『平家物語』先帝身投② 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 幼い天皇のようす
  4. 二位殿の言葉
  5. 天皇の入水
  6. テスト予想問題

『平家物語(へいけものがたり)』「先帝身投(せんていみなげ)」②の現代語訳・品詞分解・解説です。

船端へ歩み出た二位殿に抱かれた安徳天皇は、「どこへ連れて行くのか」と尋ねます。②では、涙をこらえて天皇に語りかける二位殿の言葉と、手を合わせて祈る幼い天皇の姿、二人の入水が描かれます。二位殿の言葉の中の敬語、作者から二人への敬語(二方面への敬語)、二位殿の心情がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

幼い天皇のようす

原文
主上しゅしょう、今年ことしは係助区別八歳はっさいに格助結果ならラ四未然せ尊敬連用尊→安徳天皇給へ補・ハ四已然尊→安徳天皇ども接助逆接確定、御歳おんとしの格助体修程ほどより格助比較はるかにナリ連用ねびバ上二未然させ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇て接助単純接続、

現代語訳天皇は、今年は八歳におなりになるが、お年のわりにはずっと大人びていらっしゃって、

ねぶ
大人びる。年齢以上に成長して見える。
解説

「ならせ給へ」「ねびさせ給ひ」は、尊敬の助動詞(せ・させ)+尊敬の補助動詞「給ふ」の最高敬語で、作者から天皇への敬意。

原文
御おんかたちうつくしくシク連用、あたりも係助同趣照り輝てりかかやくカ四終止ばかり副助程度なり断定終止。御髪おぐし黒うク連用・音ゆらゆらと副しサ変連用て接助単純接続、御背中おんせなか過ぎガ上二未然させ尊敬連用尊→安徳天皇給へ補・ハ四已然尊→安徳天皇り存続終止。

現代語訳ご容貌は愛らしく、まわりまで照り輝くほどである。御髪は黒くつやつやと垂れて、お背中よりも下まで届いていらっしゃる。

御かたち
ご容貌。
うつくし
かわいらしい、愛らしい。
御髪(おぐし)
髪の尊敬語。
解説

「御髪黒うゆらゆらとして」は、黒髪が豊かに垂れているようす。天皇の美しさを描くことで、このあとの最期の悲しさが強められている。

原文
あきれラ下二連用たる存続連体御おんさまに断定連用て接助単純接続、「尼あまぜ、我われ代名を格助対象ば係助区別いづち代名へ格助方向具ぐしサ変連用て接助単純接続ゆかカ四未然ん意志終止と格助引用するサ変連体ぞ係助強意。」と格助引用仰せサ下二連用尊→安徳天皇けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(天皇は)途方に暮れたご様子で、「尼ぜ、わたしをどこへ連れて行こうとするのか。」とおっしゃったので、

あきる
どうしてよいかわからず、ぼうぜんとする。途方に暮れる。
尼ぜ
尼御前。二位殿のこと。
いづち
どこへ。
具す
連れる。
解説

天皇は、何が起きているのかわからないまま、二位殿にこう問いかけている。

「仰せ」は「言ふ」の尊敬語で、作者から天皇への敬意。

原文

現代語訳(二位殿は)幼い天皇に向かい申し上げ、涙をこらえて申し上げなさったことには、

いとけなし
幼い。
解説

「向かひ奉り」の主語は二位殿。

「申され」は、「申さ」(謙譲語)が作者から天皇への敬意、「れ」(尊敬)が作者から二位殿への敬意。動作をする人と受ける人の両方を敬う言い方(二方面への敬語)である。

二位殿の言葉

原文
「君は係助区別いまだ副知ろしめさサ四未然尊→安徳天皇れ尊敬連用尊→安徳天皇候は補・ハ四未然丁→安徳天皇ず打消終止や係助疑問。先世ぜんぜの格助体修十善戒行じゅうぜんかいぎょうの格助体修御力おんちからに格助原因よつラ四連用・音て接助単純接続、今万乗ばんじょうの格助体修あるじと格助引用生まれラ下二未然させ尊敬連用尊→安徳天皇給へ補・ハ四已然尊→安徳天皇ども接助逆接確定、

現代語訳「天皇は、まだおわかりになっていらっしゃいませんか。前世で十の善行の戒めを守り通された功徳によって、今こうして天子とお生まれになりましたけれども、

知ろしめす
ご存じである。「知る」の尊敬語。
先世(ぜんぜ)
前世。
十善戒行(じゅうぜんかいぎょう)
十の善い行いの戒めを守り行うこと。前世でこれを守った者は、天子に生まれると考えられた。
万乗(ばんじょう)のあるじ
天子、天皇。
解説

