『源氏物語』明石の君の苦悩② 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 母の袖を引く姫君
  4. 二条院へ向かう姫君
  5. テスト予想問題

『源氏物語(げんじものがたり)』薄雲(うすぐも)の巻、「明石の君の苦悩(あかしのきみのくのう)」の場面の後半、「姫君は、何心もなく」から「いかに罪や得らむと思す」までの現代語訳・品詞分解・敬語・解説です(全2回の②)。明石の君の苦悩①の続きです。

いよいよ母と娘の別れの時です。何も知らない姫君は、母も一緒に車に乗るものと思って袖を引きます。明石の君と光源氏が歌を詠み交わし、姫君は二条院へ向かいます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

母の袖を引く姫君

原文
姫君ひめぎみは係助区別、何心なにごころも係助強意なくク連用、御車おほんくるまに格助対象乗らラ四未然む婉曲連体ことを格助対象急ぎガ四連用給ふ補・ハ四終止尊→姫君。

現代語訳姫君は、何の事情もわからずに、お車に乗ることをお急ぎになる。

何心もなし
何の考えもない。無邪気だ。
解説

何心もなく車に乗りたがる幼い姫君の様子が、別れを悲しむ母の気持ちと対照的に描かれている。

原文
寄せサ下二連用たる完了連体所に格助場所、母君ははぎみみづから副抱いだきカ四連用て接助単純接続出いでダ下二連用給へ補・ハ四已然尊→明石の君り完了終止。

現代語訳(車を)寄せてある所に、母君(明石の君)が自分で(姫君を)抱いて出ていらっしゃった。

解説

「出で給へり」の主語は明石の君。姫君を自分で抱いて、車のところまで出てきた。

原文
片言かたことの格助体修、声こゑは係助区別いと副うつくしうシク連用・音て接助単純接続、袖そでを格助対象とらへハ下二連用て接助単純接続、「乗りラ四連用給へ補・ハ四命令尊→明石の君。」と格助引用引くカ四連体も係助添加、いみじうシク連用・音おぼえヤ下二連用て接助単純接続、

現代語訳片言で、声はとてもかわいらしく、(母君の)袖をつかんで、「(お母さまも)お乗りなさい。」と引っぱるのも、(明石の君には)ひどく悲しく思われて、

片言
幼児の、たどたどしい言葉。
うつくし
かわいらしい。
いみじ
(ここでは)ひどく悲しい。
解説

「乗り給へ」は、姫君が母(明石の君)に言った言葉。別れることを知らない姫君は、母も一緒に車に乗るものと思っている。

原文
末すゑ遠きク連体二葉ふたばの格助体修松まつに格助対象引き別ひきわかれラ下二連用いつ代名か係助疑問木高こだかきク連体かげを格助対象見るマ上一終止べき可能連体

現代語訳行く末の長い二葉の松(幼い姫君)に別れて、いつになったら、高く育った松の姿(成長した姫君)を見ることができるのでしょうか。

解説

明石の君の歌。「二葉の松」は、芽を出したばかりの松で、幼い姫君のたとえ。「木高きかげ」は、高く育った松の姿で、成長した姫君の姿のたとえ。

「いつか」の「か」の結びは、「べし」の連体形「べき」。

原文
え副も係助強意言いひやらラ四未然ず打消連用いみじうシク連用・音泣なけカ四已然ば接助順接確定、さりラ変終止や間助詠嘆、あな感苦くるしシク終止と格助引用思おぼしサ四連用尊→光源氏て接助単純接続、

現代語訳(明石の君が)最後まで言いきれずにひどく泣くので、(光源氏は)もっともだ、ああつらいことだとお思いになって、

言ひやる
最後まで言う。
解説

「え〜ず」は不可能(〜できない)。明石の君は泣いて、歌を最後まで言いきることができない。

「さりや、あな苦し」は光源氏の思い。明石の君が悲しむのももっともだ、ああつらいことだ、と思っている。

原文
「生おひそめマ下二連用し過去連体根ねも係助添加深ふかけれク已然ば接助順接確定武隈たけくまの格助体修松まつに格助対象小松こまつの格助体修千代ちよを格助対象並ならべバ下二未然む意志終止

