李白『春夜宴桃李園序』書き下し文・現代語訳・解説|「光陰は百代の過客」・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 人生ははかない
  3. 春の夜を楽しむ理由
  4. 春の夜の宴
  5. 詩を作ろう
  6. テスト予想問題

李白『春夜宴桃李園序(しゅんや とうりのえんにえんするのじょ)』の書き下し文・現代語訳・句法を解説します。作者の李白(701~762)は盛唐の詩人で、「詩仙」と呼ばれました。出典は『古文真宝』(後集)です。

書き下し文・現代語訳・解説

人生ははかない

本文(訓読文)

白文夫天地者万物之逆旅、光陰者百代之過客。

書き下し夫(そ)れ天地は万物の逆旅(げきりよ)にして、光陰(くわういん)は百代の過客(くわかく)なり。

現代語訳そもそも天地とは、万物がひととき身を寄せる宿屋であり、月日とは、果てしない時の流れを通り過ぎていく旅人である。

夫
「そレ」。そもそも。文の初めに置いて、話を説き起こす語(発語の辞)。
者
「は」と読み、主語を取り立てて示す。
逆旅
宿屋。「逆」は「迎える」の意で、旅人を迎える所。
光陰
月日。時間。
百代
永遠。
過客
旅人。通り過ぎて行く人。

白文而浮生若夢、為歓幾何。

書き下し而(しか)して浮生(ふせい)は夢のごとし、歓(くわん)を為すこと幾何(いくばく)ぞ。

現代語訳そして、水に浮かび漂うように定まらない人の一生は、夢のようにはかない。楽しみを尽くそうとしても、どれほどの時間があるだろうか(いや、いくらもない)。

而
「しかシテ」。そして。
浮生
はかない人生。水に浮かんで漂うような、定めない人生。
若夢
「夢のごとし」。夢のようだ。「若」は「ごとシ」と読み、比況を表す。
為歓
楽しみごとをする。歓楽を尽くす。

春の夜を楽しむ理由

本文(訓読文)

白文古人秉燭夜遊、良有以也。

書き下し古人燭(しよく)を秉(と)りて夜遊ぶ、良(まこと)に以(ゆゑ)有るなり。

現代語訳昔の人が灯火を手に取って夜まで遊んだというのは、本当にもっともな理由のあることだ。

秉燭
灯火を手に取る。「秉」は「とル」で、手に持つ。
夜遊
夜まで遊ぶ。昔の詩(古詩)に「昼は短く夜は長いのだから、灯火をともして遊ぼう」という内容がある。
良
「まことニ」。本当に。
以
「ゆゑ」。理由。「所以」と同じ意味。
良有以也
まことにもっともなことだ。

白文況陽春召我以煙景、大塊仮我以文章。

書き下し況(いは)んや陽春(やうしゆん)我を召(まね)くに煙景(えんけい)を以てし、大塊(たいくわい)我に仮(か)すに文章を以てするをや。

現代語訳まして今は、うららかな春がかすみのたなびく景色で私を誘い、造物主が私に文才を貸してくれているのだから、なおのこと(この夜を楽しむべき)である。

陽春
うららかな、暖かい春。
召
「まねク」。招く。
煙景
かすみたなびく春の景色。
大塊
造物主。天地。もとは大地の意。
仮
「かス」。貸す。貸し与える。
文章
詩文を作る才能。美しい春の景色の意と解する説もある。

春の夜の宴

本文(訓読文)

白文会桃李之芳園、序天倫之楽事。

書き下し桃李(たうり)の芳園(はうゑん)に会(くわい)して、天倫(てんりん)の楽事(らくじ)を序(じよ)す。

現代語訳桃や李の花がかおる庭に集まって、兄弟たちの楽しい宴をくり広げる。

桃李
桃と李(すもも)。
芳園
花がよいかおりを放つ庭園。
会
集まる。
天倫
天が定めた人の間柄(父子・兄弟など)。ここでは兄弟。
楽事
楽しいこと。ここでは宴。
序
順序立てて行う。くり広げる。

白文群季俊秀、皆為恵連。

書き下し群季(ぐんき)の俊秀(しゆんしう)は、皆恵連(けいれん)たり。

現代語訳大勢の若い従弟たちのうち、すぐれた者は、皆、謝恵連のように詩がうまい。

群季
多くの年下の弟たち。ここでは従弟たち。「季」は兄弟の末の者。
俊秀
才能のすぐれた者。
為
「たリ」。~である。
恵連
謝恵連。南朝宋の詩人。一族の兄の謝霊運に、その才能を高く評価された。

白文吾人詠歌、独慚康楽。

書き下し吾人(ごじん)の詠歌(えいか)は、独り康楽(かうらく)に慚(は)づ。

現代語訳私の作る詩だけは、謝康楽(謝霊運)に及ばず、恥ずかしいかぎりだ。

吾人
私。李白自身。
詠歌
詩歌を作ること。また、作った詩歌。
独
「ひとリ」。~だけは。
慚
「はヅ」。恥ずかしく思う。
康楽
謝霊運のこと。南朝宋の大詩人で、康楽公の爵位を継いだので謝康楽という。

