杜甫(とほ)の『月夜(げつや)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
戦乱のさなか、作者の杜甫は都の長安にとらわれ、妻と子供たちは遠く離れた鄜州(ふしゅう)に避難していました。長安で月を見上げた杜甫は、同じ月を一人で眺めている妻の姿を思い浮かべます。月を通して、離れ離れの家族への思いを詠んだ詩です。
書き下し文・現代語訳・解説
白文今夜鄜州月
書き下し今夜鄜州の月
現代語訳今夜、鄜州の空に照っている月を、
- 鄜州
- 地名。今の陝西省にあった。作者の妻子が、戦乱を避けてここにいた。
白文閨中只独看
書き下し閨中只だ独り看るならん
現代語訳妻は部屋の中で、ただ一人でじっと見つめていることだろう。
- 閨中
- 婦人の部屋の中。ここでは妻の部屋。
- 只
- ただひたすら。「看」にかかる。
- 独
- ひとりで。尾聯の「双」と対応する。
- 看るならん
- 見ているだろう。「看るらん」と読むこともある。主語は妻。
白文遥憐小児女
書き下し遥かに憐れむ小児女の
現代語訳遠く離れたここから、いとおしく思われてならない、幼い息子や娘たちが、
- 遥
- 遠く離れた長安から。
- 憐
- いとおしく思う。ふびんに思う。主語は作者。
- 小児女
- 幼い息子や娘たち。
白文未解憶長安
書き下し未だ長安を憶ふを解せざるを
現代語訳まだ長安にいる父の身の上を案じることもわからないでいることが。
- 未
- 再読文字。「いまダ~ず」と読み、「まだ~しない」の意。
- 解
- わかる。理解する。
- 憶長安
- 長安(にいる父)のことを思う。主語は小児女。
白文香霧雲鬟湿
書き下し香霧に雲鬟湿ひ
現代語訳かぐわしい夜霧に、妻の豊かなまげはしっとりとぬれ、
- 香霧
- かぐわしい夜霧。
- 雲鬟
- 豊かなまげ。美しい髪をいう。
- 湿
- しっとりとぬれる。
白文清輝玉臂寒
書き下し清輝に玉臂寒からん
現代語訳清らかな月の光を浴びて、玉のように美しい腕は冷たくなっていることだろう。
- 清輝
- 清らかな月の光。
- 玉臂
- 玉のように美しい腕。
- 寒からん
- 冷たいことだろう。
白文何時倚虚幌
書き下し何れの時か虚幌に倚り
現代語訳いったいいつになったら、人けのない部屋のとばりに寄りかかり、
- 何時
- 「いづレノときカ」。いつになったら~だろうか。第一句の「今夜」と対応する。
- 倚
- 寄りかかる。
- 虚幌
- 人けのない部屋のカーテン(とばり)。
白文双照涙痕乾
書き下し双び照らされて涙痕乾かん
現代語訳二人並んで月の光に照らされ、涙のあとが乾くときが来るのだろうか。
- 双
- 二人並んで。作者と妻。第二句の「独」と対応する。
- 照
- 月の光に照らされる。
- 涙痕
- 涙のあと。離れ離れでいる悲しみの涙。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:杜甫 詩の形式:五言律詩
押韻:看・安・寒・乾次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
①閨中
②雲鬟
③玉臂
④虚幌解答を見る
①けいちゅう
②うんかん
③ぎょくひ
④きょこう次の語の意味を答えよ。
①閨中
②清輝
③涙痕解答を見る
①婦人(妻)の部屋の中
②清らかな月の光
③涙のあと第一句の「今夜」、第二句の「独」と対応する語を、尾聯からそれぞれ抜き出せ。
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今夜=何時 独=双
B 書き下し文・現代語訳
「閨中只独看」を書き下し文にし、主語を補って現代語訳せよ。
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書き下し文:閨中只だ独り看るならん
現代語訳:(妻は)部屋の中で、ただ一人でじっと(月を)見つめていることだろう。「未解憶長安」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:未だ長安を憶ふを解せざるを
現代語訳:(幼い子供たちが)まだ長安にいる父の身の上を案じることもわからないでいることを。「何時倚虚幌 双照涙痕乾」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:何れの時か虚幌に倚り 双び照らされて涙痕乾かん
現代語訳:いったいいつになったら、人けのない部屋のとばりに寄りかかり、二人並んで月の光に照らされて、涙のあとが乾くときが来るのだろうか。
C 内容の読み取り
この詩をよんだとき、作者・妻・子供たちは、それぞれどこにいたか。詩の中の地名で答えよ。
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作者:長安 妻:鄜州 子供たち:鄜州
「看」「遥憐」「双照」の主語を、それぞれ答えよ。
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看=妻 遥憐=作者(杜甫) 双照=作者と妻
頸聯(第五・六句)には、何が描かれているか。
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月の光の中で、夫を思って一人月を眺めている妻の美しい姿(作者の想像)。
尾聯から読み取れる作者の願いを説明せよ。
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戦乱が収まり、妻(家族)と再会して、二人並んで月を眺めたいという願い。