『去来抄』岩鼻や 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 去来の句
  4. 「月の猿」か「月の客」か
  5. 去来の考えた趣向
  6. 芭蕉の読み方
  7. 去来の思い
  8. テスト予想問題

『去来抄(きょらいしょう)』「岩鼻や(いわはなや)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

去来が作った句「岩鼻やここにもひとり月の客」の「月の客」とは、いったいだれなのでしょうか。同門の洒堂は「月の猿」にせよと言い、作者の去来は「月の客」のほうがよいと考えます。ところが師の芭蕉は、作者が思いもしなかった読み方を示します。三人の読み方の違い、「自称の句」の意味、「なん」の識別がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

去来の句

原文
岩鼻いははなや間助詠嘆ここ代名に格助場所も係助添加ひとり月の格助体修客きやく 去来きよらい

現代語訳岩の突き出た先にも、ここに一人、月を愛でる風流人がいることだ。

岩鼻
岩の突き出た先端。
月の客
月を愛でる風流な人。
解説

季語は「月」で、季節は秋。切れ字は「や」。

「月の猿」か「月の客」か

原文
先師せんし上洛じやうらくの格助体修時、去来いはく、「洒堂しやだうは係助区別こ代名の格助体修句を格助対象、『月の格助体修猿』と格助引用申しサ四連用謙→芭蕉侍はべれ補・ラ変已然丁→芭蕉ど接助逆接確定、

現代語訳亡き師(芭蕉)が京都に来られた折、私(去来)が尋ねるには、「洒堂は、この句は『月の猿』のほうがよいと申しましたが、

上洛
京都に行くこと。
解説

洒堂は、句の下五「月の客」を「月の猿」にしたほうがよいと言った。月と猿の取り合わせは、漢詩や絵画で昔からよく見られるものだった。

原文
予よ代名は係助区別、『客』勝まさりラ四連用な強意未然ん推量終止と格助引用申すサ四終止謙→芭蕉。いかが副侍はべるラ変連体丁→芭蕉や終助疑問。」

現代語訳私は『客』のほうが勝っているはずだと申しました。先生のお考えはいかがでしょうか。」

予
私。
解説

「勝りなん」の「なん」は、連用形に付いているので、強意の助動詞「ぬ」の未然形+推量の助動詞「ん(む)」。「きっと〜だろう」。

去来は、洒堂の「月の猿」より、もとの「月の客」のほうがよいと考えている。

原文
先師せんしいはく、「猿と格助引用は係助区別何事なにごとぞ係助強意。汝なんぢ代名、こ代名の格助体修句を格助対象いかに副思ひハ四連用て接助単純接続作さくせサ変未然る完了連体や係助疑問。」

現代語訳師が言うには、「猿とは何ということだ。おまえはこの句をどのように考えて作ったのか。」

作す
(句を)作る。
解説

「猿とは何事ぞ」は、「猿とは何ということだ」と、洒堂の考えを強く退ける言い方。疑問ではない。

「汝」は去来。芭蕉は去来に、どんなつもりでこの句を作ったのかを尋ねている。

去来の考えた趣向

原文
去来きよらいいはく、「明月めいげつに格助対象乗じようじサ変連用山野さんや吟歩ぎんぽしサ変連用侍はべる補・ラ変連体丁→芭蕉に格助時間、岩頭がんとうまた副一人ひとりの格助体修騒客さうかくを格助対象見つけカ下二連用たる完了連体。」と格助引用申すサ四終止謙→芭蕉。

現代語訳去来(私)が言うには、「明月に誘われて、句を考えながら山野を歩いておりましたところ、岩の先にもう一人の風流人を見つけた(という句です)。」と申し上げる。

明月に乗ず
明月に誘われる。
吟歩
詩歌を考えながら歩くこと。
岩頭
岩の先。
騒客
詩歌を作る風流な人。
解説

「乗じ」の前の「に」は格助詞、「侍るに」の「に」は時間を表す格助詞。

去来の考えでは、「月の客」は、岩の先にいた自分以外の風流人。自分がその人を見つけた、という句になる。

芭蕉の読み方

原文
先師いはく、「『ここ代名に格助場所も係助添加ひとり月の格助体修客』と格助引用、己おのれと副名乗り出なのりいづダ下二終止らん婉曲連体こそ係助強意、いくばく副の格助体修風流ふうりうなら断定未然ん推量連体。

現代語訳師が言うには、「『ここにも一人、月を愛でる者(がいます)』と、自分から(月に向かって)名乗り出ているようなのは、どれほど風流であろうか。

己と
自分から。
いくばく
どれほど。
解説

芭蕉の考えでは、「月の客」は作者自身。月に向かって「ここにも一人、月を愛でる者がいますよ」と、自分から名乗り出る句として読む。

「こそ」の結びは本来なら已然形で「風流ならめ」となるはずだが、ここでは「ならん」となっていて、係り結びが整っていない(破格)。

原文
ただ副自称じしようの格助体修句と格助引用なすサ四終止べし適当終止。

現代語訳とにかく自分のことを名乗り出た句とするのがよい。

ただ
とにかく。ためらわずに。
解説

「自称の句」は、作者が自分のことを月に名乗り出た句。本文の「己と名乗り出づらん」にあたる。

原文
こ代名の格助体修句は係助区別我われ代名も係助添加珍重ちんちようしサ変連用て接助単純接続、『笈の小文おひのこぶみ』に格助場所書き入れラ下二連用ける過去連体。」と格助引用なん係助強意。

