『平家物語』先帝身投① 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 敗北を悟った知盛
  4. 二位殿の覚悟
  5. テスト予想問題

『平家物語(へいけものがたり)』「先帝身投(せんていみなげ)」①の現代語訳・品詞分解・解説です。

壇の浦の合戦で、源氏の兵が平家の舟に乗り移り、勝負は決まりました。①では、最期に備えて舟を掃除し、女房たちの問いに笑って答える知盛と、幼い安徳天皇を抱いて船端へ歩み出る二位殿の姿が描かれます。知盛の言葉の真意、二位殿の覚悟、敬語の使い分けがよく問われます。教科書によっては「壇ノ浦」「先帝入水」という題で載っています。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

敗北を悟った知盛

原文
源氏の格助体修兵つわものども、すでに副平家の格助体修舟に格助対象乗り移りラ四連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳源氏の武士たちが、もう平家の舟に乗り移ってきたので、

兵(つわもの)
武士。
すでに
もう。
原文
水手すいしゅ、梶取かんどりども射殺いころさサ四未然れ受身連用、斬り殺さサ四未然れ受身連用て接助単純接続、舟を格助対象直すサ四連体に格助結果及ばバ四未然ず打消連用、舟底ふなぞこに格助場所たはれ伏しサ四連用に完了連用けり過去終止。

現代語訳舟をこぐ者や舵をとる者は、矢で射られ、刀で斬られて命を落とし、舟の向きを直すこともできないまま、舟底に倒れ伏してしまった。

水手(すいしゅ)
舟をこぐ水夫。
梶取(かんどり)
舟の舵をとる人。船頭。
舟を直す
舟の向きを立て直す。
たはれ伏す
倒れ伏す。
解説

舟を立て直せなかったのは、舟を動かす水手・梶取たちが射殺され、斬り殺されてしまったからである。

「たはれ伏しにけり」の主語は、水手・梶取ども。

原文
新中納言知盛卿しんちゅうなごんとももりのきょう、小舟こぶねに格助対象乗つラ四連用・音て接助単純接続御所ごしょの格助体修御舟おんふねに格助帰着参りラ四連用謙→安徳天皇、「世の中は係助区別、今は係助区別かう副と格助引用見えヤ下二連用て接助単純接続候ふ補・ハ四終止丁→安徳天皇。

現代語訳新中納言知盛卿は、小舟に乗って天皇のおられる御舟に参上し、「(平家の)世も、今はもうこれまでと見えます。

御所の御舟
天皇がお乗りになっている舟。
今はかう
今はもうこれまで。「かう」は「かく」のウ音便。
解説

「世の中は、今はかうと見えて候ふ」は、合戦の負けが決まり、平家が滅びる時が来たということ。

「参り」は謙譲語で、作者から天皇への敬意。

原文
見苦しからシク未然ん婉曲連体ものども、みな副海へ格助方向入れラ下二未然させ尊敬連用尊→安徳天皇給へ補・ハ四命令尊→安徳天皇。」と格助引用て接助単純接続、艫舳ともえに格助場所走り回りラ四連用、掃いカ四連用・音たり完了連用、拭のごうハ四連用・音たり完了連用、塵ちり拾ひハ四連用、手づから副掃除そうじせサ変未然られ尊敬連用尊→知盛けり過去終止。

現代語訳見苦しいような物は、残らず海へお入れになってください。」と言って、舟の艫から舳まで走り回り、掃いたり拭いたり、ちりを拾ったりと、自らの手で掃除をなさった。

艫舳(ともえ)
舟の後ろ(艫)と前(舳)。
手づから
自分の手で。
解説

「見苦しからん」の「ん」は婉曲、「入れさせ給へ」の「させ」は尊敬。

知盛が見苦しい物を海へ捨てさせ、自ら掃除をしたのは、平家一門の最期を見苦しくないものにするため。敵に恥ずかしい姿を見せまいとしたのである。

「掃い」は「掃き」のイ音便、「拭う」は「拭ひ」のウ音便。

原文
女房にょうぼうたち、「中納言殿ちゅうなごんどの、いくさは係助区別いかに副や係助疑問いかに副。」と格助引用口々に格助状態問ひハ四連用給へ補・ハ四已然尊→女房たちば接助順接確定、

現代語訳女房たちが、「中納言殿、戦はどうなのですか、どうなのですか。」と口々にお尋ねになると、

いかにやいかに
どうなのか、どうなのか。
解説

「問ひ給へ」の「給へ」は、作者から女房たちへの敬意。

原文
「めづらしきシク連体あづま男ずまおとこを格助対象こそ係助強意御覧ぜサ変未然尊→女房たちられ尊敬連用尊→女房たち候は補・ハ四未然丁→女房たちんず推量終止らめ現在推量已然。」と格助引用て接助単純接続、からからと副笑ひハ四連用給へ補・ハ四已然尊→知盛ば接助順接確定、

