『源氏物語玉の小櫛』もののあはれ 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 物語を読む意義
  4. 物語のよしあしと儒仏の教え
  5. テスト予想問題

『源氏物語玉の小櫛(げんじものがたりたまのおぐし)』「もののあはれ」の現代語訳・品詞分解・解説です。

本居宣長が、物語は何のために読むのか、物語のよしあしは何で決まるのかを述べた文章です。物語を読む意義(世の中や人の心を知り、もののあはれを知ること)と、光源氏の恋を例にした物語のよしあしと儒教・仏教の善悪の違いをおさえましょう。「これ」「その筋」「そ」などの指示語もよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞・敬語の種類と向きを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

表示:

現代語訳・品詞分解・解説

物語を読む意義

原文
すべて副物語は係助区別、世に格助場所あるラ変連体こと、人の格助体修ありさま、心を格助対象、さまざま書けカ四已然る完了連体ものなる断定連体ゆゑに格助理由、

現代語訳物語というものはおしなべて、世間で起こることや、人の様子や心を、いろいろと書き表したものなので、

すべて
総じて。
ありさま
様子。
原文
読めマ四已然ば接助順接確定、おのづから副世の中よのなかの格助体修ありさまを格助対象よく副心得こころえア下二連用、人の格助体修しわざ、情こころの格助体修あるやうを格助対象、よく副わきまへハ下二連用知るラ四連体、

現代語訳読むと、自然と世の中のありさまをよく理解し、人のすることや、心のありようを、よく見分けて知る、

おのづから
自然と。
心得
理解する。
しわざ
行い。
情(こころ)
人の心。感情。
わきまふ
見分ける。よく理解する。
解説

物語を読んで「わきまへ知る」のは、世の中のありさま、人の行い、心のありよう。

原文
これ代名ぞ係助強意物語を格助対象読まマ四未然む婉曲連体人の格助主格旨むねと副思ふハ四終止べき当然連体ことなり断定連用ける詠嘆連体。

現代語訳これこそが、物語を読むような人が第一に心がけるべきことなのだなあ。

旨と
第一に。もっぱら。
解説

「これ」は、前の「おのづから…よくわきまへ知る」の部分。物語を読めば、世の中のことや人の行い・心が自然とよくわかるということ。

「ぞ」の結びは「ける」(連体形)。

原文
おほかた副物語を格助対象読みマ四連用たる完了連体心こころばへ、かく副の格助体修ごとし比況終止。

現代語訳だいたい物語を読むときの心のありようは、このようなものである。

おほかた
だいたい。
心ばへ
心のありよう。
解説

「かくのごとし」の内容は、あとの「昔のことを…思ひ慰むるわざなり」に述べられている。

原文
昔の格助体修ことを格助対象今の格助体修わ代名が格助体修身に格助対象ひきあてタ下二連用なずらへハ下二連用て接助単純接続、昔の格助体修人の格助体修ものの格助体修あはれを格助対象も係助添加思ひやりラ四連用、

現代語訳昔のできごとを今の自分の身に引き当ててなぞらえて、昔の人のもののあはれにも思いをはせ、

なずらふ
なぞらえる。
思ひやる
思いをはせる。想像する。
解説

「昔のこと」は、物語の中のできごと。「昔の人」は物語の登場人物。

「昔の人のもののあはれをも思ひやり」は、作中の人物が感じたことを思い浮かべてみること。

原文
おの代名が格助体修身の上みのうへを格助対象も係助添加昔に格助対象比くらべみマ上一連用て接助単純接続、ものの格助体修あはれを格助対象知りラ四連用、憂うきク連体を格助対象も係助添加思ひ慰おもひなぐさむるマ下二連体わざなり断定終止。

現代語訳自分の身の上も昔と比べてみて、もののあはれを知り、つらいことも心の中で慰めるものなのである。

憂し
つらい。
思ひ慰む
心を慰める。
わざ
こと。もの。
解説

物語を読むことで、もののあはれを知り、自分のつらさも慰められる、ということ。

物語のよしあしと儒仏の教え

原文
さて接物語は係助区別、ものの格助体修あはれを格助対象知るラ四連体を格助対象旨むねと格助引用は係助強意しサ変連用たる存続連体に接助逆接確定、そ代名の格助体修筋すぢに格助場所至いたりラ四連用て接助単純接続は係助区別、儒仏じゆぶつの格助体修教をしへに格助対象は係助強意背そむけカ四已然る存続連体ことも係助強意多おほきク連体ぞ終助強意かし終助念押し。

