『平家物語』祇園精舎 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 諸行無常・盛者必衰の道理
  4. 中国と日本の例、そして清盛
  5. 清盛の先祖
  6. テスト予想問題

『平家物語(へいけものがたり)』の冒頭「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で始まる、作品全体の序にあたる部分です。この世のすべては移り変わり、盛んな者も必ず衰えるという道理を示し、中国と日本でおごり高ぶって滅んだ人々を挙げて、平清盛へと話を絞っていきます。対句や七五調などの表現、助動詞の識別、清盛の先祖の系譜がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

諸行無常・盛者必衰の道理

原文
祇園精舎ぎおんしょうじゃの格助体修鐘かねの格助体修声こえ、諸行無常しょぎょうむじょうの格助体修響ひびきありラ変終止。

現代語訳祇園精舎の鐘の音には、「この世のすべてのものは移り変わる」という響きがある。

祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)
釈迦が説法をしたというインドの寺院。病気の僧が亡くなるとき、そこの鐘がひとりでに鳴ったと伝えられる。
諸行無常(しょぎょうむじょう)
この世のすべてのものは、常に移り変わってとどまることがない、ということ。
原文
娑羅双樹しゃらそうじゅの格助体修花の格助体修色、盛者必衰じょうしゃひっすいの格助体修理ことわりを格助対象あらはすサ四終止。

現代語訳娑羅双樹の花の色は、「勢いの盛んな者も必ず衰える」という道理を表している。

娑羅双樹(しゃらそうじゅ)
釈迦が亡くなったとき、その四方に二本ずつ生えていたという娑羅の木。そのとき花の色が白く変わったと伝えられる。
盛者必衰(じょうしゃひっすい)
勢いの盛んな者も、必ず衰えるということ。
理(ことわり)
道理。
解説

はじめの二文は対句。「祇園精舎の/鐘の声」と「娑羅双樹の/花の色」、「諸行無常の/響きあり」と「盛者必衰の/理をあらはす」が対応している。「鐘の声」は耳(聴覚)、「花の色」は目(視覚)に訴える表現。

原文
おごれラ四已然る存続連体人も係助並列久ひさしからシク未然ず打消終止、ただ副春の格助体修夜よの格助体修夢の格助体修ごとし比況終止。

現代語訳おごり高ぶっている人も、その栄えが長く続くことはない。ちょうど春の夜に見る夢のように、はかないものである。

おごる
思い上がる。得意になって勝手にふるまう。
久し
長く続く。
解説

「おごれる」の「る」は、四段動詞の已然形に付いた存続の助動詞「り」の連体形。

「春の夜の夢」は、短い春の夜に見る夢のようにはかないもののたとえ。

原文
猛たけきク連体者も係助並列つひに副は係助強調滅ほろびバ上二連用ぬ完了終止、ひとへに副風の格助体修前の格助体修塵ちりに格助比較同じシク終止。

現代語訳勢いの強い者も結局は滅んでしまう。全く風の前の塵と同じ(ように吹き飛ばされるもの)である。

猛し
勢いが盛んだ、強い。
ひとへに
全く、まるで。前の文の「ただ」と対応している。
解説

「風の前の塵」も、風に吹き飛ばされてしまうはかないもののたとえ。「ただ春の夜の夢のごとし」と「ひとへに風の前の塵に同じ」も対句になっている。

中国と日本の例、そして清盛

原文
遠くク連用異朝いちょうを格助対象とぶらへハ四已然ば接助順接確定、秦しんの格助体修趙高ちょうこう、漢かんの格助体修王莽おうもう、梁りょうの格助体修朱异しゅい、唐とうの格助体修禄山ろくさん、

