『更級日記』後の頼み 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 阿弥陀仏の夢
  4. 訪ねてきた甥と「姨捨」の歌
  5. テスト予想問題

『更級日記(さらしなにっき)』「後の頼み」の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。

『更級日記』の終わり近くの場面です。夫を亡くし、年老いた作者は、来世で極楽に生まれ変われるか不安に思いながらも、阿弥陀仏が「後に迎えに来よう」と告げた夢だけを頼みにしています。後半は、久しぶりに訪ねてきた甥に詠んだ「姨捨(おばすて)」の歌です。夢の範囲、敬語の向き、「けり」と形容詞の活用語尾の識別、歌の心情がよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

阿弥陀仏の夢

原文
さすがにナリ連用、命いのちは係助主題憂うきク連体に格助原因も係助強調絶えヤ下二未然ず打消連用、長ながらふハ下二終止めれ推定已然ど接助逆接確定、

現代語訳そうはいってもやはり、命はつらいことがあっても尽きることなく、生きながらえているようだけれど、

さすがなり
そうはいってもやはり。
憂し
つらい。
長らふ
生きながらえる。
原文
後の世のちのよも係助添加、思ふハ四連体に格助対象かなはハ四未然ず打消連用ぞ係助強意あら補・ラ変未然む推量連体かし終助念押しと格助引用ぞ係助強意、後ろめたきク連体に接助逆接確定、頼むマ四連体こと一ひとつぞ係助強意ありラ変連用ける過去連体。

現代語訳来世のことも、思いどおりにはならないのだろうなあと不安に思うけれど、頼みにしていることが一つだけあった。

後の世
来世。死んだ後の世。
後ろめたし
気がかりだ。不安だ。
解説

「後の世も、思ふにかなはずぞあらむかし」は、来世で極楽に生まれ変わりたいという願いも、思うようにはかなわないだろう、ということ。

「頼むこと」は、このあとに書かれる、阿弥陀仏が「後に迎へに来む」と言ってくれた夢のこと。

原文
天喜三年十月十三日てんぎさんねんじふぐわつじふさんにちの格助体修夜よるの格助体修夢ゆめに格助場所、居ゐワ上一連用たる存続連体所の格助体修屋やの格助体修端つまの格助体修庭にはに格助場所、阿弥陀仏あみだぼとけ立ちタ四連用給へ補・ハ四已然尊→阿弥陀仏り完了終止。

現代語訳天喜三年十月十三日の晩に見た夢で、(私の)住まいの軒先の庭に、阿弥陀仏が立っていらっしゃった。

端(つま)
軒先。
解説

「夢に」は、あとの「人はえ聞きつけずと見るに」の「と見るに」にかかる。「夢に〜と見る」(夢で〜という様子を見る)という形。

「給へ」は尊敬の補助動詞で、作者から阿弥陀仏への敬意。この文章の敬語は、すべて作者から仏への敬意である。

原文
定さだかにナリ連用は係助強調見えヤ下二連用給は補・ハ四未然尊→阿弥陀仏ず打消連用、霧きり一重ひとへ隔へだたれラ四已然る存続連体やうに比況連用透きカ四連用て接助状態見えヤ下二連用給ふ補・ハ四連体尊→阿弥陀仏を格助対象、せめて副絶え間たえまに格助場所見マ上一連用奉れ補・ラ四已然謙→阿弥陀仏ば接助単純接続、

現代語訳お姿ははっきりとは見えず、霧一枚をへだてたように透けて見えていらっしゃるのを、無理をして霧の切れ目からのぞき申し上げると、

せめて
強いて。無理に。
絶え間
ここは、霧の切れ目。
解説

「隔たれる」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形(四段動詞の已然形に付く)。

「奉れ」は謙譲の補助動詞で、作者から阿弥陀仏への敬意。

原文
蓮華の座れんげのざの格助体修、土つちを格助対象上がりラ四連用たる存続連体、高さ三さん、四尺ししやく、仏ほとけの格助体修御丈おんたけ六尺ろくしやくばかり副助程度に断定連用て接助状態、金色こんじきに格助状態光り輝きカ四連用給ひ補・ハ四連用尊→阿弥陀仏て接助状態、

現代語訳蓮の花の台座が地面から浮き上がっていて、その高さは三、四尺、仏のご身長は六尺ほどで、金色に光り輝いていらっしゃって、

蓮華の座
仏の座る、蓮の花の形の台座。
尺
長さの単位。一尺は約三十センチ。
原文
御手おんて、片つ方かたつかたを格助対象ば係助対比広げガ下二連用たる存続連体やうに比況連用、いま副片つ方かたつかたに格助場所は係助対比印いんを格助対象作りラ四連用給ひ補・ハ四連用尊→阿弥陀仏たる存続連体を格助対象、

