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漢文句法一覧(句形・読み方・意味)

高校の漢文で出てくる重要な句法(句形)を、グループごとにまとめました。それぞれ、返り点つきの句形(縦書き)、読み方、意味、教科書によく出る文章からの例文の順に並べています。記事の中の句法ボックスからも、ここへ飛んで確認できます。

「A・B」には語句が入ります。基本は多くの教科書の句形一覧に載っている句形です。まずはここから覚えましょう。

否定形

「〜ない」と打ち消す形。否定の字は下から返って読むので、まず否定の字を見つけ、その下のどこから返るかを確かめるのが基本です。

基本

読みAせず

意味Aしない。Aではない。

「不」は助動詞「ず」にあたり、書き下し文では平仮名「ず」にする。後ろに続く語によって「ざる」「ざれ(ば)」などと活用する。

同じ働きの字:弗

己(おのれ)の欲(ほつ)せざる所(ところ)は、人(ひと)に施(ほどこ)すこと勿(な)かれ。

自分がしてほしくないことは、他人にもしてはならない。

『論語』衛霊公

基本

読みAにあらず

意味Aではない。

名詞(体言)を打ち消すときに使う。「非」は書き下し文でも漢字のまま「非ず」と書く。

同じ働きの字:匪

子(し)は魚(うを)に非(あら)ず、安(いづ)くんぞ魚(うを)の楽(たの)しみを知(し)らん。

あなたは魚ではない。どうして魚の楽しみがわかるだろうか(わかるはずがない)。

『荘子』秋水

基本

読みAなし

意味Aがない。

物や事がないことを表す。「無」は書き下し文でも漢字のまま「無し」と書く。「莫」も「なし」と読み、主語が人のときは「A(する)ものなし(だれもAしない)」の意味になることが多い。「毋・勿」は主に禁止(なかれ)に使う。

同じ働きの字:莫・罔

天(てん)に二日(にじつ)無(な)く、民(たみ)に二王(にわう)無(な)し。

空に太陽が二つないように、民に王が二人いることはない。

『孟子』万章上

基本

読みA(する)なかれ

意味Aしてはならない。(禁止)

「勿・毋」はほとんどが禁止。「無・莫」は「なし」(存在の否定)が基本で、禁止の文脈では「なかれ」と読む。どちらで読むかは、命令・戒めの文かどうかで判断する。

同じ働きの字:毋・無・莫

過(あやま)てば則(すなは)ち改(あらた)むるに憚(はばか)ること勿(な)かれ。

あやまちを犯したら、ためらわずに改めなさい。

『論語』学而

基本

読みAすべからず

意味Aしてはならない。(禁止)/Aできない。(不可能)

禁止か不可能かは文脈で判断する。「不」も「可」も書き下し文では平仮名(べからず)。

朽木(きうぼく)は雕(ゑ)るべからざるなり。

腐った木には彫刻することができない。

『論語』公冶長

基本

読みA(する)あたはず

意味Aできない。(不可能)

能力がなくてできないことを表す。「能」は漢字のまま「能はず」と書く。 機会がなくてできない「不得(えず)」と区別する。

同じ働きの字:弗能

其(そ)の人(ひと)応(こた)ふる能(あた)はざるなり。

その人は答えることができなかった。

『韓非子』難一

基本

読みA(するを)えず

意味Aできない。(機会・事情がなくてできない)

「已むを得ず(不得已)」は「やめることができない=仕方がない」の意。 「不能(あたはず)」が能力がなくてできないのに対し、「不得」は機会・事情がなくてできないことを表す。

兵(へい)の関(くわん)を守(まも)る有(あ)り、入(い)るを得(え)ず。

関所を守る兵がいて、中に入ることができない。

『史記』項羽本紀

読みあへてAせず

意味決してAしない。(進んでAしようとはしない/とてもAできない)

「敢不A乎」(あへてAせざらんや=反語)とは字の順番が逆。「不敢」は否定。

身体髪膚(しんたいはつぷ)、之(これ)を父母(ふぼ)に受(う)く。敢(あ)へて毀傷(きしやう)せざるは、孝(かう)の始(はじ)めなり。

体は髪や皮膚にいたるまで両親から受けたものだ。それを決して傷つけないことが、親孝行の始まりである。

『孝経』開宗明義章

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基本

読みAするにたらず

意味Aする価値がない。Aするには及ばない。

「足る」は「十分である」の意味。反語「安くんぞAするに足らん」も同じ意味になる。

豎子(じゆし)与(とも)に謀(はか)るに足(た)らず。

小僧とは、いっしょに大事をはかる値打ちがない。

『史記』項羽本紀

読みAするをがへんぜず

意味Aすることを承知しない。Aしようとしない。

「肯」は「承知する・聞き入れる」の意で、「肯んず(がへんず)」と読む。「肯へて(あへて)Aせず」と読むこともある。目的語がなく「肯んぜず」だけで使うことも多い(例:太后不肯=太后肯んぜず)。

叔斉(しゆくせい)も亦(ま)た立(た)つことを肯(がへ)んぜずして、之(これ)を逃(のが)る。

叔斉もまた君主の位につくことを承知せず、国から逃げ去った。

『史記』伯夷列伝

読みあげてAすべからず

意味Aしきれない。(数えきれないほど多い)