現代語訳さて物語は、もののあはれを知ることを第一としているが、その点(もののあはれを知ること)に関しては、儒教や仏教の教えには背いていることも多いのだよ。

旨
いちばん大切なこと。
儒仏
儒教と仏教。
解説

「その筋」は、もののあはれを知ること。

物語はもののあはれを知ることを第一とするので、その点で儒教・仏教の教えに背くことが多い、ということ。

原文
そ代名は係助区別まづ副、人の格助体修情こころの格助主格ものに格助対象感かんずるサ変連体ことに格助場所は係助強意、善悪邪正ぜんあくじやしやうさまざまあるラ変連体中なかに格助場所、理ことわりに格助対象違たがへハ四已然る存続連体ことに格助対象は係助強意感かんずサ変終止まじき打消当然連体わざなれ断定已然ども接助逆接確定、

現代語訳それはまず、人の心が物事に感じて動くことには、善悪・正邪いろいろある中で、道理に反していることには感じてはならないものだけれども、

善悪邪正
善と悪、よこしまと正しさ。
理(ことわり)
道理。
違ふ(たがふ)
背く。反する。
解説

「そ」は、前の「物語には儒仏の教えに背くことも多い」こと。

「人の情の」の「の」は主格。人の心が物事に感じて動くこと。

原文
情こころは係助区別我われながら副わ代名が格助体修心に格助対象も係助強意任まかせサ下二未然ぬ打消連体ことありラ変連用て接助単純接続、おのづから副忍しのびがたきク連体節ふしありラ変連用て接助単純接続、感かんずるサ変連体ことあるラ変連体ものなり断定終止。

現代語訳人の心は、自分のものなのに自分の意のままにはならないところがあり、ついこらえきれない点もあって、(道理に反することにも)感じて動いてしまうことがあるものなのだ。

我ながら
自分のことでありながら。
忍びがたし
こらえきれない。
節
点。ところ。
解説

「情は我ながらわが心にも任せぬ」は、自分の感情を自分では抑えられないということ。道理に反することでも、心が動いてしまうことがある。

原文
源氏の君げんじのきみの格助体修上うへにて格助資格言いはハ四未然ば接助順接仮定、空蟬の君うつせみのきみ・朧月夜の君おぼろづきよのきみ・藤壺の中宮ふぢつぼのちゆうぐうなど副助例示に格助対象心を格助対象かけカ下二連用て接助単純接続逢あひハ四連用給たまへ補・ハ四已然尊→光源氏る完了連体は係助区別、

現代語訳光源氏の身の上で言うならば、(光源氏が)空蟬の君・朧月夜の君・藤壺の中宮などに思いを寄せて、お逢いになったことは、

心をかく
思いを寄せる。
逢ふ
(男女が)結ばれる。
解説

ここからが、前の「情は我ながらわが心にも任せぬ」の例。

「給へ」は尊敬語で、作者から光源氏への敬意。

原文
儒仏じゆぶつなど副助例示の格助体修道にて格助場所言いはハ四未然む仮定連体に格助状態は係助強意、世よに副上うへも係助強意なきク連体いみじきシク連体不義悪行ふぎあくぎやうなれ断定已然ば接助順接確定、

現代語訳儒教や仏教などの教えで言うとすれば、この上もないひどい不義悪行であるので、

世に上もなし
この上ない。
いみじ
(ここは悪い意味で)ひどい。
解説

空蟬・朧月夜・藤壺は、いずれも夫や定まった相手のいる女性なので、光源氏の恋は儒教・仏教の教えでは不義悪行になる。

原文
ほかに格助状態いかばかり副の格助体修よきク連体ことあらラ変未然む仮定連体に断定連用て接助単純接続も係助強意、よきク連体人と格助引用は係助強意言いひがたかるク連体べき当然連体に接助逆接確定、

