『枕草子』宮に初めて参りたるころ① 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 初めての宮仕え
  4. 絵を見せてくださる中宮
  5. 中宮の手の美しさ
  6. テスト予想問題

『枕草子(まくらのそうし)』「宮に初めて参りたるころ」①の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。

清少納言が中宮定子のもとに仕え始めたばかりのころを思い出して書いた段です。恥ずかしくて手も出せない作者と、絵を見せて話しかけてくださる中宮の様子、そして中宮の手の美しさに驚く場面が描かれます。誰の動作か(主語)と敬語の向き、「夜々参りて」の理由などがよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

初めての宮仕え

原文
宮に格助場所初めて副参りラ四連用謙→中宮たる完了連体ころ、ものの格助体修恥づかしきシク連体ことの格助主格数知らラ四未然ず打消連用、

現代語訳中宮様の御所に初めてお仕えしたころは、何かと気おくれすることが数えきれないほどあって、

宮
中宮の御所。ここでは一条天皇の中宮定子のところ。
参る
出仕する、参上する(謙譲語)。
ものの恥づかし
何となく気おくれする、きまりが悪い。
解説

「参り」は作者から中宮への敬意。

「ものの恥づかしきことの数知らず」は、あとの「わりなし」と同じく、初めての宮仕えで気おくれするつらさを表している。

原文
涙も係助強意落ちタ上二連用ぬ強意終止べけれ推量已然ば接助順接確定、夜々よるよる参りラ四連用謙→中宮て接助単純接続、

現代語訳涙もこぼれ落ちてしまいそうなので、(昼ではなく)毎晩参上して、

夜々(よるよる)
毎晩。
解説

作者が昼ではなく夜ごとに参上したのは、明るい昼間に自分の姿や顔を人に見られるのが恥ずかしかったから。

原文
三尺の格助体修御几帳みきちやうの格助体修後ろに格助場所候ふハ四連体謙→中宮に接助単純接続、

現代語訳三尺の御几帳のうしろで(中宮様のおそばに)控えていると、

三尺の御几帳
高さ三尺(約九十センチ)の几帳。几帳は、台に柱を立てて布を垂らした仕切り。
候ふ
おそばにお控えする(謙譲語)。
解説

「候ふ」の主語は作者。中宮のそばの几帳の陰に隠れるようにして控えている。

絵を見せてくださる中宮

現代語訳絵などを出してきて見せてくださるのだが、(私は)手さえ差し出せそうになくて、どうにもつらい。

え〜まじ
〜できそうにない。
わりなし
どうしようもなくつらい。
解説

「見せさせ給ふ」の主語は中宮。「させ給ふ」は、尊敬の助動詞「さす」に尊敬の補助動詞「給ふ」が付いた最高敬語(二重敬語)。作者から中宮への敬意を表す。「見せ」は「見せる」の意の動詞なので、「させ」は使役ではなく尊敬。

「手にてもえさし出づまじう」からは、中宮を前にして恥ずかしく、畏れ多くて、絵を受け取る手さえ出せない作者の気持ちが読み取れる。

原文
「これ代名は係助区別、と副ありラ変連用、かかりラ変終止。それ代名か係助疑問、かれ代名か係助疑問。」など副助引用のたまはすサ下二終止尊→中宮。

現代語訳「この絵は、ああで、こうで。それかしら、あれかしら。」などとおっしゃる。

とあり、かかり
ああだ、こうだ。
のたまはす
おっしゃる(「のたまふ」より敬意が高い尊敬語)。
解説

「これは、とあり、かかり。それか、かれか。」は中宮の言葉。黙ってしまう作者に、中宮のほうから絵の説明をして、緊張をほぐそうとしている。

※本文を「それが、かれが」とする本もある。

原文
高坏たかつきに格助対象参らせサ下二連用謙→中宮たる存続連体御殿油おほとなぶらなれ断定已然ば接助順接確定、髪の格助体修筋など副助例示も係助強意、なかなか副昼より格助比較も係助強意顕証けそうにナリ連用見えヤ下二連用て接助単純接続まばゆけれク已然ど接助逆接確定、

現代語訳高坏にお灯し申し上げている灯火なので、髪の筋なども、昼間よりかえってくっきり見えて恥ずかしいが、

高坏(たかつき)
食べ物を盛る、足の付いた台。逆さに置いて灯台にも使った。灯りの位置が低いので、近くがよく照らされる。
御殿油(おほとなぶら)
宮中でともす油の灯火。
参らす
ここでは「(火を)お灯し申し上げる」の意(謙譲語)。
なかなか
かえって。
顕証なり
はっきり見える、あらわだ。
まばゆし
恥ずかしい、気が引ける。
解説