「勝」は「あげて」と読み、「すべて・ことごとく」の意。

穀(こく)は勝(あ)げて食(く)らふべからざるなり。

穀物は食べきれないほどになる。

『孟子』梁恵王上

読みあへてAするなし

意味だれも決してAしようとしない。

敢(あ)へて仰(あふ)ぎ視(み)るもの莫(な)し。

だれも顔を上げて見ようとはしなかった。

『史記』項羽本紀

読みつひにAせず

意味最後までAしなかった。決してAしない。

終(つひ)に敢(あ)へて搏(う)たず。

最後までつかみかかろうとはしなかった。

柳宗元「黔之驢」

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部分否定・全部否定

否定の字と副詞(常・必・倶・甚・復)の順番で意味が変わります。否定の字が上なら「いつも〜とは限らない」(部分否定)、副詞が上なら「いつも〜しない」(全部否定)。

基本

読みつねにはAせず

意味いつもAするとは限らない。(部分否定)

否定の字が先=部分否定。副詞に「は」を付けて「常には」と読むのが目印。 「常・必・倶・甚・復・皆・尽」などの副詞と「不」の順番で、部分否定か全部否定かが決まる。

伯楽(はくらく)は常(つね)には有(あ)らず。

伯楽(名馬を見抜く名人)はいつもいるとは限らない。

韓愈「雑説」

読みつねにAせず

意味いつもAしない。(全部否定)

副詞が先=全部否定。「常に」と「は」を付けずに読む。

国(くに)常(つね)に乱(みだ)れず。

国はいつも乱れることがない。

『荀子』王覇

基本

読みかならずしもAせず

意味必ずしもAするとは限らない。(部分否定)

仁者(じんしや)は必(かなら)ず勇(ゆう)有(あ)り、勇者(ゆうしや)は必(かなら)ずしも仁(じん)有(あ)らず。

仁の徳がある人には必ず勇気があるが、勇気がある人に仁の徳があるとは限らない。

『論語』憲問

読みかならずAせず

意味必ずAしない。(全部否定)

縦(たと)ひ権(けん)新城(しんじやう)を攻(せ)むとも、必(かなら)ず抜(ぬ)く能(あた)はず。

たとえ孫権が新城を攻めても、決して攻め落とすことはできない。

『三国志』魏書・明帝紀

読みともにはAせず

意味両方ともにAするわけではない。(部分否定)

「倶に不A」(ともにAせず)なら「両方ともAしない」(全部否定)。

両虎(りやうこ)共(とも)に闘(たたか)はば、其(そ)の勢(いきほ)ひ倶(とも)には生(い)きず。

二頭の虎が戦えば、成り行きとして両方とも生き残ることはない。

『史記』廉頗藺相如列伝

読みはなはだしくはAせず

意味それほどAしない。ひどくはAしない。(部分否定)

「甚だ不A」(はなはだAせず)なら「まったくAしない」(全部否定)。

其(そ)の馬足(ばそく)甚(はなは)だしくは相遠(あひとほ)からず。

それぞれの馬の脚力は、それほど大きな差はない。

『史記』孫子呉起列伝

読みはなはだAせず

意味まったくAしない。ひどくAしない。(全部否定)

寡人(くわじん)甚(はなは)だ詑者(たしや)の言(げん)を喜(よろこ)ばざるなり。

私は、人をあざむく者の言葉がまったく好きではない。

『戦国策』燕策

基本

読みまたAせず

意味二度とはAしない。もうAしない。

副詞「復」が「不」の下にある部分否定の形で、「(一度はしたが)二度とはAしない」の意。「復た不A」(またAせず)と語順が逆なら「今度もまたAしない」。どちらも「またAせず」と読むので、語順で区別する。

兎(うさぎ)は復(ま)た得(う)べからず。

うさぎは二度と手に入らなかった。

『韓非子』五蠹

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二重否定

否定を二つ重ねて、結果として強い肯定になる形。「〜しないものはない=みな〜する」のように、言いかえて訳すとわかりやすくなります。

基本

読みAせざる(は)なし

意味Aしないものはない。(みなAする)

同じ働きの字:莫不

吾(わ)が矛(ほこ)の利(り)なること、物(もの)に於(お)いて陥(とほ)さざる無(な)きなり。

私の矛の鋭いことといったら、どんな物でも突き通さないものはない。

『韓非子』難一

基本

読みAにあらざる(は)なし

意味Aでないものはない。(みなAである)

普天(ふてん)の下(もと)、王土(わうど)に非(あら)ざるは莫(な)し。

天の下に広がる土地で、王の土地でないところはない。

『詩経』小雅「北山」

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基本

読みAとしてBせざる(は)なし

意味どんなAでもBしないものはない。(すべてのAがBする)

「Aとして」は「どんなAでも」の意味で、例外がないことを強める。

春(はる)より秋(あき)に及(およ)ぶまで、日(ひ)として戦(たたか)はざるは無(な)し。

春から秋まで、戦わない日は一日もなかった。

『後漢書』段熲列伝

基本

読みAせざるにあらず

意味Aしないのではない。

是(こ)れ為(な)さざるなり、能(あた)はざるに非(あら)ざるなり。

これはしないのであって、できないのではない。

『孟子』梁恵王上

基本

読みAせざるべからず

意味Aしなければならない。

父母(ふぼ)の年(とし)は、知(し)らざるべからざるなり。

父母の年齢は、知っておかなければならない。

『論語』里仁

読みあへてAせずんばあらず

意味Aしないわけにはいかない。どうしてもAする。

敢(あ)へて告(つ)げずんばあらず。

申し上げないわけにはいかない。

『論語』憲問

読みAなきにあらず

意味Aがないのではない。

子罕(しかん)は宝(たから)無(な)きに非(あら)ざるなり。

子罕は宝を持っていないのではない。

『呂氏春秋』異宝

読みいまだかつてAせずんばあらず

意味これまでAしなかったことはない。(いつもAした)