「知ろしめされ候はずや」は「まだご存じではございませんか」。ご存じでないのかと問う内容は、続く「先世の十善戒行の…尽きさせ給ひぬ」の部分。

二位殿の言葉の中の「させ給ふ」「知ろしめす」などの尊敬語、「候ふ」の丁寧語は、二位殿から天皇への敬意。

原文
悪縁あくえんに格助受身の相手ひかカ四未然れ受身連用て接助単純接続、御運ごうんすでに副尽きカ上二未然させ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇ぬ完了終止。

現代語訳悪い縁に引かれて、ご運はもう尽きておしまいになりました。

悪縁
悪い因縁。
すでに
もう。
原文
まづ副東ひんがしに格助帰着向かはハ四未然せ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇て接助単純接続、伊勢大神宮いせだいじんぐうに格助対象御おんいとま申さサ四未然謙→伊勢大神宮せ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇、

現代語訳まず東の方をお向きになり、伊勢大神宮においとまごいを申し上げなさって、

伊勢大神宮
伊勢神宮。
御いとま申す
お別れを申し上げる。
解説

東に向かうのは、伊勢大神宮が東の方角にあり、そこへ別れのあいさつをするため。「申さ」は二位殿から伊勢大神宮への敬意、「せ給ひ」は二位殿から天皇への敬意。

原文
そ代名の格助体修後のち西方浄土さいほうじょうどの格助体修来迎らいごうに格助対象あづからラ四未然ん意志終止と格助引用思しめしサ四連用尊→安徳天皇、西にしに格助対象向かはハ四未然せ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇て接助単純接続、御念仏おんねんぶつ候ふハ四終止丁→安徳天皇べし命令終止。

現代語訳その後、西方浄土の仏のお迎えを受けようとお思いになって、西に向き直り、お念仏をお唱えなさいませ。

西方浄土
西の方にあるという阿弥陀仏の極楽浄土。
来迎
臨終の時、仏が極楽浄土から迎えに来ること。
あづかる
(恩恵などを)受ける。
解説

西に向かって念仏を唱えるのは、極楽浄土へのお迎えを受けて往生するため。

「御念仏候ふべし」の「候ふ」は丁寧語、「べし」は命令の意で、「お念仏をお唱えなさいませ」。

原文
こ代名の格助体修国は係助区別粟散辺地ぞくさんへんじと格助引用て接助単純接続、心憂こころうきク連体境さかいに断定連用て接助単純接続候へ補・ハ四已然丁→安徳天皇ば接助順接確定、極楽浄土ごくらくじょうどと格助引用て接助単純接続、めでたきク連体所へ格助方向具ぐしサ変連用参らせ補・サ下二連用謙→安徳天皇候ふ補・ハ四連体丁→安徳天皇ぞ係助強意。」と格助引用泣く泣く副申さサ四未然謙→安徳天皇せ尊敬連用尊→二位殿給ひ補・ハ四連用尊→二位殿けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳この国は粟を散らしたような小さな辺境の地で、つらい所でございますから、極楽浄土という結構な所へお連れ申し上げるのですよ。」と、泣く泣く申し上げなさったので、

粟散辺地(ぞくさんへんじ)
粟粒を散らしたような、辺境の小さな国。日本のこと。
心憂し
つらい、いやだ。
めでたし
すばらしい。
具し参らす
お連れ申し上げる。
解説

「めでたき所」は極楽浄土のこと。二位殿は、死に向かうことを、つらい国からすばらしい所へ行くのだと言い聞かせている。

「申させ給ひ」も二方面への敬語。「申さ」は作者から天皇へ、「せ給ひ」は作者から二位殿への敬意。

天皇の入水

原文
山鳩色やまばといろの格助体修御衣ぎょいに格助添加びんづら結はハ四未然せ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇て接助単純接続、御涙おんなみだに格助原因おぼれラ下二連用、小さくク連用うつくしきシク連体御手おんてを格助対象合はせサ下二連用、

現代語訳(天皇は)山鳩色の御衣をお召しになり、髪をびんづらにお結いになって、あふれる涙にむせびながら、小さくかわいらしい両手を合わせ、

御衣(ぎょい)
天皇のお召し物。
びんづら
髪を左右に分けて、耳のあたりで輪に結う少年の髪型。
御涙におぼる
涙にむせぶ。あふれる涙で顔がぬれる。
解説

幼い天皇が、二位殿の言葉を信じて小さな手を合わせる姿が、場面の悲しさを強めている。

原文
まづ副東ひんがしを格助対象伏し拝みマ四連用、伊勢大神宮いせだいじんぐうに格助対象御おんいとま申さサ四未然謙→伊勢大神宮せ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇、そ代名の格助体修後のち西にしに格助帰着向かはハ四未然せ尊敬連用尊→安徳天皇給ひ補・ハ四連用尊→安徳天皇て接助単純接続、御念仏おんねんぶつありラ変連用しか過去已然ば接助順接確定、

