『西鶴諸国ばなし』大晦日は合はぬ算用① 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 年の暮れの原田内助
  4. 半井清庵からの小判
  5. 浪人仲間との酒宴
  6. テスト予想問題

井原西鶴『西鶴諸国ばなし』「大晦日は合はぬ算用(おおつごもりはあわぬさんよう)」①(榧・かち栗・神の松〜いよいよないに極まりける)の現代語訳・品詞分解・解説です。

年の暮れ、借金の支払いも待たせるほど貧しい浪人原田内助は、妻の兄から小判十両を受け取り、浪人仲間を招いて酒宴を開きます。ところが、宴の終わりに小判を集めると一両足りません。内助の暮らしぶりを表す表現、小判の包みの上書きのしゃれ、客たちの様子がよく問われます。後半は大晦日は合はぬ算用②で読みます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

年の暮れの原田内助

原文
榧かや・かち栗・神の松・やま草の格助体修売り声も係助添加せはしくシク連用、餅つくカ四連体宿の格助体修隣に格助場所、煤すすを格助対象も係助強調払はハ四未然ず打消連用、二十八日まで副助範囲髭ひげも係助強調そらラ四未然ず打消連用、

現代語訳カヤの実・かち栗・神棚に飾る松・裏白などの正月用品の売り声もせわしなく聞こえる年の暮れ、餅をつく家の隣で、煤払いもせず、十二月二十八日になっても髭もそらないで、

榧(かや)
カヤの実。かち栗とともに正月の祝いに用いる。
神の松
正月に神棚に飾る松。
やま草
裏白(シダの一種)。正月の飾りにつける。
せはし
忙しい。あわただしい。
宿
家。
解説

「二十八日」は十二月二十八日。正月用品の売り声、餅つき、煤払いなど、年の暮れの様子が書かれていることからわかる。

年の暮れで町じゅうがあわただしいのに、内助は煤払いもせず、髭もそらずにいる。

原文
朱鞘しゆざやの格助体修そりを格助対象かへしサ四連用て接助単純接続、「春まで副助範囲待てタ四命令と格助引用言ふハ四連体に接助逆接確定、是非に副待たタ四未然ぬ打消連体か係助疑問。」と格助引用、米屋の格助体修若いク連体・音者を格助対象、にらみつけカ下二連用て接助単純接続、

現代語訳朱塗りの鞘の反りを返して(いつでも刀を抜けるかまえをして)、「春まで(支払いを)待てと言っているのに、どうしても待たないというのか。」と、米屋の若い店の者をにらみつけて、

朱鞘(しゆざや)
朱塗りの刀の鞘。
そりをかへす
刀の刃の向きを変えて、いつでも抜けるようにかまえる。
是非に〜打消
どうしても〜ない。
解説

「春まで待て」は、米の代金の支払いを、正月が来るまで待てということ。年末に支払いをすませる決まりなのに、刀で脅して支払いを先にのばそうとしている。

「か」は疑問の係助詞。「どうしても待たないというのか」と相手をおどしている。

原文
すぐなるナリ連体今の世を格助対象、横に格助場所わたるラ四連体男ありラ変終止。名は係助提示原田内助と格助引用申しサ四連用丁→読者て接助単純接続、かくれも係助強意なきク連体、浪人らうにん。

現代語訳正しい政治の行われている今の世の中を、無理を押し通して勝手気ままに暮らしている男がいる。名は原田内助といって、だれもが知っている浪人である。

すぐなり
まっすぐだ。ここでは、正しい政治が行われている。
かくれもなし
だれもが知っている。有名だ。
浪人
仕える主人のない武士。
解説

「すぐなる今の世を、横にわたる」は、正しい政治の行われている世の中を、決まりに従わず無理を通して勝手気ままに生きているということ。「すぐ(まっすぐ)」と「横」を対照させたおもしろい表現。

原文
広きク連体江戸に格助場所さへ副助類推住みかねナ下二連用、こ代名の格助体修四、五年、品川の格助体修藤茶屋の格助体修あたりに格助場所棚たな借りラ四連用て接助単純接続、朝あしたの格助体修薪たきぎに格助対象ことを格助対象欠きカ四連用、夕べの格助体修油火あぶらびを格助対象も係助添加見マ上一未然ず打消終止。

