『新死鬼』書き下し文・現代語訳・あらすじ・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 『新死鬼』本文解説
  2. 一軒目――仏教を信じる家
  3. 二軒目――道教を信じる家
  4. 三軒目――ふつうの人々の家
  5. 『新死鬼』予想問題

『新死鬼』の書き下し文・現代語訳・重要語句・句法・内容をわかりやすく解説します。出典は、南朝宋の劉義慶(『世説新語』の編者)が編んだ志怪小説集『幽明録』です。志怪小説とは、六朝時代の中国で多く書かれた、不思議な出来事を記録する短い話のことです。

ここでいう「鬼(き)」は、死者の霊・幽霊のことです。日本の昔話に出てくる「おに」とはイメージが異なります。

『新死鬼』本文解説

本文(訓読文)

白文有新死鬼。形疲痩頓。

書き下し新たに死せる鬼有り。形は疲れ痩頓(そうとん)す。

現代語訳死んだばかりの幽霊がいた。その姿は疲れ果て、痩せ衰えていた。

新死鬼
死んだばかりの幽霊。
痩頓
痩せ衰える。

白文忽見生時友人。死及二十年、肥健。相問訊。

書き下し忽(たちま)ち生時の友人を見る。死して二十年に及ぶも、肥健(ひけん)なり。相(あひ)問訊(もんじん)す。

現代語訳ふと、生きていたころの友人に出会った。その友人は死んで二十年になるが、太って元気そうであった。二人は互いに近況を尋ね合った。

忽「たちまチ」
急に、ふと。
肥健
太っていて健康である。
相
互いに。
問訊
様子を尋ねる。

白文曰、「卿那爾。」曰、「吾飢餓、殆不自任。卿知諸方便。故当以法見教。」

書き下し曰はく、「卿(けい)は那(なん)ぞ爾(しか)るか。」と。曰はく、「吾は飢餓して殆(ほとん)ど自ら任(た)へず。卿は諸(もろもろ)の方便を知る。故に当に法を以つて教へらるべし。」と。

現代語訳(友の幽霊が)「君はどうしてそんなにやつれているのか。」と言うと、(新米の幽霊は)「私は腹が減って、もうほとんど我慢できない。君はいろいろな手立てを知っている。だから、ぜひその方法を教えてもらいたい。」と言った。

卿
あなた、君。二人称。
爾
そのようである。ここでは「形疲痩頓」(疲れて痩せ衰えた姿)を指す。
殆
ほとんど。
自任
自分で耐える。
方便
手立て、方法。

白文友鬼云、「此甚易耳。但為人作怪。人必大怖、当与卿食。」

書き下し友の鬼云ふ、「此れ甚(はなは)だ易(やす)きのみ。但だ人の為に怪(くわい)を作せ。人必ず大いに怖(おそ)れ、当に卿に食を与ふべし。」と。

現代語訳友の幽霊が言うことには、「それはとても簡単なことだ。ただ人に向かって怪しいことをしてみせればよい。人はきっとひどく怖がって、君に食べ物をくれるはずだ。」と。

耳
「のみ」。~だけだ(限定・強調)。
但
ただ~だけ。
怪
怪しいこと、不思議な出来事。
当
「まさニ~べシ」。ここでは「きっと~するはずだ」。

一軒目――仏教を信じる家

白文新鬼往、入大墟東頭。有一家、奉仏精進。屋西廂有磨。

書き下し新鬼往きて、大墟(たいきよ)の東頭(とうとう)に入る。一家有り、仏を奉じて精進(しやうじん)す。屋の西廂(せいさう)に磨(うす)有り。

現代語訳新米の幽霊は出かけて行き、大きな村の東のはずれに入った。そこに一軒の家があって、仏教を信じて修行に励んでいた。家の西側のひさしの下には、ひきうすがあった。

