杜甫(とほ)の『絶句(ぜっく)』(江碧にして鳥逾白く)の書き下し文・現代語訳・解説です。
深い緑の川に白い鳥、青々とした山に燃えるような赤い花。前半の二句には、色あざやかな春の景色が描かれます。ところが後半では一転して、今年の春もまた過ぎていくのに、いつになったら故郷に帰れるのか、という嘆きが詠まれます。美しい景色と、旅の身の悲しみとが対照された詩です。
書き下し文・現代語訳・解説
白文江碧鳥逾白
書き下し江碧にして鳥逾白く
現代語訳川の水は深い緑色に澄み、そこに浮かぶ水鳥はいっそう白く見える。
- 江
- 川。成都を流れる錦江をさすとする説もある。
- 碧
- 深い緑色。エメラルドのような、澄んだ水の色。
- 鳥
- 水鳥。
- 逾
- 「いよいよ」。ますます。いっそう。「愈」と同じ。川の深緑を背景にして、鳥の白さがひときわ目立つことをいう。
白文山青花欲然
書き下し山青くして花然えんと欲す
現代語訳山は新緑に青々として、花は今にも燃え出しそうなほど赤い。
- 青
- 草木の新緑の色。
- 然
- 燃える。「燃」のもとの字。
- 欲然
- 今にも燃え出しそうだ。花が火のように赤くあざやかに咲いていることのたとえ。
白文今春看又過
書き下し今春看又過ぐ
現代語訳今年の春も、見ているうちにまた過ぎ去ろうとしている。
- 今春
- 今年の春。
- 看
- 「みすみす」。見ているうちに。みるみる。「みるみる」と読むこともある。
- 又
- また。去年や、それより前の春と同じように、今年の春も、という気持ち。
白文何日是帰年
書き下し何れの日か是れ帰年ならん
現代語訳いったいいつになったら、故郷に帰れる年がやってくるのだろうか。
- 何日
- 「いづれのひか」。いつ。時を問う疑問の言い方。
- 是
- 「これ」。「~である」と、主語と述語をつなぐ働きの語。
- 帰年
- 故郷に帰る年。ここでは「帰る時」とほぼ同じ意味。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:杜甫 詩の形式:五言絶句 押韻:然・年
次の語の読みを、現代仮名遣いのひらがなで答えよ。
①逾
②看
③何日解答を見る
①いよいよ
②みすみす(みるみる)
③いずれのひか次の語の意味を答えよ。
①碧
②欲然
③帰年解答を見る
①深い緑色
②今にも燃え出しそうだ
③故郷に帰る年(帰る時)第一句と第二句は対句になっている。それぞれの句で対比されている二つの色を答えよ。
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第一句:川の深い緑色(碧)と鳥の白。
第二句:山の新緑の青と花の赤(然)。
B 書き下し文・現代語訳
「山青花欲然」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:山青くして花然えんと欲す
現代語訳:山は新緑に青々として、花は今にも燃え出しそうなほど赤い。「何日是帰年」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:何れの日か是れ帰年ならん
現代語訳:いったいいつになったら、故郷に帰れる年がやってくるのだろうか。
C 内容の読み取り
第一句で、鳥が「逾白」く見えるのはなぜか。
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川の水が深い緑色に澄んでいて、その色を背景にすると、白い鳥がいっそう目立つから。
「今春看又過」の「又」には、作者のどのような思いがこめられているか。
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去年もその前の年も旅先で春を見送ってきたのに、今年の春もまた同じように過ぎていってしまう、という嘆きやあせり。
前半の二句と後半の二句では、それぞれ何が詠まれているか。
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前半:色あざやかな春の景色(叙景)。
後半:故郷に帰れない作者の嘆き(抒情)。この詩の主題を答えよ。
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旅先で春が過ぎていくのを見ながら、故郷に帰れないことを嘆く望郷の思い。