『徒然草』神無月のころ 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 山里の庵
  4. 囲われたみかんの木
  5. テスト予想問題

『徒然草(つれづれぐさ)』第十一段「神無月のころ」の現代語訳・品詞分解・解説です。

陰暦十月、山里を訪ねた作者は、人里離れてひっそりと暮らす庵を見つけ、その暮らしぶりにしみじみと心ひかれます。ところが、庭の大きなみかんの木が厳重に囲われているのを見て、少し興ざめしてしまいます。作者の気持ちの変化、反実仮想「ましかば」、「の」の用法がよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

山里の庵

原文
神無月かみなづきの格助体修ころ、栗栖野くるすのと格助引用いふハ四連体所を格助経過点過ぎガ上二連用て接助単純接続、ある連体山里に格助場所尋ね入るラ四連体こと侍りラ変連用丁→読み手し過去連体に接助単純接続、

現代語訳神無月(陰暦十月)のころ、栗栖野という土地を過ぎて、ある山里へ(人を)訪ねて入っていったことがありましたが、

神無月(かみなづき)
陰暦十月。
尋ね入る
訪ねて分け入る。
解説

「侍り」は丁寧語で、作者から読み手への敬意。「侍りしに」の「し」は過去、「に」は単純な接続。

原文
遥かなるナリ連体苔の格助体修細道を格助対象踏み分けカ下二連用て接助単純接続、心細くク連用住みなしサ四連用たる存続連体庵いほりありラ変終止。

現代語訳はるばると続く苔の細道を踏み分けて、ひっそりともの寂しく暮らしている庵がある。

遥かなり
はるか遠くまで続いている。
心細し
もの寂しい。
住みなす
(ある様子で)住む。
解説

「遥かなる苔の細道」は、苔が生えるほど人の行き来が少ない道。人の訪れがまれなことがうかがえる。

「踏み分けて」は「住みなしたる」にかかり、苔の細道を踏み分けて暮らしているのは庵の主人と読む。作者が細道を踏み分けて行った先に庵があった、と読む説もある。

原文
木の葉に格助原因埋もるるラ下二連体懸樋かけひの格助体修雫なら断定未然で接助打消接続は係助取り立て、つゆ副おとなふハ四連体ものなしク終止。

現代語訳木の葉に埋もれている懸樋から落ちるしずく(の音)のほかには、まったく音を立てるものがない。

懸樋(かけひ)
水を引くために地上にかけ渡した樋(とい)。
ならでは
〜でなくては。〜以外には。
つゆ〜なし
まったく〜ない。
おとなふ
音を立てる。
解説

「木の葉に埋もるる」は、落ち葉が懸樋に降り積もっている様子で、初冬の季節感が表れている。

懸樋のしずくの音のほかは何の音もしない、静まりかえった庵のたたずまい。

原文
閼伽棚あかだなに格助場所菊、紅葉など副助例示折り散らしサ四連用たる存続連体、さすがに副住むマ四連体人の格助主格あれラ変已然ば接助順接確定なる断定連体べし推量終止。

現代語訳閼伽棚に、折り取った菊や紅葉などが無造作に置かれているのは、(こんなにひっそりしていても)やはり住む人がいるからなのだろう。

閼伽棚(あかだな)
仏に供える水や花を置く棚。
折り散らす
折って無造作に置く。
さすがに
そうはいってもやはり。
解説

「さすがに」は、前の「木の葉に埋もるる懸樋の雫ならでは、つゆおとなふものなし」を受ける。何の音もしないほどひっそりしているが、それでもやはり、ということ。

「住む人の」の「の」は主格(〜が)。閼伽棚に花が供えてあることから、住む人がいるとわかる。

「あればなるべし」は「(住む人が)いるからなのだろう」。「なる」は断定、「べし」は推量。

囲われたみかんの木

原文
かくて副も係助強意あらラ変未然れ可能連用ける詠嘆連体よ間助詠嘆と格助引用、あはれにナリ連用見るマ上一連体ほどに接助経過、かなた代名の格助体修庭に格助場所、

現代語訳こんなふうにしてでも暮らしていけるものなのだなあと、しみじみと心ひかれて見ているうちに、向こうの庭に、

かくて
このようにして。
あはれなり
しみじみと心ひかれる。
解説

「かくてもあられけるよ」は、こんなにもの寂しい様子でも暮らしていけるのだなあ、という意味。「れ」は可能、「ける」は詠嘆。

作者は、庵の主人の質素で静かな暮らしぶりに、しみじみと心ひかれている。「あはれに」は感動の気持ちで、同情ではない。

原文
大きなるナリ連体柑子かうじの格助体修木の格助同格、枝も係助強意たわわにナリ連用なりラ四連用たる存続連体が格助体修、周りを格助対象きびしくシク連用囲ひハ四連用たり存続連用し過去連体こそ係助強意、