「未」は再読文字(いまだ〜ず)。二度目の「ず」と「不(ずんばあら)」で否定が二つ重なる。

過(あやま)ち有(あ)れば、未(いま)だ嘗(かつ)て諫(いさ)めずんばあらず。

主君に過ちがあれば、これまで一度も諫めなかったことはない。

『三国志』呉書・呉主伝

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疑問形

「〜か」とたずねる形。文末の助字(乎・也・哉・与・邪)か、文頭の疑問詞(何・安・誰・孰)が目印です。同じ字が反語・詠嘆にも使われるので、文末の読み方(連体形か、「ん(や)」か)で区別します。

基本

読みAや・Aか

意味Aか。

文末の助字は書き下し文では平仮名にする。体言・連体形に付けば「か」、終止形に付けば「や」と読むことが多い。

同じ働きの字:也・哉・与・邪・耶・歟

是(こ)れ魯(ろ)の孔丘(こうきう)か。

あれは魯の国の孔丘か。

『論語』微子

基本

読みなんぞAする

意味どうしてAするのか。

文末を連体形で結べば疑問、「〜ん(や)」と結べば反語と読むことが多い。ただし最後は文脈で判断する(答えを求めているか、話し手の主張か)。

同じ働きの字:胡・奚・曷・庸

子(し)奚(なん)ぞ政(まつりごと)を為(な)さざる。

あなたはどうして政治をしないのですか。

『論語』為政

基本

読みなんすれぞAする

意味どうしてAするのか。

「何為」を「なんのためにか」と読む場合もある。

何為(なんす)れぞ去(さ)らざるや。

どうして(この土地を)立ち去らないのか。

『礼記』檀弓下

基本

読みなにをかAする

意味何をAするのか。

例文の「何をか執らん」は「〜ん」で結んでいるが、自分に問いかける疑問(何を専門にしようか)で、反語ではない。「ん」の有無だけでなく、すぐ後に答えが続くか(例文ではこのあと「御を執らんか、射を執らんか」と自答する)など文脈で判断する。

吾(われ)何(なに)をか執(と)らん。

私は何を専門にしようか。

『論語』子罕

基本

読みなにをもつてかAする

意味どうしてAするのか。どのようにしてAするのか。

理由をたずねるか方法をたずねるかは文脈で判断する。

何(なに)を以(もつ)てか吾(わ)が国(くに)を利(り)せん。

どうやってわが国に利益をもたらそうか。

『孟子』梁恵王上

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基本

読みAはいかん

意味Aはどうであるか。(状態・内容を問う)

「何如・何若」は状態をたずねる。手段をたずねる「如何・奈何」(いかんせん)と区別する。 「何如N」(いかなるN)と名詞が続くと「どのようなN」の意味になる。

同じ働きの字:何若

今日(こんにち)の事(こと)何如(いかん)。

今日の会見の様子はどうか。

『史記』項羽本紀

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基本

読みAをいかんせん

意味Aをどうしたらよいか。(手段・方法を問う。反語にもなる)

「如A何」のように間に目的語Aをはさむと「Aをいかんせん」と読む。

同じ働きの字:奈何・若何

虞(ぐ)や虞(ぐ)や若(なんぢ)を奈何(いかん)せん。

虞よ虞よ、おまえをどうしたらよいのか。

『史記』項羽本紀

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基本

読みたれかAする

意味誰がAするのか。

「孰」も「たれ」と読んで同じ意味になる。文末に「者」があれば「たれか〜ものぞ」と読む。

同じ働きの字:孰

誰(たれ)か衣(い)を加(くは)ふる者(もの)ぞ。

だれが衣を掛けてくれたのか。

『韓非子』二柄

基本

読みいづれかAする

意味どちらが(誰が)Aするのか。

人についてたずねるときは「孰か」を「たれか」と読むこともある。

弟子(ていし)孰(たれ)か学(がく)を好(この)むと為(な)す。

弟子の中で誰が学問を好むといえるか。

『論語』雍也

基本

読みいづくにかAする

意味どこにAするのか。

同じ「安」でも「いづくんぞ」(どうして)と「いづくにか」(どこに)がある。送り仮名で読み分ける。

同じ働きの字:悪・焉

沛公(はいこう)安(いづ)くにか在(あ)る。

沛公はどこにいるのか。

『史記』項羽本紀

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読みAいくばくぞ

意味Aはどれほどか。(数量・程度を問う。反語的に「わずかだ」の意にもなる)

歓(くわん)を為(な)すこと幾何(いくばく)ぞ。

楽しむ時間はどれほどあろうか(わずかだ)。

李白「春夜宴従弟桃花園序」

読みすなはちAするなからんや

意味Aなのではなかろうか。(推量)

疑問の形をとって、遠回しに自分の考えを述べる。「むしろAならんか」と読むこともある。

乃(すなは)ち爾(なんぢ)是(こ)れ過(あやま)つこと無(な)からんや。

おまえが間違っているのではなかろうか。

『論語』季氏

読みAなきをえんや

意味Aなのではなかろうか。(推量)

「Aがないということがあろうか」が直訳。推量の意で訳すことが多い。

土地(とち)の之(これ)をして然(しか)らしむる無(な)きを得(え)んや。

土地の風土が、そうさせているのではないだろうか。

『説苑』奉使

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反語形

疑問の形をとって、反対の内容を強く言う形。文末を「〜ん(や)」と読むのが目印で、訳は「〜か、いや〜ない」とします。

基本

読みAせんや

意味Aするだろうか、いやAしない。

文末の「乎・哉」などを「や」と読み、その上を未然形+「ん」で結ぶ。 「乎」の文は疑問にも反語にもなる。答えが続かず、話し手の主張になっていれば反語と判断する。

縦(たと)ひ上(しやう)我(われ)を殺(ころ)さずとも、我(われ)心(こころ)に愧(は)ぢざらんや。

たとえ皇帝が私を殺さなくても、私は心に恥じずにいられようか、いや恥じずにはいられない。

『史記』張耳陳余列伝

基本

読みいづくんぞAせん(や)