白文幽賞未已、高談転清。

書き下し幽賞(いうしやう)未だ已(や)まず、高談(かうだん)転(うた)た清し。

現代語訳静かに景色を愛でる楽しみはまだ終わらず、世俗を離れた高雅な語らいはいよいよ清らかさを増していく。

幽賞
心静かに景色を味わうこと。
未已
「未だ已まず」。まだ終わらない。「未」は再読文字で、「いまダ~ず」と読む。
高談
俗世を離れた高尚な話。
転
「うたタ」。ますます。いよいよ。

白文開瓊筵以坐華、飛羽觴而酔月。

書き下し瓊筵(けいえん)を開きて以て華(はな)に坐(ざ)し、羽觴(うしやう)を飛ばして月に酔(ゑ)ふ。

現代語訳美しい宴席を設けて花のもとに座り、杯をしきりにやりとりして、月を眺めながら酔う。

瓊筵
玉のように美しいむしろ。立派な宴席。
坐華
(桃や李の)花のもとに座る。「華」は「花」と同じ。
羽觴
すずめが羽を広げた形をした杯。
飛羽觴
杯を飛ばすように、さかんにやりとりする。「羽」に合わせて「飛」と言っている。
酔月
月を眺めながら酔う。

詩を作ろう

本文(訓読文)

白文不有佳作、何伸雅懐。

書き下し佳作(かさく)有らずんば、何ぞ雅懐(がくわい)を伸(の)べん。

現代語訳すぐれた作品ができなければ、この風雅な心をどうして表すことができようか(いや、できない)。

佳作
すぐれた作品。よい詩。
雅懐
風雅な心。風流な思い。
伸
「のブ」。述べる。言い表す。
何A
「何ぞAせん」。どうしてAしようか、いやAしない。(反語)

白文如詩不成、罰依金谷酒数。

書き下し如(も)し詩成らずんば、罰は金谷(きんこく)の酒数(しゆすう)に依(よ)らん。

現代語訳もし詩ができなければ、罰として、金谷園での故事にのっとり、罰杯を三杯飲ませることとしよう。

如
「もシ」。もし~ならば。仮定を表す。
詩不成
「詩成らずんば」。詩ができなければ。
依
「よル」。従う。ならう。
金谷酒数
晋の石崇が、洛陽郊外の別荘・金谷園で宴を開き、詩を作れなかった者に罰として酒三杯を飲ませたという故事。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①逆旅
    ②幾何
    ③良(良有以也)
    ④況
    ⑤如(如詩不成)

    解答を見る

    ①げきりょ
    ②いくばく(ぞ)
    ③まことに
    ④いわんや
    ⑤もし

  2. 次の語の、本文中での意味を答えよ。
    ①光陰
    ②浮生
    ③大塊
    ④佳作

    解答を見る

    ①月日(時間)
    ②はかない人生
    ③造物主(天地)
    ④すぐれた作品(よい詩)

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「而浮生若夢、為歓幾何」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:而して浮生は夢のごとし、歓を為すこと幾何ぞ。
    現代語訳:そして、はかない人生は夢のようなもので、楽しみを尽くそうとしても、どれほどの時間があるだろうか(いや、いくらもない)。

  2. 「古人秉燭夜遊、良有以也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:古人燭を秉りて夜遊ぶ、良に以有るなり。
    現代語訳:昔の人が灯火を手に取って夜まで遊んだのは、本当にもっともなことだ。

  3. 「況陽春召我以煙景、大塊仮我以文章」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:況んや陽春我を召くに煙景を以てし、大塊我に仮すに文章を以てするをや。
    現代語訳:まして、うららかな春がかすむ景色で私を誘い、造物主が私に文才を貸してくれているのだから、なおのこと(楽しむべき)である。

  4. 「不有佳作、何伸雅懐」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:佳作有らずんば、何ぞ雅懐を伸べん。
    現代語訳:すぐれた作品ができなければ、この風雅な心をどうして表せようか、いや、表せない。

  5. 「如詩不成、罰依金谷酒数」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:如し詩成らずんば、罰は金谷の酒数に依らん。
    現代語訳:もし詩ができなければ、罰として、金谷園の故事にならって酒を三杯飲ませよう。

C 内容の読み取り

  1. 「良有以也」とあるが、作者が、昔の人が夜まで遊んだことをもっともだと考えるのはなぜか。

    解答を見る

    人生は夢のようにはかなく、楽しめる時間はわずかしかないから。

  2. 「群季俊秀、皆為恵連。吾人詠歌、独慚康楽」とは、どういうことを言っているか。

    解答を見る

    若い従弟たちは皆、謝恵連のように詩が上手だが、年長の自分の詩だけは謝霊運(謝康楽)に及ばず恥ずかしい、ということ。(作者の謙遜)

  3. (1)冒頭の「光陰者百代之過客」をふまえて書かれた、日本の紀行文の作品名と作者名を答えよ。
    (2)この文章のように、四字・六字の対句を多く用いる文体を何というか。

    解答を見る

    (1)『おくのほそ道』・松尾芭蕉
    (2)四六駢儷文(駢文)