現代語訳「生えはじめた根も深い(姫君が生まれた二人の縁も深い)のだから、武隈の相生の松のように、小松(姫君)の千年の行く末を並んで見守ろう。

生ひそむ
生えはじめる。
千代
千年。長い年月。
解説

光源氏の返歌。「根」は二人が結ばれた宿縁、「武隈の松」は光源氏と明石の君、「小松」は姫君のたとえ。武隈の松は、二本の松が並んで生える相生の松として知られた歌枕。

二人で姫君の長い将来を見守ろう、いつか一緒に暮らせるだろう、と明石の君を慰めている。

原文
のどかにナリ連用を間助詠嘆。」と格助引用慰なぐさめマ下二連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏。

現代語訳のんびりと構えて(待って)いてください。」と慰めなさる。

のどかなり
のんびりしている。気長だ。
原文
さる連体ことと格助引用は係助区別思ひ静おもひしづむれマ下二已然ど接助逆接確定、え副なむ係助強意堪たへハ下二未然ざり打消連用ける過去連体。

現代語訳(明石の君は)そのとおり(いつかまた姫君と暮らせる)だと気持ちを静めようとするけれど、どうしてもこらえきれなかった。

解説

「さること」は、光源氏の歌にあるように、いつかまた母と娘がともに暮らせる日が来るということ。

「えなむ堪へざりける」は、(悲しみを)とてもこらえることができなかった、ということ。「なむ」の結びは「けり」の連体形「ける」。

二条院へ向かう姫君

原文
乳母めのと、少将せうしやうと格助引用て接助単純接続あてやかなるナリ連体人ばかり副助限定、御佩刀みはかし、天児あまがつやうの格助体修物取りラ四連用て接助単純接続乗るラ四終止。

現代語訳乳母と、少将という上品な女房だけが、守り刀や天児のような物を持って(車に)乗る。

あてやかなり
上品だ。
御佩刀(みはかし)
(姫君の)守り刀。
天児(あまがつ)
幼児の魔よけの人形。
原文
副車ひとだまひに格助場所よろしきシク連体若人わかうど、童わらはなど副助例示乗せサ下二連用て接助単純接続、御送おほんおくりに格助目的参まゐらラ四未然謙→姫君す使役終止。

現代語訳お供の車には、見た目の悪くない若い女房や召し使いの少女を乗せ、(姫君を)送らせるために参上させる。

副車(ひとだまひ)
お供の者が乗る車。
よろし
悪くない。見苦しくない。
若人(わかうど)
若い女房。
童(わらは)
召し使いの少女。
解説

「御送りに参らす」は、明石の君が、若い女房や童を姫君のお見送りに参上させるということ。

原文
道みちすがら副、とまりラ四連用つる完了連体人の格助体修心苦こころぐるしさを格助対象、いかに副罪つみや係助疑問得うア下二終止らむ現在推量連体と格助引用思おぼすサ四終止尊→光源氏。

現代語訳(光源氏は)帰る道すがら、あとに残った人(明石の君)のつらさを思って、自分はどれほど罪をつくっていることだろうとお思いになる。

道すがら
道の途中。
心苦しさ
つらさ。気の毒さ。
解説

「とまりつる人」は、大堰にあとに残った人、つまり明石の君。

「いかに罪や得らむ」と思うのは光源氏。母と幼い娘を引き離して、明石の君を苦しめている自分は、どれほど罪をつくっているのだろうか、と思っている。

前の場面:明石の君の苦悩①

源氏物語のほかの場面:桐壺①「いづれの御時にか」 若紫①「北山の垣間見」 須磨① 明石の姫君の入内① 若菜上① 御法①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①姫君
    ②片言
    ③二葉
    ④武隈
    ⑤少将
    ⑥御佩刀
    ⑦天児
    ⑧副車
    ⑨若人
    ⑩童

