杜牧(とぼく)の『江南春(こうなんのはる)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
前半は、鶯が鳴き花が咲き、酒屋の旗が風にひるがえる明るい春の江南。後半は、かつて数多くの寺院が建てられた南朝を思い、霧雨にけむる寺々を見つめます。晴れの景色と雨の景色を対比させた、色彩豊かな詩です。
書き下し文・現代語訳・解説
白文千里鶯啼緑映紅
書き下し千里鶯啼いて緑紅に映ず
現代語訳千里四方、どこでもうぐいすが鳴いて、木々の緑が花の赤に美しく照り映えている。
- 千里
- 広々と広がるあたり一面。実際の距離ではない。
- 緑映紅
- 「緑」は新緑の草木、「紅」は赤い花。「映」は、色が鮮やかに照り映える、の意。
- 起句は、「鶯啼」が聴覚、「緑映紅」が視覚に訴える表現。
白文水村山郭酒旗風
書き下し水村山郭酒旗の風
現代語訳水辺の村にも山すその町にも、酒屋の旗が風にひるがえっている。
- 水村
- 川沿いの村。江南は水の豊かな地方。
- 山郭
- 山沿いの町(郭は城壁で囲まれた町)。
- 酒旗
- 酒屋が目印として店先にかかげた旗。
- 名詞だけで作られた句。「水村」と「山郭」が対になっている。
白文南朝四百八十寺
書き下し南朝四百八十寺
現代語訳昔、南朝のころには、この地に四百八十もの寺があったという。
- 南朝
- 三〜六世紀ごろ、江南に都をおいた王朝(宋・斉・梁・陳)。仏教が盛んだった。
- 四百八十寺
- 数多くの寺。正確な数ではない。「十」は「しん」と読む習慣がある。
白文多少楼台煙雨中
書き下し多少の楼台煙雨の中
現代語訳今も、たくさんの寺の高い建物が、霧雨の中にけぶって見える。
- 多少
- ここでは「多くの」の意味。(「どれほど」と数量をたずねる意味で使うこともある。)
- 楼台
- 高い建物。ここでは寺院の塔や建物をさす。
- 煙雨
- けむるように降る細かい雨。霧雨。
テストで問われるポイント
- 作者=杜牧。詩形=七言絶句。押韻=紅・風・中。
- 「緑映紅」=木々の緑が花の赤に照り映える。
- 「水村山郭酒旗風」=名詞だけの句。川沿いの村にも山沿いの町にも酒屋の旗が風にひるがえる。
- 「南朝」=三〜六世紀ごろ。仏教が盛ん。
- 主題=春ののどかさと南朝への懐古。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の形式と、押韻している字を答えよ。
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形式:七言絶句 押韻:紅・風・中
意味の上で対になっている語を、第一句・第二句から二組抜き出せ。
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緑と紅、水村と山郭
「水村」「山郭」の意味を答えよ。
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水村:川沿いの村 山郭:山沿いの町
「楼台」「煙雨」の意味を答えよ。
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楼台:(寺院の)高い建物 煙雨:霧雨
B 書き下し文・現代語訳
第一句を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:千里鶯啼いて緑紅に映ず
現代語訳:千里四方、どこでもうぐいすが鳴いて、木々の緑が花の赤に照り映えている。第二句は名詞だけで作られている。言葉を補って現代語訳せよ。
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水辺の村にも山沿いの町にも、酒屋の旗が風にひるがえっている。
C 内容の読み取り
「緑映紅」はどのような情景か。「緑」「紅」が何をさすかを明らかにして説明せよ。
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草木の緑が、花の赤に美しく照り映えている情景。
「南朝」はいつごろか。また、そのころ盛んだった宗教は何か。
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三〜六世紀ごろ。仏教。
前半と後半では、景色がどのように対照的に描かれているか。
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前半は明るく色あざやかな晴天の春景色、後半は霧雨にけむるぼんやりとした景色。
この詩の主題を答えよ。
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春ののどかさと、南朝への懐古の情。