現代語訳広い江戸にさえ住みにくくなって、ここ四、五年は、品川の藤茶屋のあたりに家を借りて住み、朝の煮炊きの薪にも困り、夜は灯火の油もなくて明かりも見ない(ありさまだ)。

住みかぬ
住みにくくなる。住んでいられなくなる。
棚
借家。
朝(あした)
朝。
解説

「朝の薪にことを欠き、夕べの油火をも見ず」は対句。朝の煮炊きの薪にも困り、夜は灯火の油もないという、生活に必要なものさえない貧しい暮らしを表している。

原文
これ代名は係助提示かなしきシク連体、年の格助体修暮れに格助時間、女房の格助体修兄、半井清庵なからゐせいあんと格助引用申しサ四連用丁→読者て接助単純接続、神田の明神の格助体修横町に格助場所、薬師くすしありラ変終止。

現代語訳こうして貧しくつらい年の暮れを迎えたが、内助の女房には兄がいて、半井清庵という名で、神田明神の横町で医者をしていた。

薬師(くすし)
医者。
解説

「これはかなしき、年の暮れ」は、ここまで述べた内助の貧しい年の暮れを受けている。

半井清庵からの小判

原文
こ代名の格助体修もとへ格助方向、無心むしんの格助体修状を格助対象、遣はしサ四連用ける過去連体に接助単純接続、たびたび副迷惑ながら接助逆接確定、見捨てがたくク連用、金子きんす十両包みマ四連用て接助単純接続、

現代語訳その清庵のもとへ、金品を無心する手紙を出したところ、(清庵は)たびたびのことで迷惑に思いながらも、見捨てることができず、小判十両を包んで、

無心
金品をねだること。「無心の状」は金品をねだる手紙。
金子(きんす)
お金。ここでは小判。
十両
小判十枚。
解説

「このもと」は、半井清庵のところ。「遣はしける」の主語は内助、「迷惑ながら、見捨てがたく」の主語は清庵。

原文
上書きに格助場所「貧病の格助体修妙薬、金用丸きんようぐわん、よろづに副よしク終止。」と格助引用しるしサ四連用て接助単純接続、内儀ないぎの格助体修かたへ格助方向おくらラ四未然れ尊敬連用尊→半井清庵ける過去連体。

現代語訳その包みの表に「貧病の妙薬、金用丸、どんな症状にもよく効く。」と書いて、(内助の)妻のもとへお送りになった。

上書き
包みの表に書く文字。
よろづに
どんなことにも。
内儀
他人の妻を敬っていう語。ここでは内助の妻(清庵の妹)。
解説

「貧病の妙薬、金用丸、よろづによし」は、貧乏を病気に、小判を薬に見立て、薬の効き目をうたう宣伝文句をまねたしゃれ。送り主が医者であることを生かしている。

「おくられける」の「れ」は尊敬。語り手から清庵への敬意。

浪人仲間との酒宴

原文
内助よろこびバ四連用、日ごろ別して副語るラ四連体浪人仲間へ格助方向、「酒ひとつ盛らラ四未然ん意志終止。」と格助引用、呼びバ四連用に格助目的遣はしサ四連用、

現代語訳内助は喜んで、ふだん特に親しくつきあっている浪人仲間へ、「ひとつ酒盛りをしよう。」と言って、呼びにやり、

別して
とりわけ。特に。
語る
(親しく)つきあう。
盛る
酒を飲む。酒盛りをする。
原文
幸ひ副雪の格助体修夜の格助体修おもしろさ、今まで副助範囲は係助提示、くづれラ下二連用次第の格助体修、柴の戸しばのとを格助対象開けカ下二連用て接助単純接続、「さあ感これ代名へ格助方向。」と格助引用言ふハ四終止。

現代語訳折よく雪の夜で風情もあり、これまで崩れたままほうっておいた柴の戸を開けて、「さあ、こちらへ。」と言う。

幸ひ
ちょうどよく。折よく。
くづれ次第
崩れるにまかせていること。
解説

今まで崩れたままにしていた柴の戸を開けて客を迎えている。ふだん客など来ない、貧しい暮らしぶりがうかがえる。

原文
以上七人の格助体修客、いづれ代名も係助強調紙子かみこの格助体修袖を格助対象つらねナ下二連用、時なら断定未然ぬ打消連体一重羽織ひとへばおり、どこ代名やら副助不確実むかしを格助対象忘れラ下二未然ず打消終止。