現代語訳遠く外国(中国)の例を尋ねてみると、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の安禄山、

異朝(いちょう)
外国。ここでは中国。
とぶらふ
たずねる、調べる。
解説

趙高(秦)・王莽(漢)・朱异(梁)・安禄山(唐)は、いずれも主君に従わず権力をふるって、国を乱した人物。

原文
これら代名は係助提示みな、旧主きゅうしゅ先皇せんこうの格助体修政まつりごとに格助対象も係助強意従はハ四未然ず打消連用、楽しみを格助対象きはめマ下二連用、いさめを格助対象も係助強意思ひ入れラ下二未然ず打消連用、

現代語訳これらの者はみな、もとの主君や先の皇帝の政治にも従わず、思うままに楽しみを尽くし、人の忠告も心に留めず、

旧主先皇(きゅうしゅせんこう)
もと仕えた主君や、前の皇帝。
政(まつりごと)
政治。
きはむ
(楽しみを)し尽くす。
いさめ
忠告。
思ひ入る
深く心にとめる。
原文
天下てんかの格助主格乱れラ下二未然ん婉曲連体ことを格助対象悟らラ四未然ず打消連用して接助単純接続、民間みんかんの格助主格愁ふうれうるハ下二連体ところを格助対象知らラ四未然ざつ打消連用・音しか過去已然ば接助順接確定、久ひさしからシク未然ず打消連用して接助単純接続、亡ぼうじサ変連用に完了連用し過去連体者どもなり断定終止。

現代語訳世の中が乱れるようなことにも気づかず、人々が嘆き苦しんでいることにも気を配らなかったので、長くは続かずに滅んでしまった者たちである。

天下
世の中。
民間
世間の人々。
愁ふ
嘆き訴える。
亡ず
滅びる。
解説

「知らざつしかば」の「ざつ」は、打消の助動詞「ず」の連用形「ざり」の促音便。「知らなかったので」と訳す。

「愁ふる」は下二段動詞「愁ふ」の連体形(「る」は活用語尾)で、助動詞ではない。

原文
近くク連用本朝ほんちょうを格助対象うかがふハ四連体に接助単純接続、承平しょうへいの格助体修将門まさかど、天慶てんぎょうの格助体修純友すみとも、康和こうわの格助体修義親ぎしん、平治へいじの格助体修信頼しんらい、

現代語訳わが国の近い時代の例を探ると、承平年間の平将門、天慶年間の藤原純友、康和年間の源義親、平治年間の藤原信頼、

本朝(ほんちょう)
わが国。日本。「異朝」と対になる語。
うかがふ
調べる。
解説

将門・純友・義親・信頼は、いずれも朝廷にそむいて乱を起こした人物。「将門」「純友」は訓読み、「義親」「信頼」は音読みにして、語り口に変化をつけている。

原文
これら代名は係助提示おごれラ四已然る存続連体心も係助並列猛たけきク連体ことも係助並列、みなとりどりにナリ連用こそ係助強意あり補・ラ変連用しか過去已然ども接助逆接確定、

現代語訳これらの者は、おごり高ぶった心も勢いの強さも、それぞれにはなはだしかったけれども、

とりどりなり
それぞれである。
解説

「こそ」の結びになるはずの「しか」は、下に「ども」が続いているので、文がそこで終わらず、結びが流れている。

原文
ま近ぢかくク連用は係助区別、六波羅の入道ろくはらのにゅうどう前太政大臣さきのだいじょうだいじん平朝臣清盛公たいらのあそんきよもりこうと格助引用申しサ四連用謙→清盛し過去連体人の格助体修ありさま、伝へ承つたえうけたまわるラ四連体謙→清盛こそ係助強意、心も係助並列言葉ことばも係助並列及ばバ四未然れ可能未然ね打消已然。

現代語訳そして最も近い例として、六波羅の入道前太政大臣である平朝臣清盛公と申し上げた方のありさまは、伝え聞くだけでも、心で思い描くことも言葉にすることもできないほどである。