現代語訳この句は私もすぐれたものとして大切にし、『笈の小文』に書き入れておいた。」と(おっしゃった)。

珍重す
すぐれたものとして大切にする。
笈の小文
芭蕉が編もうとした句集の名。
解説

「となん」の「なん」は、引用の「と」に付いているので強意の係助詞。下に「のたまひし」などが省略されている(結びの省略)。

芭蕉が自分の句集に書き入れたのは、この句をすぐれた句と認めていたから。

去来の思い

原文
予代名が格助体修趣向しゆかうは係助区別、なほ副二、三等にさんとうも係助強意下くだりラ四連用侍はべり補・ラ変連用丁→読者な強意未然ん推量終止。

現代語訳私の考えた趣向は、(師の読み方に比べると)やはり二、三段も劣っているでしょう。

趣向
句を作るときの工夫・ねらい。
なほ
やはり。
解説

「予が趣向」(去来の考えた読み方)が、「先師の意」(芭蕉の読み方)に比べて、二、三段も劣っている、ということ。

作者の意図よりも、それを読む人の解釈のほうがすぐれていることがある、と去来は認めている。

原文
先師の格助体修意いを格助対象もつて見れマ上一已然ば接助順接確定、少し副狂者きやうしやの格助体修感かんも係助添加あるラ変連体に断定連用や係助疑問。

現代語訳師の考えに従ってこの句を見ると、少し風流に徹した人の趣もあるのではないだろうか。

狂者
ここでは、風流に打ちこむ人。
解説

「あるにや」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形。「や」の下に「あらん」が省略されている。

芭蕉の読み方なら、月に浮かれて自分から名乗り出る、風流に徹した人の姿が浮かんでくる、ということ。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①上洛
    ②汝
    ③騒客
    ④笈の小文
    ⑤狂者

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    ①じょうらく
    ②なんじ
    ③そうかく
    ④おいのこぶみ
    ⑤きょうしゃ

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①吟歩
    ②騒客
    ③いくばく
    ④珍重す
    ⑤狂者

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    ①詩歌を考えながら歩くこと
    ②詩歌を作る風流な人
    ③どれほど
    ④すぐれたものとして大切にする
    ⑤風流に打ちこむ人

  3. 「岩鼻やここにもひとり月の客」の季語と季節を答えよ。

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    季語=月 季節=秋

B 文法

  1. 「『客』勝りなん」の「なん」と、「書き入れける。」となん」の「なん」を、それぞれ文法的に説明せよ。

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    勝りなん=強意の助動詞「ぬ」の未然形+推量の助動詞「ん(む)」の終止形。 となん=強意の係助詞。

  2. 「己と名乗り出づらんこそ、いくばくの風流ならん」について、①係り結びの法則に合わない部分を一文節で抜き出し、正しい形に直せ。②全体を現代語訳せよ。

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    ①風流ならん→風流ならめ
    ②自分から名乗り出ているようなのは、どれほど風流であろうか。

  3. 「少し狂者の感もあるにや」について、①「に」を文法的に説明せよ。②「や」の下に省略されている語句を答えよ。③全体を現代語訳せよ。

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    ①断定の助動詞「なり」の連用形。
    ②あらん(あらむ)
    ③少し風流に徹した人の趣もあるのではないだろうか。

C 現代語訳・内容

  1. 「猿とは何事ぞ」という芭蕉の言葉から、どのような気持ちが読み取れるか。

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    「月の猿」にせよという洒堂の考えを、問題にならないと強く退ける気持ち。

  2. 「明月に乗じ山野吟歩し侍るに、岩頭また一人の騒客を見つけたる」を現代語訳せよ。

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    明月に誘われて、句を考えながら山野を歩いておりましたところ、岩の先にもう一人の風流人を見つけた(という句です)。

  3. 「月の客」を、洒堂・去来・芭蕉はそれぞれ何(だれ)と考えたか。

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    洒堂=猿(「月の猿」にすべきだとした)。 去来=岩の先にいた、作者以外の風流人。 芭蕉=月を愛でる作者自身。

  4. 「予が趣向は、なほ二、三等も下り侍りなん」とあるが、何が何に比べて劣っているというのか。また、ここから読み取れる作品の読み方についての考えを説明せよ。

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    去来自身の考えた句の趣向が、芭蕉(先師)の解釈に比べて劣っている。 考え=作者が意図していなかった読み方でも、作品をよりすぐれたものにするなら、そちらのほうがすぐれた解釈と認めてよい、という考え。