現代語訳全部で七人の客は、だれもが紙子の着物を着て連れ立ち、季節はずれの一重羽織という姿だが、どことなく(主君に仕えていた)昔の礼儀を忘れていない。

以上
全部で。
紙子(かみこ)
紙で作った粗末な着物。
時ならぬ
季節はずれの。
一重羽織(ひとへばおり)
裏地のない夏用の羽織。
むかし
主君に仕えていたころ。
解説

十二月の寒い時期に、粗末な紙子や夏用の羽織しか着るものがない、貧しい浪人たち。それでも、どことなく武士としての昔の礼儀を忘れていない様子を「どこやらむかしを忘れず」と言っている。

原文
常の格助体修礼儀すぎガ上二連用て接助単純接続から格助起点、亭主ていしゆまかり出でダ下二連用謙→客たちて接助単純接続、「私代名仕合はせの格助体修合力かうりよくを格助対象請けカ下二連用て接助単純接続、思ひままの格助体修正月を格助対象つかまつるラ四終止謙→客たち。」と格助引用申せサ四已然謙→客たちば接助順接確定、

現代語訳型どおりの挨拶が終わってから、亭主(の内助)が前に進み出て、「私は、ありがたいことに援助を受けまして、思いどおりの正月を迎えることができます。」と申すと、

常の礼儀
ひととおりの挨拶。
まかり出づ
進み出る。
仕合はせ
幸運。めぐりあわせのよいこと。
合力(かうりよく)
金品の援助。
つかまつる
いたします。
解説

「仕合はせの合力」は、妻の兄の清庵から小判十両を送ってもらったこと。

原文
おのおの、「それ代名は係助提示、あやかりもの。」と格助引用言ふハ四終止。「それ代名に格助対象つきカ四連用上書きに格助場所一作いつさくありラ変終止。」と格助引用、くだんの連体小判を格助対象いだせサ四已然ば接助順接確定、

現代語訳客はそれぞれ、「それはあやかりたいものだ。」と言う。(内助が)「それについて、包みの表書きにひと趣向あるのです。」と言って、例の小判を取り出すと、

あやかりもの
あやかりたいもの。(幸せな人にあやかって)自分も幸せになりたい。
一作
ひと趣向。
くだんの
例の。前に述べた。
解説

「一作」は、小判の包みに書かれた「貧病の妙薬、金用丸、よろづによし」という上書きのしゃれのこと。

原文
「さても感軽口なるナリ連体御事。」と格助引用見マ上一連用て接助単純接続回せサ四已然ば接助順接確定、杯の格助体修数かさなりラ四連用て接助単純接続、「よいク連体年忘れ、ことに副長座ちやうざ。」と格助引用、千秋楽せんしうらくを格助対象うたひ出しサ四連用、

現代語訳(客たちは)「なんとも軽妙でしゃれた言い方ですな。」と(小判を)回して見るうちに、杯の数も重なって、「よい年忘れになった。ずいぶん長居をした。」と、千秋楽を謡い出し、

さても
なんとまあ。
軽口
軽妙でしゃれた言い方。
長座(ちやうざ)
長居。
千秋楽
謡曲「高砂」の終わりの一節。これを謡うことが、宴会の終わりを示した。
解説

「見て回せば」は、客たちが小判と上書きを手から手へ回して見たということ。

原文
燗鍋かんなべ・塩辛壺しほからつぼを格助対象手ぐりに格助状態しサ変連用て接助単純接続あげガ下二未然させ使役連用、「小判も係助強調まづ副、御仕舞ひハ四連用候さうらへ補・ハ四命令丁→内助。」と格助引用集むるマ下二連体に接助単純接続、十両ありラ変連用し過去連体うち、一両足らラ四未然ず打消終止。