意味どうしてAするだろうか、いやAしない。

同じ働きの字:焉・悪・寧

燕雀(えんじやく)安(いづ)くんぞ鴻鵠(こうこく)の志(こころざし)を知(し)らんや。

ツバメやスズメのような小さな鳥に、どうしてオオトリやクグイのような大きな鳥の志がわかろうか、いやわかりはしない。

『史記』陳渉世家

王侯将相(わうこうしやうしやう)寧(いづ)くんぞ種(しゆ)有(あ)らんや。

王や諸侯、将軍や宰相に、どうして決まった血筋などあろうか、いやありはしない。

『史記』陳渉世家

基本

読みあにAせんや

意味どうしてAするだろうか、いやAしない。

「豈」はほぼ反語専用の字。「豈に〜ずや」と読むと詠嘆(なんと〜ではないか)になる。

豈(あ)に千里(せんり)を遠(とほ)しとせんや。

どうして千里の道を遠いと思うだろうか、いや思わない。

『十八史略』春秋戦国

基本

読みたれかAせん

意味誰がAするだろうか、いや誰もAしない。

同じ働きの字:孰

人(ひと)誰(たれ)か過(あやま)ち無(な)からん。

人はだれでも過ちがないことがあろうか、いや、だれにでも過ちはある。

『春秋左氏伝』宣公二年

基本

読みなんぞAせん(や)

意味どうしてAするだろうか、いやAしない。

同じ働きの字:胡・奚・曷

吾(われ)何(なん)ぞ一牛(いちぎう)を愛(を)しまん。

私はどうして牛一頭を惜しもうか、いや惜しまない。

『孟子』梁恵王上

読みなんぞAすることをなさん

意味どうしてAする必要があろうか、いやない。

白文では「何A為」の形で、文末の「為」に返って読む。

我(われ)何(なん)ぞ渡(わた)ることを為(な)さん。

私はどうして渡ったりしようか、いや渡りはしない。

『史記』項羽本紀

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基本

読みあへてAせざらんや

意味どうしてAしないことがあろうか、いや必ずAする。

「不敢A」(あへてAせず=決してAしない)と取り違えやすい。字の順番を確かめる。

百獣(ひやくじう)の我(われ)を見(み)て敢(あ)へて走(はし)らざらんや。

獣たちが私を見て、どうして逃げ出さないことがあろうか、いや必ず逃げ出す。

『戦国策』楚策

読みなんのAかこれあらん

意味どんなAがあろうか、いや何のAもない。

「之」は目的語の倒置を示す字。

何(なん)の陋(ろう)か之(こ)れ有(あ)らん。

どんなむさくるしさがあろうか、いやない。

『論語』子罕

読みAすべけんや

意味Aしてよいだろうか、いやよくない。(Aできようか、いやできない)

孝(かう)と謂(い)ふべけんや。

孝と言えるだろうか、いや言えない。

『史記』伯夷列伝

読みたれかあへてAせん

意味だれが進んでAしようか、いやだれもしない。

「肯」は「進んで〜する・承知する」の意。例文の「相為言」は、夫の便りを伝えてくれる意とする解釈が一般的だが、「慰めの言葉をかける」と解する説もある。

門(もん)に入(い)りては各(おのおの)自(みづか)ら媚(こ)ぶ、誰(たれ)か肯(あ)へて相為(あひため)に言(い)はん。

(同じ郷里から旅に出た人々は)それぞれ自分の家に帰ると家族と仲むつまじくするばかりで、だれが進んで私に(夫の)便りを伝えてくれようか、いや、だれもいない。

「飲馬長城窟行」(『楽府詩集』)

読みひとりAせんや

意味どうしてAしようか、いやAしない。

「独」が文末の「乎・哉」と組んで反語になる。限定の「独り〜のみ」と区別する。

籍(せき)独(ひと)り心(こころ)に愧(は)ぢざらんや。

私はどうして心に恥じずにいられようか、いや恥じずにはいられない。

『史記』項羽本紀

読みなんぞかならずしもAせん

意味どうしてAする必要があろうか、いやない。

王(わう)何(なん)ぞ必(かなら)ずしも利(り)と曰(い)はん。

王はどうして利益のことばかり言う必要があろうか、いやない。

『孟子』梁恵王上

読みきみみずやAを

意味あなたも見たことがあるだろう、Aを。(ご覧なさい、Aを)

