杜甫(とほ)の『登岳陽楼(がくようろうにのぼる)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
昔から話に聞いていた洞庭湖。年老いた杜甫は、そのほとりにある岳陽楼に登り、果てしなく広がる湖を見渡します。前半では雄大な景色が、後半では、便りもなく小舟で旅を続ける自分の身の上と、戦乱の続く国への思いが詠まれています。
書き下し文・現代語訳・解説
白文登岳陽楼
書き下し岳陽楼に登る
現代語訳岳陽楼に登る。
- 岳陽楼
- 湖南省岳陽市にある高い楼。洞庭湖の東北の端にあり、眺めの雄大さで知られる。
白文昔聞洞庭水
書き下し昔聞く洞庭の水
現代語訳昔から、洞庭湖のすばらしさは話に聞いていたが、
- 昔聞
- 以前に聞いた。次の句の「今」と対応する。
- 洞庭水
- 洞庭湖。湖北省と湖南省の境にある大きな湖。
白文今上岳陽楼
書き下し今上る岳陽楼
現代語訳今、その湖を見渡す岳陽楼に登っている。
- 上
- 登る。
白文呉楚東南坼
書き下し呉楚東南に坼け
現代語訳呉と楚の大地は、この湖によって東と南に引き裂かれ、
- 呉楚
- 呉と楚。昔の国の名で、ここでは洞庭湖の周りの地方をいう。
- 坼
- 裂ける。
白文乾坤日夜浮
書き下し乾坤日夜浮かぶ
現代語訳天と地が、昼も夜も、湖の上に浮かんでいる。
- 乾坤
- 天と地。太陽と月とする説もある。
- 日夜
- 昼も夜も。
- 浮
- (湖の水面に)浮かぶ。
白文親朋無一字
書き下し親朋一字無く
現代語訳親類や友人からは、一字の便りもなく、
- 親朋
- 親類と友人。
- 一字
- 一字の便り。手紙。
白文老病有孤舟
書き下し老病孤舟有り
現代語訳年老いて病気がちのこの身には、一そうの小舟があるだけだ。
- 老病
- 年老いて病気がちであること。作者自身をいう。
- 孤舟
- 一そうの小舟。作者はこの舟で旅を続けている。
白文戎馬関山北
書き下し戎馬関山の北
現代語訳関所のある山々の北では、今も軍馬が行き交い、戦いが続いている。
- 戎馬
- 軍馬。戦争を表す。
- 関山
- 関所(要塞)のある山。
- 北
- 北方。都の長安のある方面。
白文憑軒涕泗流
書き下し軒に憑りて涕泗流る
現代語訳楼の手すりに寄りかかっていると、涙がとめどなく流れる。
- 憑軒
- 手すりに寄りかかる。
- 涕泗
- 涙。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:杜甫 詩の形式:五言律詩
押韻:楼・浮・舟・流次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
①洞庭
②坼(け)
③乾坤
④孤舟
⑤涕泗解答を見る
①どうてい
②さ(け)
③けんこん
④こしゅう
⑤ていし次の語の意味を答えよ。
①親朋
②一字
③戎馬
④憑軒解答を見る
①親類と友人
②一字の便り(手紙)
③軍馬(戦争)
④手すりに寄りかかる次の語と対になっている語を、詩の中から抜き出せ。
①東南
②坼
③親朋
④一字解答を見る
①日夜
②浮
③老病
④孤舟
B 書き下し文・現代語訳
「呉楚東南坼 乾坤日夜浮」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:呉楚東南に坼け 乾坤日夜浮かぶ
現代語訳:呉と楚の大地は、湖によって東と南に引き裂かれ、天と地が、昼も夜も湖の上に浮かんでいる。「親朋無一字 老病有孤舟」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:親朋一字無く 老病孤舟有り
現代語訳:親類や友人からは一字の便りもなく、年老いて病気がちのこの身には、一そうの小舟があるだけだ。「憑軒涕泗流」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:軒に憑りて涕泗流る
現代語訳:楼の手すりに寄りかかっていると、涙がとめどなく流れる。
C 内容の読み取り
頷聯(第三・四句)には、洞庭湖のどのような様子が描かれているか。
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大地を引き裂き、天地を浮かべるほどの、果てしなく広大な様子。
作者が自分自身のことを表している語を、二字で抜き出せ。また、それは作者のどのような身の上を表しているか。
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老病
年老いて病気がちで、頼る人もなく小舟で旅を続ける、孤独な身の上。「戎馬関山北」は、どのような状況を述べたものか。
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関所のある山々の北(都の長安の方面)では、今も戦乱が続いているという状況。
作者が「涕泗流」となったのはなぜか。作者の境遇をふまえて説明せよ。
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年老いて病気がちのまま孤独な旅を続ける身を悲しむとともに、戦乱の続く国を憂え、その世の中のために何もできない無念さを感じたから(と考えられる)。