『徒然草』静かに思へば 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 過ぎ去った昔の恋しさ
  4. 亡き人の字や絵
  5. テスト予想問題

『徒然草(つれづれぐさ)』第二十九段「静かに思へば」の現代語訳・品詞分解・解説です。

静かにもの思いにふけると、過ぎ去った昔がどうしようもなく恋しくなる――。作者はそう述べたあと、秋の夜長に身の回りを片づけていて、亡き人の書いた字や描いた絵を見つけたときの気持ちを語ります。「その折」が指す内容、「だに」の類推、最後の「いとかなし」の理由がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

過ぎ去った昔の恋しさ

原文
静しづかにナリ連用思へハ四已然ば接助順接確定、よろづに副過ぎガ上二連用に完了連用し過去連体方かたの格助体修恋しさのみ副助強意ぞ係助強意、せん方かたなきク連体。

現代語訳心静かに思いめぐらしてみると、何事につけても、過ぎ去った昔を恋しく思う気持ちだけは、どうにもしようがないものだ。

よろづに
何事につけても。
過ぎにし方
過ぎ去った昔。この「方(かた)」は、時・ころの意味。
せん方なし
どうしようもない。この「方」は、手段・方法の意味。

亡き人の字や絵

原文
人静しづまりラ四連用て接助単純接続のち、長きク連体夜よの格助体修すさびに格助目的、何なに代名と格助引用なきク連体具足ぐそくとりしたためマ下二連用、

現代語訳家の人が寝静まったあと、(秋の)長い夜の慰みに、これといってどうということもない身の回りの道具を片づけて、

人静まる
家の人が寝静まる。夜十時ごろを指すとされる。
長き夜
秋の夜長。
すさび
気の向くままにすること。慰み。
具足(ぐそく)
身の回りの道具。
とりしたたむ
片づける。整理する。
原文
残し置のこしおかカ四未然じ打消意志終止と格助引用思ふハ四連体反古ほうごなど副助例示破り捨やりすつるタ下二連体中なかに格助場所、

現代語訳残しておくまいと思う書き損じの紙などを破り捨てていると、その中に、

反古(ほうご)
書き損じなどで不要になった紙。「ほうぐ」「ほご」とも読む。
原文
亡なきク連体人の格助主格手て習ならひハ四連用、絵ゑ描かきすさびバ四連用たる存続連体、見出みいでダ下二連用たる完了連体こそ係助強意、ただ副そ代名の格助体修折をりの格助体修心地ここちすれサ変已然。

現代語訳今は亡き人が字を習い書きしたり、気の向くまま絵を描いたりしたのを目にしたときには、ただもうその当時に戻ったような気持ちがするものだ。

手
文字。
描きすさぶ
興にまかせて描く。
その折
その当時。
解説

「亡き人の」の「の」は主格で、「手習ひ」「描きすさびたる」の主語は亡き人。「描きすさびたる」の下に「もの」を補って読み、それを作者が「見出でたる」。

「その折」は、亡き人がまだ生きていて、字を書いたり絵を描いたりしていた当時。その頃に戻ったような気持ちとは、冒頭の「恋しさ」にあたる。

原文
このごろあるラ変連体人の格助体修文ふみだに副助類推、久ひさしくシク連用なりラ四連用て接助単純接続、いかなるナリ連体折をり、いつ代名の格助体修年なり断定連用けん過去推量連体と格助引用思ふハ四連体は係助提示、あはれなるナリ連体ぞ終助念押しかし終助念押し。

現代語訳今も生きている人の手紙でさえ、長い時がたって、(これは)どういうときの、何年の手紙だったろうかと思い返すのは、しみじみとした思いがするものだよ。

このごろある人
今生きている人。「ある」は動詞「あり」で「生きている」の意(連体詞の「ある」ではない)。「亡き人」と対になっている。
文(ふみ)
手紙。
あはれなり
しみじみと感慨深い。
解説

「だに」は類推。生きている人の手紙でさえ感慨深いのだから、まして亡き人の手紙はなおさらだ、という気持ちが言外にこめられている。

この一文だけは亡き人ではなく生きている人の話で、亡き人の遺品の話の間にはさまれた挿入的な文になっている。

原文
手てなれラ下二連用し過去連体具足ぐそくなど副助例示も係助添加、心も係助強意なくク連用て接助単純接続変かはらラ四未然ず打消連用久ひさしきシク連体、いと副かなしシク終止。

現代語訳(亡き人が)使い慣れていた道具なども、(人とちがって)心というものもなく、昔と変わらずに長く残っているのは、ひどく悲しい。

手なる
使い慣れる。
心もなし
(人とちがって)心がない。
かなし
悲しい。
解説

「手なれ」の主語は亡き人。「なども」で、前の字や絵に並べて、もう一つの遺品を挙げている。

心のない物は昔のまま残っているのに、それを使っていた人はもういない。物が変わらないことで、かえって人の命や過ぎた時が取り戻せないことを思い知らされ、「いとかなし」と言っている。

