『連理秘抄(れんりひしょう)』「連歌は心より起こりて」の現代語訳・品詞分解・解説です。
連歌が上手になるには、どのように稽古すればよいのでしょうか。作者は、上手な人と交わって実際に連歌の座で経験を積むこと、優美な連歌に学ぶことを説いています。稽古の心得の内容、「堪能」「風体」「生得」などの語句、「に」の識別がよく問われます。
原文の読み方
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現代語訳・品詞分解・解説
上手な人と交わって学ぶ
現代語訳連歌は(人から教わるのではなく)自分の心から始まるもので、自分で学ばなければならない。決して師匠が教えるものではない。
- みづから
- 自分で。
- さらに〜打消
- まったく〜ない。決して〜ない。
連歌は、師匠から教えられるものではなく、自分の心から始まり、自分で学ぶものだと言っている。
「さらに」の「に」は副詞「さらに」の一部、「ところにあらず」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形。
現代語訳いつも(連歌を)好んで楽しみ、上手な人々の中に加わらなければならない。どのようにしても、熟達した人と交わらなければ上達することはない。
- もてあそぶ
- 楽しむ。興じる。
- 上手
- 上手な人。
- 堪能
- その道に熟達した人。上手。
「上手に交じる」の「に」は格助詞。「上手」は名詞なので、形容動詞「上手なり」の活用語尾ではない。
「堪能」と同じ意味で使われている語に、「上手」「達者」がある。反対の意味の語は「不堪の者」「初心」。
現代語訳未熟な者とばかり寄り集まって稽古するのは、むしろ連歌の修行を一切しない人よりも劣るだろう。
- 不堪の者
- 熟達していない人。未熟な者。
- なかなか
- かえって。
- 一向
- まったく。
- 無沙汰
- (ここでは)連歌の修行をしないこと。
下手な者とだけ稽古するのは、稽古をまったくしない人よりも、かえって悪いということ。
現代語訳初心のうちは、とりわけ用心しなければならないことである。上達した人でもやはり、しばらくの間でも片田舎に住んでしまうと、そのまま連歌の腕が落ちていくのは、こういうわけである。
- 用心す
- 注意する。
- 達者
- 上達した人。
- 辺土
- 都から遠く離れた土地。片田舎。
- やがて
- そのまま。
- 損ず
- だめになる。
「このゆゑ」は、熟達した人と交わらず、下手な者とばかり連歌をすると上達しない、ということを指す。片田舎では上手な人と交わることができないため、上達した人でも連歌がだめになってしまう。
連歌の座で経験を積む
現代語訳朝早くから夜遅くまで(連歌を)好んで、今の時代の上手な人の詠みぶりを、彼らが詠んだ連歌を書きとめた懐紙を見てよくよく心にとめ、(その)言葉を取り入れて新しい趣向を工夫しなければならない。
- 夙夜
- 朝早くから夜遅くまで。
- 当世
- 今の時代。
- 風体
- 心と言葉が一体となった詠みぶり。
- 懐紙
- ここでは、連歌を書きとめた紙。
- 心をとどむ
- 心にとめる。よく注意する。
「詞をとりて風情をめぐらすべし」は、「(上手な人の)言葉を取り入れて、新しい趣向を工夫するのがよい」ということ。「風情」は、ここでは句の趣向。
現代語訳ただ熟達した人について繰り返し学び、連歌の座に加わって経験を重ねるよりほかに、稽古の方法があるはずがない。
- 堪能に練習す
- 熟達した人について繰り返し学ぶ。
- 座功を積む
- 連歌の座に加わって経験を重ねる。
熟達した人について学び、実際に連歌の座で経験を積むことのほかに稽古はない、と言い切っている。
現代語訳そのうえで、三代集・『源氏物語』・『伊勢物語』・名所の歌枕(を記した書物)、このようなものをひもといて、趣のあるように(自分の句に)取り入れるのがよい。
- 三代集
- 『古今和歌集』『後撰和歌集』『拾遺和歌集』の三つの勅撰和歌集。
- 名所の歌枕
- 和歌に詠まれてきた名所を解説した本。
- 披見す
- 書物を開いて見る。
- 興あり
- 趣がある。
- とりなす
- (ほかのものを)取り入れて作り変える。
優美な連歌に学ぶ