現代語訳大きなみかんの木で、枝もしなうほどに実がなっている木の、周りを厳重に囲ってあったのは、

柑子(かうじ)
みかんの一種。
たわわなり
実の重みで枝がしなっている。
きびし
厳重だ。
解説

「柑子の木の」の「の」は同格(〜で)。「大きなる柑子の木」と「枝もたわわになりたる(木)」が同じものを指す。

庵の主人が木を囲ったのは、実を人に取られないようにするためと考えられる。

「こそ」の結びは、次の句の「しか」(已然形)。

原文
少し副ことさめマ下二連用て接助単純接続、こ代名の格助体修木なからク未然ましか反実仮想未然ば接助順接仮定と格助引用おぼえヤ下二連用しか過去已然。

現代語訳少し興がさめて、もしこの木がなければ(どんなによかったろう)と思われたことだ。

ことさむ(事醒む)
興がさめる。
おぼゆ
(自然に)思われる。
解説

「ましかば」は反実仮想。下に「よからまし」(よかっただろうに)などが省略されている。

作者が興ざめしたのは、世を離れて静かに暮らしていると思った庵の主人に、実を取られまいとする物への執着が見えたから。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①神無月
    ②栗栖野
    ③庵
    ④懸樋
    ⑤閼伽棚
    ⑥柑子

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    ①かみなづき(かんなづき)
    ②くるすの
    ③いおり
    ④かけい
    ⑤あかだな
    ⑥こうじ

  2. 本文中で使われている意味を、次の語それぞれについて答えよ。
    ①心細し
    ②おとなふ
    ③さすがに
    ④あはれなり
    ⑤ことさむ

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    ①もの寂しい
    ②音を立てる
    ③そうはいってもやはり
    ④しみじみと心ひかれる
    ⑤興がさめる

B 文法

  1. 次の【 】内の助動詞の意味を答えよ。
    ①住みなし【たる】庵
    ②雫【なら】では
    ③あればなる【べし】
    ④かくてもあら【れ】【ける】よ
    ⑤この木なから【ましか】ば
    ⑥おぼえ【しか】

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    ①存続
    ②断定
    ③推量
    ④れ=可能・ける=詠嘆
    ⑤反実仮想
    ⑥過去

  2. 次の【 】内の「の」の用法を答えよ。
    ①遥かなる苔【の】細道
    ②住む人【の】あればなるべし
    ③大きなる柑子の木【の】、枝もたわわになりたるが

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    ①連体修飾格
    ②主格
    ③同格

  3. 「周りをきびしく囲ひたりしこそ」の「こそ」の結びとなっている語を答え、活用形も記せ。

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    しか・已然形

C 現代語訳・内容

  1. 「神無月」は陰暦何月か。また、本文から初冬の季節感が表れている情景を二つ挙げよ。

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    陰暦十月
    情景=落ち葉が懸樋をうずめている・菊や紅葉が閼伽棚に置かれている(柑子の実の重みで枝がしなっている、も可)

  2. 「木の葉に埋もるる懸樋の雫ならでは、つゆおとなふものなし。」を現代語訳せよ。また、この庵に人の訪れが少ないことがうかがえる語句を、本文中から八字で抜き出せ。

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    訳=木の葉に埋もれている懸樋から落ちるしずく(の音)のほかには、まったく音を立てるものがない。
    語句=遥かなる苔の細道

  3. 「さすがに住む人のあればなるべし」を現代語訳せよ。また、作者がそう判断した手がかりは何か。

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    訳=(こんなにひっそりしていても)やはり住む人がいるからなのだろう。
    手がかり=閼伽棚に菊や紅葉などが折って置いてあったこと。

  4. 「かくてもあられけるよ」を現代語訳せよ。また、このときの作者の気持ちを説明せよ。

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    訳=こんなふうにしてでも暮らしていけるものなのだなあ。
    気持ち=もの寂しいながらも味わいのある、庵の主人の静かな暮らしぶりにしみじみと心ひかれている。

  5. 庵の主人が柑子の木の周りをきびしく囲っていたのは、何のためと考えられるか。

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    柑子の実を人に取られないようにするため。

  6. 「この木なからましかば」について、①下に略されている語句を補い、口語訳せよ。②作者がそう思ったのはなぜか、説明せよ。

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    ①もしこの木がなければ、よかっただろうに。
    ②世を離れて静かに暮らしていると思った庵の主人が、実を取られまいと木を厳重に囲っていて、物への執着が見えて興ざめしたから。