形は反語(見ないのか、いや見るだろう)だが、実際には相手に呼びかけて注意を引き、話題を示す言い方。漢詩の書き出しに多い。「君不聞(きみきかずや)」も同じ。

同じ働きの字:不聞

君(きみ)見(み)ずや黄河(くわうが)の水(みづ)天上(てんじやう)より来(き)たるを

君は見たことがないか、黄河の水が天上から流れ下ってくるのを。

李白「将進酒」

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詠嘆形

「〜だなあ」と心を動かされた気持ちを表す形。感動詞(嗚呼)、文末の助字(哉・夫・矣)、疑問・反語の形を借りたもの(何ぞ〜や、亦た〜ずや)があります。

基本

読みああ、A

意味ああ、A(だなあ)。

「噫・嗟乎・嗚乎」なども「ああ」と読む。

同じ働きの字:噫・嗟・嗟乎・於乎・嗚乎

嗚呼(ああ)、其(そ)れ真(まこと)に馬(うま)無(な)きか、其(そ)れ真(まこと)に馬(うま)を知(し)らざるなり。

ああ、本当に名馬がいないのか。いや、本当は名馬を見分けられないのだ。

韓愈「雑説」

基本

読みAなるかな

意味Aだなあ。

主語と述語を入れかえて、述語を先に言うことが多い(倒置)。

同じ働きの字:夫・矣・乎・与

賢(けん)なるかな回(くわい)や。

なんとすぐれた人物だろう、顔回は。

『論語』雍也

基本

読みなんぞAなるや

意味なんとAなことか。

疑問「何ぞ〜」と同じ形。驚きや感動の文脈なら詠嘆と判断する。

是(こ)れ何(なん)ぞ楚人(そひと)の多(おほ)きや。

なんと楚の人の多いことよ。

『史記』項羽本紀

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基本

読みまたAならずや

意味なんとAではないか。

学(まな)びて時(とき)に之(これ)を習(なら)ふ、亦(ま)た説(よろこ)ばしからずや。

学んだことを折にふれて復習する、なんとうれしいことではないか。

『論語』学而

読みなんぞそれAなるや

意味なんとまあAなことか。

何(なん)ぞ其(そ)れ多能(たのう)なるや。

なんとまあ多才なことか。

『論語』子罕

読みあにAならずや

意味なんとAではないか。

聖人(せいじん)の智(ち)は、豈(あ)に大(だい)ならずや。

聖人の知恵は、なんと偉大ではないか。

『説苑』権謀

読みやんぬるかな

意味もうおしまいだ。どうしようもない。

「已矣」「已矣哉」も同じ。三字まとめて一語として読む。

已矣乎(やんぬるかな)。

もうおしまいだなあ。

陶潜「帰去来辞」

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使役形

「〜させる」という形。使役の字(使・令・教・遣)の下に「誰に」(Bをして)と「何をさせるか」(Cせしむ)が続きます。

基本

読みABをしてCせしむ

意味AはBにCさせる。

使役の字は書き下し文では平仮名「しむ」。させられる人(B)に送り仮名「ヲシテ」を付けるのが目印。Cに目的語Dが付くと「BをしてDをCせしむ」と読み、返り点は一・二・三点になる(下の例文)。「使」は「AをしてBせしめば」と仮定を表すこともある。

同じ働きの字:令・教・遣

天帝(てんてい)我(われ)をして百獣(ひやくじう)に長(ちやう)たらしむ。

天の神様は私を獣たちのかしらにならせた。

『戦国策』楚策

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基本

読みAにめいじて Bせしむ

意味Aに命じてBさせる。

「命・召・遣・説」など、使役の意味を含む動詞を使った形。送り仮名「シム」で使役とわかる。

同じ働きの字:召・遣・説

成王(せいわう)周公(しうこう)に命(めい)じて之(これ)を誅(ちゆう)せしむ。

成王は周公に命じて、これを討たせた。

『史記』殷本紀

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受身形

「〜される」という形。受身の字(見・被・為・所)を使う形と、動詞の後の「於(于・乎)+人」で「誰に」を表す形があります。

基本

読みAせらる

意味Aされる。

「見・被」は受身の助動詞「る・らる」にあたり、書き下し文では平仮名にする。四段・ナ変・ラ変には「る」、それ以外には「らる」が付く。

同じ働きの字:被

吾(われ)嘗(かつ)て三(み)たび仕(つか)へ、三(み)たび君(きみ)に逐(お)はる。

私はかつて三度仕官して、三度とも主君に追い出された。

『史記』管晏列伝

基本

読みAのBするところとなる

意味AにBされる。

「為」が受身のときは「る」ではなく「為る(なる)」と読み、「所」と組み合わせる。 「為A之所B」(AのBする所と為る)の形もある。

先(さき)んずれば即(すなは)ち人(ひと)を制(せい)し、後(おく)るれば則(すなは)ち人(ひと)の制(せい)する所(ところ)と為(な)る。

人より先に行動すれば人を支配でき、遅れれば人に支配される。

『史記』項羽本紀

この句法が出てくる記事:【予想問題付き】『史記』鴻門之会・剣舞➁現代語訳・書き下し文・解説

基本

読みBにAせらる

意味BにAされる。

受身の字がなくても、動詞の後に「於・于・乎+人」があれば受身に読むことがある。

力(ちから)を労(らう)する者(もの)は人(ひと)に治(をさ)めらる。

体を使って働く者は、人に治められる。

『孟子』滕文公上

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仮定形

「もし〜ならば」「たとえ〜でも」という形。文頭の副詞(若・如・苟・縦)や、「〜ずんば」「〜ば則ち」の読み方が目印です。

基本

読みもしAせば、B

意味もしAならば、B。

同じ働きの字:如・即・使・令

如(も)し王者(わうしや)有(あ)らば、必(かなら)ず世(せい)にして後(のち)に仁(じん)ならん。

もし真の王者が現れたならば、必ず一世代(三十年)たってから世の中に仁が行きわたるだろう。

『論語』子路

基本

読みいやしくもAせば、B

意味かりにもAならば、B。

苟(いやし)くも国家(こくか)に利(り)あらば、富貴(ふうき)を求(もと)めず。

もし国家の利益になるなら、自分の富や地位は求めない。

『礼記』儒行

基本

読みたとひAすとも、B

意味たとえAしても、B。

「雖(いへども)」も「たとえ〜でも」の意味になる。

同じ働きの字:雖

縦(たと)ひ江東(かうとう)の父兄(ふけい)憐(あは)れみて我(われ)を王(わう)とすとも、我(われ)何(なん)の面目(めんぼく)ありてか之(これ)に見(まみ)えん。