ま近く
ごく最近では。
六波羅
京都の地名。清盛の邸宅があった。
入道
出家した人。清盛は太政大臣となったのち、出家して入道となっていた。
解説

「遠く異朝」→「近く本朝」→「ま近く」清盛と、場所と時代をしだいに狭めて、焦点を清盛に絞っている。

「心も言葉も及ばれね」は、清盛のおごり高ぶった心と勢いの盛んなさまが、心で思い描くことも、言葉にすることもできないほどだということ。「及ばれね」は、可能の「る」の未然形「れ」に、打消の「ず」の已然形「ね」が付いた形で、この「ね」が「こそ」の結びになっている。

「申し」「伝へ承る」は謙譲語で、作者から清盛への敬意。

清盛の先祖

原文
そ代名の格助体修先祖せんぞを格助対象尋ぬれナ下二已然ば接助順接確定、桓武天皇かんむてんのう第五だいごの格助体修皇子おうじ、一品式部卿いっぽんしきぶきょう葛原親王かずらはらのしんのう九代くだいの格助体修後胤こういん、

現代語訳その(清盛の)先祖をたどると、桓武天皇の第五皇子である一品式部卿葛原親王から九代目の子孫で、

後胤(こういん)
子孫。
解説

「尋ぬれ」は下二段動詞「尋ぬ」の已然形(「れ」は活用語尾)。

原文
讃岐守さぬきのかみ正盛まさもりが格助体修孫そん、刑部卿ぎょうぶきょう忠盛朝臣ただもりのあそんの格助体修嫡男ちゃくなんなり断定終止。

現代語訳讃岐守正盛の孫にあたり、刑部卿忠盛朝臣の跡継ぎの長男である。

嫡男(ちゃくなん)
跡継ぎの長男。
解説

「刑部卿忠盛朝臣の嫡男」は、清盛のこと。清盛は、正盛の孫、忠盛の長男にあたる。

原文
か代名の格助体修親王しんのうの格助体修御み子こ、高視の王たかみのおう、無官むかん無位むいに断定連用して接助単純接続失うせサ下二連用たまひ補・ハ四連用尊→高視王ぬ完了終止。

現代語訳その葛原親王の御子の高視王は、官職にも位にもつかないまま亡くなられた。

無官無位
官職にも位にもついていないこと。
失す
亡くなる。
原文
そ代名の格助体修御おん子こ、高望の王たかもちのおうの格助体修時、初めて副平たいらの格助体修姓しょうを格助対象賜つたまわっラ四連用・音謙→天皇て接助単純接続、上総介かずさのすけに格助結果なりラ四連用たまひ補・ハ四連用尊→高望王し過去連体より格助起点、たちまちに副王氏おうしを格助起点出いでダ下二連用て接助単純接続人臣じんしんに格助対象連つらなるラ四終止。

現代語訳その御子の高望王の時に、はじめて平という姓を天皇から賜って上総介になられてから、すぐに皇族の身分を離れて臣下の仲間入りをする。

上総介(かずさのすけ)
上総の国の国司の次官。
王氏
皇族。
人臣に連なる
臣下の身分になる。
解説

高望王が平の姓を天皇から賜り、皇族から臣下になったのが、平氏の始まりである。

原文
そ代名の格助体修子鎮守府ちんじゅふの格助体修将軍しょうぐん義茂よしもち、のちに格助時間は係助強調国香くにかと格助結果改あらたむマ下二終止。

現代語訳その子の鎮守府将軍義茂は、のちに国香と名を改める。

解説

「その子」は高望王の子のこと。義茂はのちに国香と改名した。

原文
国香くにかより格助起点正盛まさもりに格助到着点至るラ四連体まで副助限界六代ろくだいは係助区別、諸国しょこくの格助体修受領じゅりょうたり断定連用しか過去已然ども接助逆接確定、殿上てんじょうの格助体修仙籍せんせきを格助対象ば係助強調いまだ副許さサ四未然れ受身未然ず打消終止。