現代語訳言葉が優美であることは生まれつきのことである。(生まれつき優美な)その人でも、初めから優美さに欠ける連歌で繰り返し学んでしまうと、そのまま言葉が荒っぽくなる。
- 詞の幽玄
- 言葉が優美であること。
- 生得
- 生まれつき。
- こはし
- (ここでは)優美さに欠けている。
「詞の幽玄は生得のことなり」は、言葉が優美であるかどうかは生まれつきのものだということ。
「それも」は、生まれつき言葉の優美な人でも、ということ。
現代語訳優美な(連歌)を手本に学べば、生まれつき下手な人でも、すぐれた詠みぶりが身につくのだ。
「幽玄なる」の後には「連歌」が省かれている。反対の意味の語句は、前の文の「こはき連歌」。
生まれつき優美な人でも荒い連歌に学べば言葉が荒くなり、生まれつき下手な人でも優美な連歌に学べばすぐれた詠みぶりを身につける。だから、何に学ぶかが大切だということ。
現代語訳初心の人は、とりわけ優美でおだやかに、詠みこむ素材を少なくして、なめらかで素直な句を、あれこれ考えこまずに気軽に(前の句に)付けなければならない。
- 具足
- 連歌に詠みこむ素材。
- するするとしたる句
- なめらかで素直な詠みぶりの句。
- 思ふところなし
- あれこれ考えこまない。
- 口軽し
- すらすらと口に出す。
「おだやかに」の「に」は、形容動詞「おだやかなり」の連用形の活用語尾。
ここですすめている句と反対なのは、素材をたくさん詠みこみ、ごつごつとして素直でない句。
- ゆめゆめ〜打消
- 決して〜ない。
- 故実
- 先例。
- 口伝
- 口伝えで教える秘伝。
稽古には、ここで述べたこと以外に、特別な先例や秘伝などはない、と結んでいる。
テスト予想問題
A 読み・語句
次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
①連歌
②堪能
③夙夜
④風体
⑤生得
⑥故実
⑦口伝解答を見る
①れんが
②かんのう
③しゅくや
④ふうてい
⑤しょうとく
⑥こじつ(こしつ)
⑦くでん次の語の本文中での意味を答えよ。
①堪能
②なかなか
③やがて(「やがて連歌の損ずる」)
④夙夜
⑤故実解答を見る
①その道に熟達した人・上手な人
②かえって
③そのまま
④朝早くから夜遅くまで
⑤先例
B 文法
次の傍線部の「に」の違いを、文法的に説明せよ。
①「さらに」
②「ところにあらず」
③「上手に」
④「おだやかに」解答を見る
①副詞「さらに」の一部
②断定の助動詞「なり」の連用形
③格助詞
④形容動詞「おだやかなり」の連用形の活用語尾次の「べし」の意味を答えよ。
①みづから学ぶべし
②一向無沙汰なるにも劣るべし
③興あるさまにとりなすべし解答を見る
①当然
②推量
③適当
C 現代語訳・内容
「連歌は心より起こりて、みづから学ぶべし。さらに師匠の教ふるところにあらず。」を現代語訳せよ。
解答を見る
連歌は自分の心から始まるもので、自分で学ばなければならない。決して師匠が教えるものではない。
「いかにすれども、堪能に交はらざれば上がることなし」について、①現代語訳せよ。②「堪能」とほぼ同じ意味の語を、本文から二つ抜き出して答えよ。
解答を見る
①どのようにしても、熟達した人と交わらなければ上達することはない。
②上手・達者「やがて連歌の損ずるはこのゆゑなり」の「このゆゑ」とは、どういうことを指しているか。
解答を見る
熟達した人と交わらずに稽古すると、連歌は上達しないということ。
「詞をとりて風情をめぐらすべし」を、だれの「詞」かを明らかにして現代語訳せよ。
解答を見る
今の時代の上手な人の言葉を取り入れて、新しい趣向を工夫しなければならない。
「詞の幽玄は生得のことなり」について、①「生得」とはどういうことか。②作者は、言葉が優美であるかどうかは生まれつきだとしながら、何に学ぶことが大切だと述べているか。
解答を見る
①生まれつきのこと。
②初めから優美さに欠けた連歌で学ぶと言葉が荒くなり、優美な連歌に学べば生まれつき下手な人でもすぐれた詠みぶりを身につけるので、優美な連歌に学ぶことが大切だと述べている。本文全体から、作者がすすめる連歌の稽古のしかたをまとめよ。
解答を見る
連歌を好んで、熟達した人と交わり、今の上手な人の作品から学んで趣向を工夫し、実際に連歌の座に加わって経験を積むべきである。そのうえで古典を読んで生かし、優美な連歌に学ぶのがよい。