「髪の筋」は作者自身の髪。灯火のもとでは、昼よりもかえってはっきり見えてしまうので恥ずかしい。

原文

現代語訳じっとこらえて(絵を)見たりなどする。

念ず
がまんする、こらえる。
解説

作者が、自分の姿がはっきり見えてしまう恥ずかしさをこらえて、中宮が見せてくださる絵を見ている。「など」でぼかしているのは、緊張して落ち着かないため。

中宮の手の美しさ

現代語訳ひどく冷えこむ時期なので、(袖口から)のぞかせていらっしゃるお手で、ほんの少しだけ見えるお手が、

はつかなり
ほんの少しだ、わずかだ。
解説

「さし出でさせ給へる」の主語は中宮。寒いころなので、手は袖口からわずかにのぞいているだけである。

「御手の…見ゆるが」の「の」は同格。「お手で、わずかに見えているお手が」と訳す。

原文
いみじうシク連用・音にほひハ四連用たる存続連体薄紅梅うすこうばいなる断定連体は係助区別、限りなくク連用めでたしク終止と格助引用、

現代語訳つややかに照り映える薄紅梅色であるのは、このうえなく美しいと、

にほふ
つややかに美しく映える。
薄紅梅
薄い紅梅色。
めでたし
すばらしい。
解説

「限りなくめでたし」は、袖口からわずかに見える中宮の手が、つややかな薄紅梅色をしている美しさに対する感動。

原文
見知らラ四未然ぬ打消連体里人心地さとびとごこちに格助対象は係助区別、かかる連体人こそ係助強意は係助強意世に格助場所おはしましサ四連用尊→中宮けれ詠嘆已然と格助引用、

現代語訳宮中のことをまだ知らない、実家暮らし同然の(新参者の私の)心には、こんなにすばらしい方がこの世にいらっしゃったのだなあと、

見知らぬ里人心地
宮中のことをまだ知らない、宮仕えをしていない人(里人)同然の新参者の気持ち。
おはします
いらっしゃる(尊敬語)。
解説

「かかる人」は、今まで見たこともないほど気高く美しい中宮のこと。

「けれ」は過去ではなく、初めて気づいたことを表す詠嘆(〜だったのだなあ)。「こそ」の結びなので已然形。

現代語訳はっとせずにはいられないほど、じっとお見つめ申し上げる。

まもる
じっと見つめる。
参らす
(補助動詞)〜申し上げる。
解説

「驚かるる」の「るる」は自発。思わずはっとするほど、作者は中宮を見つめている。中宮の美しさにすっかり心を奪われているのである。

「ぞ」の結びは「参らする」(連体形)。

続き:『枕草子』宮に初めて参りたるころ②

『枕草子』のほかの章段:雪のいと高う降りたるを / 九月ばかり

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①御几帳
    ②高坏
    ③御殿油
    ④薄紅梅

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    ①みきちょう
    ②たかつき
    ③おおとなぶら
    ④うすこうばい

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①わりなし
    ②なかなか
    ③まばゆし
    ④念ず
    ⑤はつかなり

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    ①どうしようもなくつらい
    ②かえって
    ③恥ずかしい・気が引ける
    ④がまんする
    ⑤ほんの少しだ

B 敬語・文法

  1. 次の傍線部の敬語の種類を答え、誰から誰への敬意かを答えよ。また、⑤の意味を答えよ。
    ①夜々【参り】て
    ②御几帳の後ろに【候ふ】に
    ③見せさせ【給ふ】を
    ④など【のたまはす】
    ⑤高坏に【参らせ】たる

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    ①謙譲語
    ②謙譲語
    ③尊敬語
    ④尊敬語
    ⑤謙譲語。①〜⑤とも作者から中宮(定子)への敬意。⑤の意味=(火を)お灯し申し上げる

  2. 「涙も落ちぬべければ」の「落ちぬべければ」を単語に分けて、文法的に説明せよ。

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    落ち(タ行上二段活用動詞「落つ」の連用形)/ぬ(強意の助動詞「ぬ」の終止形)/べけれ(推量の助動詞「べし」の已然形)/ば(接続助詞・順接の確定条件)

  3. 次の傍線部の助動詞の意味と活用形を答えよ。
    ①見せ【させ】給ふを
    ②さし出でさせ給へ【る】御手
    ③世におはしまし【けれ】
    ④驚か【るる】まで

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    ①尊敬・連用形
    ②存続・連体形
    ③詠嘆・已然形
    ④自発・連体形

  4. 「手にてもえさし出づまじう、わりなし」を現代語訳せよ。また、副詞「え」と呼応している語を抜き出せ。

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    訳=手さえ差し出すこともできそうになくて、どうしようもなくつらい。呼応している語=まじう

C 内容

  1. 「夜々参りて」とあるが、作者が明るい昼間を避けて、夜にだけ出仕していたのはどうしてか。

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    宮仕えを始めたばかりで、明るい昼間に自分の姿を人に見られるのが恥ずかしかったから。

  2. 「わりなし」と同じ気持ちを表している表現を、本文中から抜き出せ。

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    ものの恥づかしきことの数知らず

  3. 「髪の筋なども、なかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど、念じて見などす」について、①誰の髪の筋か。②誰が何を見るのか。

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    ①作者(清少納言)
    ②作者が、中宮の見せてくださる絵を見る。

  4. 「見知らぬ里人心地」とは、どのような気持ちか。

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    宮中のことをまだよく知らない、宮仕えに慣れていない新参者としての気持ち。

  5. 「かかる人こそは世におはしましけれ」とあるが、作者はどのようなことに心を動かされているのか。「かかる人」が指す人物を明らかにして説明せよ。

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    袖口からわずかに見える中宮定子の手が、つややかな薄紅梅色でこの上なく美しいことに、このようにすばらしい方がこの世にいらっしゃったのかと驚き、感動している。