現代語訳ほかにどれほどよいことがあったとしても、よい人とは言いにくいはずなのに、

いかばかり
どれほど。
言ひがたし
言いにくい。
解説

「よき人とは言ひがたかるべき」は、光源氏のこと。

原文
そ代名の格助体修不義悪行ふぎあくぎやうなる断定連体由よしを格助対象ば係助強意さしも副立てタ下二連用て接助単純接続は係助強意言いはハ四未然ず打消連用して接助単純接続、ただ副そ代名の格助体修間あひの格助体修、ものの格助体修あはれの格助主格深ふかきク連体方かたを格助対象、かへすがへす副書きカ四連用述のべバ下二連用て接助単純接続、

現代語訳(物語は)その不義悪行であることを、それほど取り立てては言わないで、ただその間の、もののあはれの深いところを、くり返しくり返し書き記して、

由(よし)
こと。
さしも
(下に打消を伴って)それほど(〜ない)。
かへすがへす
くり返し。
解説

物語は、光源氏の恋が不義悪行であることを取り立てて言わず、恋の中のもののあはれの深さ(感情の深さ)を細やかに書いている。

原文
源氏の君げんじのきみを格助対象ば係助強意旨むねと副よきク連体人の格助体修本と格助結果しサ変連用て接助単純接続、よきク連体ことの格助体修限かぎりを格助対象こ代名の格助体修君きみの格助体修上うへに格助場所取り集とりあつめマ下二連用たる完了連体、

現代語訳光源氏をもっぱらよい人の手本として、よいことのすべてをこの君の身の上に集めている、

本
手本。
解説

物語が光源氏をよい人の手本としているのは、物語の主眼が道徳の善悪ではなく、もののあはれの深さにあるから。

原文
これ代名物語の格助体修大旨おほむねに断定連用して接助単純接続、そ代名の格助体修よきク連体悪あしきシク連体は係助区別、儒仏じゆぶつなど副助例示の格助体修書しよの格助体修善悪ぜんあくと格助比較変かはりあるラ変連体けぢめなり断定終止。

現代語訳これが物語の本旨であって、その(物語の)よしあしは、儒教や仏教などの書物の善悪とは異なる違いなのである。

大旨(おほむね)
本旨。いちばん大切な趣旨。
けぢめ
違い。区別。
解説

物語のよしあしは、もののあはれを知っているかどうかで決まり、儒教・仏教の書物の善悪(道理や道徳による判断)とは基準が違う、ということ。

原文
さりとて接、か代名の格助体修たぐひの格助体修不義ふぎを格助対象よしク終止と格助引用するサ変連体に断定連用は係助強意あら補・ラ変未然ず打消終止。

現代語訳そうかといって、あのような不義をよいとするのではない。

さりとて
そうかといって。
解説

「かのたぐひの不義」は、光源氏が空蟬・朧月夜・藤壺などに思いを寄せ、関係を持ったこと。物語は、それをよいこととしているわけではない、と念を押している。

原文
ただ副世の中よのなかの格助体修物語なる断定連体が格助体修ゆゑに格助理由、さる連体筋すぢの格助体修善悪ぜんあくの格助体修論ろんは係助区別しばらく副差し置さしおきカ四連用て接助単純接続、さしも副かかはらラ四未然ず打消連用、

現代語訳ただ世の中(の人の心)を書いた物語であるから、そういう方面の善悪の議論はしばらくわきに置いて、それほどこだわらず、

差し置く
わきに置く。
かかはる
こだわる。
解説

「さる筋の善悪の論」は、儒教・仏教の教えによる善悪の議論。

原文
ただ副ものの格助体修あはれを格助対象知れラ四已然る存続連体方かたの格助体修よきク連体を格助対象、取り立とりたてタ下二連用て接助単純接続よしク終止と格助引用は係助強意しサ変連用たる完了連体なり断定終止。

現代語訳ただもののあはれを知っている点のよさを、取り上げてよいとしているのである。

取り立つ
特に取り上げる。
解説

物語がよいとしているのは、もののあはれを知っていることのよさである。

本居宣長のほかの文章:『石上私淑言』もののあはれを知る・『玉勝間』師の説になづまざること

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①情(情のあるやう)
    ②旨
    ③理
    ④儒仏
    ⑤空蟬
    ⑥朧月夜
    ⑦由(不義悪行なる由)
    ⑧大旨