『徒然草』のほかの段:あだし野の露消ゆる時なく / 神無月のころ / 花は盛りに

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①具足
    ②反古
    ③破り捨つ
    ④文
    ⑤手習ひ

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    ①ぐそく
    ②ほうご(ほうぐ・ほご)
    ③やりすつ
    ④ふみ
    ⑤てならい

  2. 本文中での意味を答えよ。
    ①よろづに
    ②せん方なし
    ③すさび
    ④とりしたたむ
    ⑤手(「手習ひ」の「手」)
    ⑥あはれなり

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    ①何事につけても
    ②どうしようもない
    ③気の向くままにすること・慰み
    ④片づける・整理する
    ⑤文字
    ⑥しみじみと感慨深い

  3. 「過ぎにし方」と「せん方なき」の「方」は、それぞれどのような意味か。

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    「過ぎにし方」の「方」=時・ころ(過ぎ去った時)。「せん方なき」の「方」=手段・方法(するべき方法)。

B 文法

  1. 次の【 】内の助動詞の意味と活用形を答えよ。
    ①過ぎ【に】【し】方
    ②残し置か【じ】と思ふ
    ③いつの年【なり】【けん】と思ふは
    ④手なれ【し】具足

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    ①に=完了・連用形 し=過去・連体形
    ②打消意志・終止形
    ③なり=断定・連用形 けん=過去推量・連体形
    ④過去・連体形

  2. 次の【 】内の助詞の用法を答えよ。
    ①亡き人【の】手習ひ
    ②その折【の】心地
    ③あはれなる【ぞかし】
    ④手なれし具足【など】も

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    ①主格
    ②連体修飾格
    ③念押し
    ④例示

  3. 次の文で、係助詞を受けて結んでいる語を抜き出し、その活用形も答えよ。
    ①よろづに過ぎにし方の恋しさのみぞ、せん方なき。
    ②見出でたるこそ、ただその折の心地すれ。

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    ①せん方なき・連体形
    ②すれ・已然形

C 現代語訳・内容

  1. 「静かに思へば、よろづに過ぎにし方の恋しさのみぞ、せん方なき。」を現代語訳せよ。また、作者が静かに思いをめぐらしている対象を、本文中から五字で抜き出せ。

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    訳=心静かにもの思いにふけってみると、どんなことにつけても、過ぎてしまった昔が恋しい気持ちだけは、どうしようもないものだ。
    抜き出し=過ぎにし方

  2. 「人静まりてのち、長き夜のすさびに、何となき具足とりしたため」を現代語訳せよ。また、「長き夜」とは四季のうちいつの夜か。

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    訳=人が寝静まったあと、長い夜の慰みに、何ということもない身の回りの道具を片づけ(ていると)。
    季節=秋

  3. 「亡き人の手習ひ、絵描きすさびたる、見出でたるこそ、ただその折の心地すれ。」について、①現代語訳せよ。②「その折」とはいつのことか、説明せよ。③このときの作者の心持ちを、本文中の名詞一語で答えよ。

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    ①今は亡き人が字を書き習ったり、気の向くままに絵を描いて楽しんだりしたものを見つけたときには、ただもうその当時に戻った気持ちになるものだ。
    ②亡き人がまだ生きていて、字を書いたり絵を描いたりしていたころ。
    ③恋しさ

  4. 「このごろある人の文だに、久しくなりて、いかなる折、いつの年なりけんと思ふは、あはれなるぞかし。」について、①現代語訳せよ。②「このごろある人」と対になる語句を、本文中から三字で抜き出せ。③「だに」の働きをふまえて、言外にどのようなことを言おうとしているか説明せよ。

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    ①今生きている人の手紙でさえ、時がたって、どんなときの、いつの年のものだったろうかと思うのは、しみじみとしたものだよ。
    ②亡き人
    ③生きている人の手紙でさえ感慨深いのだから、まして亡き人の手紙はいっそう深い感慨を起こさせるということ。

  5. 「手なれし具足なども、心もなくて変はらず久しき、いとかなし。」について、①「手なれ」の主語を答えよ。②現代語訳せよ。③作者が「いとかなし」と感じるのはなぜか、説明せよ。

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    ①亡き人
    ②(亡き人が)使い慣れていた道具なども、心もなく、昔と変わらずに長く残っているのは、とても悲しい。
    ③心のない道具は昔のまま残っているのに、持ち主の命や過ぎた時は二度と戻らないことを、かえって思い知らされるから。