現代語訳国香から正盛に至る六代は、諸国の受領を務めたけれども、清涼殿に昇る殿上人となることは、まだ許されなかった。

受領(じゅりょう)
諸国の長官(国司)。
殿上の仙籍
清涼殿の殿上の間に上がることを許された者の名簿。「仙籍を許さる」は、殿上人として昇殿を許されること。
解説

「受領たりしかども」の「たり」は断定の助動詞の連用形。

「許されず」の「れ」は受身の助動詞「る」の未然形。国香から正盛までの六代は、地方の役人にとどまり、殿上人にはなれなかった。

『平家物語』のほかの章段は、「先帝身投」・「能登殿の最期」・「忠度の都落ち」もあわせて読んでみてください。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①理
    ②政
    ③異朝
    ④六波羅
    ⑤後胤
    ⑥受領

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    ①ことわり
    ②まつりごと
    ③いちょう
    ④ろくはら
    ⑤こういん
    ⑥じゅりょう

  2. 次の語の、本文中での意味を答えよ。
    ①ひとへに
    ②とぶらふ
    ③猛し
    ④愁ふ
    ⑤本朝
    ⑥失す

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    ①全く・まるで
    ②たずねる・調べる
    ③勢いが盛んだ
    ④嘆き訴える
    ⑤わが国(日本)
    ⑥亡くなる

B 文法

  1. 次の傍線部を文法的に説明せよ。
    ①おごれ【る】人も
    ②民間の愁ふ【る】ところを
    ③心も言葉も及ば【れ】ね
    ④殿上の仙籍をばいまだ許さ【れ】ず

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    ①存続の助動詞「り」の連体形
    ②ハ行下二段活用の動詞「愁ふ」の連体形の活用語尾
    ③可能の助動詞「る」の未然形
    ④受身の助動詞「る」の未然形

  2. 「民間の愁ふるところを知らざつしかば」について、①「ざつ」は何の音便か、もとの形と音便の種類を答えよ。②全体を現代語訳せよ。

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    ①もとの形=ざり(打消の助動詞「ず」の連用形)。促音便。②人々が嘆き苦しんでいることを知らなかったので

  3. 次の【 】の助動詞について、意味と活用形をそれぞれ答えよ。
    ①春の夜の夢の【ごとし】
    ②刑部卿忠盛朝臣の嫡男【なり】
    ③諸国の受領【たり】しかども
    ④無官無位にして失せたまひ【ぬ】

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    ①比況・終止形
    ②断定・終止形
    ③断定・連用形
    ④完了・終止形

C 現代語訳・内容

  1. 冒頭の二文「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。」について、①このように、形をそろえて内容を対応させた二つの句を並べる表現を何というか。②耳で聞くもの(聴覚)と目で見るもの(視覚)を表す語句を、それぞれ抜き出せ。

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    ①対句
    ②聴覚=鐘の声 視覚=花の色

  2. 第一段落で「はかないもの」のたとえとして用いられている語句を二つ抜き出せ。また、第一段落で示されている作品の主題を表す四字の語を二つ抜き出せ。

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    たとえ=春の夜の夢・風の前の塵。主題=諸行無常・盛者必衰

  3. 「伝へ承るこそ、心も言葉も及ばれね」を現代語訳せよ。また、何が「心も言葉も及ばれ」ないのか、説明せよ。

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    訳=伝え聞くにつけても、心に思い描くことも、言葉にすることもできないほどである。説明=清盛のおごり高ぶった心と、勢いの盛んなありさま。

  4. 第二段落の「遠く異朝」「近く本朝」「ま近くは」は、どのような順序で話を進めているか。説明せよ。

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    遠い外国(中国)の例から、わが国の例、そしてごく最近の清盛へと、場所と時代をしだいに狭めて、清盛に焦点を絞っている。

  5. 「殿上の仙籍をばいまだ許されず」とは、どういうことか。また、この文章のように漢語と和語をまじえて書かれた文体を何というか。

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    殿上人として昇殿することを、まだ許されなかったということ。文体=和漢混交文