諸葛亮『出師表』①書き下し文・現代語訳・解説|危急存亡の秋・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 出発に臨んで
  3. 国の危機と、君主の心構え
  4. 公平な賞罰
  5. 前漢と後漢
  6. テスト予想問題
  7. 続き(②)

諸葛亮(しょかつりょう)『出師表(すいしのひょう)』①の書き下し文・現代語訳・解説です。本文は、元の曽先之(そうせんし)が編んだ歴史書『十八史略』によります。諸葛亮が書いた「出師表」(前出師表)の一部を抜き出したものです。

書き下し文・現代語訳・解説

出発に臨んで

本文(訓読文)

白文漢丞相亮、率諸軍北伐魏。

書き下し漢の丞相(じようしやう)の亮、諸軍を率(ひき)ゐて北のかた魏を伐つ。

現代語訳漢の丞相諸葛亮は、軍勢を率いて、北の魏を討伐しようとした。

漢
三国時代の蜀漢(蜀)のこと。漢の王室の血を引くとする劉備が建てた国なので、「漢」と名のった。
丞相
天子を助けて政治を取りしきる最高の官職。
亮
諸葛亮。字は孔明。
北
「きたノカタ」と読み、北の方へ、の意。
魏
三国の一つ。曹操の子の曹丕が建てた国。

白文臨発上疏曰、

書き下し発するに臨みて上疏(じやうそ)して曰はく、

現代語訳出発するにあたって、(皇帝に)文章をたてまつって申し上げた、

臨
「のぞム」。その時に直面する。
上疏
天子に文章をたてまつる。この文章をたてまつった相手は、蜀漢の二代目の皇帝劉禅。

国の危機と、君主の心構え

本文(訓読文)

白文「今天下三分、益州疲弊。

書き下し「今天下三分し、益州疲弊(ひへい)せり。

現代語訳「今、天下は三つに分かれており、わが益州は疲れ弱っております。

天下三分
天下が魏・呉・蜀(蜀漢)の三国に分かれていること。
益州
蜀漢が治めていた地域。今の四川省を中心とする。ここでは蜀漢の国そのものを指している。
疲弊
国の力が疲れ衰えていること。

白文此誠危急存亡之秋也。

書き下し此れ誠に危急存亡(ききふそんばう)の秋(とき)なり。

現代語訳これはまことに、国が生き残るか滅びるかの、重大な時でございます。

危急存亡
危険がさしせまり、存続するか滅亡するかの分かれ目にあること。
秋
「とき」と読む。重大な時期、最も大切な時。

白文宜開張聖聴、不宜塞忠諫之路。

書き下し宜しく聖聴(せいちやう)を開張(かいちやう)すべく、宜しく忠諫(ちゆうかん)の路を塞ぐべからず。

現代語訳(陛下は)臣下の言葉に広く耳を傾けられるのがよく、忠義の心からのいさめが届く道を閉ざしてはなりません。

宜
再読文字。「よろシク~ベシ」と読み、~するのがよい、の意。
開張
大きく開く。
聖聴
天子のお耳。天子が臣下の言葉を聞くこと。
不宜
「よろシク~ベカラず」と読み、~するのはよくない、~してはならない、の意。
忠諫
忠義の心からいさめること。また、そのいさめの言葉。

公平な賞罰

本文(訓読文)

白文宮中・府中、俱為一体。

書き下し宮中・府中は、俱(とも)に一体たり。

現代語訳宮中(陛下のおそばに仕える者たち)と府中(丞相府の役人たち)とは、どちらも一体のものです。

宮中
天子の宮廷。ここでは、宮中で陛下のおそばに仕える臣下たちを指す。
府中
丞相府(丞相が政治を行う役所)。ここでは、出陣する諸葛亮のあとに残る丞相府の役人たちを指す。
俱
「ともニ」。そろって、どちらも。

白文陟罰臧否、不宜異同。

書き下し臧否(ざうひ)を陟罰(ちよくばつ)するに、宜しく異同(いどう)あるべからず。

現代語訳善い者を賞し、悪い者を罰するのに、(宮中と府中との間で)基準が違うことがあってはなりません。

陟罰
「陟」は官位を上げてほめること、「罰」は官位を下げたりして罰すること。
臧否
「臧」は善、「否」は悪。「陟罰臧否」で、善を賞し悪を罰すること。
異同
食い違い。「同」は「異」に添えた字で、意味は「異」にある。

白文若有作姦犯科及忠善者、

書き下し若し姦(かん)を作(な)し科(くわ)を犯し及び忠善の者有らば、

現代語訳もし、悪事をはたらき法を犯す者や、忠義で善良な者がおりましたら、

若
「もシ」。仮定を表す。下の「有らば」と呼応する。
作姦
悪事をはたらく。
科
法律。諸葛亮らが定めた蜀の法律。
忠善者
忠義で善良な者。賞を与えるべき者。

白文宜付有司、論其刑賞、以昭平明之治。

書き下し宜しく有司(いうし)に付して、其の刑賞(けいしやう)を論じて、以つて平明(へいめい)の治を昭(あき)らかにすべし。

現代語訳担当の役人に引き渡して、その者への刑罰や恩賞を論じ定めさせ、それによって陛下の政治が公平で明らかであることを(天下に)はっきりお示しになるのがよいでしょう。