現代語訳お手は、片方を広げたようにして、もう片方では印を結んでいらっしゃるのを、

印(いん)
仏が手の指で作る、さまざまな形。「印を作る」は印を結ぶこと。
原文
異人ことひとの格助体修目めに格助対象は係助対比見つけカ下二連用奉ら補・ラ四未然謙→阿弥陀仏ず打消連用、我われ代名一人ひとり見マ上一連用奉る補・ラ四連体謙→阿弥陀仏に接助単純接続、さすがにナリ連用いみじくシク連用気恐けおそろしけれシク已然ば接助順接確定、

現代語訳ほかの人の目には見つけ申し上げることもなく、私一人が拝見しているのだが、やはりひどく恐ろしかったので、

異人(ことひと)
ほかの人。
気恐ろし
なんとなく恐ろしい。
解説

「さすがに」は、自分一人だけが仏のお姿を拝見できるのはありがたいけれど、それでもやはり、ということ。

「気恐ろしければ」の「けれ」は、形容詞「気恐ろし」の已然形の活用語尾。過去の助動詞「けり」ではない(「ありける」「言はれにける」の「ける」は過去の助動詞)。

原文
簾すだれの格助体修もと近くク連用寄りラ四連用て接助状態も係助強調、え副見マ上一連用奉ら補・ラ四未然謙→阿弥陀仏ね打消已然ば接助順接確定、仏ほとけ、「さは接、このたびは係助対比帰りラ四連用て接助単純接続、後のちに格助時間迎むかへに格助目的来こカ変未然む意志終止。」と格助引用のたまふハ四連体尊→阿弥陀仏声こゑ、

現代語訳簾の近くまで寄っても、拝見することができないので、仏が、「それでは、今回は帰って、後でまた迎えに来よう。」とおっしゃる声が、

え〜打消
〜できない。
さは
それでは。
解説

「え見奉らねば」は、拝見することができないので、という意味。

仏の言葉の「後に迎へに来む」が、作者にとっての「後の頼み」になった。「む」は意志。

「のたまふ」は尊敬の本動詞で、作者から阿弥陀仏への敬意。

原文
わが耳みみ一ひとつに格助対象聞こえヤ下二連用て接助逆接、人は係助対比え副聞きつけカ下二未然ず打消終止と格助引用見るマ上一連体に接助単純接続、うちおどろきカ四連用たれ完了已然ば接助順接確定、十四日じふよつかなり断定終止。

現代語訳私の耳にだけ聞こえて、ほかの人には聞き取れないでいる、という夢を見て、はっと目が覚めると、十四日であった。

うちおどろく
はっと目を覚ます。
解説

夢の内容は、「夢に」のあとの「居たる所の」から、「人はえ聞きつけず」まで。

原文
この夢ゆめばかり副助限定ぞ係助強意、後のちの格助体修頼たのみと格助引用しサ変連用ける過去連体。

現代語訳この夢だけを、来世(極楽往生)への頼みとしたのだった。

解説

「後の頼み」は、来世で極楽に生まれ変わることへの頼み。阿弥陀仏が迎えに来てくれるという夢を、作者は心の支えにした。

訪ねてきた甥と「姨捨」の歌

原文
甥をひどもなど副助例示、一所ひとところにて格助場所、朝夕あさゆふ見るマ上一連体に接助単純接続、かう副あはれにナリ連用悲しきシク連体ことの格助体修後のちは係助対比、所々ところどころに格助結果なりラ四連用など副助婉曲し補・サ変連用て接助状態、

現代語訳甥たちなども、同じ所に住んで朝夕顔を合わせていたが、このようにしみじみと悲しいことがあった後は、それぞれ別の所に住むようになって、

一所(ひとところ)
同じ所。
解説

「かうあはれに悲しきこと」は、作者の夫の死。夫が亡くなったあと、一緒に暮らしていた甥たちも別々の所に住むようになった。

原文
誰たれ代名も係助強調見ゆるヤ下二連体こと難かたうク連用・音ある補・ラ変連体に接助単純接続、いと副暗くらいク連体・音夜よ、六郎ろくらうに格助資格あたるラ四連体甥をひの格助主格来きカ変連用たる完了連体に接助順接確定、めづらしうシク連用・音おぼえヤ下二連用て接助順接確定、

現代語訳だれも顔を見せることがめったになかったのに、とても暗い夜、六番目にあたる甥がやって来たので、珍しく思って、

難し
めったにない。
六郎にあたる甥
(兄弟のうち)六番目にあたる甥。
解説

「難う」「めづらしう」はウ音便、「暗い」はイ音便。

原文
月つきも係助強調出でダ下二未然で接助打消接続闇やみに格助状態くれラ下二連用たる存続連体姨捨をばすてに格助場所何なにとて副今宵こよひ訪ね来たづねきカ変連用つ完了終止らむ現在推量連体