現代語訳はじめに東を伏し拝んで伊勢大神宮においとまごいをなさり、それから西に向き直ってお念仏をお唱えになったので、

解説

天皇は、二位殿に言われたとおり、まず東を向いて伊勢大神宮に別れを告げ、次に西を向いて念仏を唱えた。

原文
二位殿にいどのやがて副抱いだきカ四連用奉り補・ラ四連用謙→安徳天皇、「波の格助体修下したに格助場所も係助同趣都の格助主格候ふハ四連体丁→安徳天皇ぞ係助強意。」と格助引用慰めマ下二連用奉つ補・ラ四連用・音謙→安徳天皇て接助単純接続、千尋ちひろの格助体修底へ格助方向ぞ係助強意入りラ四連用給ふ補・ハ四連体尊→二位殿。

現代語訳二位殿はすぐに(天皇を)お抱き申し上げ、「波の下にも都がございますよ。」とお慰め申し上げて、底知れない深い海の底へとお入りになる。

やがて
すぐに。
千尋(ちひろ)の底
非常に深い海の底。
解説

「波の下にも都の候ふぞ」の「の」は主格。「波の下にも都がございますよ」。幼い天皇を不安がらせずに、立派な最期を迎えさせようとする二位殿の思いやりと、孫を死なせなければならない悲しみがこもっている。

「入り給ふ」の「給ふ」は、作者から二位殿への敬意。

この後、知盛たちの最期は「能登殿の最期」に描かれます。前の記事は『平家物語』先帝身投①です。同じ『平家物語』の「忠度の都落ち」もあわせて読んでみてください。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①八歳
    ②御衣
    ③先世
    ④万乗
    ⑤来迎
    ⑥千尋

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    ①はっさい
    ②ぎょい
    ③ぜんぜ
    ④ばんじょう
    ⑤らいごう
    ⑥ちひろ

  2. 次の語の、本文中での意味を答えよ。
    ①ねぶ
    ②御かたち
    ③いとけなし
    ④具す
    ⑤めでたし
    ⑥やがて

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    ①大人びる
    ②ご容貌
    ③幼い
    ④連れる
    ⑤すばらしい
    ⑥すぐに

B 文法・敬語

  1. 「君はいまだ知ろしめされ候はずや」の「知ろしめされ候はず」を品詞分解し、全体を現代語訳せよ。また、天皇が「知ろしめされ候はず」とされている内容を、本文中から抜き出せ(初めと終わりの五字)。

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    知ろしめさ=尊敬の動詞「知ろしめす」の未然形/れ=尊敬の助動詞「る」の連用形/候は=丁寧の補助動詞「候ふ」の未然形/ず=打消の助動詞「ず」の終止形。訳=天皇はまだご存じではございませんか。内容=「先世の十善」〜「させ給ひぬ」

  2. 「涙をおさへて申されけるは」の「申さ」「れ」は、それぞれだれからだれへの敬意を表すか。また、このように動作をする人と受ける人の両方を敬う言い方を、本文中からもう一つ抜き出せ。

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    申さ=作者から天皇へ(謙譲語) れ=作者から二位殿へ(尊敬)。もう一つ=「申させ給ひ」(泣く泣く申させ給ひければ)

  3. 「西に向かはせ給ひて、御念仏候ふべし」の「候ふ」の敬語の種類と、「べし」の意味を答えよ。

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    候ふ=丁寧語(二位殿から天皇への敬意)。べし=命令。

C 現代語訳・内容

  1. 「主上、今年は八歳にならせ給へども、御歳の程よりはるかにねびさせ給ひて」を現代語訳せよ。

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    天皇は今年八歳におなりになるけれども、お年のわりにはずっと大人びていらっしゃって、

  2. 「尼ぜ、我をばいづちへ具してゆかんとするぞ。」を現代語訳せよ。また、「尼ぜ」とはだれのことか。

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    訳=尼御前よ、私をどこへ連れて行こうとするのか。尼ぜ=二位殿(平時子)。

  3. 「いとけなき君に向かひ奉り」を、主語を補って現代語訳せよ。

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    (二位殿は)幼い天皇にお向かい申し上げ、

  4. 二位殿は天皇に、まず東に向かい、次に西に向かうように言う。それぞれ何のためか。

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    東=東の方角にある伊勢大神宮に別れのあいさつを申し上げるため。西=西方浄土からのお迎えを受けて極楽往生するため(念仏を唱えるため)。

  5. 「波の下にも都の候ふぞ」という言葉から、二位殿のどんな思いが読み取れるか。

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    幼い天皇を不安がらせずに立派な最期を迎えさせようとする思いやりと、孫を死に導かなければならない悲しみ。