張継(ちょうけい)の『楓橋夜泊(ふうきょうやはく)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
秋の夜、作者は旅の途中で、蘇州の町はずれにある楓橋のほとりに船をとめています。月が沈み、烏が鳴き、寒さが空に満ちる中、旅の愁いで眠れない作者の目には、川岸のかえでと漁り火が映ります。そこへ、寒山寺の真夜中の鐘の音が船まで響いてきます。
書き下し文・現代語訳・解説
白文楓橋夜泊
書き下し楓橋夜泊
現代語訳楓橋のほとりに船をとめて、夜を過ごす。
- 楓橋
- 蘇州の町の西にあった橋の名。
- 夜泊
- 夜、船を岸につないで泊まること。
白文月落烏啼霜満天
書き下し月落ち烏啼いて霜天に満つ
現代語訳月は西に沈み、からすが鳴いて、霜の降りるような寒さが空いっぱいに満ちている。
- 月落
- 月が沈んで、あたりが暗くなる。
- 烏啼
- からすが鳴く。闇の深さと静けさを感じさせる。
- 霜満天
- 霜の降りるような冷たい気配が、空一面に満ちている。中国では、霜は天から降るものと考えられていた。
白文江楓漁火対愁眠
書き下し江楓漁火愁眠に対す
現代語訳川岸の紅葉したかえでと、赤々と燃える漁り火が、旅の愁いで眠れずにいる私の目に映る。
- 江楓
- 川のほとりのかえで。ここでは紅葉したかえで。「江村」とする本文もある。
- 漁火
- いさり火。夜、魚を寄せ集めるために船でたく火。「ぎょか」と読む。
- 愁眠
- 旅の愁いのために、ぐっすり眠れないでいること。
- 対
- 向かい合う。主語は「江楓」と「漁火」。眠れない作者の目の前に見えている、ということ。
白文姑蘇城外寒山寺
書き下し姑蘇城外の寒山寺
現代語訳蘇州の町の外にある寒山寺から、
- 姑蘇
- 蘇州(今の江蘇省蘇州市)の古い呼び名。西にある姑蘇山にちなむ。
- 城外
- 町の外。郊外。「城」は城壁に囲まれた町のこと。
- 寒山寺
- 蘇州の西の郊外、楓橋の近くにある寺。唐の詩僧の寒山が住んでいたことから、この名がついたといわれる。
白文夜半鐘声到客船
書き下し夜半の鐘声客船に到る
現代語訳真夜中につく鐘の音が、旅の途中の私の船にまで響いてくる。
- 夜半
- 真夜中。当時の寺では、真夜中にも鐘をつく習慣があったらしい。
- 鐘声
- 鐘の音。
- 客船
- 旅人の乗る船。「客」は旅人の意。ここでは、作者の乗っている船。
- 到
- (鐘の音が)届く。響いてくる。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:張継 詩の形式:七言絶句 押韻:天・眠・船
次の語の意味を答えよ。
①夜泊
②江楓
③漁火
④愁眠
⑤城外解答を見る
①夜、船を岸につないで泊まること
②川岸の(紅葉した)かえで
③夜、魚を寄せるために船でたく火(いさり火)
④旅の愁いのために、よく眠れないこと
⑤町の外(郊外)「姑蘇」は、今の何という町の昔の呼び名か。また、「漁火」はどう読むか。ひらがな(現代仮名遣い)で書け。
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蘇州 ぎょか
この詩の季節はいつか。また、季節を表している語を、詩の中から二つ抜き出せ。
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季節:秋(晩秋) 語:霜・江楓
B 書き下し文・現代語訳
「月落烏啼霜満天」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:月落ち烏啼いて霜天に満つ
現代語訳:月は西に沈み、からすが鳴いて、霜の降りるような寒さが空いっぱいに満ちている。「江楓漁火対愁眠」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:江楓漁火愁眠に対す
現代語訳:川岸の紅葉したかえでと漁り火が、旅の愁いで眠れずにいる私の目に映る。「夜半鐘声到客船」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:夜半の鐘声客船に到る
現代語訳:真夜中につく鐘の音が、旅の途中の私の船にまで響いてくる。
C 内容の読み取り
作者は今、どこにいるか。それを表す語を詩の中から二字で抜き出し、その意味も答えよ。
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客船(旅人の乗る船)。楓橋のほとりにとめた船の中にいる。
起句「月落烏啼霜満天」の三つの部分は、それぞれどの感覚でとらえたものか。
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月落=視覚(目) 烏啼=聴覚(耳) 霜満天=触覚(肌に感じる寒さ)
結句の「鐘声」は、作者のどのような気持ちを深めているか。また、この詩の主題を答えよ。
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眠れずにいる作者の、旅の愁い(寂しさ)を深めている。主題は旅愁。