現代語訳(知盛は)「めずらしい東国の男たちを、いまにご覧になることでしょう。」と答え、からからと声を立ててお笑いになるので、

めづらし
めったに見ない、目新しい。
あづま男
東国の男。ここでは、乗り込んでくる源氏の兵のこと。
解説

知盛の答えの真意は、「源氏の兵がまもなくこの舟に乗り込んでくる、平家はもう負ける」ということ。それをはっきり言わず、冗談めかして伝えている。

「御覧ぜられ候はんずらめ」は、「御覧ぜ(尊敬の動詞「御覧ず」)+られ(尊敬)+候は(丁寧の補助動詞)+んず(推量)+らめ(現在推量・已然形)」。「こそ」の結びが「らめ」。尊敬・丁寧はどちらも知盛から女房たちへの敬意。

からからと笑ったのは、運命を見届けた落ち着きを見せ、取り乱さずに最期を迎えさせようとしたためと考えられる。

原文
「なんでう連体の格助体修ただ今の格助体修たはぶれぞ係助強意や係助疑問。」と格助引用て接助単純接続、声々こえごえに格助状態をめき叫びバ四連用給ひ補・ハ四連用尊→女房たちけり過去終止。

現代語訳(女房たちは)「なんということを、この切羽詰まった時に冗談をおっしゃるのですか。」と言って、口々に大声で叫びなさった。

なんでう
なんという。
たはぶれ
冗談。
をめき叫ぶ
大声でわめき叫ぶ。
解説

女房たちは、こんな差し迫った時に冗談を言うとは何事かと、知盛を非難して叫んだ。

二位殿の覚悟

原文
二位殿にいどのは係助区別、こ代名の格助体修ありさまを格助対象御覧じサ変連用尊→二位殿て接助単純接続、日ごろ副思しめしまうけカ下二連用尊→二位殿たる存続連体ことなれ断定已然ば接助順接確定、

現代語訳二位殿は、このありさまを目になさって、かねてから心に決めていらっしゃったことなので、

日ごろ
ふだんから。
思しめしまうく
前もって覚悟なさる。「思しめし」は「思ふ」の尊敬語。
解説

「日ごろ思しめしまうけたること」は、いざという時には天皇とともに海に身を投げ、敵には決して捕らえられないということ。後の「かたきの手にはかかるまじ」がそれにあたる。

原文
にぶ色いろの格助体修二つ衣ふたつぎぬうちかづきカ四連用、練袴ねりばかまの格助体修そば高くク連用はさみマ四連用、神璽しんしを格助対象脇に格助場所はさみマ四連用、宝剣ほうけんを格助対象腰に格助場所さしサ四連用、主上しゅしょうを格助対象抱いだきカ四連用たてまつ補・ラ四連用・音謙→安徳天皇て接助単純接続、

現代語訳濃いねずみ色の二枚重ねの衣を頭からかぶり、練り絹の袴の脇を高くはさみ込み、神璽を脇にはさみ、宝剣を腰にさし、天皇をお抱き申し上げて、

にぶ色
濃いねずみ色。喪に服する人や出家した人が用いた色。
二つ衣
二枚重ねて着る衣。
うちかづく
頭からかぶる。
練袴(ねりばかま)
練り絹で作った袴。
そば
袴の脇の、あいている部分。
神璽(しんし)・宝剣
天皇の位のしるしとして伝えられる三種の神器のうちの二つ(八尺瓊勾玉と草薙剣)。
解説

にぶ色の衣をかぶったのは、平家一門と天皇の死を覚悟し、喪に服する心を表したものと考えられる。

原文
「わ代名が格助体修身は係助区別女なり断定終止とも接助逆接仮定、かたきの格助体修手に格助対象は係助区別かかるラ四終止まじ打消意志終止。君の格助体修御供おんともに格助資格参るラ四連体謙→安徳天皇なり断定終止。

現代語訳「わたしは女の身ではあっても、敵の手に捕らえられはしない。天皇のお供として参るのです。

君
天皇のこと。「主上」と同じ人物。
解説

「かかるまじ」の「まじ」は打消意志。女であっても敵に捕らえられはしないという、強い決意を表す。

「参る」は謙譲語で、二位殿から天皇への敬意。

原文
御心おんこころざし思ひハ四連用参らせ補・サ下二連用謙→安徳天皇給は補・ハ四未然尊→女房たちん婉曲連体人々は係助区別、急ぎガ四連用続きカ四連用給へ補・ハ四命令尊→女房たち。」と格助引用て接助単純接続、船端ふなばたへ格助方向歩み出でダ下二未然られ尊敬連用尊→二位殿けり過去終止。