大墟
大きな村。
東頭
東のはずれ。
奉仏
仏を信仰する。
西廂
家の西側のひさし。
磨
ひきうす。

白文鬼就推此磨、如人推法。此家主語子弟曰、「仏憐吾家貧、令鬼推磨。」

書き下し鬼就(つ)きて此の磨を推し、人の推す法のごとくす。此の家の主、子弟に語りて曰はく、「仏、吾が家の貧しきを憐れみて、鬼をして磨を推さしむ。」と。

現代語訳幽霊はうすに近づいてそれを押し、人がうすをひくようにやってみせた。この家の主人は若い者たちに語って、「仏さまが、わが家の貧しいのを憐れんで、幽霊にうすをひかせてくださっている。」と言った。

就
近づく。
子弟
家の若い者たち。

新死鬼は「怪異を見せて怖がらせよう」としました。しかし家の主人は怖がらず、「仏が貧しい自分たちを助けるために幽霊をよこしてくれた」と、ありがたく受け取ってしまいました。

白文乃輦麦与之。至夕磨数斛。疲頓乃去。

書き下し乃ち麦を輦(はこ)びて之に与ふ。夕べに至るまで数斛(すうこく)を磨く。疲頓(ひとん)して乃ち去る。

現代語訳そこで麦を運んできて、幽霊がひいているうすに足した。幽霊は夕方になるまで何石もの麦をひいた。くたくたに疲れて、やっと立ち去った。

輦
運ぶ。
之
幽霊がひいているうす。そこに麦を足して、ひかせ続けた。
数斛
数石。大量の量。
疲頓
疲れ果てる。

一軒目の結果は、食べ物をもらうどころか、夕方まで働かされただけでした。

白文遂罵友鬼、「卿那誑我。」又曰、「但復去。自当得也。」

書き下し遂に友の鬼を罵り、「卿は那ぞ我を誑(たぶら)かすか。」と。又曰はく、「但だ復(ま)た去(ゆ)け。自(おの)づから当に得べきなり。」と。

現代語訳とうとう友の幽霊をののしって、「君はどうして私をだましたのか。」と言った。友はまた、「ただもう一度行ってみろ。そのうち、きっと手に入るはずだ。」と言った。

誑
だます。
去
「ゆク」。行く。
自当得也
そのうち、きっと(食べ物が)手に入るはずだ。

二軒目――道教を信じる家

白文復従墟西頭入一家。家奉道。門傍有碓。此鬼便上碓、如人舂状。

書き下し復た墟の西頭(せいとう)より一家に入る。家、道を奉ず。門の傍らに碓(うす)有り。此の鬼便(すなは)ち碓に上りて、人の舂(うすづ)く状のごとくす。

現代語訳今度は村の西のはずれから一軒の家に入った。その家は道教を信じていた。門のそばにつきうすがあった。この幽霊はすぐにうすに上がって、人がうすをつくようなしぐさをした。

奉道
道教を信仰する。
碓
穀物をきねでつく、つきうす。
便「すなはチ」
すぐに。
舂
うすで穀物をつく。

白文此人言、「昨日鬼助某甲。今復来助吾。可輦穀与之。」又給婢簸篩、至夕力疲甚、不与鬼食。

書き下し此の人言ふ、「昨日鬼某甲(ぼうかふ)を助く。今復た来たりて吾を助く。穀を輦びて之に与ふべし。」と。又婢(ひ)に簸篩(はし)を給(きふ)し、夕べに至るまで力(つと)め疲るること甚だしきも、鬼に食を与へず。

現代語訳この家の人が言うには、「昨日は幽霊がどこそこの家を手伝ったという。今度はまたわが家に来て手伝ってくれている。穀物を運んで、幽霊がついているうすに足しなさい。」と。そのうえ下女に「み」と「ふるい」を渡して(一緒に働かせ)、幽霊は夕方まで力を尽くしてひどく疲れたが、家の人は幽霊に食べ物を与えなかった。