たとえ江東の人々が私を哀れんで王としてくれても、私はどんな顔をして彼らに会えようか。

『史記』項羽本紀

この句法が出てくる記事:『史記』項王最期(項王自刎)書き下し文・現代語訳・解説

基本

読みAといへども、B

意味たとえAでも、B。(仮定)/Aではあるが、B。(確定)

まだ起きていないことなら仮定、事実なら確定(逆接)として訳す。 「雖」の上に主語(名詞・代名詞)があるときは、確定(〜ではあるが)になることが多い。

相如(しやうじよ)駑(ど)なりと雖(いへど)も、独(ひと)り廉将軍(れんしやうぐん)を畏(おそ)れんや。

私(相如)は愚かではあるが、どうして廉将軍だけを恐れることがあろうか。

『史記』廉頗藺相如列伝

この句法が出てくる記事:『史記』項王最期(項王自刎)書き下し文・現代語訳・解説

基本

読みAせずんば、B

意味Aしなければ、B。

「不・無・非」を「ずんば・なくんば・あらずんば」と読むと仮定になる。

虎穴(こけつ)に入(い)らずんば、虎子(こし)を得(え)ず。

虎の穴に入らなければ、虎の子は手に入らない。

『後漢書』班超伝

読みAなくんば、B

意味もしAがなければ、B。

民(たみ)信(しん)無(な)くんば立(た)たず。

民の信頼がなければ、国は成り立たない。

『論語』顔淵

読みAにあらずんば、Bせず

意味Aでなければ、Bしない。

其(そ)の君(きみ)に非(あら)ずんば事(つか)へず。

自分の主君とすべき人でなければ仕えない。

『孟子』公孫丑上

読みAにあらざるよりは

意味Aでないかぎりは。

聖人(せいじん)に非(あら)ざるよりは、孰(たれ)か能(よ)く過(あやま)ち無(な)からん。

聖人でないかぎり、だれが過ちを犯さずにいられようか。

『三国志』魏書・趙王幹伝

読みAをしてBせしめば

意味もしAにBさせたならば。(仮定)

使役の字が仮定を表す。下に「豈〜乎」などが続くことが多い。

我(われ)をして洛陽(らくやう)負郭(ふくわく)の田(でん)二頃(にけい)有(あ)らしめば、豈(あ)に能(よ)く六国(りくこく)の相印(しやういん)を佩(お)びんや。

もし私に洛陽の城外の良い田が二頃あったなら、どうして六国の宰相の印を身につけられただろうか。

『史記』蘇秦列伝

読みいまAせば、B

意味もしAならば、B。(仮定)

今(いま)王(わう)讒(ざん)を聴(き)かば、則(すなは)ち忠臣(ちゆうしん)無(な)からん。

もし王が告げ口を聞き入れたら、忠臣はいなくなるだろう。

『戦国策』秦策

基本

読みしからずんば

意味そうでなければ。

然(しか)らずんば、籍(せき)何(なに)を以(もつ)てか此(ここ)に至(いた)らん。

そうでなければ、私がどうしてこんなことをしただろうか。

『史記』項羽本紀

この句法が出てくる記事:【予想問題付き】『史記』鴻門之会(剣舞)①現代語訳・書き下し文・解説

読みAなかりせば

意味もしAがなかったならば。

事実に反する仮定(実際にはAがあった)。

管仲(くわんちゆう)微(な)かりせば、吾(われ)其(そ)れ被髪左衽(ひはつさじん)せん。

管仲がいなかったら、私たちは髪を結わず着物を左前に着る、異民族のような暮らしをしていただろう。

『論語』憲問

基本

読みAせばすなはち B

意味AならばB。(条件)

「則」は「〜ば」と読む条件の後に来て、結果を導く。「即・便・乃」などとの使い分けにも注意。

学(まな)びて思(おも)はざれば則(すなは)ち罔(くら)し。

学んでも自分で考えなければ、物事ははっきりわからない。

『論語』為政

この句法が出てくる記事:『郁離子』「天下貴大同」書き下し文・現代語訳・解説|重要句法・テスト予想問題

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比較形・選択形・比況形

二つのものを比べる形、どちらかを選ぶ形、「まるで〜のようだ」とたとえる形。「於(よりも)」「如かず」「寧ろ」「如し」が目印です。比較の「不如(しかず)」と比況の「如(ごとし)」は同じ字なので、読み方で区別します。

基本

読みAはBよりもCなり

意味AはBよりもCだ。

形容詞・形容動詞の後の「於・于・乎」は「〜よりも」と読む比較の働き。

苛政(かせい)は虎(とら)よりも猛(まう)なり。

むごい政治は虎よりも恐ろしい。

『礼記』檀弓下

基本

読みAはBにしかず

意味AはBに及ばない。(Bのほうがよい)

「如」のかわりに「若」も使う(不若B)。

同じ働きの字:若

百聞(ひやくぶん)は一見(いつけん)に如(し)かず。

人から百回聞くより、自分の目で一回見るほうがよい。

『漢書』趙充国伝

基本

読みAにしくはなし

意味Aに及ぶものはない。(Aが一番よい)

同じ働きの字:莫若・無如

衣(い)は新(あら)たなるに若(し)くは莫(な)く、人(ひと)は故(ふる)きに若(し)くは莫(な)し。

着物は新しいものが一番よく、人は古なじみが一番よい。

『晏子春秋』内篇雑上

基本

読みAよりCなるはなし

意味AよりCなものはない。(Aが最もCだ)

悲(かな)しみは窮困(きゆうこん)より甚(はなは)だしきは莫(な)し。

悲しみの中で、貧しさに苦しむことより大きいものはない。

『史記』李斯列伝

基本

読みそのAせんよりは、むしろBせよ

意味Aするよりは、むしろBしなさい。(Bを選ぶ)