現代語訳天皇をお慕い申し上げる気持ちのある方々は、急いで後に続きなさい。」と言って、船端へと歩み出られた。

御心ざし
(天皇への)真心、忠誠の気持ち。
解説

「御心ざし思ひ参らせ給はん人々」は、天皇に忠誠を尽くし、ともに身を投げる覚悟のある人々のこと。「参らせ」は謙譲の補助動詞で二位殿から天皇への敬意、「給は」は尊敬の補助動詞で二位殿から女房たちへの敬意。

二位殿が船端へ歩み出たのは、天皇とともに海に身を投げるためである。

続きは『平家物語』先帝身投②です。このあとの教経と知盛の最期は「能登殿の最期」、同じ『平家物語』の「忠度の都落ち」もあわせて読んでみてください。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①兵
    ②艫舳
    ③練袴
    ④神璽
    ⑤主上

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    ①つわもの
    ②ともえ
    ③ねりばかま
    ④しんし
    ⑤しゅしょう

  2. 次の語の、本文中での意味を答えよ。
    ①手づから
    ②めづらし
    ③なんでう
    ④をめく
    ⑤日ごろ

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    ①自分の手で
    ②めったに見ない・目新しい
    ③なんという
    ④大声でわめく
    ⑤ふだんから

B 文法・敬語

  1. 次の傍線部の音便の種類と、もとの形を答えよ。
    ①小舟に【乗つ】て
    ②【掃い】たり
    ③【拭う】たり
    ④主上を抱き【たてまつ】て

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    ①促音便・乗り
    ②イ音便・掃き
    ③ウ音便・拭ひ
    ④促音便・たてまつり

  2. 「見苦しからん物ども、みな海へ入れさせ給へ」の「ん」「させ」の意味を答えよ。また、「わが身は女なりとも、かたきの手にはかかるまじ」の「とも」「まじ」を文法的に説明せよ。

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    ん=婉曲 させ=尊敬。とも=逆接の仮定条件を表す接続助詞 まじ=打消意志の助動詞「まじ」の終止形。

  3. 「めづらしきあづま男をこそ御覧ぜられ候はんずらめ」の「御覧ぜられ候はんずらめ」を品詞分解し、敬語については種類とだれからだれへの敬意かを答えよ。

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    御覧ぜ=尊敬の動詞「御覧ず」の未然形(知盛から女房たちへ)/られ=尊敬の助動詞「らる」の連用形(知盛から女房たちへ)/候は=丁寧の補助動詞「候ふ」の未然形(知盛から女房たちへ)/んず=推量の助動詞「むず」の終止形/らめ=現在推量の助動詞「らむ」の已然形(「こそ」の結び)。

C 現代語訳・内容

  1. 「舟を直すに及ばず」を現代語訳せよ。また、なぜそうなったのか。

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    訳=舟の向きを立て直すこともできず。理由=源氏の兵が乗り移ってきて、舟を動かす水手・梶取たちが殺されてしまったから。

  2. 「世の中は、今はかうと見えて候ふ」とは、どういうことか。

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    合戦の負けが決まり、平家一門が滅びる時が来たということ。

  3. 「手づから掃除せられけり」とあるが、だれが、何のためにそうしたのか。

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    知盛が、平家一門の最期を見苦しくないものにし、敵に恥ずかしい姿を見せないようにするため。

  4. 「めづらしきあづま男をこそ御覧ぜられ候はんずらめ」という知盛の答えの真意を説明せよ。また、それを聞いた女房たちが「なんでうのただ今のたはぶれぞや」と言ったときの気持ちを説明せよ。

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    真意=東国の源氏の兵がまもなくこの舟に乗り込んできて、平家はもう負けるということ。気持ち=負けが迫った大変な時に冗談を言う知盛を、不謹慎だと非難する気持ち。

  5. 「日ごろ思しめしまうけたることなれば」を現代語訳せよ。また、二位殿がかねて覚悟していたこととは何か。本文中から十二字で抜き出せ。

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    訳=かねてから心に決めていらっしゃったことなので。抜き出し=かたきの手にはかかるまじ

  6. 「御心ざし思ひ参らせ給はん人々」とはどのような人々か。また、二位殿が船端へ歩み出たのは何のためか。

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    人々=天皇に忠誠を尽くし、ともに身を投げる覚悟のある人々。目的=天皇とともに海に身を投げるため。