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    ①ひめぎみ
    ②かたこと
    ③ふたば
    ④たけくま
    ⑤しょうしょう
    ⑥みはかし
    ⑦あまがつ
    ⑧ひとだまい
    ⑨わかうど
    ⑩わらわ

  2. 本文で使われている次の語の意味を書け。
    ①何心もなし
    ②うつくし
    ③のどかなり
    ④あてやかなり
    ⑤よろし
    ⑥道すがら
    ⑦心苦しさ

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    ①何の考えもない・無邪気だ
    ②かわいらしい
    ③気長だ・のんびりしている
    ④上品だ
    ⑤悪くない・見苦しくない
    ⑥道の途中
    ⑦つらさ・気の毒さ

B 文法・敬語

  1. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①御車に乗らむこと(む)
    ②いつか木高きかげを見るべき(べき)
    ③千代を並べむ(む)
    ④えなむ堪へざりける(ける)
    ⑤御送りに参らす(す)
    ⑥罪や得らむ(らむ)

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    ①婉曲
    ②可能
    ③意志
    ④過去
    ⑤使役
    ⑥現在推量

  2. 次の傍線部の敬語の種類と、だれへの敬意かを答えよ。
    ①急ぎ給ふ(給ふ)
    ②抱きて出で給へり(給へ)
    ③「乗り給へ。」(給へ)
    ④あな苦しと思して(思し)

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    ①尊敬語・明石の姫君
    ②尊敬語・明石の君
    ③尊敬語・明石の君
    ④尊敬語・光源氏

C 現代語訳・内容

  1. 「乗り給へ」は、①だれが、
    ②だれに言った言葉か。
    ③そう言ったのはなぜか。

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    ①明石の姫君
    ②明石の君(母)
    ③母と別れることを知らず、母も一緒に車に乗るものと思っていたから。

  2. 「末遠き二葉の松に引き別れいつか木高きかげを見るべき」について、①「二葉の松」
    ②「木高きかげ」はそれぞれ何のたとえか。
    ③歌全体を現代語訳せよ。

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    ①幼い姫君
    ②成長した姫君の姿
    ③行く末の長い二葉の松(幼い姫君)に別れて、いつになったら高く育った松の姿(成長した姫君)を見ることができるのでしょうか。

  3. 「えも言ひやらずいみじう泣けば、さりや、あな苦しと思して」を、主語を補って現代語訳せよ。

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    (明石の君が)最後まで言いきることができずにひどく泣くので、(光源氏は)もっともだ、ああつらいことだとお思いになって。

  4. 「生ひそめし根も深ければ武隈の松に小松の千代を並べむ」の歌で、①「武隈の松」
    ②「小松」はそれぞれだれのたとえか。
    ③光源氏はこの歌で、どのように明石の君を慰めているのか。

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    ①光源氏と明石の君
    ②明石の姫君
    ③二人の縁は深いのだから、二人で姫君の長い将来を見守ろう、いつかまた一緒に暮らせるだろうと慰めている。

  5. 「さることとは思ひ静むれど、えなむ堪へざりける」について、①「さること」とはどのようなことか。
    ②現代語訳せよ。

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    ①いつかまた母(明石の君)と姫君がともに暮らせる日が来るということ。
    ②そのとおりだと気持ちを静めようとするけれど、とてもこらえることができなかった。

  6. 「とまりつる人の心苦しさを、いかに罪や得らむと思す」について、①「とまりつる人」とはだれか。
    ②「いかに罪や得らむ」と思ったのはだれで、なぜそう思ったのか。

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    ①明石の君
    ②光源氏。母と幼い娘を引き離し、明石の君をひどく苦しめたことを思ったから。