『莫敢飾詐(敢へて飾詐する莫し)』書き下し文・現代語訳・解説|十八史略・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 即墨の大夫
  3. 阿の大夫
  4. 斉はよく治まった
  5. テスト予想問題

『莫敢飾詐(敢へて飾詐する莫し)』の書き下し文・現代語訳・句法を解説します。出典は、宋末元初の曾先之が編んだ中国の歴史読み物『十八史略』です。戦国時代の斉の国で、王が二人の地方長官(大夫)の評判と実態を見比べる話です。

書き下し文・現代語訳・解説

即墨の大夫

本文(訓読文)

白文時斉国幾不振。

書き下し時に斉国(せいこく)幾(ほとん)ど振るはず。

現代語訳そのころ、斉の国は国力が衰えて、ほとんど勢いがなくなっていた。

斉
戦国時代の国の名。今の山東省一帯を領有した。
幾
「ほとんド」。ほぼ。
振
勢いが盛んになる。「不振」で、国が衰えてふるわないこと。

白文王乃召即墨大夫、語之曰、

書き下し王乃(すなは)ち即墨(そくぼく)の大夫(たいふ)を召し、之に語りて曰はく、

現代語訳そこで王は即墨の長官を呼び出し、彼に向かって言うことには、

王
斉の威王。政治を改めて斉の国力を充実させた王とされる。
乃
「すなはチ」。そこで。
即墨
斉の領地の名。
大夫
「たいふ」。ここでは地方を治める長官。知事。
之
即墨の大夫を指す。

白文「自子之居即墨也、毀言日至。

書き下し「子(し)の即墨に居(を)りしより、毀言(きげん)日に至る。

現代語訳「あなたが即墨に赴任してからというもの、(あなたを)悪く言う言葉が毎日のように私の耳に入ってきた。

自
「よリ」。~から。起点を表す。
子
「し」。あなた。相手を指す言葉。
居
「をル」。ここは、長官として赴任していること。
毀言
悪口。そしる言葉。
日至
毎日のように届く。

白文然吾使人視即墨、田野辟、人民給、官無事、東方寧。

書き下し然(しか)れども吾(われ)人をして即墨を視(み)しむるに、田野(でんや)辟(ひら)け、人民給(きふ)し、官事無く、東方寧(やす)し。

現代語訳しかし、私が人をやって即墨の様子を見させたところ、田畑はよく開墾され、人々は満ち足りて暮らし、役所にはもめごともなく、(斉の)東方の地は安らかであった。

然
「しかレドモ」。しかし。
使人視即墨
「人をして即墨を視しむるに」。人に即墨を見させたところ。
辟
「ひらク」。田畑が開墾されている。
給
満ち足りている。
官無事
役所に問題がなく、ひまである。
寧
「やすシ」。安泰である。

白文是子不事吾左右以求助也。」

書き下し是(こ)れ子吾が左右(さいう)に事(つか)へて、以つて助けを求めざればなり。」と。

現代語訳これは、そなたが私の側近にこびへつらって助けを頼むようなことをしなかったからだ。」と。

是
即墨がよく治まっていたのに、悪口が毎日届いたことを指す。
事
「つかフ」。仕える。ここは、機嫌をとって取り入ること。
左右
王のそばに仕える者。側近。
~也
「~ばなり」。~だからである。理由を表す。

白文封之万家。

書き下し之を万家(ばんか)に封(ほう)ず。

現代語訳(王は)即墨の長官を、一万戸の領地を持つ領主に取り立てた。

之
即墨の大夫を指す。
封
「ほうズ」。領地を与えて領主にする。(「ふうズ」と読むと、封をして閉じる意味になる。)
万家
一万戸。一万戸の領地。

阿の大夫

本文(訓読文)