某甲
だれそれ。ここでは前日に新死鬼が訪れた一軒目の家を指す。
婢
下女。
簸篩
「み」と「ふるい」。穀物と殻などを分ける道具。
力疲甚
主語は新死鬼。

二軒目も一軒目と同じでした。家の人は幽霊を怖がらず、「手伝ってくれるもの」と考えたため、新死鬼はまた働かされただけでした。

白文鬼暮帰、大怒曰、「吾自与卿為婚姻、非他比。如何見欺。二日助人、不得一甌飲食。」

書き下し鬼暮れに帰り、大いに怒りて曰はく、「吾れ卿と婚姻(こんいん)を為してより、他の比(ひ)に非ず。如何(いかん)ぞ欺(あざむ)かるるか。二日人を助くるも、一甌(いちおう)の飲食をも得ず。」と。

現代語訳幽霊は日暮れに帰ってくると、ひどく怒って言った。「私は君と親戚になってから、ほかの者とは比べものにならないほど親しくしてきた。それなのに、どうしてだまされるのか。二日も人の手伝いをしたが、一杯の食べ物も飲み物も得られなかった。」と。

婚姻を為す
縁組をして親戚になる。
非他比
他人とは比べものにならないほど親しい仲である。
如何「いかん」
どうして。
見欺
欺かる(だまされる)。受身。
一甌
(器)一杯。ほんのわずかな飲食物。

白文友鬼曰、「卿自不偶耳。此二家奉仏事道、情自難動。

書き下し友の鬼曰はく、「卿は自づから偶(あ)はざるのみ。此の二家は仏を奉じ道に事(つか)ふ。情自づから動かし難し。

現代語訳友の幽霊は言った。「君はたまたま運が悪かっただけだ。その二軒は仏教を信じ道教に仕えている家だから、もともと心を動かしにくいのだ。

不偶
よい巡り合わせに出会わない、運が悪い。
事道
道教に仕える。
情自難動
(怪異を見せても)もともと心を動かしにくい。怖がらせにくい。

一軒目と二軒目が失敗したのは、家の人が仏教や道教を信仰していて、怪異をそのまま恐ろしいものとは受け取らなかったからです。

白文今去、可覓百姓家作怪。則無不得。」

書き下し今去きて、百姓(ひやくせい)の家を覓(もと)め怪を作すべし。則(すなは)ち得ざること無からん。」と。

現代語訳今度は行って、ふつうの人々の家を探して怪しいことをしてみなさい。そうすれば、手に入らないということはないだろう。」と。

百姓「ひゃくせい」
ここでは、仏教や道教を特に信仰していない、ふつうの人々。
覓
探し求める。

三軒目――ふつうの人々の家

白文鬼復去、得一家。門首有竹竿。従門入、見有一群女子、窓前共食。

書き下し鬼復た去きて、一家を得。門首(もんしゆ)に竹竿(ちくかん)有り。門より入るに、一群の女子有りて、窓前に共に食らふを見る。

現代語訳幽霊はまた出かけて、一軒の家を見つけた。門の上には竹竿がかけてあった。門から入ると、何人かの娘たちが、窓の前で一緒に食事をしているのが見えた。

門首
門の上、門のあたり。
一群の女子
何人もの娘たち。

白文至庭中、有一白狗、便抱令空中行。其家見之大驚、言、「自来未有此怪。」

書き下し庭中に至るに、一の白狗(はくこう)有り、便ち抱きて空中に行かしむ。其の家之を見て大いに驚きて言ふ、「自来(じらい)、未だ此の怪有らず。」と。

現代語訳庭に行くと一匹の白い犬がいたので、幽霊はすぐにそれを抱き上げて、空中を歩かせた。その家の人々はこれを見てひどく驚き、「これまで、こんな怪しいことは起きたことがない。」と言った。

白狗
白い犬。
自来
これまで、従来。

三軒目で起こした「怪」は、白い犬を抱いて空中を歩かせたことです。ここで初めて、家の人が本当に怖がりました。

白文占云、「有客鬼索食。可殺狗、並甘果酒飯、于庭中祀之、可得無他。」

書き下し占ひて云ふ、「客鬼(くわくき)の食を索(もと)むる有り。狗を殺すべし。並びに甘果(かんくわ)酒飯もて、庭中に于(お)いて之を祀(まつ)らば、他無きを得べし。」と。