    解答を見る

    ①こころ
    ②むね
    ③ことわり
    ④じゅぶつ
    ⑤うつせみ
    ⑥おぼろづきよ(おぼろづくよ)
    ⑦よし
    ⑧おおむね

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①おのづから
    ②なずらふ
    ③憂し
    ④心をかく
    ⑤いみじ(いみじき不義悪行)
    ⑥さしも(〜ず)
    ⑦けぢめ

    解答を見る

    ①自然と
    ②なぞらえる
    ③つらい
    ④思いを寄せる
    ⑤ひどい
    ⑥それほど(〜ない)
    ⑦違い・区別

B 文法

  1. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①「物語を読まむ人」の「む」
    ②「旨と思ふべきこと」の「べき」
    ③「理に違へることには感ずまじきわざ」の「まじき」
    ④「いかばかりのよきことあらむにても」の「む」
    ⑤「さまざま書けるもの」の「る」

    解答を見る

    ①婉曲
    ②当然
    ③打消当然
    ④仮定
    ⑤完了

  2. 次の接続助詞の用法を答えよ。
    ①「読めば」の「ば」
    ②「旨とはしたるに」の「に」
    ③「感ずまじきわざなれども」の「ども」
    ④「源氏の君の上にて言はば」の「ば」

    解答を見る

    ①順接の確定条件
    ②逆接の確定条件
    ③逆接の確定条件
    ④順接の仮定条件

C 現代語訳・内容

  1. 「これぞ物語を読まむ人の旨と思ふべきことなりける」について、①「これ」の指す部分の初めと終わりの五字を抜き出せ。②係り結びの結びの語と活用形を答えよ。③全体を現代語訳せよ。

    解答を見る

    ①おのづから〜きまへ知る
    ②ける・連体形
    ③これこそが、物語を読むような人が第一に心がけるべきことなのだなあ。

  2. 「昔のことを今のわが身にひきあてなずらへて、昔の人のもののあはれをも思ひやり」について、①「昔のこと」「昔の人」とはそれぞれ何か。②「昔の人のもののあはれをも思ひやり」とはどういうことか、説明せよ。

    解答を見る

    ①昔のこと=物語の中のできごと、昔の人=物語の登場人物
    ②作中の人物が感じたことを、読む人が思い浮かべてみること。

  3. 「その筋に至りては、儒仏の教へには背けることも多きぞかし」について、①「その筋」の指す内容を答えよ。②物語が儒仏の教えに背くことが多いのはなぜか。次の「情は我ながらわが心にも任せぬ」の意味にふれて説明せよ。

    解答を見る

    ①もののあはれを知ること
    ②人の心は自分のものでありながら自分では抑えきれず、道理に反することにも感じて動いてしまうことがあり、物語はそうした心の動き(もののあはれ)を大切にして書くから。

  4. 「儒仏などの道にて言はむには、世に上もなきいみじき不義悪行なれば」について、①現代語訳せよ。②光源氏の恋が「不義悪行」とされるのはなぜか。説明せよ。

    解答を見る

    ①儒教や仏教などの教えで言うとすれば、この上もないひどい不義悪行であるので
    ②空蟬・朧月夜・藤壺は、いずれも夫や定まった相手のいる女性だから。

  5. 「源氏の君をば旨とよき人の本として」とあるが、物語が光源氏を「よき人の本」として描いているのはなぜか。物語の主眼にふれて説明せよ。

    解答を見る

    物語の主眼は、道徳による善悪ではなく、人の心の深さ(もののあはれの深さ)を書くことにあり、光源氏はもののあはれを深く知る人として描かれているから。

  6. 「そのよき悪しきは、儒仏などの書の善悪と変はりあるけぢめなり」について、物語の「よき悪しき」と儒仏の書の「善悪」とでは、判断の基準がどう違うのか、説明せよ。

    解答を見る

    物語は、もののあはれを知っているかどうかをよしあしの基準とし、儒教・仏教の書物は、道理や道徳にかなっているかどうかを善悪の基準とする。

  7. 「かのたぐひの不義」が何を指すかを補いながら、「さりとて、かのたぐひの不義をよしとするにはあらず」を訳せ。

    解答を見る

    そうかといって、(光源氏が空蟬・朧月夜・藤壺などに思いを寄せ、関係を持ったような)あのたぐいの不義を、よいとしているのではない。