付
引き渡す。任せる。
有司
その仕事を担当する役人。
刑賞
刑罰と恩賞。悪事をはたらいた者には刑罰を、忠善の者には恩賞を与える。
昭
はっきりと示す。天下(世の人々)に対して示すのである。
平明之治
公平で明らかな政治。

前漢と後漢

本文(訓読文)

白文親賢臣遠小人、此先漢所以興隆也。

書き下し賢臣に親しみ小人(せうじん)を遠ざくるは、此れ先漢(せんかん)の興隆(こうりゆう)せし所以(ゆゑん)なり。

現代語訳すぐれた臣下を身近に置き、つまらない者を遠ざけたこと、これが前漢の栄えた理由です。

親
親しむ。身近に置いて用いる。
賢臣
賢くすぐれた臣下。
小人
徳や教養のない、つまらない人物。
先漢
前漢。高祖劉邦が建てた。
興隆
勢いが盛んになる。栄える。
所以
「ゆゑん」。理由。原因。

白文親小人遠賢臣、此後漢所以傾頽也。

書き下し小人に親しみ賢臣を遠ざくるは、此れ後漢の傾頽(けいたい)せし所以なり。

現代語訳つまらない者を身近に置き、すぐれた臣下を遠ざけたこと、これが後漢の衰え傾いた理由です。

後漢
光武帝劉秀が建てた王朝。二二〇年、魏の曹丕に帝位をゆずって滅んだ。
傾頽
傾き崩れる。衰える。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①丞相
    ②秋(危急存亡之秋)
    ③俱
    ④有司
    ⑤所以

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    ①じょうしょう
    ②とき
    ③ともに
    ④ゆうし
    ⑤ゆえん

  2. 次の語の、本文中での意味を答えよ。
    ①秋
    ②臧否
    ③小人
    ④昭

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    ①(重大な)時期・最も大切な時
    ②善と悪(善い者と悪い者)
    ③徳や教養のない、つまらない人物
    ④はっきりと示す

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「宜開張聖聴、不宜塞忠諫之路」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:宜しく聖聴を開張すべく、宜しく忠諫の路を塞ぐべからず。
    現代語訳:陛下は臣下の言葉に広く耳を傾けられるのがよく、忠義の心からのいさめが届く道を閉ざしてはなりません。

  2. 「若有作姦犯科及忠善者、宜付有司、論其刑賞、以昭平明之治」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:若し姦を作し科を犯し及び忠善の者有らば、宜しく有司に付して、其の刑賞を論じて、以つて平明の治を昭らかにすべし。
    現代語訳:もし悪事をはたらき法を犯す者や、忠義で善良な者がいたならば、担当の役人に任せて刑罰や恩賞を論じ定めさせ、それによって公平で明らかな政治であることを天下にはっきり示されるのがよいでしょう。

  3. 「親賢臣遠小人、此先漢所以興隆也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:賢臣に親しみ小人を遠ざくるは、此れ先漢の興隆せし所以なり。
    現代語訳:すぐれた臣下を身近に置き、つまらない者を遠ざけたことが、前漢の栄えた理由です。

C 内容の読み取り

  1. 「上疏曰」以下の文章は、だれが、だれに向けて書いたものか。

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    諸葛亮が、蜀漢の皇帝劉禅(後主)に向けて書いたもの。

  2. 「今天下三分」とあるが、天下を三分している国の名をすべて答えよ。また、そのうち諸葛亮の国は、本文ではどのような語で表されているか。二つ抜き出せ。

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    国名:魏・呉・蜀(蜀漢)
    語:漢・益州

  3. 諸葛亮は、自分の国が今どのような状況にあると考えているか。本文中の六字の語句を抜き出し、その意味も説明せよ。

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    危急存亡之秋
    意味:危険がさしせまり、国が存続するか滅びるかが決まる重大な時期であること。

  4. 「陟罰臧否、不宜異同」とあるが、諸葛亮は、だれとだれの間で、どのようなことに食い違いがあってはならないと述べているか。

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    宮中(皇帝のそばに仕える者)と府中(丞相府の役人)の間で、善い者を賞し悪い者を罰する基準に食い違いがあってはならないと述べている。

  5. 「平明之治」を天下に示すために、劉禅はどのようにするのがよいと述べられているか。説明せよ。

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    宮中・府中のどちらに属する者であっても、悪事をはたらいた者や忠義で善良な者がいれば、担当の役人に任せて刑罰や恩賞を論じ定めさせるのがよいと述べられている。

  6. 前漢が栄え、後漢が衰えた理由を、諸葛亮はそれぞれどのように述べているか。また、それを述べることで、劉禅にどうしてほしいと考えているか。

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    前漢は賢臣を近づけ小人を遠ざけたので栄え、後漢は小人を近づけ賢臣を遠ざけたので衰えた。
    劉禅にも、すぐれた臣下を近づけ、つまらない者を遠ざけてほしいと考えている。

続き(②)

諸葛亮は、自分が先帝劉備に仕えることになったいきさつと、託された使命を語り、北伐への決意を述べます。「三顧の礼」のもとになった場面です。