礼(れい)は其(そ)の奢(おご)らんよりは寧(むし)ろ倹(けん)せよ。

礼は、ぜいたくにするよりは、むしろ質素にしなさい。

『論語』八佾

読みそのAせんよりは、Bするにしかず

意味Aするよりは、Bするほうがよい。

其(そ)の生(い)きて義(ぎ)無(な)からんよりは、固(もと)より烹(に)らるるに如(し)かず。

生きながらえて道義を失うよりは、もちろん煮殺される方がましだ。

『史記』田単列伝

読みAはBにいづれぞ

意味AはBと比べてどうか。(Bの方がよいという気持ちを含む)

同じ働きの字:孰与

公(こう)の廉将軍(れんしやうぐん)を視(み)ること、秦王(しんわう)に孰与(いづ)れぞ。

あなたがたが廉将軍を見るのは、秦王と比べてどうか(秦王の方がずっと恐ろしいだろう)。

『史記』廉頗藺相如列伝

読みそのAせんよりは、Bするにいづれぞ

意味Aするのは、Bするのと比べてどうか。(Bする方がよい)

「与其A、豈若B(そのAせんよりは、あにBするにしかんや)」も同じ意味になる。

其(そ)の身(み)に楽(たの)しみ有(あ)らんよりは、其(そ)の心(こころ)に憂(うれ)ひ無(な)きに孰若(いづ)れぞ。

身に楽しみがあるよりも、心に心配ごとがない方がよいのではないか。

韓愈「送李愿帰盤谷序」

基本

読みむしろAすとも、Bするなかれ

意味いっそAしても、Bしてはならない。

寧(むし)ろ鶏口(けいこう)と為(な)るとも、牛後(ぎうご)と為(な)る無(な)かれ。

たとえ小さくても鶏の口(小国の長)になれ、大きな牛の尻(大国の家来)にはなるな。

『史記』蘇秦列伝

基本

読みAはBのごとし

意味Aはまるで(ちょうど)Bのようだ。

「如・若」は書き下し文では平仮名「ごとし」。体言には「の」、活用語の連体形には「が」を付けて続ける。

同じ働きの字:若

君子(くんし)の交(まじ)はりは淡(あは)きこと水(みづ)のごとし。

立派な人どうしのつきあいは、水のようにさっぱりしている。

『荘子』山木

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抑揚形

まず軽いものを挙げて(抑)、もっと重いものはなおさらだ(揚)と強調する形。「且(かつ)・猶(なほ)」と「況んや」「安くんぞ」が目印です。

基本

読みAすらB、いはんやCをや

意味AでさえBだ。ましてCはなおさらだ。

前半に「且(かつ)・猶(なほ)」が入ることが多い。「況んや」を見たら、文末は「〜をや」で結ぶ。

死馬(しば)すら且(か)つ之(これ)を買(か)ふ、況(いは)んや生(い)ける者(もの)をや。

死んだ馬でさえ買うのだから、まして生きている馬ならなおさらだ。

『十八史略』春秋戦国

基本

読みAすらB、いづくんぞCせん

意味AでさえBだ。どうしてCしようか、いやCしない。

後半を「況んや」ではなく反語で言う抑揚形。

臣(しん)死(し)すら且(か)つ避(さ)けず、卮酒(ししゆ)安(いづ)くんぞ辞(じ)するに足(た)らん。

私は死でさえ避けはしない。大杯の酒などどうして断る必要があろうか。

『史記』項羽本紀

この句法が出てくる記事:『鴻門之会④』書き下し文・現代語訳・解説|樊噲の説得

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限定形・累加形

限定形は「ただ〜だけ」と範囲をしぼる形、累加形は「ただ〜だけでなく」と付け加える形です。累加形は限定形を打ち消したもの、と考えると覚えやすくなります。

基本

読みただAのみ

意味ただAだけだ。

文頭の「唯・惟・只・但・徒・特」(ただ)と、文末の「耳・已・爾・而已・而已矣」(のみ)のどちらか一方でも限定になる。文末の助字は書き下し文で平仮名にする。

同じ働きの字:惟・只・但・徒・特・耳・已・爾・而已

唯(た)だ仁者(じんしや)のみ能(よ)く人(ひと)を好(この)み、能(よ)く人(ひと)を悪(にく)む。

ただ仁の徳がある人だけが、正しく人を好み、正しく人を憎むことができる。

『論語』里仁

夫子(ふうし)の道(みち)は、忠恕(ちゆうじよ)のみ。

先生の道は、まごころと思いやり、ただそれだけだ。

『論語』里仁

基本

読みひとりAのみ

意味ただAだけだ。

「独」は文頭で「ひとり」と読み、文末の「のみ」と呼応する。文末が「乎・哉」なら反語(ひとり〜んや)。

今(いま)独(ひと)り臣(しん)のみ船(ふね)有(あ)り。

今はただ私だけが船を持っております。

『史記』項羽本紀

この句法が出てくる記事:『史記』項王最期(項王自刎)書き下し文・現代語訳・解説

基本

読みただにAのみならず、B

意味ただAだけでなく、B。(累加)

同じ働きの字:不独・不但・非唯

唯(た)だに帰(かへ)るを忘(わす)るるのみならず、以(もつ)て老(お)いを終(を)ふべし。

ただ帰るのを忘れてしまうだけでなく、ここで一生を終えてもよいほどだ。

白居易「与微之書」

基本

読みあにただにAのみならんや

意味どうしてただAだけだろうか、いやAだけではない。(累加)