現代語訳月も出ないで闇に暮れている姨捨山のように、暗く寂しく暮らしている私のところに、どうして今夜、訪ねて来たのだろう。

姨捨(おばすて)
信濃国(長野県)更級郡の山。月の名所として和歌に詠まれる。
何とて
どうして。
解説

『古今和歌集』の「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」をふまえた歌。古今集の歌は美しい月が照っているのに心が慰められないと詠むが、この歌では月さえ出ていない。

「月も出でで闇にくれたる姨捨」は、夫を亡くし、家族とも離れて、世の中から見捨てられたように暗く寂しく暮らしている作者自身のたとえ。

「何とて」と疑問の語があるので、「らむ」は「どうして〜のだろう」と原因を推し量る意味で訳す。

『更級日記』という書名は、この歌と、ふまえた古今集の歌の「更級」にちなむと考えられている。

原文

現代語訳と、思わず口にしてしまった。

解説

「言はれにける」の「れ」は自発。思わず口にしてしまった、ということ。

ほかの『更級日記』の場面:あこがれ・門出 / 継母との別れ / 源氏の五十余巻

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①天喜
    ②蓮華
    ③金色
    ④異人
    ⑤簾
    ⑥姨捨

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    ①てんぎ
    ②れんげ
    ③こんじき
    ④ことひと
    ⑤すだれ
    ⑥おばすて

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①後の世
    ②後ろめたし
    ③せめて
    ④異人
    ⑤うちおどろく
    ⑥何とて

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    ①来世
    ②気がかりだ・不安だ
    ③強いて・無理に
    ④ほかの人
    ⑤はっと目を覚ます
    ⑥どうして

B 文法・敬語

  1. 次の傍線部を、それぞれ文法的に説明せよ。
    ①頼むこと一つぞありける(ける)
    ②いみじく気恐ろしければ(けれ)
    ③とぞ言はれにける(ける)

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    ①③=過去の助動詞「けり」の連体形(係助詞「ぞ」の結び)。②=形容詞「気恐ろし」の已然形の活用語尾。

  2. 次の敬語は、尊敬・謙譲・丁寧のどれか。本動詞・補助動詞の別と、だれからだれへの敬意かもあわせて答えよ。
    ①阿弥陀仏立ち給へり(給へ)
    ②せめて絶え間に見奉れば(奉れ)
    ③後に迎へに来むとのたまふ声(のたまふ)

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    ①尊敬語の補助動詞
    ②謙譲語の補助動詞
    ③尊敬語の本動詞。いずれも作者から阿弥陀仏への敬意。

  3. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①霧一重隔たれるやうに(る)
    ②後に迎へに来む(む)
    ③とぞ言はれにける(れ)

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    ①存続
    ②意志
    ③自発

C 現代語訳・内容

  1. 「後の世も、思ふにかなはずぞあらむかし」には、作者のどのような不安が表れているか。また、「頼むこと」とは何か、三十字程度で答えよ。

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    来世で極楽に生まれ変わりたいという願いも、思うようにはかなわないのではないかということ。/頼むこと=阿弥陀仏が夢に現れ、「後に迎えに来よう」と言ってくれたこと。

  2. 「さすがにいみじく気恐ろしければ」の「さすがに」は、どのような気持ちを受けているか。また、「え見奉らねば」を現代語訳せよ。

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    自分一人だけが仏のお姿を拝見できるのはありがたいけれど(それでもやはり)、という気持ち。/訳=拝見することができないので。

  3. 作者が見た夢は、本文のどこからどこまでか。その部分の初めと終わりを五字ずつ抜き出せ。また、「うちおどろきたれば」を現代語訳せよ。

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    初め=居たる所の 終わり=聞きつけず。/訳=はっと目を覚ましたところ。

  4. 「かうあはれに悲しきこと」とは何か。また、「月も出でで闇にくれたる姨捨に何とて今宵訪ね来つらむ」を現代語訳せよ。

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    作者の夫の死。/訳=月も出ないで闇に暮れている姨捨山のような私のところに、どうして今夜訪ねて来たのだろう。

  5. 「月も出でで…」の歌がふまえている『古今和歌集』の歌「わが心慰めかねつ(  )や姨捨山に照る月を見て」の空欄を補え。また、「月も出でで闇にくれたる姨捨」は、だれのどのような境遇をたとえたものか。

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    更級 /作者の、夫を亡くし家族とも離れて、世の中から見捨てられたような暗く孤独な境遇。