現代語訳祈禱師が占って言うには、「まつってくれる人のいない幽霊が食べ物を求めている。犬を殺し、甘い果物や酒・飯もそろえて、庭でその幽霊をまつれば、ほかに何事も起こらないですむだろう。」と。

客鬼
まつってくれる人のいない幽霊。
可殺狗
犬を殺して、その肉を幽霊への供え物にするため。
之
客鬼を指す。
可得無他
ほかに何も(怪異が)起こらないですむだろう。「可得」で「~できる」。

白文其家如師言。鬼果大得食。

書き下し其の家、師の言のごとくす。鬼果(は)たして大いに食を得たり。

現代語訳その家は祈禱師の言うとおりにした。幽霊は、友の言ったとおり、たっぷりと食べ物を手に入れた。

師
祈禱師。ここでは占いをした人を指す。
果「はタシテ」
思ったとおり、予想どおり。

白文自此後恒作怪、友鬼之教也。

書き下し此れより後、恒(つね)に怪を作すは、友の鬼の教へなり。

現代語訳これ以後、(幽霊が)いつも怪しいことを起こすようになったのは、友の幽霊の教えによるのである。

恒「つねニ」
いつも。

『新死鬼』予想問題

A 語句

  1. 次の語の読みを、送り仮名も含めてひらがな(現代仮名遣い)で答えよ。
    ①忽
    ②便
    ③恒
    ④果

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    ①たちまち
    ②すなわち
    ③つねに
    ④はたして

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①卿
    ②百姓

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    ①あなた、君(二人称)
    ②(仏教や道教を特に信仰していない)ふつうの人々、庶民

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「卿那爾」を書き下し文にせよ。また、「爾」がさす内容を本文中の四字で示し、それを踏まえて現代語訳せよ。

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    書き下し文:卿は那ぞ爾るか。
    「爾」がさす内容:形疲痩頓
    現代語訳:君はどうしてそんなに疲れて痩せ衰えた姿をしているのか。

  2. 「故当以法見教」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:故に当に法を以つて教へらるべし。
    現代語訳:だから、ぜひその方法を教えてもらいたい。

  3. 「仏憐吾家貧、令鬼推磨」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:仏、吾が家の貧しきを憐れみて、鬼をして磨を推さしむ。
    現代語訳:仏さまがわが家の貧しいのを憐れんで、幽霊にうすをひかせてくださっている。

  4. 「今去、可覓百姓家作怪。則無不得」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:今去きて、百姓の家を覓め怪を作すべし。則ち得ざること無からん。
    現代語訳:今度は行って、ふつうの人々の家を探して怪しいことをしてみなさい。そうすれば、手に入らないということはないだろう。

C 内容の読み取り

  1. 友の幽霊が「此甚易耳」と言って教えたやり方を、「人間」「食べ物」という語を使って説明せよ。

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    人間の前で怪しいことをしてみせて怖がらせれば、人間のほうから食べ物を供えてくれる、というやり方。

  2. 一軒目の家の人は、うすを押す幽霊を見てどのように受け取り、どうしたか。

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    仏が貧しいわが家を憐れんで幽霊をよこしてくれたのだと喜び、麦を運んできて、さらに幽霊にひかせた。

  3. 一軒目と二軒目で、新死鬼が食べ物を手に入れられなかったのはなぜか。説明せよ。

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    どちらも仏教や道教を信仰する家で、怪異を見ても怖がらず、仏や幽霊が手伝いに来てくれたと受け取ったので、幽霊に食べ物を供えようとしなかったから。

  4. 三軒目で新死鬼が起こした「怪」とは、どのようなことか。具体的に説明せよ。

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    庭にいた白い犬を抱きかかえて、空中を歩かせたこと。

  5. 三軒目の家で、新死鬼に供えられた食べ物をすべて答えよ。

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    犬(の肉)・甘い果物・酒・飯。

  6. 三軒目で、新死鬼が食べ物を手に入れることに成功したのはなぜか。

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    三軒目の家では、新死鬼の行動を恐ろしい怪異として受け止め、怪異を鎮めるために幽霊へ食べ物を供えたから。