同じ働きの字:何独

豈(あ)に惟(た)だに之(これ)を怠(おこた)るのみならんや、又(また)従(したが)ひて之(これ)を盗(ぬす)む。

どうしてただ職務を怠るだけであろうか、そのうえ民の税を盗みまでしている。

柳宗元「送薛存義序」

読みなんぞひとりAのみならん

意味どうしてただAだけであろうか、いやAだけではない。

故郷(こきやう)何(なん)ぞ独(ひと)り長安(ちやうあん)に在(あ)るのみならん。

故郷はどうして長安だけにあろうか、いやそうではない。

白居易「香炉峰下新卜山居草堂初成偶題東壁」

読みひとりAのみにあらず

意味ただAだけではない。

独(ひと)り賢者(けんじや)のみ是(こ)の心(こころ)有(あ)るに非(あら)ざるなり。

ただ賢者だけがこの心を持っているのではない。

『孟子』告子上

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願望形

「どうか〜させてください」「どうか〜してください」と願う形。文末が「〜ん」なら自分の願い、「〜せよ(命令形)」なら相手への願いです。

基本

読みねがはくはAせん(せよ)

意味どうかAさせてください。(どうかAしてください)

文末を「〜せん」(未然形+ん)と読めば自分の願望(どうか〜させてください)、命令形で読めば相手への願望(どうか〜してください)。

同じ働きの字:庶幾・冀

願(ねが)はくは大王(だいわう)急(いそ)ぎ渡(わた)れ。

どうか大王様、急いで(川を)お渡りください。

『史記』項羽本紀

この句法が出てくる記事:『史記』項王最期(項王自刎)書き下し文・現代語訳・解説

基本

読みこふAせん(せよ)

意味どうかAさせてください。(どうかAしてください)

「請ふ」は、主に自分がすることを相手に願い出るときに使う(どうか私に〜させてください)。

請(こ)ふ剣(けん)を以(もつ)て舞(ま)はん。

どうか剣を持って舞わせてください。

『史記』項羽本紀

この句法が出てくる記事:【予想問題付き】『史記』鴻門之会・剣舞➁現代語訳・書き下し文・解説

読みいづくんぞAをえん

意味なんとかしてAを手に入れたい。

もとは反語(どうしてAを得られようか)。強い願望を表すことがある。

安(いづ)くんぞ猛士(まうし)を得(え)て四方(しはう)を守(まも)らしめん

なんとかして勇ましい兵士を得て、国の四方を守らせたいものだ。

『史記』高祖本紀「大風歌」

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再読文字

一つの字を二度読む字。一度目は返り点に関係なく副詞として読み、二度目は返り点に従って返ってから助動詞・動詞として読みます。二度目の送り仮名は字の左下に付きます。

基本

読みいまだAせず

意味まだAしない。

二度目の「ず」は書き下し文で平仮名にする。

未(いま)だ生(せい)を知(し)らず、焉(いづ)くんぞ死(し)を知(し)らん。

まだ生きることさえわかっていないのに、どうして死がわかろうか。

『論語』先進

基本

読みまさにAせんとす

意味今にもAしようとする。

同じ働きの字:且

天(てん)将(まさ)に夫子(ふうし)を以(もつ)て木鐸(ぼくたく)と為(な)さんとす。

天は先生を、世の人々を教え導く木鐸にしようとしている。

『論語』八佾

基本

読みまさにAすべし

意味当然Aすべきだ。

「応」も同じく「まさに〜べし」と読むが、意味は「きっとAだろう」(推量)になることが多い。

同じ働きの字:応

時(とき)に及(およ)んで当(まさ)に勉励(べんれい)すべし、歳月(さいげつ)は人(ひと)を待(ま)たず。

よい時を逃さず、大いに励むべきだ。年月は人を待ってはくれない。

陶潜「雑詩」

基本

読みよろしくAすべし

意味Aするのがよい。

勧めたり、適当であることを表したりする。

惟(た)だ仁者(じんしや)のみ宜(よろ)しく高位(かうゐ)に在(あ)るべし。

ただ仁徳のある人だけが、高い地位にいるのがよい。

『孟子』離婁上

基本

読みすべからくAすべし

意味ぜひAする必要がある。

行楽(かうらく)須(すべか)らく春(はる)に及(およ)ぶべし

楽しむなら、春のうちに楽しむべきだ。

李白「月下独酌」

基本

読みなほAのごとし

意味ちょうどAのようだ。

二度目の「ごとし」は体言には「の」、活用語には「が」を付けて続ける。

同じ働きの字:由

過(す)ぎたるは猶(な)ほ及(およ)ばざるがごとし。

やり過ぎは、足りないのと同じようなものだ。

『論語』先進

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基本

読みなんぞAせざる

意味どうしてAしないのか。(Aすればよいのに)

「盍」は「何不」(なんぞ〜ざる)の二字を一字にしたもの。

盍(なん)ぞ各(おのおの)爾(なんぢ)の志(こころざし)を言(い)はざる。

どうしてそれぞれ自分の志を言わないのか(言ってごらん)。

『論語』公冶長

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その他の重要句形

グループには入らないものの、教科書の文章によく出てくる形です。

基本

読みAをもつて Bとなす

意味AをBとする。AをBと思う(見なす)。

「以為」の二字を続けて「おもへらく」と読むと「思うことには」の意味になる。

鮑叔(はうしゆく)我(われ)を以(もつ)て不肖(ふせう)と為(な)さず。

鮑叔は私を愚か者だとは思わなかった。

『史記』管晏列伝

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基本

読みAするゆゑん

意味Aする理由。Aする方法・手段。

「所以」は二字で「ゆゑん」と読む。理由か方法かは文脈で判断する。

此(こ)れ吾(わ)が天下(てんか)を取(と)りし所以(ゆゑん)なり。

これが、私が天下を取ることができた理由だ。

『史記』高祖本紀

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