現代語訳燗鍋・塩辛壺を手から手へ渡して片づけさせ、「小判もひとまずおしまいください。」と集めてみると、十両あったうち、一両足りない。

燗鍋(かんなべ)
酒をあたためる鍋。
手ぐりにす
手から手へ順に渡す。
あぐ
片づける。
まづ
ひとまず。とりあえず。
解説

「十両ありしうち、一両足らず」が、題の「合はぬ算用(勘定が合わない)」の始まり。

原文
座中ざちゆう居直りラ四連用、袖など副助例示ふるひハ四連用、前後を格助対象見れマ上一已然ども接助逆接確定、いよいよ副ないク連体・音に格助対象極まりラ四連用ける過去連体。

現代語訳一座の者は座り直し、袖などを振ってみたり、前後を見回したりしたけれども、(どこにもなく)いよいよないということに決まってしまった。

座中
その場にいる人々。一座。
居直る
座り直す。居ずまいを正す。
いよいよ
確かに。
解説

「座中居直り、袖などふるひ」は、客たちが座り直して袖を振り、小判が落ちていないか、袂に入っていないかを確かめている様子。

「若い者」の「若い」、「ないに」の「ない」は、形容詞「若し」「なし」の連体形「若き」「なき」のイ音便。

『西鶴諸国ばなし』の続き:大晦日は合はぬ算用②

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①大晦日
    ②朱鞘
    ③薬師
    ④金子
    ⑤紙子
    ⑥合力

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    ①おおつごもり
    ②しゅざや
    ③くすし
    ④きんす
    ⑤かみこ
    ⑥こうりょく

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①せはしく
    ②無心
    ③内儀
    ④別して
    ⑤時ならぬ
    ⑥くだんの

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    ①忙しく・あわただしく
    ②金品をねだること
    ③(他人の)妻。ここでは内助の妻
    ④特に・とりわけ
    ⑤季節はずれの
    ⑥例の

B 文法

  1. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①無心の状を遣はしけるに の「ける」
    ②内儀のかたへおくられける の「れ」
    ③酒ひとつ盛らん の「ん」
    ④時ならぬ の「なら」
    ⑤手ぐりにしてあげさせ の「させ」

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    ①過去
    ②尊敬
    ③意志
    ④断定
    ⑤使役

  2. 次の助詞の種類を答えよ。
    ①売り声もせはしく の「も」
    ②広き江戸にさへ住みかね の「さへ」
    ③常の礼儀すぎてから の「から」
    ④前後を見れども の「ども」

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    ①係助詞
    ②副助詞
    ③格助詞
    ④接続助詞

C 現代語訳・内容

  1. 「二十八日まで髭もそらず」の「二十八日」は何月の二十八日か。また、それがわかるのはどのような描写があるからか。

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    十二月。正月用品の売り声や、餅つき・煤払いなど、年の暮れの様子が書かれているから。

  2. 「春まで待てと言ふに、是非に待たぬか。」について、①何を待てと言っているのか。②この言葉を現代語訳せよ。

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    ①米の代金の支払い。
    ②春まで(支払いを)待てと言うのに、どうしても待たないというのか。

  3. 「すぐなる今の世を、横にわたる男あり」を現代語訳せよ。

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    正しい政治の行われる今の世に、決まりを無視して無理を押し通し、勝手気ままに生きている男がいる。

  4. 「朝の薪にことを欠き、夕べの油火をも見ず」とは、どのような暮らしを表しているか。

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    朝の煮炊きに使う薪にも困り、夜は灯火の油もないという、生活に必要なものさえない貧しい暮らし。

  5. 「貧病の妙薬、金用丸、よろづによし」について、①これは具体的には何のことか。本文中の語で答えよ。②この上書きのおもしろさを説明せよ。

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    ①金子十両
    ②貧乏を病気に、小判を薬に見立てて、薬の宣伝文句のように書いたところ。送り主が医者であることを生かしたしゃれになっている。

  6. 「紙子の袖をつらね、時ならぬ一重羽織、どこやらむかしを忘れず」から、客たちについてどのようなことがわかるか。

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    寒い時期に紙子や夏用の羽織しか着るものがないほど貧しいが、武士として主君に仕えていたころの礼儀を忘れず、きちんとした態度でいること。

  7. 「座中居直り、袖などふるひ、前後を見れども」とあるが、客たちはなぜこのようなことをしたのか。

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    足りない一両の小判が、身の回りに落ちていないか、袖の中に入っていないかを確かめるため。