体。

現代語訳(武者たちは)京の町なかの間は身を隠し、堤のあたりから姿を現して、お供申し上げたということだ。

堤
鴨川の堤。
原文
寺など副助婉曲にて格助場所は係助区別、「もし副、おして副人など副助婉曲や係助疑問なしサ四連用奉る補・ラ四連体謙→粟田殿。」と格助引用て接助単純接続、一尺いっしゃくばかり副助程度の格助体修刀どもを格助対象抜きかけカ下二連用て接助単純接続ぞ係助強意守りラ四連用申し補・サ四連用謙→粟田殿ける過去連体。

現代語訳寺などでは、「もしかして、無理に誰かが(粟田殿を)出家させ申し上げるのではないか。」と言って、(護衛の者たちは)一尺ほどの刀を抜きかけて、お守り申し上げたということだ。

おして
無理に。強引に。
解説

「もし、おして人などやなし奉る」は、護衛の武者たちが、何者かが粟田殿を無理やり出家させるのではないかと警戒した言葉。

続き・前:『大鏡』花山天皇の出家① / 『大鏡』花山天皇の出家②

『大鏡』のほかの話:三舟の才 / 弓争ひ

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①御髪
    ②案内
    ③大臣
    ④朕
    ⑤武者
    ⑥一尺
    ⑦刀

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    ①みぐし
    ②あない
    ③おとど
    ④ちん
    ⑤むしゃ
    ⑥いっしゃく
    ⑦かたな

  2. 次の語句の意味を答えよ。
    ①案内
    ②契る
    ③すかす
    ④おとなし
    ⑤おして

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    ①事情
    ②約束する
    ③だます
    ④年配である・分別がある
    ⑤無理に・強引に

B 文法・敬語

  1. 「朕をば謀るなりけり」の「なりけり」を文法的に説明せよ。

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    断定の助動詞「なり」の連用形+詠嘆(気づき)の助動詞「けり」の終止形。

  2. 「かく案内申して、必ず参り侍らむ」の「申し」「参り」「侍ら」は、誰から誰への敬意か。また、「侍ら」の「む」の意味を答えよ。

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    「申し」は粟田殿から大臣(東三条殿・藤原兼家)への敬意を表す謙譲語。「参り」は粟田殿から花山天皇への敬意を表す謙譲語。「侍ら」は粟田殿から花山天皇(聞き手)への敬意を表す丁寧語(補助動詞)。「む」は意志。

  3. 「日ごろ、よく、『御弟子にて候はむ。』と契りて、すかし申し給ひけむが恐ろしさよ」について、①「日ごろ」はどの語にかかるか。②「けむ」の意味。③「が」の用法。

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    ①「契りて」。②過去の伝聞(「〜たとかいう」の意。過去推量ととる説もある)。③連体修飾格(「〜の」の意。「すかし申し給ひけむ(こと)の恐ろしさ」)。

C 現代語訳・内容

  1. 「まかり出でて、大臣にも、変はらぬ姿、いま一度見え」を、「大臣」が誰か、「変はらぬ姿」がどのような姿かを明らかにして現代語訳せよ。

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    退出いたしまして、(父の)大臣(東三条殿・藤原兼家)にも、出家する前の変わらない姿をもう一度見せ、

  2. 粟田殿の言葉「かくと案内申して、必ず参り侍らむ」の「かく」は何を指すか。また、この言葉に込められた粟田殿の本心を説明せよ。

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    これから自分も出家するということ。本当は出家するつもりはなく、帰るための口実にしている。

  3. 「朕をば謀るなりけり」とは、花山天皇がどのようなことに気づいたのか。

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    粟田殿は寺に戻って来るつもりがなく、自分をだましたのだということ。

  4. 「あはれに悲しきことなりな」は、誰のどのような気持ちか。

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    語り手(世継)が、だまされて出家した花山天皇に同情する気持ち。

  5. 「東三条殿は、『もしさることやし給ふ。』と危ふさに」について、「さること」の指す内容を答えよ。また、東三条殿はどのような手を打ったか。

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    息子の粟田殿が、花山天皇と一緒に出家してしまうこと。年配で分別のある人々や源氏の武者たちを護衛として付き添わせた。

  6. 「一尺ばかりの刀どもを抜きかけてぞ守り申しける」を現代語訳し、武者たちが刀を抜いて守った理由を説明せよ。

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    一尺ほどの刀を何本も抜きかけて、護衛申し上げたということだ。/何者かが粟田殿を無理やり出家させるのではないかと警戒したから。