『石上私淑言』もののあはれを知る 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 問い
  4. 『古今和歌集』の序と「もののあはれを知る心」
  5. 人が歌を詠む理由
  6. テスト予想問題

『石上私淑言(いそのかみのささめごと)』「もののあはれを知る」の現代語訳・品詞分解・解説です。

「もののあはれを知る」とはどういうことか、という問いに、本居宣長が『古今和歌集』の序の言葉を引いて答える文章です。和歌は「もののあはれを知る心」から生まれるという考えと、人が歌を詠まずにはいられない理由をおさえましょう。「これら」「ここ」「そのいはれ」などの指示語が何を指すかもよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

問い

原文
問とひハ四連用て接助単純接続いはハ四未然く、「もののあはれを格助対象知るラ四終止」と格助引用は係助区別いかなるナリ連体ことぞ係助強意。

現代語訳(ある人が)たずねて言うには、「もののあはれを知る」とはどういうことか。

いはく
言うことには。「いふ」のク語法。
いかなり
どのようだ。
解説

この文章は、問う人と、答える筆者(本居宣長)との問答の形で書かれている。

『古今和歌集』の序と「もののあはれを知る心」

原文
答こたへハ下二連用て接助単純接続いはハ四未然く、『古今こきん』の格助体修序じよに格助場所「やまと歌うたは係助区別一つ心ひとつこころを格助対象種たねと格助結果しサ変連用て接助単純接続、よろづの格助体修言の葉ことのはと格助結果ぞ係助強意なれラ四已然り完了連用ける過去連体」と格助引用あるラ変連体、

現代語訳答えて言うことには、『古今和歌集』の仮名で書かれた序に「和歌は、ひとすじの心が種となり、それがさまざまな言葉となって表れたものだ」とある、

やまと歌
和歌。
言の葉
言葉。
解説

「やまと歌は…なれりける」は、『古今和歌集』仮名序の冒頭。和歌は人の心を種として、それがさまざまな言葉となって表れたものだ、ということ。

『古今和歌集』仮名序は、ふつう「人の心を種として」という本文で知られている。

「ぞ」の結びは「ける」(連体形)。

原文
こ代名の格助体修「心」と格助引用いふハ四連体が格助主格すなはち接もののあはれを格助対象知るラ四連体心なり断定終止。

現代語訳ここでいう「心」こそが、つまりはもののあはれを知る心なのである。

すなはち
とりもなおさず。つまり。
解説

仮名序の「(一つ)心」こそが、もののあはれを知る心だ、と筆者は言っている。

原文
次つぎに格助場所「世の中よのなかに格助場所あるラ変連体人、事業ことわざ、しげきク連体ものなれ断定已然ば接助順接確定、

現代語訳次に、「この世に生きている人は、出会うできごとや、する行いが多いものなので、

事業(ことわざ)
出会うできごとや、する行い。
しげし
多い。
解説

これも仮名序の言葉。この世に生きる人は、経験することが多い、ということ。

原文
心に格助場所思ふハ四連体ことを格助対象、見るマ上一連体もの、聞くカ四連体ものに格助対象つけカ下二連用て接助単純接続、言ひ出いひいだせサ四已然る存続連体なり断定終止」と格助引用あるラ変連体、

現代語訳胸の中で思うことを、目に見るもの耳に聞くものにことよせて、(歌として)言葉に出しているのである」とある、

つく
託す。ことよせる。
解説

「言ひ出だせる」のは、和歌。胸の中の思いを、目や耳にふれるものにことよせて歌にする、ということ。

原文
こ代名の格助体修「心に格助場所思ふハ四連体こと」と格助引用いふハ四連体も係助同趣、また副すなはち接もののあはれを格助対象知るラ四連体心なり断定終止。

現代語訳この「心に思うこと」というのも、やはりとりもなおさず、もののあはれを知る心である。

解説

仮名序の「心に思ふこと」も、またもののあはれを知る心だ、と言っている。

原文
上うへの格助体修「一つ心ひとつこころを格助対象」と格助引用いへハ四已然る存続連体は係助区別、大綱たいかうを格助対象いひハ四連用、ここ代名は係助区別そ代名の格助体修いはれを格助対象述のべバ下二連用たる存続連体なり断定終止。

