『嬰逆鱗(逆鱗に嬰る)』書き下し文・現代語訳・意味・解説|韓非子・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 竜の逆鱗
  3. 君主の逆鱗
  4. テスト予想問題

『嬰逆鱗(げきりんにふる)』(逆鱗に嬰る)の書き下し文・現代語訳・句法・故事成語の意味を解説します。出典は、戦国時代末の法家、韓非の著した『韓非子』(説難篇)です。「説難」は、君主を説得することの難しさを論じた篇で、この文章はその結びの部分にあたります。

書き下し文・現代語訳・解説

竜の逆鱗

本文(訓読文)

白文夫竜之為虫也、柔可狎而騎也。

書き下し夫(そ)れ竜の虫たるや、柔(じう)にして狎(な)らして騎(の)るべきなり。

現代語訳そもそも竜という動物の性質は、おとなしくて、飼い慣らして乗ることができる。

夫
「そレ」。そもそも。文の書き出しに置いて、話を切り出す語。
虫
ここでは昆虫ではなく、動物全体をいう。
為虫也
「虫たるや」。「為」は「たり」と読み、そのものが生まれつき持っている性質をいう。「也」は「なり」ではなく「や」と読み、「~というものは」と話題を示す。
柔
おだやかで素直なこと。
狎
「なラス」。飼い慣らす。
騎
「のル」。(背に)乗る。
可
「べシ」。~できる(可能)。

白文然其喉下有逆鱗径尺。

書き下し然(しか)れども其の喉(のど)の下に逆鱗(げきりん)の径尺(けいしやく)なる有り。

現代語訳しかし、竜ののどもとには、さしわたし一尺の、逆向きに生えたうろこがある。

然
「しかレドモ」。しかし。逆接。
其
竜を指す。
逆鱗
逆さまに生えたうろこ。
径尺
直径一尺。

白文若人有嬰之者、則必殺人。

書き下し若(も)し人之に嬰(ふ)るる者有らば、則(すなは)ち必ず人を殺す。

現代語訳もしそのうろこに触れる人がいれば、竜はきっとその人を殺してしまう。

若
「もシ」。もし~ならば。
嬰
「ふル」。触れる。さわる。
之
逆鱗を指す。
有~者
「~者有らば」。~する者がいたならば。
則
「すなはチ」。~ならばその時は。
殺人
主語は竜。「人」は、逆鱗に触れた人。

君主の逆鱗

本文(訓読文)

白文人主亦有逆鱗。

書き下し人主(じんしゆ)にも亦(また)逆鱗有り。

現代語訳君主にも、また(竜と同じように)逆鱗がある。

人主
君主。
亦
「また」。~もまた。竜と同じように、という気持ちを表す。

白文説者能無嬰人主之逆鱗、則幾矣。

書き下し説く者能(よ)く人主の逆鱗に嬰るること無くんば、則ち幾(ちか)し。

現代語訳君主を説こうとする者は、君主の逆鱗に触れずにいることができれば、説得は成功に近いといえる。

説者
「説く者」。君主に自分の意見を述べ、説得しようとする者。
能
「よク」。~できる。打消の「不」の下では「あたハ(ず)」と読むが、ここは「よく」。
無
「なクンバ」。~がないならば。
幾
「ちかシ」。よい結果に近い。ここでは、説得が成功したのに近いということ。
矣
置き字。断定の気持ちを表す。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)と意味を答えよ。
    ①夫
    ②然
    ③嬰
    ④亦
    ⑤幾

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    ①それ/そもそも
    ②しかれども/しかし
    ③ふるる(ふる)/触れる
    ④また/~もまた
    ⑤ちかし/(よい結果に)近い

  2. 「虫」「人主」「説者」は、それぞれ本文ではどのような意味か。

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    虫=動物(動物全体) 人主=君主 説者=君主に自分の意見を述べ、説得しようとする者

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「夫竜之為虫也、柔可狎而騎也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:夫れ竜の虫たるや、柔にして狎らして騎るべきなり。
    現代語訳:そもそも竜という動物の性質は、おとなしくて、飼い慣らして乗ることができる。

  2. 「若人有嬰之者、則必殺人」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:若し人之に嬰るる者有らば、則ち必ず人を殺す。
    現代語訳:もしそのうろこに触れる人がいれば、竜はきっとその人を殺してしまう。

  3. 「説者能無嬰人主之逆鱗、則幾矣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:説く者能く人主の逆鱗に嬰るること無くんば、則ち幾し。
    現代語訳:君主を説こうとする者は、君主の逆鱗に触れずにいることができれば、説得は成功に近いといえる。

C 句法・文法

  1. 「為虫也」の「也」と「騎也」の「也」の読みを、それぞれ現代仮名遣いのひらがなで答え、働きを説明せよ。

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    「為虫也」の也=や/上の語句を話題として示す(~というものは)。
    「騎也」の也=なり/文末で断定を表す。

  2. 「能無嬰人主之逆鱗」の「無」は、ここではどのように読み、どのような意味を表すか。

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    なくんば(無くんば)と読み、「~がないならば」という仮定の意味を表す。

D 内容の読み取り

  1. 「其喉下」の「其」と、「人有嬰之者」の「之」は、それぞれ何を指すか。

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    其=竜 之=逆鱗(竜ののどの下にある、逆さまに生えたうろこ)

  2. 「幾矣」とは、どういうことか。

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    君主への説得が、ほぼ成功したといってよい(成功に近い)ということ。

  3. この文章で、「竜」と「逆鱗」は、それぞれ何をたとえているか。

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    竜=君主 逆鱗=君主が触れられると激しく怒る部分(触れてはならない点)

  4. 「逆鱗に触れる」という故事成語は、今日どんな意味で用いられるか。

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    目上の人を激しく怒らせること。