白文召阿大夫、語之曰、

書き下し阿(あ)の大夫を召し、之に語りて曰はく、

現代語訳(次に)阿の長官を呼び出し、彼に向かって言うことには、

阿
斉の領地の名。今の山東省東阿県のあたり。
之
阿の大夫を指す。

白文「自子之守阿、誉言日至。

書き下し「子の阿を守(まも)りしより、誉言(よげん)日に至る。

現代語訳「おまえが阿を治めるようになってからというもの、(おまえを)ほめる言葉が毎日のように耳に入ってきた。

守
領地を守り治める。長官として赴任すること。
誉言
ほめる言葉。「毀言」と反対の意味。

白文吾使人視阿、田野不辟、人民貧餒。

書き下し吾人をして阿を視しむるに、田野辟けず、人民貧餒(ひんだい)す。

現代語訳ところが、人を遣わして阿を調べさせると、田畑は荒れたままで、民は貧しく飢えに苦しんでいた。

貧餒
貧しくて飢えている。

白文趙攻鄄、子不救。

書き下し趙(てう)鄄(けん)を攻むれども、子救はず。

現代語訳趙の国が鄄を攻めても、おまえは助けなかった。

趙
戦国時代の国の名。今の河北省南部などを領有した。
鄄
斉の領地の名。今の山東省鄄城県のあたり。
攻むれども
攻めても。「ども」は逆接。

白文衛取薛陵、子不知。

書き下し衛(ゑい)薛陵(せつりよう)を取れども、子知らず。

現代語訳衛の国が薛陵を奪っても、おまえは知らない顔をしていた。

衛
戦国時代の国の名。今の河南省の一部などを領有した。
薛陵
斉の領地の名。
不知
知らない顔をする。取り合わない。

白文是子厚幣、事吾左右、以求誉也。」

書き下し是れ子幣(へい)を厚くし、吾が左右に事へて、以つて誉(よ)を求むればなり。」と。

現代語訳これは、おまえがたっぷりと賄賂を贈って、私の側近に取り入り、それによってほめてもらおうとしたからだ。」と。

是
阿の政治はひどかったのに、ほめる言葉ばかりが届いたことを指す。
幣
金品を贈ること。ここは賄賂。
厚幣
賄賂を多く贈る。
求誉
ほめられることを求める。

斉はよく治まった

本文(訓読文)

白文是日、烹阿大夫与嘗誉者。

書き下し是の日、阿の大夫と嘗(かつ)て誉めし者とを烹(に)る。

現代語訳その日のうちに、阿の長官と、以前に彼をほめた者とを、釜ゆでの刑にした。

烹
「にル」。釜ゆでの刑にする。
与
「と」。「AとBと」の形で、「AとB」を並べる。
嘗
「かつテ」。以前に。
嘗誉者
以前に阿の大夫をほめた者。賄賂を受け取ってほめていた王の側近。

白文群臣聳懼、莫敢飾詐。

書き下し群臣(ぐんしん)聳懼(しようく)し、敢(あ)へて飾詐(しよくさ)する莫(な)し。

現代語訳多くの臣下はふるえ上がり、うわべを飾ったり偽ったりしようとする者はだれもいなくなった。

群臣
多くの臣下。
聳懼
ふるえ恐れる。
飾詐
うわべを飾り、偽ること。
莫敢~
「敢へて~する莫し」。進んで~する者はいない。

白文斉大治。

書き下し斉大(おほ)いに治まる。

現代語訳こうして斉はよく治まった。

大治
よく治まる。政治が安定する。

白文諸侯不敢復致兵。

書き下し諸侯(しよこう)敢へて復(ま)た兵を致(いた)さず。

現代語訳諸侯は、もう二度と兵を出して斉を攻めようとはしなくなった。

諸侯
ほかの国々の君主。
不敢~
「敢へて~ず」。進んで~しようとはしない。
復
「まタ」。ふたたび。
致兵
兵を送る。攻め寄せる。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①幾ど
    ②乃ち
    ③自り
    ④寧し
    ⑤嘗て

    解答を見る

    ①ほとんど
    ②すなわち
    ③より
    ④やすし
    ⑤かつて

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①毀言
    ②左右
    ③幣
    ④給

    解答を見る

    ①悪口(悪く言う言葉)
    ②王のそばに仕える者(側近)
    ③金品を贈ること(賄賂)
    ④満ち足りている

  3. 「自子之居即墨也」の「子」の読みと意味を答えよ。

    解答を見る

    読み:し 意味:あなた(相手を指す言葉)

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「吾使人視即墨」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:吾人をして即墨を視しむ。
    現代語訳:私が人に即墨(の様子)を見させた。

  2. 「是子不事吾左右以求助也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:是れ子吾が左右に事へて、以つて助けを求めざればなり。
    現代語訳:これは、あなたが私の側近に取り入って、助けを求めなかったからだ。

  3. 「群臣聳懼、莫敢飾詐」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:群臣聳懼し、敢へて飾詐する莫し。
    現代語訳:多くの臣下はふるえ恐れ、進んでうわべを飾り偽る者はいなくなった。

  4. 「諸侯不敢復致兵」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:諸侯敢へて復た兵を致さず。
    現代語訳:諸侯は、二度と兵を出して(斉を)攻めようとはしなかった。

C 内容の読み取り

  1. 「封之万家」とは、だれをどうしたということか。

    解答を見る

    王が、即墨の大夫を一万戸の領地を持つ領主に取り立てたということ。

  2. 「是子厚幣事吾左右、以求誉也」の「是」は、どのようなことを指すか。

    解答を見る

    阿の政治はひどい状態だったのに、阿の大夫をほめる言葉が毎日のように王の耳に届いたこと。

  3. 即墨の大夫と阿の大夫について、王に届いていた評判と、実際の様子をそれぞれ説明せよ。

    解答を見る

    即墨の大夫:悪口ばかり届いていたが、実際は田畑が開墾され、民は満ち足り、東方の地も安泰で、よく治めていた。
    阿の大夫:ほめ言葉ばかり届いていたが、実際は田畑が荒れて民は飢え、他国に領地を攻められても放っておいていた。

  4. 「群臣聳懼」とあるが、臣下たちがふるえ恐れたのはなぜか。

    解答を見る

    阿の大夫と、賄賂を受けて彼をほめた者とが釜ゆでの刑にされたのを見て、うわべを飾ったり偽ったりすれば自分も処刑されるとわかったから。