現代語訳前の「一つ心を(種として)」と言っているところは、(和歌とは何かという)おおもとを言い、ここ(「世の中にある人」以下)は、その(和歌が生まれる)わけを述べているのである。

大綱(たいかう)
おおもと。根本。
いはれ
わけ。理由。
解説

「上の『一つ心を』」は、仮名序の「やまと歌は一つ心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」の部分。和歌とは何かというおおもとを言っている。

「ここ」は「世の中にある人…言ひ出だせるなり」の部分。「そのいはれ」は、和歌が生まれるわけ(人が歌を詠む理由)。

原文
同どう真名序まなじよに格助場所「思慮易遷しりよやすくうつり、哀楽相変あいらくあひかはる」と格助引用いへハ四已然る存続連体も係助同趣また副、もののあはれを格助対象知るラ四連体なり断定終止。

現代語訳同じ(『古今和歌集』の)漢文の序(真名序)に「人の思いは移ろいやすく、悲しみと喜びも入れかわる」とあるのも、やはりもののあはれを知っているということである。

真名序(まなじよ)
漢文で書かれた『古今和歌集』の序。「真名」は漢字。
解説

「思慮易遷、哀楽相変」は、「思慮遷り易く、哀楽相変はる」と読み、人の思いは移ろいやすく、悲しみと喜びも入れかわるという意味。心が物事に触れて動くことを言っているので、これも「もののあはれを知る」ことだ、としている。

人が歌を詠む理由

原文
これら代名を格助対象「もののあはれ知るラ四連体なり断定終止」と格助引用いふハ四連体いはれは係助区別、すべて副世の中よのなかに格助場所生いきカ四連用と格助強意し副助強意生いけカ四已然る存続連体ものは係助区別皆みな情こころありラ変終止。

現代語訳これらを「もののあはれを知っているのである」と言うわけは、総じて世の中に生きているすべてのものには、みな情(心)がある。

すべて
総じて。おしなべて。
生きとし生けるもの
生きているすべてのもの。「と」「し」は意味を強める。
情(こころ)
心。感情。
解説

「これら」は、仮名序の「心」「心に思ふこと」と、真名序の「思慮易遷、哀楽相変」。

「いはれ」の内容は、このあとの「すべて世の中に…必ず思ふことあり」の部分。

原文
情こころあれラ変已然ば接助順接確定、ものに格助対象触ふれラ下二連用て接助単純接続必かならず副思ふハ四連体ことありラ変終止。こ代名の格助体修ゆゑに格助原因生いきカ四連用と格助強意し副助強意生いけカ四已然る存続連体もの皆みな歌あるラ変連体なり断定終止。

現代語訳心があるから、何かに触れれば必ず思うことが生じる。それゆえ、生きているものにはどれにも歌があるのである。

解説

生きているものにみな歌があるのは、生きているものにはみな情があり、物事に触れると必ず思うことがあるから。思うことがあれば、それが歌となる。

原文
そ代名の格助体修なかに格助場所も係助強意人は係助区別殊ことに副よろづの格助体修ものより格助比較優すぐれラ下二連用て接助単純接続、心も係助並列明あきらかなれナリ已然ば接助順接確定、思ふハ四連体ことも係助並列しげくク連用深ふかしク終止。

現代語訳その中でも人は、とりわけほかのあらゆるものよりすぐれていて、心の働きもはっきりしているので、思うことも多く深い。

殊に
とりわけ。
よろづのもの
あらゆるもの。ここは、あとの「禽獣」と同じく、人以外の生き物。
明らかなり
はっきりしている。明白だ。
解説

人がほかの生き物と違う一つめの点:心がすぐれていて働きもはっきりしているので、思うことが多く深い。

原文
そ代名の格助体修うへ人は係助区別禽獣きんじうより格助比較も係助強意事業ことわざの格助主格しげきク連体ものに断定連用て接助単純接続、ことに格助対象触ふるるラ下二連体こと多おほけれク已然ば接助順接確定、いよいよ副思ふハ四連体こと多おほきク連体なり断定終止。

現代語訳そのうえ人は、鳥や獣よりも、出会うできごとや行いの多いものであって、物事に触れる機会も多いので、思うことはいっそう多くなるのである。

禽獣(きんじう)
鳥や獣。
いよいよ
ますます。
解説

人がほかの生き物と違う二つめの点:経験するできごとや行いが多く、物事に触れる機会も多いので、思うことがいっそう多くなる。

原文
されば接人は係助区別歌なくク連用て接助単純接続かなはハ四未然ぬ打消連体理ことわりなり断定終止。

現代語訳だから、人は歌がなくてはいられない(歌を詠まずにはいられない)道理なのである。

かなふ
(打消を伴って)〜しないではいられない。「歌なくてかなはぬ」は、歌がなくてはすまされない、ということ。
理(ことわり)
道理。
解説

人は、ほかの生き物より思うことが多く深いので、歌を詠まずにはいられない、という結論。

本居宣長のほかの文章:『源氏物語玉の小櫛』もののあはれ・『玉勝間』師の説になづまざること

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①事業
    ②大綱
    ③真名序
    ④情(皆情あり)
    ⑤禽獣
    ⑥理

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    ①ことわざ
    ②たいこう
    ③まなじょ
    ④こころ
    ⑤きんじゅう
    ⑥ことわり

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①いかなる
    ②やまと歌
    ③しげし
    ④いはれ
    ⑤すべて(すべて世の中に)
    ⑥明らかなり
    ⑦いよいよ

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    ①どのような
    ②和歌
    ③多い
    ④わけ・理由
    ⑤総じて・おしなべて
    ⑥はっきりしている・明白だ
    ⑦ますます

B 文法

  1. 「よろづの言の葉とぞなれりける」の係り結びについて、係助詞と結びの語を書き抜き、結びの活用形を答えよ。

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    係助詞=ぞ、結び=ける(連体形)

  2. 「生きとし生けるもの」について、①「と」「し」を文法的に説明せよ。②「る」の意味と活用形を答えよ。③現代語訳せよ。

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    ①と=強意の格助詞、し=強意の副助詞
    ②存続・連体形(存続の助動詞「り」の連体形)
    ③生きているすべてのもの

C 現代語訳・内容

  1. 「やまと歌は一つ心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」は何という作品のどの部分からの引用か。また、これを現代語訳し、筆者がここの「心」を何だと言っているかを答えよ。

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    『古今和歌集』の仮名序。訳=和歌は、ひとすじの心を種として、それがさまざまな言葉となって表れたものである。筆者は、この「心」をもののあはれを知る心だと言っている。

  2. 仮名序の「世の中にある人、事業、しげきものなれば」から「言ひ出だせるなり」までを現代語訳せよ。また、何を「言ひ出だせる」のかを答えよ。

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    訳=この世に生きる人は、経験するできごとや行いが多いので、胸の中で思うことを、目に見るもの耳に聞くものにことよせて、言葉に出しているのである。言葉に出しているのは和歌。

  3. 「上の『一つ心を』といへるは、大綱をいひ、ここはそのいはれを述べたるなり」について、①「ここ」の指す部分の初めと終わりの五字を抜き出せ。②「大綱」「そのいはれ」とは、それぞれどのようなことか、説明せよ。

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    ①世の中にあ〜だせるなり
    ②大綱=和歌とは何かという根本。そのいはれ=和歌が生まれる(人が歌を詠む)わけ。

  4. 「同真名序に『思慮易遷、哀楽相変』といへるもまた、もののあはれを知るなり」について、「思慮易遷、哀楽相変」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文=思慮遷り易く、哀楽相変はる。訳=人の思いは移ろいやすく、悲しみと喜びも入れかわる。

  5. 「これらを『もののあはれ知るなり』といふいはれは」の「これら」の指すものを、本文中からすべて抜き出せ。

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    心/心に思ふこと/思慮易遷、哀楽相変

  6. 「このゆゑに生きとし生けるもの皆歌あるなり」とあるが、生きているものにみな歌があるのはなぜか。説明せよ。

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    生きているものにはみな情(心)があり、情があると物事に触れて必ず思うことが生まれ、それが歌となるから。

  7. 「されば人は歌なくてかなはぬ理なり」について、①「ぬ」の意味と活用形を答え、②全体を現代語訳せよ。③人が歌を詠まずにいられないのはなぜか。ほかの生き物との違いにふれて説明せよ。

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    ①打消・連体形
    ②だから、人は歌がなくてはいられない(歌を詠まずにはいられない)道理である。③人はほかの生き物よりすぐれ、心の働きもはっきりしているので思うことが多く深いうえに、経験することも多く、物事に触れる機会が多いので、ますます思うことが多くなるから。